ウソップっぽいポジションに転生したはずなのに、なんで私は女の子なんだろう   作:ルピーの指輪

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いつも誤字報告や感想をありがとうございます!毎日の執筆のモチベーションとなっており感謝しかありません!
今回でアーロンパーク編は終了です。
それではよろしくお願いします!


麦わらの一味VS魚人海賊団

「おっ、女だったのか。てめェ……、マジかよ……」

 

「うっ、嘘よ……。だって、私は……。でも……、それでも……」

 

 Mr.9とミス・ウェンズデーはよほど衝撃的だったのか、まだ驚いた顔をしている。

 ミス・ウェンズデーにいたっては俯いて虚ろな目をして何やらブツブツ言っている。

 

 人の性別でそんなにショックを受けないでいただきたい。

 

「おい、あの魚人野郎の攻撃……、結構ヤバそうだな。どう戦うつもりだ? レディ・ライア」

 

「その、妙に女を強調したあだ名……。私に気を使ってるのか、それとも煽ってるのかどっちだい?」

 

 Mr.9に変なあだ名を付けられて私は思わず反応してしまう。

 

「すまねェ。こうでもしなきゃ忘れちまいそうでよォ……」

 

「泣いていいかい? まぁいいや。君の場合はあの水鉄砲を金属バットで受ければ何とか防げるんじゃないかな?」

 

 私はMr.9に戦い方のアドバイスをした。

 この人もミス・ウェンズデーも一応バロックワークスの中では一応コードネームが貰えるくらいの強さだ。

 ゾロやルフィにはまったく及ばないけど、それなりの実力はある。

 

「ほう、なるほど。じゃあ、ここはおれに任せな! 熱血ナイン根性バットッ!」

 

 無駄にアクロバティックな動きで翻弄しながら金属バットで殴りつけるというシンプルな技でチュウに向かっていく。

 

「水大砲ッ!」

 

 チュウはいつの間にか大量の水を体に蓄えており、巨大な水の砲弾を吐き出した。

 

 幸運なことにアクロバティックな動きで空中に高くジャンプしたMr.9はギリギリで水大砲を躱して着地。水大砲は壁に巨大な穴を空けた。

 そして、Mr.9は何を思ったか、チュウに攻撃をすることを忘れて私の方に駆け寄ってきた。

 

「バッキャロー! あんなもん、バットで受けられるわけねェだろうが! おれを殺す気かっ!」

 

 思いもよらないチュウの攻撃の威力に彼は苦情が言いたかったみたいだ。

 

「確かに安易なことを言ったのは悪かったよ。でも、もうちょっとくらい頑張ってもいいじゃないか」

 

 私は運良くチュウの攻撃を躱して、彼に肉薄した彼に対して苦言を呈した。

 

「雑魚共が! このまま蜂の巣にしてやるッ! 百発水鉄砲ッ!」

 

 チュウは私たちに向かってマシンガンのように水鉄砲を放ってきた。

 

「――うわっ! あいつ、見境なしだッ!」

 

 慌ててMr.9は柱の陰にダイブする。

 

「ボサッとするな! ほら、こっちに逃げてッ!」

 

「あっ……!」

 

 まだ、虚ろな目でブツブツ言ってるミス・ウェンズデーを抱きかかえて、建物の陰に避難させる。

 

「くらえっ!」

 

 私は立て続けに2発銃弾を放った。

 しかし、やはりいつものように手に力が入らず、僅かにブレてしまう。

 正確に当てるのはかなり近付かないと無理かもしれないな……。

 

「何とかヤツに接近しないと……」

 

 私がそう呟いたとき、腕の中にいたミス・ウェンズデーが小さく声を出した。

 

「わた、私がスキを作ってやるわ……。ライアさん……、じゃなかった、お前はその間にヤツに近付いて攻撃するのよ!」

 

 彼女は私に接近させる為のスキを作ってくれると言った。

 どんな手を使って? そんなことを思いつつも、彼女を信じるほかに手段はない。

 

「じゃあ、任せたよ。ミス・ウェンズデー!」

 

「ええ! 任せるといいわ!」

 

 チュウの攻撃が止んだ瞬間に彼女は飛び出して、彼の前に立った。

 

 そして――。

 

「魅惑のメマーイダンスッ!」

 

 ぐるぐるとした模様の服を着ているミス・ウェンズデーがくるくるとした踊りをチュウに見せる。

 あー、あったな。こんな技……。これって効くのかな?

