Muv-Luv Alternative✖️機動戦士ガンダムOO 地獄に降り立つ狙撃手   作:マインドシーカー

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オルタネイティブ前日譚編1話前編は、ご覧の作者の提供でお送りします。

OPは適当にEXCITEでも流しましょう。

ノーコンティニューでクリアとはいかない。
なぜかって?加筆修正するからさ。

追記)2019年9月26日0256 加筆修正。一部展開に修正と変更。


Alternative before story
story01-1「地獄に降り立つ狙撃手 前編」


ここから始まるのは、新しい世界の最初の一歩。

孤独な狙撃手は、地獄へと降り立つ。

 

 

 

 

―――――ここは?

 

意識が覚醒する。

最初に認識したのは、自分が愛機のコクピット内にいるという事。

次に認識したのは、自分がまだ”生きている”という事実だった。

 

「(俺は、生きているのか・・・?)」

 

自分はあの時、スローネツヴァイに乗るアリー・アル・サーシェスとの激闘の末に死んだ筈だ。

だが自分―――――ロックオン・ストラトスという男が存在するのは、おとぎ話で聞くような「死の世界」ではなく、慣れ親しんだ「生者の世界」。

 

「くっ・・・!」

 

身体を動かそうとすると、まるで軋んだような鈍い痛みが走る。

彼は身を起こすと、視線を正面のモニター部に合わせた。

視界に広がるのは、見慣れたコンソールやモニター。

 

「・・・」

 

やはりここは、デュナメスのコクピット内だ。

なら、「あれ」もあるはずだ。

そう考えながらコクピット内を見渡すと、やはりそこにいた。

 

黄色い球体型の高性能端末―――――ハロ。

幾多の戦場を共に戦った、相棒だ。

 

「何が、起こってやがるんだ・・・?」

 

彼はそう疑問を口にしながら、相棒の名を呼ぶ。

数舜して、黄色い球体型の高性能端末は動き出した。

 

『ハロ、オキタ!ハロ、オキタ!』

 

目のような部分を点滅させて、ハロは俺に答えてくる。

 

「お前がここにいるって事は、ここはやっぱりデュナメスのコクピット内か・・・」

 

慣れた手つきでコンソールパネルを叩く。

そうして機体を起動させ、メインカメラを作動させた。

暗転していたモニターが光を放ち、ツインカメラアイに映り込んだのは―――――海中。

座標は、丁度経済特区日本近辺の海域である日本海の位置を差している。

 

「ここは、日本海・・・?なんだって経済特区の近くなんかに・・・・・・」

 

コンソールパネルをいじりながら、他のシステムを立ち上げて機体を巡行モードへ移行する。独特の音を立てながら、GNドライブが作動した。

機体が徐々に上昇していき、機体の上半身が浮上した。

 

「何がどうなってやがるんだ・・・」

 

彼はそう言いながら、愛機をその場からひとまず移動させる。

その海域は、不気味なほど静かだった。

まるで―――――まるで、生き物が何もいないかのように。

 

 

 

 

 

 

そこは、文字通り地獄絵図だった。

市街地は蹂躙され破壊され、それを守ろうとした鋼鉄の巨人(戦術機)もまた残骸の仲間入りをする。

所々では黒煙が立ち上り、戦術機であったものの残骸と、廃墟と化した街が残される。

避難できずに逃げ遅れた人々は、異形の怪物の波に呑まれ、多くが命を落とした。

 

逃げ切れたのならそれでいい。

だが、なまじ無事だったために機体からベイルアウトした衛士は、それだけで哀れだ。

うまくいけば強化外骨格を装備しての逃走劇となるが、それが無理だった場合は機体に格納してあった自動小銃を担いで逃げ回るか、それがなければ小さな自動拳銃をもっていくしかない。

それすらも無くなれば、後は丸腰で逃げるしかないが、そんな簡単に逃げ切れれば苦労はしない。負傷して戦場に取り残された兵士や、逃げるしかできない民間人ならもっと哀れな末路が待っている。

彼らは、逃げることしか―――――或いは、逃げる事すら叶わぬのだから。

 

