Muv-Luv Alternative✖️機動戦士ガンダムOO 地獄に降り立つ狙撃手   作:マインドシーカー

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この小説は、ご覧の作者の提供でお送りいたします。

書いてるうちに話が迷走しちゃいました。

イメージOPは「PRIDE」。

何の前触れもなく、新キャラが登場します。
作者自身の中ではキャライメージは決まっていますが、ここではあえて言わないでおきましょう。
それではどうぞ。

追記
2019年10月18日 0306 後書きの次回予告を変更。


story06「戦う理由(わけ)」

1998年。

その年は、日本にとって多くの出来事が起こった年だった。

大陸からの撤退に加えて、「悪夢の7月」と呼ばれた西日本での本土防衛戦と、京都陥落。

そして、関東は神奈川を奪われ、本土の半分が日本におけるBETAの侵攻は停滞した。

 

1999年2月時点で、この戦いにおける死者は死者は3600万人以上。

凄惨な戦いは、日本帝国軍の実質的な大敗をもって膠着状態に移る。

列強の一つであり、外国に派遣すらできた日本帝国の敗北は、人類がいかに無力であるかを再認識させるとともに、次は誰か?という更なる恐怖心を植え付けた。

 

だが、その恐怖心が、逆に人類を奮い立たせる。

戦わなければ、生き残れない。その瞬間に自分たちは滅びさる。

 

『死ぬわけにはいかない。』

 

『まだ生きたい、生きていたい。』

 

『こんな事で自分たちの明日を奪われてなるものか。』

 

『未来を、奪われてたまるものか。』

 

誰もがその想いを胸に、恋人を、家族を、自身の大切なものを守ろうと、必死に戦っていた。

 

 

 

 

 

〜1999年3月中旬 仙台基地 AL4提供区画 仙台基地演習エリア〜

 

その場所は、仙台基地所属の部隊が訓練で使う演習エリアの一角。

かつて白陵基地で訓練を行っていた訓練兵達が実機訓練を行うために帝国軍仙台基地より帝国政府から国連軍に提供された場所の一つだった。

 

夜間、その場所に立つ戦術機がいた。

 

97式高等練習機「吹雪」に似たその機体は、所々の形状が違っていた。

 

『-----それではこれより、97式改、仮称「雪風」の動作試験を開始する。』

 

「雪風」と呼ばれた戦術機から少し離れた場所に指揮車がいた。

その中にいる男性が、マイク越しに起立したままの「雪風」に指示を出す。

 

『新型OSによる実機を用いた試験項目はC-01から開始する。』

 

雪風に乗る衛士は、その指示を聞くと機体を前進させる。

 

「シエラ1、了解。」

 

『想定は、市街地内での三次元機動を用いた多対1での戦闘だ』

 

HUDに周囲の状況が表示され、レーダーには3つの反応が演習エリアに指定されている市街地を模した演習場の中で表示されている。

 

『昨日のおさらいも兼ねて、簡単な動作確認もしながら演習エリアに入ってくれ。』

 

シエラ1と呼ばれた衛士が乗るのは、97式高等練習機「吹雪」を改修した97式「吹雪」改、仮称「雪風」だ。

この機体には、様々な新技術が盛り込まれており、既存の戦術機とは一線を画する存在として活躍を期待されていた。

 

「了解。」

 

衛士はそう言うと、演習エリアへと機体を跳躍させた。

 

 

 

 

 

「不知火はいつものハンガーに入れろ!雪風は4番ハンガーだ!」

 

演習から帰ってきた戦術機達。

それを迎えた整備班長が大きな声で指示を出す。

まず最初に、1番ハンガーへと入ってきたのは、国連軍カラーの不知火だ。

3機の不知火が、ペイント弾で所々が汚れた状態で入ってくる。

 

「おーおー、派手にやられたな」

 

その不知火が格納されているハンガー担当の班長が機体の様子を見ながらそう言う。

 

「班長!」

 

整備員の一人が、整備班長を呼ぶ。

 

