ウソップっぽいポジションに転生したはずなのに、なんで私は女の子なんだろう 作:ルピーの指輪
やる気を漲らせて投稿できていますので、とても感謝しております。
それでは、よろしくお願いします!
「その反応、モンブラン・ノーランドを知っているみたいだね」
私はノーランドの名を聞いてわかりやすく動揺したワイパーにそう声をかけた。
「――当たり前だ! ノーランドは大戦士カルガラの親友であり恩人! なぜ、お前がその名を!?」
ワイパーは落としたタバコを踏みつぶしながら、大声で私に質問をした。
「どうだい? ロビン。これで随分とはっきりしたように思えるけど」
「そうね。モンブラン・クリケットがいくら海底を探しても黄金郷が見つからなかったのも頷けるわ」
私がワイパーの反応がさっきロビンに話した仮説の裏付けにならないかと尋ねると、彼女は顎に人差し指を当てながら、私に同調する。
「ちょっと、どういうこと? どうしてそこで黄金郷が出てくるのよ」
ナミは黄金郷という言葉に大きく反応して私たちに疑問を呈した。
「うん。今から説明しよう。ワイパー、君の疑問にも答えるから少しばかりおしゃべりに付き合ってもらうよ」
私はこの島とジャヤの関係性、そしてノーランドの話の真相を話すことにした。
「ちっ! 勝手にしろ!」
「まさか、
ワイパーはその場に胡座をかいて座り込み、その様子を見たアイサは驚愕した表情で彼を見ていた。
「結論から言うと聖域、“アッパーヤード”こそモンブラン・ノーランドが探し求めた黄金郷がある場所だったんだ」
私はまず結論から話す。黄金郷の存在という事を口にすれば、さすがのルフィも長い話を聞いてくれると思ったからだ。
「黄金郷って、ひし形のおっさんが探していたヤツか!?」
「そうだよ。どういうめぐり合わせか、私たちを空に導いてくれた、モンブラン・ノーランドの子孫、モンブラン・クリケットの悲願はここにあったということさ」
私はさり気なくノーランドと私たちの縁をワイパーたちにも聞こえるように話した。
「わかんねェ。何を根拠にそんなことを言ってやがる」
「根拠なら、2つ。1つは狙撃手さんがアッパーヤードで聞いたというサウスバードの鳴き声。これはアッパーヤードが昔ジャヤと同じ島だったことの裏付けにはなる。植物のサイズが大きいのは気になったけど、この空島の環境が動植物を異常に育む環境だとしたらあり得るわ」
ゾロの疑問に今度はロビンが話を始める。彼女はこういう話が楽しいらしく、いつになく饒舌になっていた。
「つまり、こういうことさ。400年前にジャヤの約半分が
ロビンに続けて私はジャヤの半分が空に飛んで行ったという荒唐無稽な真実を語る。
「もう一つの根拠はこれよ。航海士さん、スカイピアの地図を出してくれる?」
「えっ? スカイピアの地図ってこれのことよね?」
そして、ロビンはジャヤの地図を取り出して、ナミにスカイピアの地図を出すように話した。
「これをこうやって合わせると――」
「おおっ! 髑髏のマークみたいになった!」
ジャヤの地図にスカイピアの地図を合わせると、髑髏のような島の形が浮かび上がり、ルフィは感嘆する。
「これもノーランドの航海日誌の内容と一致するわ。つまり、ノーランドが400年前にジャヤを訪れた時は島の形がまるで髑髏のようだったのよ。さらにノーランドは死に際に“黄金郷を髑髏の右目に見た”という言葉を残した。ということは――」
「あっ! わかったわ! この辺りに黄金郷があるということね!? わァ、すご〜い! 今、海賊になって一番興奮してるかも! ノーランドが言ってた事が全部繋がってる!」
ロビンは髑髏のような形の島が浮かび上がった2枚の地図を見せながら解説すると、ナミがテンションを急上昇させながら黄金郷の場所を推理して言い当てた。
「そして何よりの証拠は、そこにいるワイパーがノーランドの名を知っていたということさ。この地の英雄である大戦士カルガラとやらはノーランドと親友という間柄みたいだし……」