 

「うっ――!」

 

 チュウは苦悶の表情を浮かべて顔を手で押さえて、膝をぐらつかせた。

 がっつり効いた。よしっ、このチャンスを逃してなるものか!

 

 私は腹の出血も忘れてチュウに向かって走り出した。

 

「鉛の弾丸だと外したときが痛い……、ならば、緋色の弾丸(フレイムスマッシュ)いや、――必殺ッ! 火炎星ッッッ!」

 

 必殺の気迫で私はチュウに向かって弾丸を撃ち出す――。

 

 それは彼の左肩に当たって――彼の上半身を燃やした。

 

「――ヌワァァァァァァッ」

 

 彼はたまらず水の中に飛び込もうとする。

 

「おっと、逃さねェぞ! 魚野郎! よくもおれらを雑魚呼ばわりしてくれたな! カッ飛ばせ仕込みバットッ!」

 

 Mr.9はワイヤーが仕込まれたバットの先端を射出して、チュウの足に絡ませて転倒させ、彼の動きを止めた。

 

「悪いね。倒れた敵を撃つのは気が引けるんだけどさ……。生憎、今日の私にはそんな余裕はなくてね……。――必殺ッ! 鉛星ッッッ!」

 

 私は両手で銃を持って至近距離からチュウの腹を目掛けて弾丸を放つ。

 彼は炎熱と銃撃によるダメージに耐えられずに白目をむいてようやく意識を失った。

 

 あー、のっけから大ダメージを受けたときはどうなることかと思ったよ。

 やはり、この世界は耐久力が物を言う……。

 

 私は自分の不利をしみじみと実感した――。

 

「見たか! レディ・ライア! おれとミス・ウェンズデーのナイスアシスト!」 

 

 Mr.9は渾身のドヤ顔でサムズアップのポーズを決める。

 今回は彼らの助けがなかったら危なかったな……。というか、ミス・ウェンズデーはともかく、この人も憎めないキャラだよね……。

 

「ああ、ありがとう。助かったよ。Mr.9……、それにミス・ウェンズデーも、見事なダンスだった」

 

「えっ? そっそうね……。うん……」

 

 私がMr.9とミス・ウェンズデーにお礼を言う。

 ミス・ウェンズデーは何やら複雑そうな顔をして目を背けた。何か、あったのだろうか?

 

 

 こうして、私たちは魚人海賊団幹部のチュウを倒すことが出来た。

 

 同じ頃、仲間たちの決着もつこうとしていた……。

 

 

「龍――巻きッッッ!」

 

 ゾロは六刀流の使い手であるハチを撃破。私よりも重傷なのにこの強さ……、まったくもって理不尽である。

 

羊肉(ムートン)ショットッ!」

 

 サンジは魚人空手の使い手であるクロオビに連撃を加えて見事に勝利をおさめていた。

 サンジも強いなぁ。危なげなく勝ってる……。

 

 

 

 残すはルフィとアーロンの戦いとなった――。

 

 私が彼を見守ろうとしたとき……。この場所に三人の気配が近づいた。

 

 

「信じられない……、本当に魚人海賊団が……」

 

「ほとんど全滅してるねぇ。驚いたわ……」

 

「なっ、なんてことだ。これをさっきの奴らが起こしたとでも言うのか……。どうなってしまうんだ? これから……」

 

 ナミとノジコ……、そしてゲンゾウがアーロンパークに様子を見に来たようだ……。

 

「もうすぐ終わると思うよ……。ルフィが決めてくれるさ……」

 

 私はゲンゾウの疑問に答えるように声をかけた。

 

「ライアと言ったな。あの男がアーロンに勝つ。そう確信しているみたいだが、根拠はあるのかね?」

 

 ゲンゾウは私の言葉に対して質問した。

 

 彼がアーロンに勝つ根拠か……。そんなの決まっている。

 

「彼は海賊王になる男だから……。こんなところで立ち止まる道理がない……、と言ったところかな?」

 

 私は彼の質問にそう答えた。モンキー・D・ルフィという男の器はここで消えるほど小さくないんだ……。

 

 徐々にアーロンはルフィに追い詰められて、本気を出すどころかキレて我を忘れて彼を攻撃していった。

 ルフィは傷だらけになりながらも、ゴム人間の特性を活かした技を次々と繰り出して、ことごとくアーロンの上をいく。

 