そんな絶望的な状況の中でも、逃げ惑うそれらを守るようにして、数体の巨人が異形の怪物の前に立ちはだかった。

それは、「戦術歩行戦闘機」と呼ばれる、この世界の人類を守るための「剣」。

肩に日の丸を描くそれは、日本帝国軍所属の77式戦術歩行戦闘機「撃震」と呼ばれる機体。

それらが、一斉にその手にもつ大型の銃―――――突撃砲を異形の怪物の大群に叩き込む。

放たれた弾丸は大群めがけて殺到し命中することで、敵の骸を積み上げていく。

しかし、奴らの―――――BETAの進軍は止まることはない。前進、前進、前進あるのみ。

ただ愚直にまっすぐ、圧倒的な物量をもって仲間の屍を容赦なく踏み潰しながら前進する。

 

―――――1998年7月初頭。

 

重慶ハイヴより進軍してきたBETAの集団が、北九州沿岸部に上陸。

この瞬間から、日本本土における熾烈な戦いが始まった。

第一波はうまく迎撃に成功した帝国軍だったが、第二波以降は多方面から同時に上陸された上に当初想定されていた以上の物量と展開を見せたBETA群に、帝国軍は浮き足立ち戦線は瞬く間に瓦解。九州・中国・四国地方は蹂躙され、BETAはその勢力図を一気に広げていく。

 

後に判明したことだが、死傷者・行方不明者の数は、3600万人に昇った。

 

そしてBETAは、上陸から僅か一週間で帝都・京都目前にまで侵攻。

以来一ヶ月に及ぶ熾烈な戦いが始まった。

 

そして1998年8月時点。

 

未だ京都は、戦火の渦中にあった。

 

 

 

 

 

 

~京都、防衛ラインの一角~

 

帝都・京都。

最強の布陣で待ち構え、幾重にも敷かれた防衛ライン。

だがそれは、全てを蹂躙し破壊していく災厄(BETA)の前には何の役にも立たなかった。

 

帝国最強を自負し、京都の守護を司る帝国斯衛軍。

 

帝国全体の守護をする本土防衛軍。

 

そして、帝国最強の艦隊である連合艦隊。

 

かつて列強の一つに数えられ、かの合衆国ですら恐れた屈強な軍隊。

 

これだけの戦力を揃え迎え撃ったのにも関わらず、一ヶ月に及び続けられた京都防衛戦における戦況は一向に好転せずにいた。

終わりの見えない消耗戦は、未だ続いている。

 

 

 

 

 

 

『う、うわあああああ!!』

 

誰かが、悲鳴をあげた。

このエリアを守る日本陸軍の戦術機甲部隊。

そのエリアの防衛に当てられた戦術機の衛士の殆どは、慢性的な成人不足による影響で大半はまだ若い少年少女たちだった。

 

このエリアの死守を命じられた戦術機部隊の一つ、グリーン中隊もまた同じであった。

彼らの部隊は元々16機の撃震で構成されていたが、今はその数を7機にまですり減らしていた。

 

『ひ・・・!も、もう突撃砲の残弾が残り僅かです!』

 

中隊の生き残りの一人である女性衛士が、涙混じりの悲鳴をあげる。

彼女はこの戦闘が初陣であった。既に「死の8分」を越えていたが、精神的にも限界を迎えていた。

 

『もう無理です!こんな状況で、倒しても倒しても湧いてくるって・・・!』

 

彼女の言う事は、今の状況を端的に表現するには適切過ぎる。

グリーン中隊残存機7に対して、目の前の化け物は推定で優に100を超える数が迫ってきている。

あくまで、視界に見える範囲の中だけの話だ。

他の部隊も同じように包囲され、全滅した部隊だっている。

故に、誰が見てもこの防衛線を死守しての相手の勢いを殺すための遅滞戦闘続行は、これ以上は無理だった。

 

『まだだ!諦めるな!』

 

『その通りだ。たとえ無理でも、やれる事をやるんだ!わかったなヒヨッコ!』

 

同じ中隊に所属する古参の衛士が、若い衛士達を叱咤激励する。

 

絶望的な状況下。

 

だが、そんな状況で自分たちが逃げ出すわけにはいかない。

自分たちの後ろには将軍が、皇帝が、なにより帝国の無辜の民が、まだ残っている。

しかしそこへ、耳を疑うような通信が入ってきた。

 

『こちら、前線司令部。このエリアにおける防衛ラインは、現時点をもって放棄する。残存部隊は指定エリアへ後退せよ。』

 

