幼女戦記を題材にした数々の先達の作品の中にこの様な駄作品を加えてしまう事を深く反省すると共に皆様方にこの作品を見て頂けることに対して感謝の意を捧げたい。
◀:ティアナ・ヘルシング年表
[0ヶ月]二度目の生誕。
[2ヶ月半]「ティアナちゃん」として初めて野菜をあーんした記憶(前世の影響でデブでもないくせに良く食べる)
[3歳1ヶ月]同い年のターニャ・デグレチャフと同期に読み書きを始める。言語がドイツ語に酷似していた為ターニャよりも早くに覚える。
[5歳2ヶ月]孤児院の中で食べ物を巡る喧嘩に遭遇、解決に至ったもののターニャ・デグレチャフとの決定的な違いを認識する。
[7歳3ヶ月]孤児院付き教会小学校の健康診断で『魔導適正』が確認される。
[7歳4ヶ月]将来的に徴兵される赤紙を受領、この時ターニャは神への罵倒雑言をこれでもかと垂れるのに対しティアナは小躍りする程の喜びよう。
[8歳]帝国軍士官学校へ進学。
[9歳]帝国軍士官学校(繰り上げ)卒業。
[現在]お空でお散歩中。
この小説の目的はナチズムの国家社会主義者であるティアナ・ヘルシングと己の利己的思想に従って動く資本主義者であるターニャ・デグレチャフとの違いをノルデンを通して皆様方に考えて頂きたく書いたものだ。
至らない点もあると思うが幼稚な作者の文章構成能力、語彙力ではこれ位が限界な故許してほしい。
__かくして役者は全員演壇へと登り、暁の
__諸君、戦争の夜へようこそ
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「It…looks like it……What,I'm not done yet…」
(その…ようだな……なに、まだまだ…)
狂気が空に解けて行く、満足感が焼け焦げた死体と鉄の匂いに混じり機械仕掛けの神の中を満たす。狂気の発生源を睨む誇り高き英国淑女は伯爵の眷属を側に従え驚きに目を剥く。
「That…That appearance is you…?
(それが…そのザマがお前か…?少佐!)
麗しき霧の都、英国倫敦を火の海に沈めた狂気の元凶、少佐と呼ばれた肥満体型の男性は一般の血液よりも黒く濁った血を撒き散らし地面を染める。
左半身を覆っていた煙が晴れると彼の凄惨たる正体が顕となる。
「That's right. This is me……」
(そうだ。これが私だ……)
大なり小の歯車が絶妙な加減で組み合わさり偽りの体を動かす。垂れ流しとなっていた黒い血の正体は彼の体を動かす燃料だった、その他にも火花を上げショートを繰り返す回線や電子版にエンジンの様な部品、受信機の様なアンテナの付いた数々の部品が彼の抉られた部分から剥き出しとなっていた。
「Machine!?」
(機械!?)
「How rude of you……to say…young lady.I am absolutely human」
(失礼な事を……言う…もんじゃない…お嬢さん。私はしっかりと人間だよ)
機械は人の言葉を口にする、
英国の英雄はその惚けた目を向けられると一言で切り捨てる。化物を熟知するからこそ口に出来る人間の魂から洩れ出るその思い。
「Monster.You're a monster」
(モンスター、お前は化物だ)
「You're Wrong.“I am human”. The thing that makse a human a human is one thinp.It's your own will」
(違うね、
彼は語る、己が人間である証明を……
自分は如何しようも無い程の人間だと、愉しくて楽しくて嬉しくて仕方が無いのだろう。
だが彼は何処までも人間だった。
たとえ培養液の中に浮いている脳髄が彼の残った最後の生身だとしても、たとえ巨大電子機器の記憶回路が彼の過去を示す全てだとしても彼は人間だ。可愛そうな程に人間なのだ、他者からすれば
伯爵は言った[人間のような化物では駄目だ。化物のような人間でも駄目だ]と。
少佐も言った[化物のような人間では駄目だ。人間のような化物でも駄目だ]と。
「…………」
「…………」
懐を漁りワルサーP38を取り出し後の英国の英雄……インテグラル・ファルブルケ・ウィンゲーツ・ヘルシングに照準を合わせる。
彼女も礼儀を重んじる名家の当主として、この馬鹿げた戦争に決着を付ける為にRSAFエンフィールドNo.2を取り出し一歩一歩少佐に近づいて行く。
メラメラと燃える舞台に立つ二人の役者と一人の傍観者、下手側から何発も弾丸が飛ぶが一発として当たらない。上手側は悠々と歩を進め近づいて行き遂に眼前に立つ。
ワルサーに装弾されている残り弾数は一発、少佐とインテグラはほぼ同時、ほんの少しだけインテグラルが撃つのが早かったが少佐の放った最後の一発はインテグラルの左目を撃ち抜いた。
その代償として彼……ナチス・ドイツ最後の大隊 ラストバタリオンの代行指揮官 モンティナ・マックスは眉間を撃ち抜かれ、半世紀もの永き夢に終を告げた。
「I hit something for the first time!」
(初めて当たったぞ!)