「そっか、シャンディアの先祖がノーランドと親友ってことは確かに黄金郷がこの近くにある何よりの証拠よね」
最後にそれを裏付けるようにワイパーがノーランドという名前に反応したことについて言及すると、ナミは納得したような顔をしてくれた。これで、アッパーヤードに黄金郷があることは信じてもらえたはずだ。
「黄金郷には鐘があるんだろ!? 鳴らしたら、ひし形のおっさん気付くかなァ!?」
ルフィはニコリと笑って黄金の鐘を鳴らそうという話をしてきた。
そうだね。空から鐘の音を聞いたらきっとクリケットもわかってくれるはず――。
「――ッ!? シャンドラの灯を……」
そんなルフィの言葉を聞いたワイパーの目から一筋の涙が流れたように見えた。
確か、彼も長い間、カルガラの意志を継いで“シャンドラの灯をともす”――つまり黄金の鐘を鳴らして、天国のノーランドに彼らがここにいることを伝えようと苦心していたはすだ。
だから、ルフィの何気ない言葉が彼の心のどこかに響いたのだろう。
「ワイパー、あんた……。泣いてんのかい?」
「バカ! 誰が泣いてるって!? おいっ! 青海人ども! 確かに鐘はある! だが、鳴らすのはこのおれだ!」
ラキの言葉にワイパーは怒鳴り散らす。どうやら涙は見られたくなかったらしい。
「いや、おれが鳴らすぞ! おっさんたちに教えてやるんだ! 黄金郷があったぞって!」
ルフィはワイパーを睨んで黄金の鐘を鳴らすのは自分だと主張する。
「張り合わんでいい! でも、黄金郷って素敵な響きよね〜。絶対に行きましょう! きっと、莫大な黄金が私たちを待ってるはず!」
ナミはそんなルフィにツッコミを入れるが、心は既に黄金郷に向かっていた。
「そうだね。クリケットへの恩は黄金郷の存在を示すことで返そう」
私ももちろん黄金郷に到達することこそ、空島の目的だと思っているからそれに同意する。
「じゃあ、ガキも返したことだし、さっそく出発するか?」
そのやりとりを見ていたゾロは早く帰りたがっていた。
しかし――。
「待て!」
「なんだよ……、まだ何かあるのか?」
背を向けようとするゾロやそれに続こうとする私たちに向かってワイパーは待ったをかける。
「お前ら、
彼は黄金郷を探しにアッパーヤードへ行く気満々の私たちに、エネルと対立するつもりなのか聞いてきた。
「というか、もう売ってるよ。彼に仕える神官って人をやっつけちゃったから」
「神官を!?」
それに対して、神官をすでに倒していることを告げると、彼は少しだけ驚いた顔をする。
「本当だよ。この2人、バカみたいに強かった……」
アイサは遠慮がちにそれが真実だとワイパーに告げた。
「ねぇ、ワイパー。私、思うんだけど……」
さらに、ラキはワイパーに向かって何かを言おうとする――。
「青海人に頭を下げろってか!? いくらノーランドの子孫の友人だからって……、それは――」
しかし、ワイパーは俯きながら大声を上げて、ラキにその先のセリフを言わせないようにしていた。
「だが、おれたちも機を待っていた。神官の1人が落ち、それを倒したって連中が目の前にいる。おれは大戦士カルガラの意志が400年の時を超えて起こした奇跡だとしか思えない」
そんなワイパーの様子を見ていたカマキリは彼の肩を叩き、この出会いは奇跡だと彼に告げる。
まぁ、確かにタイミングが良すぎると思う。これがルフィの持っている天運というやつなのだろう。
「くっ――! 麦わら! てめェがこいつらの頭か!」
ワイパーはルフィが私たちのリーダーなのかを確認をした。
「そうだ!」
その問いに対してルフィは堂々とした態度でそれを肯定する。
「おれたちは明日、エネルから故郷を取り戻す為に戦争を仕掛ける! 黄金とやらは好きにして構わねェ! だから、エネルのヤツを――! エネルを……」
ワイパーたちはどうやら明日、エネルたちに戦いを挑む予定らしい。