「おお、来たか。」

 

「随分派手にやられてますね。相手はあの、新型機ですか?」

 

そんな会話をしていると、遅れて吹雪に似た機体ーーーーー雪風が1番ハンガーに近づいてきた。

ゆっくりと歩を進め、4番ハンガーを目指す。

歩いている雪風の横をすり抜けるように、一台の車両がハンガー内に入ってくる。

それは、先程雪風に指示を出していた指揮車に乗っていた人間がそれには乗っていた。

国連軍のBDUに身を包んでいるのは、青年だ。

 

「おお、大尉じゃないですか。」

 

近づいてきたのは、1番ハンガー付きの整備班長とは別の、4番ハンガー付きの初老の整備班長だ。

 

「よう、おやっさん。どうだい、こいつの状況は?」

 

車のエンジンを止めて飛び降りると、整備班長にそう聞いたのは、ロックオン・ストラトスだった。

 

二人は横浜白陵基地で初めて会い、ここ数か月の間はロックオンやこの雪風を開発する上でこれに携わる人間皆が世話になっている人物であった。

 

「順調ですよ。機体各部の調子も上々だ。大尉の提供してくれた技術のおかげで、各部の損耗度も飛躍的に減らせてます。」

 

班長は、ロックオンへそう答える。

現在この4番ハンガーでは、訓練兵用の「吹雪」の他に、いくつか技術供与という形で改修計画に回された「吹雪」の改修が行われていた。

ハンガーの一角では、地面に横たわりいくつかの装甲を剥がされシートを被せられた吹雪が2機。

そして、今入ってきた「雪風」とは別にもう一機。

少し形状は異なるが、雪風に似た形状の戦術機が格納されていた。

 

これらは、香月博士が、極秘裏に進める次世代戦術機開発の先駆けという意味合いも込められて改修計画に使われている戦術機群だ。

 

「97式改一号機「雪風」、そして二号機の「初風」・・・」

 

この2機の戦術機は、前者が高機動近接戦闘仕様、後者が中・遠距離支援戦闘仕様と用途が分かれており、それぞれにロックオンから技術供与された技術を下に試作された兵装が装備されていた。

 

「今度行われる予定の例の作戦・・・果たしてそれまでに調整が間に合いますかね。上からの命令じゃあ、一応は一個小隊分は数を揃えるんでしょう?」

 

普通の整備班長であればそこまで知り得ない内容も、彼はこの機体群の置かれている特殊な状況のおかげで知ることができていた。

 

「ああ。こいつらをとりあえずは実戦に投入して、新しいOSと新技術の有用性を示すためのお披露目にする。」

 

ロックオンは、この段階までくる過程で香月夕呼に言われた事が脳裏に浮かぶ。

 

『国連のお偉方も、帝国のお偉方も、この改修案に懐疑的よ。ポッと出で、夢物語を嘲笑われてもいるこの計画の中で、急に改修案なんて出すものだから、まるで「別のおもちゃにすぐ手を出す子供だ」なんて言ってくる始末。だから、次に行われる予定の明星作戦で結果を出してちょうだい。』

 

彼女が計画の本筋をロックオンへ語らないため、夕呼がどのようにしてAL4計画を進めているかはロックオン自身にはあずかり知らぬところではあった。

ただ、彼が計画を進める上で重要な手札の一つになっていることだけは理解できた。

 

『そうすれば、あのお偉方連中も重い腰を上げる筈よ。』

 

手っ取り早い話をするならば、デュナメスを実戦へと投入し、ハイヴを攻略するという案をロックオンは提案したが、それに関しては最終手段でありここで切るべき手札ではないということで、却下された。

 

確かに、「本来の世界」でもそうだったが、GNドライヴを搭載し圧倒的なスペックを誇った「ガンダム」という存在は、「世界そのもの」を破壊する。

 

『あの機体(ガンダム)は、強力すぎるの。それを見せつけて、逆に第5の連中が調子に乗ったらたまったもんじゃないわ。』

 

