超巨大ロボットの出現は、受験生たちに恐怖を与えた。あまりにも巨大すぎる。その一撃だけで、戦闘不能まで追い込まれそうな圧がビリビリと伝わってきていた。
「逃げろおおおお!!!!」
一人、また一人と超巨大ロボットから逃げ始める。本能的な恐怖心が脚を動かしていた。そして理性的にも、ポイントを稼がなくてはという思いがあった。
「デケェ………お邪魔キャラとは聞いてたけど、邪魔どころじゃないだろこのデカさはよ!」
ジョニィもまた、その大きさに圧倒されていた。まずこの場を逃れて、ポイントを稼がなくてはならない。
そして車椅子を爪の回転で加速させようとした瞬間、ジョニィの視界にあるものが見えた。
「…………ッ!」
ジョニィの手が止まる。超巨大ロボットと逃げ道を交互に見た。
「ああ! どうかしてるとしか思えない!」
ジョニィは爪の回転を加えて、車椅子を加速させた。
その方向は超巨大ロボットだった。
「うらぁ!」
ジョニィは躊躇いなく、爪弾を発射した。だがそれは、ロボットの装甲に傷をつける程度に終わった。
「固い! ぼくの爪弾が全く通用しないなんて‼︎ どうする……どうすれば倒せるんだッ!」
全く通用しないことに愕然とするジョニィ。そこへ超巨大ロボットの腕が振り下ろされた。
「しまった! うおああああああああ!」
ガシャァアアアアアア
車椅子から身を投げ出して間一髪逃れたジョニィだったが、移動手段である車椅子を破壊されたことによって更に状況は悪化していた。
周囲に他の生徒はいない。助けを借りることもできない。
「不味い……考えろっ! 弱点がある筈だ。観察するんだ!」
ジョニィは爪弾をいつでも発射できるよう構えながら、超巨大ロボットを見る。辺りのロボットの残骸やビルを壊しながら進む様は、ゴジラのように絶望的な強さを感じさせた。
「そうだ……相手はロボットだ。超精密なマシンだ。だがそこなんだ、弱点はそこにあるッ!」
空を見上げた。ロボットより更に高い場所。辺りの高層ビルを見上げていた。
どんどん迫ってくる足音と揺れに、ジョニィの全身から汗が噴き出す。だが、それでも諦めずジョニィは探した。
ドガッアアア
目前まで迫ったところで、ジョニィは目を見開いて右手を上に向けた。
「うおおおおおおおおおおお!! 当たれェェーーーーー!」
ジョニィの爪弾はまっすぐ飛んだ。回転が込められた爪弾はその軌道を全くブレることなく目標にぶち当たった!
「ぼくの爪弾はたしかにお前の装甲を貫くことはできない。だが、関節部はどうだ? 破壊することができないとしても、傷がつけばいいんだ。小さな傷でいい。それがいい!」
ジョニィが撃ったのは給水タンクだった!!
給水タンクの柱に命中していたのだ!
自重を支えきれなくなったタンクはビルから落下していき、ロボットの頭に直撃した。
中には大量の水が入っていた。それはロボットに付けられた傷から侵入し、回路をショートさせていく。
「ハァーーーーハァーーーー どうだジャイロ・ツェペリ! このヤロー、やってやったぞチクショー!」
地面に倒れ、機能停止して静かになったロボットを見上げながら叫んだ。
ビィィィイーーー!!
同時に試験終了を伝えるブザーが鳴り響き、ジョニィは個性の多用による疲労で倒れた。
成長している……確実に僕は成長しているッ! だが、まだだ。もっと強くならなくてはならない。今回は幸運だった。給水タンクが無ければ、僕は戦闘不能にまでなってただろう。
回転の力をもっと知りたい……。
知らなくてはならない!