おそらく、彼は私たちに共闘を申し出たいのだろうが、彼には彼のプライドがあるのだろう。
ワイパーは言葉を詰まらせていた。
そんな彼を見てルフィが口を開く。
「うっし! そのエネルってやつをぶっ飛ばせば良いんだな!? いいぞ!」
ルフィはまっすぐにワイパーを見つめて拳を前に突き出しながらそう言葉をかけた。
「ちょっと、ルフィ……」
「いいんだよ。ナミ。意識してるのか、無意識なのかわからないけど……、汲んだんだ。彼は……。誇り高い戦士のプライドを」
ナミが何やら言いたそうにしていたが、私は彼女の肩を叩いて首を横に振った。
「ふーん。でも、あなた、いいこと言ってくれたわ。ふふっ、黄金は本当に好きに貰っても良いのね……?」
私の言葉を聞いたナミは確認するようにワイパーに声をかけた。
まぁ、彼女は黄金さえ手に入れば過程は特に問題にしないんだろうなぁ。
「なっ、馴れ馴れしくするんじゃねェ! 好きにすればいい!」
「じゃ、遠慮なくそうさせてもらう。黄金郷を目指したら嫌でも
ナミに向かって怒鳴るワイパーに私はそう声をかけた。
「なんだ、お前ら一緒に戦うなら作戦とか聞かなくていいのか?」
すると、カマキリが首を傾げて私たちに疑問を呈した。
そうか。確かに普通はそうするか……。
「私たちと一緒に作戦ねぇ……。それは、やめといたほうが良いよ。ウチのチームって個人プレーの方が得意だし、君らの仲間も得体の知れない連中が居るとやりにくいだろ? 青海人には戦いを仕掛けるなとだけ言っておいてくれ」
私は彼らと足並みを揃えるのは上手くないと考えた。
なんせ、ルフィやゾロは方向すら分からないのに突っ走るタイプだ。それに、シャンディアの戦士たちだって、急に知らない青海人と戦うって言われても困惑するだけだろう。
「わかった。アイサの事と一緒に仲間たちには私から伝えとくよ」
そういう意図を話すと、ラキは納得したような口調でアイサの頭に手を置いて頷いた。
「ありがとう。黄金のお礼として君たちが誇りを取り戻せるように、私たちも微力を尽くして協力するよ」
「――あっ、えっと。ありがとう……」
そんなラキに私は真剣な感じで礼を言うと、彼女は急に目を逸らして辿々しい声になった。
急に態度が変わったような気がする。
「おいおい、ラキ。いくら青海人の野郎の顔が良いからって、照れすぎじゃねェか」
「うっ、うるさいよ! カマキリ!」
そんなラキにからかうような口調でカマキリが声をかけると、彼女は顔を真っ赤にして彼に怒鳴った。
「はぁ……、また始まった……」
そしてナミはため息をついて額に手を当てている。
「いっとくけど、あの人、女だよ……。あたいも騙されたけど」
そんなやりとりを見ていたアイサは唐突に私の性別をみんなに告げた。
「「はァ!?」」
すると、ワイパーまでもが2本目のタバコを落とすくらい驚いた表情をしていた。
頼むからそこまで驚かないでくれ……。
「もういい! この流れが私は嫌いだ! 帰る!」
私は悲しくなってきて背を向けて船に帰ろうとした。
「まァ、落ち着けってライア。いい加減に慣れろよ」
そんな私にゾロは無情なセリフをかける。
「なんと、おなごであったか。威風堂々とした佇まいから、男子だとばかり……」
「それ以上はやめてあげて。狙撃手さんが泣きそうだから」
ロビンはさらに追い打ちをかけようとしたガン・フォールに待ったをかけてくれた。彼女は優しい人だ……。
「いいじゃねェか。男でも女でもライアはライアだろ? 同じようなもんだ」
「全然違うッ!」
最後にルフィが何やらいい風なことを言ってくれてるが、絶対に同じな訳がない。
私は彼の肩を掴んで大声を出した。
「とにかく、明日の夜明けに攻め入るのね。わかったわ。私たちも準備を整えて、夜明けと同時に探索に出る」
その間にカマキリから作戦実行の日時をきっちり聞いていたナミが彼らとの協調を確認して、自分たちの予定を告げていた。
よし、明日の早朝からか……。