最早そこに在るのは人でなく魔でなく男でなく女でない、ただのガラクタが服を着て放置してあるだけと化していた。
遠い何処かにある巨大電子機器が機能を止め、遠い何処かにある脳髄が死ぬ、時間がそれを教えてくれる。彼の最後の意地なのか……
「This was a grnat…great war…It was a great war」
(これは良い…良い戦争だ…良い戦争だ)
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》統一暦一九二三年六月 北方軍管区ノルデン戦区/第三哨戒線《
私は、何故こうして戦争をして
「フェアリー09よりノルデンコントロール。繰り返す、フェアリー09よりノルデンコントロール。応答願う」
地上でボコスカと砲撃挟撃が飛び交うノルデンの雲天に距離はあれども
雲に隠れてはまたひょっこりと顔を覗かせるちっこいシミの正体は帝国の誇る航空魔導士官であり、如何なる運命の悪戯なのか幼女となり新たな戦場で歓喜に浸る自分を客観的に目した現状なのだ。
黒いss服を着ていた頃が懐かしいと感じる軍服を身に纏い、手に握りしめる魔導師の意思をこの馬鹿げた世界へ干渉させる、後方で今も訳の分からん兵器を作っているプロフェッサーの話によれば術式という吸血鬼等よりも超常な存在を科学で制御する演算宝珠がその証。
まだこの世界の人間が化物を信じていた頃用いていた古の宝珠を、魔導と科学が産業革命や経済革命ウンタラを経て誕生した世界の全てを数値として絡みつく糸を解きほぐす魔導工学の結晶。
世界大戦程では無いにしろ激戦区と呼ぶにふさわしいノルデンの空を私ともう一人の同僚兼幼馴染に上から達せられた任務は生身で行けば下手せずともおっ死ぬであろう高度六千フィートにて、対地速度を巡航速度にて維持しつつ指定された空域でこちらの友軍砲撃の着弾地点の観測。
「フェアリー09、こちらノルデンコントロール。感度良好、現在貴官とフェアリー08を正常に追尾中」
ものぐさ言うほどでもない。私達の任務は帝国と忌々しい協商連合の国境線における支援飛行任務なのだ。
飛行術式とか言う訳の分からん魔術を維持する頼りない演算増宝珠を首にプラプラさせ、楽しそうに、そして油断なく観測するフェアリー09と呼ばれた人影は、地上で砲撃ぶちかましている歩兵からすれば驚くほどに小さく見える事だろう。
実際、物理的に小さいのだが……齢二桁に届くか怪しい。加えて女性という事を考慮しても小柄な体格。一般の八重歯より尋常でないほど伸びた歯は吸血鬼を思わせる程尖っている。
肥満体型だった前世と比較するとどっこいどっこいなのだが。航空用喉頭マイクのサイズに対して首周りが小さ過ぎるなどと言われた時は正直嬉しくも惨めな気持ちになり幼馴染とうなだれた。
「フェアリー09了解。任務空域に到達。感度良好」
正直インテグラの様に威厳を感じないか弱い、それは覚醒する前のセラス・ヴィクトリアの様に弱々しい声なのは残念だ。
私の幼馴染は舌が廻らないが為に流暢に喋れず、時偶に嚙みかける度にブチ切れそうになるのを何度か目撃している。
「ノルデンコントロール了解。フェアリー08も指定の空域に到達次第任務にあたる…………、フェアリー08の所定空域到達の伝達を受信。所定の任を遂行せよ」
10秒ほどの差はあれども私ともう一人の魔導師は任務を全うする。幼女らしい舌足らずな対話も気に留めない軍も軍だ。私としてもその合理的処置は大いに結構なのだが、航空魔導師は空戦を重視する観点から魔導技術への適正のみが戦力化の基準となる。
それを突き詰めていった帝国において、魔導師の年齢制限は過去の遺物と化していると幼馴染はキレていた。私からすれば戦場に出れるのであれば前線も後方も男も女も老人も幼女も関係なしに大歓迎なのだが。まぁ今となっては考えても仕方がない。こうして外見だけなら保護されるべき年齢の己も当たり前のようお空に飛ばされているのだから。
「フェアリー09了解。戦域における異常を認めず。繰り返す、異常を認めず」
「ノルデンコントロール了解。貴官、同じくフェアリー08の観測エリアに対する割り当て砲兵部隊砲兵大隊である。コールサインはゴリアテ06。