突然の防衛ラインの放棄命令。

ここを守る衛士全員に、その命令が下される。

誰しもが一瞬言葉を失った。

遅きに過ぎたのだ、後退命令が。

 

『―――――ふざけるな!こんな状況で敵に背を向けて後退しろだと!?』

 

『グリーン01より前線司令部。支援砲撃は期待できるのか?このままじゃ全滅必至だぞ。』

 

『それはできない。そちらは現戦力で対処されたし。武運を祈る。』

 

そこで、通信が切れる。

グリーン01は、拳をコンソールに叩きつけて唇を噛み締めた。

目の前はBETAの大群が押し寄せ、弾薬は心許ない。

 

『くそったれが・・・!』

 

これだけ減らしてもモニター越しに見えるのは、こちらへ接近してくる要撃級、突撃級、戦車級の大群。

それらはまだ前座で、70と数は少ないが、厄介な事に戦車級が30だ。

その背後には、少なくとも光線級40に重光線級5が控えている。

現状で交戦級吶喊(レーザーヤークト)などできるはずがない。

 

『全員聞いたな?現時点をもって現防衛ラインを放棄。他の部隊も聞いたな?すぐに指定地点へ後退するぞ。』

 

グリーン中隊の隊長機が、残存部隊全機に軍用回線で指示を出す。

 

『全機、我に続け。敵群左翼を突破する!』

 

その時だった。

 

突然、電子機器にノイズが走り始めたのは。

 

 

 

 

 

 

―――――グリーン中隊のいる戦闘エリアでの後退命令が出る少し前。

 

少し離れた廃墟に、「それ」はいた。

 

「こいつはひでぇな・・・」

 

ツインアイを輝かせて、暗闇に身を潜めているのは濃緑の機体―――――ガンダムデュナメス。

機体が捉えた視界がモニターに映り、そこには一面に廃墟が広がっていた。

 

崩れた建物。

 

なにかもわからないような赤いもの。

 

ところどころに散らばる何かの残骸。

 

壁には血痕がこびりついているのも確認できる。

 

そして、センサーで捉えて確認できた熱源反応は、黒煙をあげているMSに似た人型の兵器だ。

 

そのどれもが、まだ真新しいものばかりであった。

古い物でも、数日しか経っていないのがわかる。

 

『熱源反応検知!熱源反応検知!』

 

「だろうな。ハロ、場所は?」

 

俺がそう聞くと、場所はすぐ近くの場所だという事がわかった。

機体を高台へと移動させ、匍匐姿勢を取るとGNスナイパーライフルを構え、カメラを最大望遠で向け、状況を確認する。

見えたのは、何かに追い詰められつつある何機もの見たことないMSが見えた。

先ほど見た残骸に似たものがいくつかあったが、どれも自分の記憶にはないタイプだ。

似ているものがあるとすれば、人類革新連盟の運用する陸先仕様の主力MS「ティエレン」か、或いはその系譜にある「アンフ」といったところだろうか。

 

「何かと戦っているのか・・・?」

 

ペダルを踏みもうとして、俺は一瞬だけ逡巡した。

わけもわからない状況で、自分は今、戦闘行為を傍観している。

 

だが、ここで果たして自分は、武力介入を独断で行ってもいいのだろうか?

 

「聞こえるかミス・スメラギ」

 

コンソールパネルを叩いて、プトレマイオスにいるはずのスメラギ・梨・ノリエガに通信を入れる。

しかし、モニターに表示されるのは「OFFLINE」の文字。

 

「(どういうことだ?)」

 

再びパネルを操作し、ハロへと指示を出して通信を試みる。

 

「リンクが死んでいる・・・?くそ!おい刹那!アレルヤ!ティエリア!誰でもいい!返事をしてくれ!」

 

更に、スメラギ以外の他のメンバーへのコンタクトを図るが、結果は同じだった。

モニターに表示されるのは同じ「OFFLINE」の文字。

 

「どうなってやがる・・・!」

 

全くの孤立無援だった。

状況がまるでわからない。それにここが地球だとしたら、あまりにも変わり果てすぎている。

兵器のレベルが明らかに自分たちがいた世界のものではなく、過去の―――――例えば、21世紀に運用されていたものと大して変わらないし、追い詰められている部隊が戦っているのはSF映画にでてくるような「怪物」だった。

確認できた人型機動兵器は、どれもお世辞が言えるほど、そして見た目からしても「高性能」と呼べるほどの代物ではないように見える。

まるで、中世ヨーロッパの重装歩兵のように、どれもが鈍重なイメージのものばかりだ。

推測するに、自分は過去に遡ったのか?