 そして、激闘はついに終焉のときを迎えた――。

 

「ゴムゴムのォォォォォ――!! 戦斧(オノ)!! だァァァァァァァ!!」

 

 アーロンパークの最上階から天高く伸びたルフィの足がアーロンに対して振り落とされる。

 

「ああああああああッッ!」

 

 それはアーロンを踏み潰しながら、地面まで建物ごと落とされて――。

 

 ついには建物はガラガラと崩れ落ちていった。

 

 立っていたのは……勝者(ルフィ)だ――。

 

 

 彼はナミが見ていることを確認すると、大声で叫んだ。

 

「ナミ! お前はおれの仲間だ!!」

 

「うん!」

 

 ナミは涙を流してルフィの問いかけを肯定した。

 いや、これでめでたしめでたし……。と、思っていたんだけど……。

 

「おいっ! アーロンの首をホントに持って行って良いんだな!?」

 

「約束したんだからね! 守りなさいよ、絶対!」

 

 Mr.9とミス・ウェンズデーがアーロンの首についての確認をしに来た。

 

「ちょっと、ライア。誰よ、このいかにも怪しい二人組は……!」

 

 ナミは突然現れた珍妙な格好をした二人を見て訝しげな顔をした。

 

「ああ、この怪しい二人は一応アーロン一味を倒すのを手伝ってくれたんだ。一応ね……。で、海賊の私たちがアーロンを倒しても懸賞金は貰えないだろ? だから、それは好きにしたらいいって……」

 

 私は彼らのことを掻い摘んで紹介した。まぁ、アーロンの懸賞金に関しては問題なく――。

 

「ダメよ。バカねぇ、取り引きの仕方も知らないの? こっちの取り分もちゃあんと主張しなきゃ。――じゃあ、私たちの取り分が8で、あなたたちは2で!」

 

 ナミは頭の中でそろばんを弾いて、笑顔でそんなことを主張した。

 

「暴利だァァァァ! おい、聞いたか? ミス・ウェンズデー……。とんでもなく、がめつい女が居たもんだな」

 

「そっそうね。ライアさんとの関係はどうなのかしら……、じゃなかった! おっ横暴よ! せめて半分は寄越しなさい!」

 

 ナミと彼らはさっそく言い争いを始めた。

 

 おや? なんだ、この気配? ってあれは海軍じゃないか!?

 

 私が気配を感じてその方向を見るとアーロンパークに海軍の人たちが入ってきた。

 

 

「驚いたな。ゴザからの通報があって駆けつけてみれば……。噂のアーロンパークが落ちているではないか……。これはどういうことだ?」

 

 紫色の蟹みたいな髪型をしている、階級の高そうな男が驚いた表情をしていた。

 ええーっと、この人誰だっけ?

 

「ん? 三本の刀の男に、銀髪に緋色の銃を持った男……、じゃなかった女が居るな。“海賊狩り”と“魔物狩り”か……。君は確か“魔物狩り”のアイラだったな賞金稼ぎの……。私は海軍77支部の准将プリンプリンだ」

 

 プリンプリンと名乗る紫色の髪の男。はて、こんな人居たっけ? まぁいいか。彼らは私たちのことを賞金稼ぎだと思ってるみたいだし……。

 

「ライアは賞金稼ぎじゃない! 海賊だっ!」

 

 血まみれのルフィがプリンプリンの言葉に反論する。

 

「ん? 海賊? 君たち海賊なのかね?」

 

「ノコギリのアーロンを確保しました! 他の海賊たちも拘束します」

 

 そんな押し問答をしている内に、テキパキと海軍の人たちは倒れているアーロンパークの海賊たちを捕まえて船へと運んでいるみたいだ。

 

「海賊と聞いては私たちは正義に懸けて見過ごすことは出来ないのだが……」

 

「おれは海賊王になる男だっ!」

 

 プリンプリンの問いかけに対してルフィは高らかに海賊であると宣言をした。

 

「ふむ、では彼らも拘束しろ! 海賊は正義の名のもとに滅ぼすべきだ! 精鋭77支部の実力を見せてやれ!」

 

 海軍77支部の海兵たちが我々に戦闘を仕掛けてきた――。

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 

「まったく、バカ正直に海賊だって言うから、無駄なことをしてしまったじゃないか」

 