空域管制より別命があるかエリア掃討まで観測任務に順次せよ。追達にフェアリー08より戦域警報が発され次第貴官は援護に周るように。オーバー」
大隊という言葉に反応する私はやはりあの戦争が愛おしかったのだろうか?それはともかく、この人的資源の調達方法は帝国の今まで置かれていた地政学的観点からの要求が大きい。
かつてのドイツ帝国の様に列強諸国の中心に位置する国土故に、四方八方を仮想敵として見なければならないのが今の現状。忌々しい事にあの懐かしの英国は、この御時世中立国であるが故、攻め入る事が出来無いのが悔やまれる。
ともかく、その長大な国土防衛の兵力は常に喫緊の課題だ。この問題の解決の為、血眼になった参謀本部のお偉い様方は使えるものは何でも使い回すという素晴らしいの一言に尽きるところまで行き着いている。
「フェアリー09、此方集積軍団砲兵大隊、コールサインはゴリアテ06、聞こえるか?」
上記の理由により幼女であろうが使えるのなら戦争中の軍とはいとも容易く国境、つまりは最前線に放り込み哨戒飛行に順次させてきた。簡単すぎる仕事、死んだり死なせたり出来ない所に不満は募るが飛び出せるだけ感謝せねばあるまい。
「ゴリアテ06、此方フェアリー09。感度良好。敵歩兵部隊の接触まで250m……諸元を発送中、確認されたし」
可愛らしげな声を義務的に押さえ込み喋る幼女、それにもう数百m離れた空にもう一人の幼女が揃って飛ぶ姿はひどく現実離れした光景なのだろう。私の様に狂った者以外にこれ程の異常事態を見て困惑すればその者が常識人という証明である。
ノイズの入り混じったた通信とはいえ健全で裕福な家の御令嬢であれば家で人形とキャッキャウフフしている年頃の幼女の声が飛び交うことはもう魔導師業界では
その結果、女子供を戦場のど真ん中、果てには最前線に送りつけようと違和感を感じさせないほど感性を馬鹿にされて久しい。
「ゴリアテ06了解。基準砲にて初弾を発砲」
だからこの私、ティアナ・ヘルシングと幼馴染兼同僚である
なぜこの愉しさを毎度唱えてやっているのに理解しないのかこっちの方が理解に苦しむが。まぁあっちはあっちでこっちはこっちの理想を持っているのだから仕方の無いことではある。
「着弾確認。……至近弾と認む。着弾位置の公算誤差範疇の十五メートルと判断、効力射を行われたし」
「ゴリアテ06了解。直ちに任務を開始する」
眼下を見つめる蒼紫の瞳に油断は見えない、それすら塗り潰す程の歓喜が見え隠れしているのだがその歓喜の内にやはりというか困惑の色も存在した。なぜ性別が変わり背丈は縮み戦場に出る事ができたのか。
それを差し引いて嬉しくないのは我が身の変化。人の身、ただし子供ではあるが、正直酷く不自由ではある。女児の方が男児よりも成長の度合いが早いとはいえ長年動かして来たあの肥満体の感覚で体を動かすには軸がぶれて仕方がない。加えて、軍に入って幾度となく自分が如何に無力で役立たずなお子様化しているのか痛感する。
銃は持てなかった。大きすぎた。無論、もともと当てられる程の技量がある訳でもない、格闘訓練ではターニャとしか体型が同等の者が居なかったので投げ投げられ、蹴り蹴られの傍から見れば子供の喧嘩にも見えなくはないだろう。ただし、技量は軍人として恥ずかしくない程度だが。
演算宝珠をもってしてこの世界を三つのベクトル数値に置き換え、仮定をつけ、理解し、術式をもってその数値の世界に干渉する術を学ぶまで、思い通りに動けない手足で地べたを私とターニャで這いずり回ったのは愉しい思い出だ。
チビでノロマでどうしようもなかった孤児院の頃とは違い帝国軍士官学校で学んだすべてを利用し、身長差のみのアドバンテージまで持ち込めた為、脳で考える魔導技術がものになった。科学だけではたどり着けない、魔術だけでは理論が立たない大空に我々の唯一誇れる魔導をもって世界に干渉したのだ。
魔法に対する違和感など最初に脳を弄くり回された時に捨てた、何も知らなかったターニャの前世に比べ私はfreaksだ何だの化物を調べ尽くしてきた、今更騒ぐことでもない。しかし、便利な道具同然だからと言って、どうして使わなければならないのか?