会話の最後に、そう愚痴混じりに夕呼が言ったのをロックオンは思い出していた。

 

「ロックオン・・・?」

 

1人、思考の海に浸っていると彼に話仕掛ける人間がいた。

 

「ああ、もう着替えてきたのか?」

 

彼に話しかけたのは、髪は黒いのに、どこか浮世離れした雰囲気の少女だ。

 

「ええ。貴方に会いたくて、すぐに戻ってきたの。」

 

ジーナ・チトゥイリスカ。

彼女は先程、シエラ01のコールサインで呼ばれていた、「雪風」のメインテストパイロットであった。

 

 

 

 

 

「ふふ、今日の私はどうだったかしら?上手くできてた?」

 

4番ハンガーから車に乗って宿舎へと向かう車中で、ロックオンが運転する運転席の隣である助手席に乗っているジーナが、ロックオンへと聞く。

 

「ああ、上々だよ。お前のお陰で、良いデータも取れた。どう改善すればいいか、今後の参考に十分なっていく筈だよ。」

 

ロックオンはそう答えた。

 

彼が子飼いにしている形になっている少女ーーーーージーナは、ある筋経由で夕呼へと寄越されたAL4計画への補充要員だった。

彼女がこの基地へ来たのは、移転してから1か月程経った頃の話だ。

そして、夕呼からロックオンへ下された命令は、「人並みの扱い、それに操縦技術の向上。あと、まともにコミュニケーションを取れるようにして」との事だった。

 

彼女は最初、ロックオンと対面した時は酷く怯えていた。

恐らくだが、年齢は十代後半。

体つきも大人の女性らしさが出てきているが、まだまだ顔はあどけなさが残る幼い少女だ。

この場所に来る前にどのような扱いを受けていたかはわからないが、彼女は誰かに必要とされることを強く求めていた。

 

まるで、脅迫観念に近い承認欲求。

 

『貴方の役に絶対立ってみせます。だからどうか、お願いだから捨てないで。私を一人にしないで。』

 

彼女はそう、ロックオンへ言ったのだ。

状況は違う、性格も何もかも違う。

なのに、ロックオンにはいつも周りを振り回してばかりいた少年の姿が重なって見えた。

クルジスで幼少期に洗脳され、強迫観念から死こそが神への信仰だと信じて戦い、裏切られた元少年兵。

 

刹那・F・セイエイと、どこか重なって見えたのだ。

 

『大丈夫だよ。誰も君を捨てたりはしない。』

 

ロックオンはそう、彼女と約束をした。

打ち解けるまでに要した時間は2か月程。

まるで最初は機械のようであったジーナも、ロックオンと接することで徐々に年相応の女の子らしさ、人間らしさを取り戻していった。

そして今現在は、最早依存に近い形ではあるが、夕呼の当初の要望通りに沿える状態にはなった。

 

そんな事を彼女の横顔を見ながら考えていると、宿舎へと到着する。

 

「さて、お姫様。お手を拝借した方がよろしいかな?」

 

何度かしたジョーク。

たまにこれをやる度に、耐性がないのかジーナは「自分で降りれるわよ!」と対抗してきた。

今日も今日とて、同じようなやり取りをしながら車を降りる。

 

「腹、減ってねえか?夕食まだだろう?」

 

「ええ。昼から何も食べていないから、お腹が減って仕方がないわ?」

 

降りた後は、二人はそんな会話をしながら、宿舎へと入っていった。

 

 

 

 

 

 

数十分後、ジーナとロックオンは仙台基地のPXにいた。

 

「ストラトス大尉に、ジーナ少尉。」

 

PXに入ると、ちょうど同じタイミングで入って来たであろう神宮寺まりもが、ロックオンのそばに立っていた。

 

「これから夕食でしょうか?」

 

「ああ。俺もジーナも夕飯はまだでね。そうだ、軍曹も一緒にディナーでもどうだい?」

 