 

もしくは、自分のいた世界とは別の異空間にきてしまったのか?

 

「どうすればいい、俺は・・・!」

 

『ロックオン!ロックオン!』

 

自分は、死んだ筈の人間だ。

それが生きているという事だけでも立派におかしい事だ。

 

「だったら、なにが起きてもおかしくねぇか・・・。なら、この行動は、俺個人の意思でやらせてもらうぜ?」

 

誰に言うでもなく、彼は独り言を言うだけだ。

 

『ドウスル?ドウスル?』

 

「決まってるだろう?いくぜ、ハロ。」

 

ロックオンはそう言うと、機体を匍匐状態から立ち上がらせ、ゆっくりと機体を浮き上がらせる。

ゆっくりと高度を上げながら、GNスナイパーライフルの射撃姿勢に入った。

 

「”化け物”共を「紛争幇助対象」と断定。武力介入を開始する。」

 

ライフル型コントローラーを構え、異形の怪物を捉える。

 

「―――――ロックオン・ストラトス、目標を狙い撃つ!」

 

そして、トリガーを引いた。

 

一発。

 

二発。

 

三発。

 

四発。

 

放たれた四つの光弾が、戦術機部隊を追っていた戦闘の突撃級強力な甲殻を突き破り、一瞬で4体の息の根を止めた。

 

 

 

 

 

 

―――――その光景を見た私は、何を思ったのだろうか?

 

圧倒的な力。

それをもって、人類の宿敵を倒していく様は、まさに「神」そのもの。

濃緑の狙撃手が見せた後ろ姿は、どこか儚く悲しげなものだった。

 

 

 

 

 

『グリーン06!避けろおぉ!!』

 

通信機越しに、グリーン06のコールサインを与えられた新米衛士の耳に届く、グリーン01からの警告。

眼前に、突撃級の鋭い衝角が迫っていた。

 

『ひっ・・・!』

 

咄嗟に目を瞑る。

だが、衝撃は訪れない。

 

『え・・・?』

 

ゆっくりと目を開けると、機体は未だ退避行動中であり、自分を轢き殺そうとしていた突撃級が来ない。

後ろを向くと、自分へと迫っていた突撃級が何かに射抜かれ、絶命する瞬間が網膜投影越しに見えた。

 

 

―――――あれは何だ?

 

『なんだ・・・?』

 

『航空支援・・・!?』

 

『援軍か・・・?』

 

仲間たちが、口々に突然の「何か」の来訪に対する疑問を口にする。

 

『あれ、は―――――』

 

彼女が上を向く。

そこにいたのは、新型機である不知火に似たフォルムの空に浮かぶ謎の機体だった。

 

直後、ノイズ混じりになっていた仲間の声がやがて聞こえなくなり、通信が途絶した。

 

 

 

 

 

 

デュナメスが空を翔ける。

デュナメスは、大きな前腕をもつ化け物へとGNスナイパーライフルの照準を合わせた。

そして、再びトリガーを引く。

放たれた粒子ビームは、正確にその怪物を射抜いた。

小刻みに震えながら態勢を崩し、その怪物は沈黙する。

 

「ハロ、GN粒子の散布中止!全ての出力を、火器管制にまわせ!」

 

『了解!了解!』

 

 

GN粒子の特性の一つに、ジャミング機能がある。

かつての砂漠地帯での戦闘では、この機能を逆手にとられてひどい目を見たが、ロックオンが見るからに自分が知るMSよりも旧式であろう機動兵器がそれに対応できるような通信設備を持っているとも思えず、あえて粒子の放出量を絞ることでジャミング機能をオフにする。

完全にとはいかないが、これで一度途絶した通信は復活するはずだ。

 

「これは俺の責任だな・・・尻ぬぐいはさせてもらうぜ!」

 

左手にGNスナイパーライフルを持ち替えると、デュナメスの右手にビームサーベルを持たせる。

スラスターを噴射させ、そのままの勢いで機体を地面へと着地させる。

混乱に陥ったであろう部隊のフォローを目的に、突進してきたBETA群と部隊の間に割り込んだ。

直後に二体の要撃級がデュナメス目掛けて突進してくる。

前腕を振り上げ、新たな「脅威」を全力をもって粉砕しようとした瞬間―――――

 

