移ろう空模様   作:あかざ

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空の呼吸

辺りはもう、すっかりと闇夜の帳に包まれていた。紺碧に揺らめく夜空と、大気中の水蒸気が、紅い月に照らされている。キラキラと揺らめきながらこぼれた雪が、辺りを朱に輝かせていた。

 

ざくざくと、雪地を駆けるような音がする。獣だろうか。木に預けていた背をぐいと反らして凝りを取る。まだ明け方にすらなっていないと言うのに、獣?そんな馬鹿な。

 

木の枝からひょいと飛び降り、腰に差した日輪刀の鯉口を切る。

 

「何奴!」

 

叫び。沈黙、刹那。雪を踏み込む音と、下品な笑い声が聞こえてきた。ぎょろりと飛び出しそうな目と、異様なほどに筋骨隆々となっている四肢。現世のまともな人間ではない。

 

「おい、ガキィ…泣いて喚いて抵抗しろよ?雌の肉は恐怖で甘美になるからなぁ…キシシ…」

 

「黙れ、この雑魚鬼風情が。その口を閉じろ。虫酸が走る。この私に蔑称を使ったこと、あの世の果てで後悔しろ。」

 

「あぁ!?ダレにクチ聞いてンだよこのクソガキィ!決めた。てめぇは腕から千切って殺してやる。この俺様に雑魚と言ったてめぇを嘆きながら、逝きなぁ!」

 

異形が迫る。雪煙をあげて、その口に涎を溜めて、怒濤の勢いで迫る。まるで、雪崩のよう。

 

「なるほど、これなら死んじゃうか。」

 

全うな人間なら、ね。

 

深く腰を落とし、鞘に左手を。右手で握りを確りと握る。

 

「全集中…空の呼吸、壱の型。」

 

『空爪』

 

鞘走りと切断までの差は、コンマ数秒。送る刃と、返す刃。その二振りで、伸ばされた敵の腕を吹き飛ばす。しかし、これでは終わらない。血濡れた刃を鞘に納め、再び鯉口を上げた。

 

「全集中…空の呼吸、伍の型。」

 

『紅掛空色』

 

蒼い刃に血濡れの色が馴染んでいく。

 

『移』

 

縮地の要領で距離を詰め、腰の捻りを効かせて、一閃。横を通り抜け、血を払い、鞘に納める。鬼は不思議そうな顔をしながら、自分の体から頚が離れていく様子を眺めていた。

 

御休みなさい、弱き者。輪廻の果てに、もし二度巡り会えたのならば、その時は、きっと。

 

「何で、首…落ちて…!?まだだ、俺は…まだ、死にだくな…ぁ」

 

 

断末魔とは、とても言えない。生を渇望する、ひとりの命がそこに有る。鬼を…いや、鬼に堕ちた人間を斬り殺す度に、胸を刺すような痛みが走る。もしかしたら、この人は善良な一般市民だったのかもしれない。悪名高い盗人だったのかもしれないし、もしかしたら、政府の高官だったのかもしれない。いっそのこと、清々しいほどに下衆だったのなら、こんな後悔はしなくても良いのだろうけれど、生憎、この人たちは根は善良な人たちだったのだろうと思う。鬼を斬ることに躊躇いは微塵もない。けれど、鬼の死に際に見せる、人としての片鱗が、私は苦手だった。

 

さようなら、善良な魂よ。

合掌して、暫し黙祷を続けた。血に濡れた刃を手拭いで拭う。

 

 

ものの数分で仕合を終えた私は、すっかりと意識が覚醒してしまった。眠気はもうさっぱりないし、なんなら体を動かしたい気分である。

 

「町に、降りましょうか。」

 

木の上に置いていた旅の荷物を一式取り、町への道を歩く。ざくざくと、雪地を歩く度に音が響いた。小さい、寂しい音。

 

 

これは、日本一無慈悲な、鬼退治の物語である。

 

 

 




こんばんは。匿名投稿はお初ですね。
千文字ちょいとしかないこの第一話ですが、見ていただいてありがとうございます。さて、鬼滅の刃を舞台とした二次創作作品、「移ろう空模様」ですが、如何だったでしょうか。今まで様々な作品を手掛けては投げ出してきた私ですが、今回は少なくとも、アニメ1クール目までは書き上げるつもりです。あと、キーワードに炭カナ、ぎゆしのを入れましたが、このカップリングの絡みは相当先になります。基本週一、二回の投稿を目指しつつ、年内には鼓鬼まで行こうかと。
もし、お気に召しましたら、これからもよろしくお願いします。


さて、サクッとオリ主の説明ですね。

天戸 結衣 (あまど ゆい)
齢十五。(炭二郎が狭霧山で修行時)
身長145㎝。体重38㎏
好きなもの 健康に良いもの。たまの砂糖菓子。
苦手なもの 健康に悪いもの。暴飲暴食。不摂生な生活


全集中の呼吸
全集中 空の呼吸 。玖の型、特別型始、終の型の計十壱の型からなる呼吸法。
攻式
壱の型 空爪 からつめ
・納刀状態から繰り出す二連撃。本来は一撃目で初撃を逸らし、二撃目にて頚を切り落とす技。
弐の型 ???
参の型 ???
肆の型 ???
伍の型 紅掛空色 移 べにかけそらいろ、うつろい。
彼女が使う太刀でのみ使える呼吸技。とある事情から血鬼術の末端の力を引き出せる彼女は、姉と師範の刀を媒介として、その力を振るう。具体的には、刀に血液が付着した時にのみ、刃の強度と切れ味が上がるというものである。「移」は、最速、最短の剣技で鬼に足掻く暇を与えずに屠るための技。
痛みを感じさせぬほど、疾く、鋭く。彼女はこの技の極意としてこう語る。
陸の型???
捌の型???
玖の型???

始の型???
彼女が編み出した型のひとつ。二撃連続で繰り出した後、すぐにどの型にも派生が可能なことから、拾の型ではなく始の型と呼んでいる。鬼の頚を切り落とすことを目的とする鬼殺隊としては敵の戦力を削ぐことを目的とする連撃技は邪道とされることが多いが、これは彼女の経験則に基づく技である。足技を使う鬼もいるが、どの鬼も攻撃の起点は腕であり、超速で再生されるとしてもそこに一瞬の隙を生み出させることが可能。

終の型???
始の型と同じく、彼女が編み出した型のひとつ。相討ち覚悟の決死の突撃である。防御を捨て、鬼の頚を確実に落とすことを目的とする技。
現に彼女はこれを使う際、鬼に反撃を受けたことがある。

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