ロックオンは、気さくにそう提案する。

その提案にジーナも「ナイスアイディアね。まりもがいるなら、食事も楽しくなるものっ」と賛成した。

とうのまりもといえば、ロックオンの誘いとジーナの勢いに気圧され、二つ返事で了解する形になる。

ロックオンは注文に、まりもはジーナに促されて席取りに回る。

 

本当は自分が階級的に下であることから、過去に食事の席を共にした時に積極的に動こうとしたが、上下関係に縛られる事を好まないロックオンは「女性に運ばせるなんてできねーよ」と以前に却下された事があった。

 

故に、こういう場面では彼にやらせるのが一番最適解である。

無論、ジーナが心を許す数少ない人間の一人であるのが神宮寺まりもであり、こういう時はジーナの好きにやらせるようにしていた。

カウンターへ行き、京塚伍長へ挨拶しながらメニューを頼んでいる。

 

「おやおや。また両手に花でここに来たのかい?色男は違うねぇ〜」

 

「お戯れを、ミス・キョウヅカ。あんまりからかわれると、ジーナが拗ねる。」

 

その会話を聞いていたジーナが、「私もうそんな子供じゃないわ!」と反論するが、二人はその様子を見て笑みを浮かべるだけだ。

暖かい空間が、そこには広がっていた。

 

「おわ!?き、京塚伍長殿?ライスの量が、少し多くねぇか・・・?」

 

「若いんだからそれくらい食べなさいな。ジーナちゃんには、特別に合成鶏肉唐揚げ2つサービスだよ」

 

「やったー♪」

 

一家団欒のような雰囲気がPX全体に広がる。

遅めに入ってきたここの基地の関係者も、その雰囲気に「たるんでいる」という感情ではなく、純粋に「微笑ましい」という感情でその様子を眺めていた。

 

食事を3人分まとめて器用に持ってきたロックオンがそれぞれの分の食事をそれぞれの場所に置いていくと、最後に席へ着く。

そして、「いただきます」と言うと、細やかな晩餐会が始まった。

 

しばらくして、まりもが自分の分を食べ終わって顔を上げると、正面に大盛りのご飯と格闘しているロックオンの姿が映る。

 

「・・・大丈夫、ロックオン?」

 

「食べきれないのですか、ストラトス大尉・・・?」

 

「く・・・!やはりライスの量が具材に比べて合ってねぇ・・・!」

 

ロックオンは痛恨のミスを犯していた。

米を食べきるための具のペース配分をしくじり、結果的に米のみがかなりの量残ってしまったのだ。

 

その姿を見ていたまりもは、不意に笑みを漏らしてしまった。

 

同い年くらいの青年は、いつも年齢よりも大人に見えるのに、こういう場面では実年齢よりも幼く見えてしまったのだ。

 

「・・・ふふ」

 

それを見られていたまりもは、気づけばロックオンにジト目で見られていた。

 

「・・・こほん。なんでしょうか、大尉?」

 

誤魔化すまりもに、ロックオンは恨めしそうに「人が大変な時に、笑うことはないだろ・・・?」と愚痴をこぼす。

 

「じゃあ、私が食べてあげましょうか?」

 

その状況を打開する天使が現れた。

現れたというよりは、ずっとその場にいたわけだが。

 

「あらあら。ジーナちゃんは量が少し足りなかったかい?」

 

「そんなことないわ!とっても美味しかったわよ、おばちゃんっ」

 

机に突っ伏して「あれでまだ食えるのかよ・・・」と言うロックオンに、苦笑まじりに「少尉が食べてくれるそうですよ?」と言うまりも。

 

しばらくして、ようやく3人全員での晩餐会はお開きになった。

 

まりもは、こういう光景を何度も見ている。

先ほども言った通り、ロックオンと食事の席を共にする事も多かったし、ジーナが来てからは彼女の母親や姉代わりになれるようにと、ロックオンに協力していたからだ。

 