「見た目通りだな。芸がねえぜ?」

 

桃色の光刃によって、二体の剛腕が切り裂かれた。

 

「これじゃあ、害獣を駆るハンターって気分だな・・・!」

 

彼はそう吐き捨てると、正面にいる腕を切り裂いた二体の要撃級を左手のGNスナイパーライフルで射抜く。

風穴をあけられ、崩れ落ちて沈黙する要撃級。

 

『そこの機体!』

 

不意に、オープン回線で話しかけられた。

聞こえてきたのは男の声だ。

 

『こちらは帝国陸軍所属のグリーン戦術機中隊、グリーン01だ。突然の救援には感謝する!だが、その前に貴官の所属と管制名を教えていただきたい』

 

ロックオンは、その声の主があのMSもどき(戦術機)のパイロットだということにようやく気づいた。

 

『こちらとしては撤退支援は願ったり叶ったりではあるが、我々は貴官の乗る機体を見たことがない。国連か?それともこれは米国からの置き土産か?』

 

「(米国・・・?ユニオンのことか・・・?)」

 

ロックオンがどう返答するか考えていると「答えられない理由があるのか?」と助け船を相手が出してくれた。

 

「悪いが、諸事情でね。Need to knowってやつだよ。意味は分かるよな?」

 

ロックオンは、そう返す。

 

「そんなことより、今はそんな状況じゃないだろう?」

 

彼がそう言うと、MSもどき(戦術機)のパイロットは一拍おいてから返事を返してくる。

 

『・・・・・・了解した。深くは聞かないことにしよう。こんな状況だから、な?礼は言わせてくれ。部下を助けてくれてありがとう。』

 

「やけに聞き分けがいいなあんた。」

 

『こんな戦場だ、何が起こってもおかしくないって事さ。それに、君は詳しく詮索されたくないのだろう?』

 

「ああ。」

 

俺はそう答えながら、デュナメスを後方へと下げた。

突出していたデュナメスが、MSもどき―――――撃震の横に着地する。

GNスナイパーライフルを肩へと懸架すると、ふくらはぎに装着されたコンテナからGNビームピストルを取り出した。

放たれる光弾が、迫る戦車級の脚を吹き飛ばして転倒させることで、進行速度を鈍らせる。

 

『光線兵器・・・!?そんなものが実用化されてるなんて聞いていない。』

 

「悪いな、そいつは企業秘密だ。」

 

デュナメスの武装であるGN粒子を用いたいわゆる「粒子光線兵器」。

このMSもどきを見れば分かるように、デュナメスが装備しているようなビーム兵器なんかは実用化されてるわけがなかった。

 

『・・・了解した。さっきも言ったが、これ以上の詮索は無しにしよう。』

 

「感謝するぜ」

 

俺は、そう言うと同時に愛機を空へ飛び上がらせた。

瞬間、通信機からノイズ混じりの男の怒声が聞こえてくる。

 

『馬鹿野郎!こんな状況で空に上がったら―――――』

 

「あん・・・?」

 

『ロックオン!ロックオン!』

 

突然、レーザー兵器による照射攻撃への警告音が鳴り響き、ハロが危険を知らせてきた。

 

「何!?」

 

突如として、デュナメスに無数の光線が襲いかかる。

 

「あれは・・・。ビーム・・・いや、レーザー兵器!?」

 

自分へ向けて放たれたのは、明らかにそれの類のものだった。

 

―――――ビームではない・・・まさか、レーザー兵器だと!?

 

『信じられねえ・・・!』

 

撃震の衛士の一人が、今の無数のレーザー照射による対空射撃よりも、それをすんでの所で回避したロックオンとデュナメスを見て驚いている。

 

『サラニ、エネルギー反応アリ!サラニ、エネルギー反応アリ!』

 

「あのデカ目野郎か……!」

 

カメラアイ越しに見える、地上を縦横無尽に進行する赤アリもどきの大群。

その大群の後ろに、醜悪な外見の大きな目を持った怪物が何体もいた。

 

『降りろ!奴らは、空にいるモノ全てを消し去る!』

 

グリーン01が、焦った声でロックオンへ警告する。

 

「おいあんた。」

 

彼は、MSもどきのグリーン01に通信を繋げて聞く。

 