 私はルフィに苦言を呈した。

 

「まぁ、気にすんなよ。ライアー。おれたちは海賊なんだからさー。あっはっはっ」

 

 海軍77支部の皆さんにはちょっとだけ不幸な目にあってもらって、アーロンをお持ち帰りしてもらった。

 

 プリンプリンはルフィに殴られて、絶対に許さないから覚えてろとか言っていた。

 まぁ、アーロンの後処理やってくれそうだし、まともそうな人だし、この周辺の人にとっては良かったのかな。

 

 

 その後、アーロンが居なくなった報せをゲンゾウから聞いた村の人たちから熱烈に歓迎されたり、ゾロがようやくちゃんとした医者から治療を受けられたり、ナミが肩の入れ墨のデザインを変えたりいろいろあった。

 

「おい! 貴様! 本当にナミに手を出しとらんのだろうな!」

 

 酒を飲んだゲンゾウから5回目のこの言いがかりである。

 

「あのね、ゲンゾウさん。何回も言いたくはないんだけど。私は女だから手の出しようがないんだけど」

 

 私は彼に対してそう反論した。

 

「むぅ、信じられん……」

 

 ゲンゾウはめちゃめちゃ私に疑いの視線を送っていた。

 

「あのさ、ノジコからも言ってくれないか? 私とナミは安全だって……」

 

 私はノジコの肩を抱いて彼女に耳打ちした。彼女なら彼から信頼されているし上手く言ってくれると思ったからだ。

 

「――あっ……。えっと、あたしが? いや、そのう……」  

 

 ノジコは顔を赤くしてどうも歯切れが悪い感じになっていた。

 

「きっ、貴様! ノジコにまで手を出しおったか! そこに直れ! あの剣士から先ほど返してもらったこの刀で叩き斬ってくれる!」

 

 血管が切れそうなくらいの剣幕で、ゲンゾウは本当に二本の刀の切っ先を私に向けた。

 

「ナミと海に出ることは断じて許さァァァァん!!」

 

 私は出航までゲンゾウから身を隠すこととなった。

 これって、私が悪いのかな?

 

 

 

 

 

「じゃあね! みんな! 行ってくる!」 

 

 そして翌朝、ナミはココヤシ村を出ていった。満面の笑みを村の人たちに向けて――。

 

 彼女の笑顔は今日の空のように晴れやかで美しかった――。それをそのまま伝えたら、彼女に頭を叩かれたけど……。

 

 

「どうした、故郷から離れてセンチメンタルなのか?どう思う?ミス・ウェンズデー」

 

「きっとそうよ。感動的な別れで私も貰い泣きしちゃったわ。Mr.9」

 

「そっ、そんなことないわよ。私はただ――」

 

 ナミはMr.9とミス・ウェンズデーに話しかけられて反論しようとしたが、ちょっと間を空けて首を傾げた。

 

「――って、どうしてこいつらが船に乗ってるのよ! ルフィ!」

 

 ナミはようやく彼らがこの船に当然のように乗っていることに気が付いてルフィに抗議した。

 

「船無くしちまったって言ってたから、面白ェ奴らだし乗せてやった! 王様だぞ! 王様!」

 

「聞いた私が悪かったわ……」

 

 シンプルな答えにナミは頭を抱えていた。

 

 彼らの乗ってた船は魚人に見つかっており、アーロンパーク近くに運ばれていた。

 そして、海軍が去り際に放った砲弾が不運にもその船に直撃してしまって沈んでしまったのだ。

 

 困った彼らは船長であるルフィに偉大なる航路(グランドライン)まで乗せてくれと懇願。彼はそれを快諾したという流れである。

 

 

「そんなことより、面白いものを見つけたよ。ルフィ、君はお尋ね者になったぞ」

 

 私は新聞の中に入っていた手配書をルフィに見せた。

 

 モンキー・D・ルフィ――懸賞金3000万ベリー。

 あれ? なんで、私の横顔まで見切れてるんだ?

 

 ゴーイングメリー号は偉大なる航路(グランドライン)に入るための下準備をするために、始まりの町(ローグタウン)を目指していた――。

 

 




アーロンパーク編が終わり、次からローグタウン編ですね。
ようやくグランドラインが見えてきました。
次回もよろしくお願いします!

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