エネルは正直言って怖いけど、私が目的を達成するときにはもっと怖い海軍の大将と対峙する可能性もある。
こんな所でびびってはいられない……。
「我輩も青海人たちに助力させてもらうぞ。400年の時を超えた奇跡とやらに力を貸したい。そして、願わくば――」
「ちっ、その続きは勝ってからだ。勝ったあとなら、話くらいは聞いてやる」
ガン・フォールが我々と同行することを話し、ワイパーにも何やら言いたそうにしてたが、彼は戦いの後に話を聞くと言った。
「ワイパー……、あんた……」
そんな彼をラキは意外なものを見たというような表情で見つめていた。
この短い時間で彼の中の何かが変わったのかもしれない。
黄金郷の存在を確認し、シャンディアと協調する約束をした我々はメリー号に戻った。
こんな私たちの元にコニスを置いておくわけにいかない。
事情を船に残ったメンバーに伝えて、まずはコニスの家に彼女を送ることとなった。と、その前に……。
「なんで、君がまたこの船に乗り込んでるの?」
「だって、ワイパーたちがあたいを戦いに連れってってくれないって言うから……」
私たちが話をしている間にメリー号に乗り込んで来たアイサ。どうやら仲間外れにされたから、私たちとアッパーヤードに乗り込みたいらしい。
「いや、どう考えたってワイパーたちが正しいだろ? 危険だよ。間違いなく……」
「まァ、来ちまったもんは仕方ねェよ」
「また、君はノリでそんなことを言うんだから」
私は彼女に船から降りるように促そうとしたが、ルフィが軽いノリで同行を許可して、我々はそのまま出航した。
いや、何のために雲隠れの村に行ったんだよ!
コニスの家に着くと、パガヤがちょうどウェイバーの修理を終えたところだった。
何やら年代物のこのウェイバー、絶滅種のダイアル――
ナミしか乗れないけど、便利なモノが手に入った。
そして、サンジがパガヤの好意から食材を幾ばくか分けてもらい、我々は出発することとなった。
「あっ、あの! 送ってもらって言いにくいのですが……、私たちも連れて行ってくれませんか? あなたたちのお役に立ちたいんです」
「先代が動くのでしたら、我々も協力させてください。すみません。万が一のときはあなた方だけでも逃げられるように致します」
コニスとパガヤは我々に同行したいと申し出た。彼らも自分たちのウェイバーを持っていくみたいだ。
こうしてコニスとパガヤの親子を船に乗せたメリー号は再びアッパーヤードへと辿り着いた。
翌朝、我々は黄金郷の探索に出かける。だから、なるべく静かに船で過ごそう――。
なんてことをする訳もなく――。
「よ〜〜〜し! やるぞ! 黄金探し〜!」
ロビンに渋い顔をされてもお構いなしに、キャンプファイヤーの元で宴会を開く私たち。
サンジとパガヤのお手製の料理を食べながら私たちはどんちゃん騒ぎを行っていた。
そんな様子を最初は驚きながら見つめていたガン・フォールは次第に表情を綻ばせて、私たちに「なぜ、アッパーヤードが“聖域”と言われているのか」を語ってきた。
「おぬしらにとって、ここにある地面は当然のものなのだろうな……。だが空には存在せぬものだ。“島雲”は植物を育てるが、生む事はない。緑も土も本来、空にはないのだよ。我々はこれを“
だからこそ、ジャヤから吹き飛んできたこの地は空の人にとっては黄金などより何倍も魅力的なモノに映ったのだろう。
400年前の争いの原因は私たちが当然のように踏みしめている、この大地である。
明日の戦いの後で、少しでも彼らの関係に進展があれば良いが……。
きれい事かもしれないが――私はそう思わずにはいられなかった。
そして、夜が明けて……。黄金郷探しの冒険が始まった――。
シャンディアとは共闘というより、協調姿勢で争わずに好きにやるみたいなギブアンドテイクな関係になりました。
結局、最終的には共闘すると思いますが……。
そんな訳でいよいよ、黄金郷をめぐってエネルたちとの戦いがスタートします。