『なんだ・・・?』

 

「あのデカ目のレーザーは、連射が利くか?」

 

『レーザー?光線級のレーザーのことか・・・?』

 

あれだけの熱量だ。

それを用いるのが機械ではなく生物兵器であれば尚更の問題。

 

「早く答えろ!」

 

俺が催促すると、男はすぐに返事を返してきた。

 

『あ、ああ…!お前に見えるかどうかは分からないが、光線級は小型種と大型種がいて、でかい方が重光線級だ。それぞれのレーザー照射の照射間隔(インターバル)は、光線級が12秒、重光線級が36秒。これで全てだ!』

 

やはり欠点はあった。

一度目のレーザー照射のあとの充填時間(タイムロス)

 

「OK。それなら、俺が光線(レーザー)級を掃討して退路を開いてやる。あんたらその間に逃げろ」

 

撤退命令がでているのは彼はハロを通じて知っている。

彼自身の提案と言うか、半ば命令のような口調に、男は異を唱えてきた。

 

『だが、たった一機では危険だ!』

 

そう。

彼らから見ればそれは、「自殺行為」と同じなのだ。

だがそれは、男や男の仲間が乗るMSにおいてのこと。

だが彼が乗っているのは、「ガンダム」だ。

 

「こいつなら、あんたらの撤退の時間稼ぎくらい楽勝だ。さあ行け!」

 

『く・・・!すまん・・・・・!』

 

MSもどきが方向転換するのを見届けると、俺は戦場へと視線を戻した。

 

『高熱源体接近!』

 

「またか!」

 

無数のレーザーが、再びデュナメスを襲う。

ロックオンは巧みに操縦桿を動かし、その攻撃を紙一重で回避していた。

 

「当たるかよ・・・!ハロ、マーキングだ!照射のインターバルでデカ目野郎を掃討する!」

 

『了解!了解!』

 

「その程度でおれとデュナメスを止められると思うなよ・・・!トランザム!!」

 

ー【TRANS-AM】ー

 

赤色に発光したデュナメスが、

戦車級と要撃級、突撃級の大群を蹴散らして、光線級の大群に突進する。

 

「俺は早撃ちも得意なんだな、これが!」

 

GNビームピストルを抜き、マルチロックした光線級数体を瞬時に射抜いた。

光弾に弾痕を穿かれた光線級が、次々に倒れていく。

 

「うおおおお!」

 

さらに数体を射抜き、地面へ右足を擦りながら急制動をかけ、着地。

一瞬でGNビームピストルをマウントすると、GNスナイパーライフルを肩から抜いて構えた。。

 

「・・・!!」

 

残像を残し、ライフルの銃身が横薙ぎに振られた。

GNスナイパーライフルから放たれた矢が、五体の重光線級を瞬殺する。

崩れ去る五体の重光線級。

インターバルを終えた光線級数体が、デュナメスへ向けて猛烈なレーザー照射を放ってきた。

しかしそれは、デュナメスの全面に展開された粒子の壁に阻まれる。

 

GNフィールド。

 

物理的な攻撃でなければ、ほとんどの攻撃を阻む堅牢な盾。

 

「その程度かよ・・・・・!」

 

高速で迫るデュナメスに、光線級達は本能的な「恐怖」を抱いた。

普段なら、なにも考えない筈の彼らが「恐怖」を抱いた理由は誰にもわからない。

「恐怖」にかられた光線級が、インターバルを終えて再びレーザーを一斉照射する。

 

しかしそれは―――――当たることはなかった。

GN粒子の残照を残して、射線上にデュナメスはいない。

 

「甘いんだよ。」

 

『■■■■■■■■■!!?』

 

光線級の眼前に、デュナメスがいた。

咄嗟に飛びのこうとするが遅い。

 

「所詮は―――――見た目通りの怪物か。」

 

ロックオンが吐き捨てる様に言う。

次の瞬間、光線級は光の矢に貫かれた―――――。

 

 

 

 

 




地獄に降り立つは濃緑の狙撃手。
瞳に映る景色の中にある瓦礫は、否が応にも絶望という現実を突き付けてくる。
戦火の渦中に出会うのは未来の戦士たち。
救ったその命がその先に何の意味を持つのかは、彼にはわからない。

次回、「地獄に降り立つ狙撃手 中編」。

絶望に抗え、瑞鶴!

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