その彼が、自分が育てたA-01の面々とシミュレータとはいえ模擬戦を行い、結果的に負けたとはいえ自分の教え子たちを追い詰めた上に、純粋に同じ条件で行ったサシでの勝負では、一度だけだが自分を下したということが。

 

「大尉。」

 

だから、気になっていた興味と好奇心をぶつけてみたくなってしまった。

 

「ん?なんだ?」

 

「あなたは、どこでアレほどの操縦技術を?ジーナ少尉の操縦技術とて、貴方の指南があってこそでしょう?」

 

ロックオンにとっては、唐突に投げかけられた疑問だ。

 

いずれ投げかけられると思っていたが、まさか今聞かれるとは思っていなかったという表情をロックオンは浮かべていた。

ジーナはキョトンとしながら「何の話?」と呟いている。

 

事の発端は、数日前の出来事だった。

夕呼が突然、A-01の面々にプラスしてジーナとまりもを呼び出すと、こう言い放ったからだ。

 

『なんだか最近、彼の影が薄くなってきているのよね。と、いうわけで、ロックオン・ストラトス大尉の現在の実力試験として模擬戦をやってみようと思いまーす。勿論、相手はうちの秘蔵の戦術機中隊とまりもよー。』

 

突然の事に集められた面々は騒然とし、勿論そんな話など聞いていなかったロックオンも「おいおい。冗談きついぜ、ミス・コウヅキ」と彼女に反論する。

 

『あんた達も、まりもも、気になっているんじゃない?実際のところ、彼自身は皆の前で戦術機を動かしたことは殆ど無いんだから。』

 

確かに夕呼の言うことには一理あった。

まりもも数回程度だがロックオンの模擬戦の相手や、実機を用いた試験でサポートをしたりはしていたが、本気で戦う彼は見た事がなかった。

 

『それとも・・・普段はデスクワーク専門の衛士相手に、勝てない、なんて言わないわよね?』

 

などと、夕呼はジーナとロックオン、それにまりもを除いた全員を挑発した。

 

ジーナとロックオンのみという、2対12の圧倒的不利な状況でありながら、地形と、連携と、実力と、戦力、戦術、全てを駆使して戦い、敗北したとはいえ一個中隊を追い詰め、イレギュラーで行われたまりもとの模擬戦では運が味方し、彼女に勝ったからだ。

 

「ロックオンは強いわ。なにせ、私に操縦テクニックを隅々まで教えてくれたいわば「シショー」だもの。」

 

自慢げに語るジーナに「誤解を生むような言い方をするんじゃあない。まったく、誰に似たんだか・・・」と言うロックオン。

 

「どこで、と言われてもな。俺はただ、自分がいた環境の結果、こうなったとしか言えねぇな?」

 

彼自身は、内心では答えをどうはぐらかそうか考えていた。

何せ、ロックオン・ストラトスという男は、本来は世界を敵に回した私設武装組織の構成員にして、ガンダムマイスターであったのだから。

 

「しかし現状、大尉はそれほどの腕を持ちながら前線ではなくここにおります。確かにそこには、副司令が絡んでいるでしょうが、やはり疑問が残るんです。」

 

「悪いが、これは機密に触れる事だ。それ以上は“need to know”、だぜ?」

 

今は、詳しいことは答えられないと、暗にそう返すロックオン。

 

「・・・・・」

 

「さて、いい時間だ。悪いな神宮寺。報告書をまとめなきゃならねぇから、先に失礼するぜ?」

 

「私も失礼するわ。ありがとうまりも、いつも一緒にご飯を食べてくれて。また一緒にお話ししたり、食事をしましょうね!」

 

「・・・わかりました。また、次の機会に」

 

3人は立ち上がると、食器の返却口へと行き、食器類をそこに置いていく。

 

「んじゃ、またな。」

 

「またね、まりも!」

 

「ええ、それでは。」

 

そうして3人はPXを出ると、ジーナはロックオンと共に、まりもは別の方へと歩き出した。

 

「・・・」

 

そうしてまた、時間は流れていく。

 

 

 

 

 