雄英の救護班が回収に来るまで、ジョニィは何度も強く決意していた。
ジャイロ・ツェペリの元へ戻ってきたジョニィは、事務所の戸をぶち破る勢いで入って言った。
「やってやったぞ、ジャイロ・ツェペリ! さあ早く教えるんだ! 次のLessonをッ!」
まだ疲労が残る中で絞り出した声を聞いたジャイロはゆっくりと椅子から立ち上がり、ジョニィの元へ歩いていく。
手に持っているのは鉄球だった。回転する鉄球を見たジョニィはやったぞと思った。これでようやく次のLessonを受けられる。成長することができる。
だがジャイロの目は静かに据わっていた。腰のホルスターから鉄球を出したジャイロは、ゆっくりとそれを放った。
なんだ、どういうことだ。理解する間もなく、ジョニィは鉄球を両手で掴んだ。次の瞬間。
ギチイィッ
「なっ! これは どういうことだジャイロ・ツェペリ! 僕の手が……ねじ曲がって車椅子から離れないッ!」
鉄球が手に触れた瞬間、その回転はジョニィの両手から肩までをねじ曲げて車椅子に密着させた。動かしたいのに、まるで腕全体を抑えつけられてるように動かない。
あたふたするジョニィに対してジャイロは言う。
「バーカ まだ結果が出てねぇだろうが。それを見てからだ それを見てからお前さんに次のLessonを伝えるか考えてやる」
「結果なんて分かり切ってる。早くこの拘束を解いてくれ!」
「ダメだ。それと……結果を見るまでお前はしばらくそのままだ」
はっ? 何を突然言ってるんだこいつは
「冗談でもなんでもねぇからな。嫌なら自力で抜け出してみろ」
ジャイロの言葉は本当だった。
用を足すときや食事の時、歯を磨く時とかは解除されたが、ずっとこの状態のままだったのだ。
「そういえばジャイロ……」
「なんだぁ、小便か?」
「違うよ。ずっとこの事務所にいるけど、なんで他の人はいねぇんだ?」
後ろを向いたまま答えないジャイロ。ジョニィは畳み掛けるように聞いた。
「ヒーローならサイドキックってのがいるもんだろ? または色々管理する事務係とか。なのにこの事務所にはあんた一人だけ……なんでなんだ?」
「1人が好きなんだよ、それによォーー」
振り返ったジャイロの顔はひどくにやけていた。
「可愛い女の子を連れ込んだときに邪魔者が居なくていいだろ〜? お前さんは別の階に放っとけばいいし」
「にしては、この数年間一度もそんなこと無かったと思うけどな」
事務所の中は整理整頓こそされているが、女っ気など微塵もない寂しさが漂っていた。
「うるせえ! この野郎、口も塞いでやろうかこのっ! このっ!」
「うわっ! こっちにくんな馬鹿野郎!」
試験から数日後
くそっ、ちょっとこの状態に慣れてきてる自分が嫌になる。人間ってのは慣れる生き物だが、こんなことに慣れたくはないっての。
ジャイロの鉄球による拘束から逃れようと、ジョニィは四苦八苦していた。だが、この期間の中でわかったこともあった。
「この拘束……皮膚が捻れているが筋肉は動かせる。感触がある。筋肉にはなんの異常もない……皮膚だけなんだ。まるで皮膚が拘束具のような役割を果たしている……」
力任せにやろうとしてもダメだ。筋肉に異常がないとはいえ、自由に動かせるわけじゃない。
「なら、一か八か…」
ジョニィは車椅子に座った状態のまま、爪を回転させる。
だが、単に回すだけではなかった。
ジャイロが投げた鉄球の回転とは逆の回転であった。
「唯一……小指だけがちょうどいい位置に……ジャイロのやつ わざとなのか?」
ジョニィの右手小指の回転した爪弾は、ジョニィの片手に浅く命中した。軽く血が吹き出すも、途端に左手の拘束が解けた。
「やっぱり! 『皮膚だ』 回転は皮膚を巻き込んでいるが、筋肉には何も異常がないように感じられた……皮膚をコントロールするんだ!」
ジョニィは自由になった左手の爪の回転で拘束を解いて久々に自由を取り戻した。
「Lesson2…『筋肉に悟られるな』ってところかな、ジャイロの驚く顔が目に浮かぶぜ」
これまでの仕返しに驚く顔を見てやろうと、自室をそっと出て奥のジャイロのオフィスへと向かっていく。
「…………! ……」
ドアノブに手をかけようとした時、中から声が聞こえた。
珍しいこともあるもんだ。客が来るなんて滅多にないぞ。
僅かに開いている隙間から中を覗くとまず目に入ったのは、床に落ちた小包だった。
「手紙…? でもどこから……あ、」
包みの端には、雄英高校の住所が書かれていた。宛先は……。
「僕じゃないか!!」
バダムッ
勢いよく扉を開けた音に、ジャイロが驚いて振り向く。だがジョニィはそれよりも重要なものを見ていた。
机の上に置かれた小さな機械から、オールマイトが投影されているのだ。そしてオールマイトはというと。
「おめでとうジョニィ・ジョースター君! 合格だ!」
辺りが静まり返った。
振り向いたジャイロは固まったまま動かない。
ジョニィはその投影されたオールマイトに釘付けになっていた。
誰も声を上げない空間に、録音されたオールマイトの声が流れる。
やっと声を発したのは、ジャイロ・ツェペリだった。
「ジョ、ジョニィ……動けたのか。す、すげぇじゃねぇか! うん! すげぇよお前ッ!」
その後も繰り返されるジャイロのお世辞は、ジョニィの耳には入ってきていなかった。
ただゆっくりと、ジョニィは自由になった両手をジャイロに向けた。その目には、やるといったら必ず殺る凄みが燃え上がっていた。
「なにやってんだジャイロ・ツェペリーーーーッ! 拘束はともかく勝手に見た訳を言えェェェー!」
このあと、ジャイロがどうなったかは敢えて言うまい。ただ、生命に別状はなかったとだけ言っておこう。
ジョニィ・ジョースター
首席合格 ヴィランポイント 74P
レスキューポイント 43P
雄英高校ヒーロー科 入学決定ィ!
ジャイロ・ツェペリ
再起可能 3日間は絶対安静
早くジョニィとジャイロの仲良し風景を書きたい世界
感想が欲しい世界なので、頑張りますの世界