 

『俺は昔、アイルランドに住んでいたんだ。』

 

身の上話を一つ。

それは、ジーナと出会った頃の彼女がロックオンから聞いた話の記憶。

 

『俺には父親に母親、それに双子の弟と、小さい妹がいた。弟は早くに家を出ちまったが、故郷で家族四人と幸せに暮らしてたよ。』

 

彼の世界での、彼がまだ幸せだった頃の、故郷での幸せな日々。

母がいて、父がいて、妹がいて。

弟は早い時期に家をでてしまったけれど、それでも家族と過ごした時間は幸せなものだった。

 

『でも俺は、「ある事件」で全てを喪った。』

 

ある事件とは、ショッピングモールで起こった自爆テロだった。

 

いつの時代もテロリストというものは存在する。

 

実際、この世界においてもそれは同じで、世界各地では未だにテロ事件は絶えない。

人種差別、難民、貧困、領土問題。

金のため、名声のため、生きるため。

理由は様々だ。

 

国家間においての争いでも、自国の利益のために、そして敵対する国家を蹴落とすために「テロ」は使われる。

 

『俺は恨んだよ、「テロ」ってものを。』

 

だから力を磨いて、そのテロを、争いを生み出す元凶を叩き潰すために、ソレスタルビーイングにスカウトされ、「世界を壊し」て「世界を再生」するために戦い、その果てにロックオン・ストラトスは死んだ。

 

『俺は、ソレスタルビーイングに入ってから、幾度となく戦場へ向かい、その度に武力介入を行ってきた。死線をくぐり抜けたこともあるし、そのせいで死にかけたこともある。』

 

自分という人間を知ってもらうために、彼は包み隠さずに自分自身の事をジーナへと話す。

 

『そうして戦いを続けていく上で、結局俺が手にしたものは人殺しの技術と、結局のところは自分自身が憎むテロリストに自分もなっちまってるっていう現実だった。』

 

人殺しのための、血塗れた手。

しかしそれは、崇高な目的のためなんかじゃない。

テロという理不尽に復讐するために、世界を変革させるために、その手を血に染めた。

 

『だからな、ジーナ。お前の過去に何があったかは、俺はわからない。お前さんから教えてもらわない限りは、無理に聞いたりもしない。』

 

「悪いな。こんな話しちまって。」と言いながら、彼は立ち上がる。

 

『ロックオン・・・テロ、にくい?』

 

その問いに、彼はこう答えた。

 

「ああ、憎いさ」、と。

 

彼女は、彼の色を見た。

感情を見た。

思考を読んだ。

 

彼はBETAという存在以上に、人の「歪み」に位置するモノを憎んでいた。

だから聞いたのだ。

 

『ロックオン・・・なんのために、戦う・・・?』

 

ーーーーー戦う理由(ワケ)

 

祖国のため。

 

失った故郷を取り戻すため。

 

大切な人の仇を取るため。

 

自分は、何のために生きているのかわからない。

 

『俺は・・・正直、わからんね。ただ、力を持つ者には相応の責任が伴う。それに、「守れない」ってのは癪だろう?だから、まずは目に見える範囲のものを守るために戦う。』

 

「お前も、その一人だ」と。

ロックオンは、彼女の頭を優しく撫でてやりながら、そう答えた。

 

 

 

 

 

「どうした、ジーナ?俺の顔に何か付いてるか?」

 

記憶を反芻している間に、宿舎についていた。

ロックオンは、いつのまにか彼の顔を見ていたジーナの方へ向くと、そう問いかける。

 

「目と、口と、鼻がついているわ?」

 

笑顔でジーナはそう答えると駆け出す。

その日の夜空は澄んでいて、星が綺麗に見えていた。




新たな出会い、そして新たな仲間。
それは何を意味し、どのような変化をもたらすのか。
そして結成される新たな部隊。
彼らは、成すべきを為すために歩を進める。

次回「ウルズ結成」

進んだ先に何があるのか、それは誰にもわからない。

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