なるほど嘗て私が編成した大隊は時を待ち必要な時に出なければならなかった。だから兵站し兵装し教導し指揮し訓練し教育して備えてきたのは道理だな。だが使う目標のいないうちにラスト・バタリオンを編成しなければいけない理由があるだろうか?
随分昔から、帝国と協商連合は国境問題で国民は知り得ない下らない紛争を軍は抱え込んでいた。一応、周辺の国民らへは誤魔化しを交えながら避難誘導をしていたのでその地域の帰属権は、争われてはいない。
だが単純に帝国の経済力軍事力共に申し分ないほど圧倒的であるが故に、公式に問題が喚起されないだけだった。ティアナからしてみればソ連に対し周辺国が単独で戦争を吹っ掛けないのと同じである。ただしドイツは除く、ツィタデレ作戦の様なイカれた条約違反バンザイな作戦を思いついた時点で検討がつく。
物騒な政情にもかかわらずティアナとターニャは呑気な
あくまでも、士官学校の教育の延長として、飛行哨戒班で陸軍と連携している研修。私としては最前線バンザイ突撃に大賛成だったのだが、知らせを受け後方に下がる機会を失ったターニャは沼底に意識を失う様にベッドに身を投げ、泣き言を零しながら寝に入り研修終了と同時に少尉へと任官し戦闘配置される。私達に与えられたコールサインはフェアリー08、09。つまり妖精という比喩表現だ。外見で見れば貧弱この上ない幼女。そして自分で自覚が出来るほど狂気の宿った蒼紫の瞳と白く透き通った人形の様な肌、何となくかつての部下…シュレディンガー准尉の様な髪型の色素の抜けた金髪。
目の色と髪型を抜けばこれらの条件はターニャ・デグレチャフにも当てはまる。コールサインは確かにその名がふさわしいものではあるのだろう。
そして、コールサインを割り当てられ正式に現地の国境警備軍にティアナとターニャで着任した矢先のこと。魔導士官学校からの促成組や、現地編入組等からなる管理部隊に編入されたティアナとターニャは上からの有無を言わさぬ四十八時間の待機命令を受領した。編成直後のことで伝統的な即応能力の検証目的と緊張感維持のため上が思いついた(私からして)生ぬるいかと思い完全武装で待機についたのが二十四時間ほど前。
これがまた
前々から危惧されていた協商連合の方針転換。政権交代による首脳陣の入れ替えと、それに伴うナショナリズムの勃興は国際方針の一変を要求。包み隠さず言ってしまうと、私達の様なお子様(中身は中年)でも
要約すれば“帝国軍人は二十四時間以内に、我が国固有の領土より直ちに撤退せよ”と、阿呆らし過ぎてターニャと共に探りを入れてしまう程だった。
協商連合の事情など一介の尉官が、というより我々帝国側の人間の大多数の知ったことではないが地域紛争は「政治的に余りに敏感」であるが故に本格的な武力衝突を帝国は忌避するだろうとでも考えたのだろう。武力差という現実に目を背けているとすれば、後世の歴史本に悪い意味で刻まれるだろう。
阿呆らし過ぎると。それとも、必勝の方策でも用意しているのだろうか。
協商連合の意図と目的を理解しかねる帝国は、それでも精密な官僚機構と軍事機構を想定通りに動かし、理論通りに手筈を開始していた。戦場を回す小さな歯車に過ぎないティアナはしてみれば内部へ戦争へのプロパーが存在せず簡単なプロパガンダと楽観視していた節が無いわけではなかった。
なにしろ、ノルデンを跨げば直ぐそこの近隣国である連邦が自国の近隣で軍事行動を起こされたい筈もなく仲介や威嚇による
先も申した通り帝国と正面からぶつかり合ったとして協商連合の勝利できるほどの軍事力は有しておらず、どこかしらが仲介に乗り出し協商連合と帝国の政治家と外交官が始末をつけるだろう、と思っていた。
だが、当事者である協商連合を除き誰からしても理解しかねる事態は、同世代の人間全員を困惑させることになった、もしもこれが連中の狙いならば正直拍手を送りたいほどの大博打だ。
“進駐する協商連合軍に投降し、武装解除するか、速やかに撤退せよ”
かつて
一般的に衝撃的としか評価出来ない勧告、それでも半信半疑な目で事態を見ていた帝国にとって、協商連合が国境を越境せりとの報告は頭の隅に留めておいたにせよ、到底現実に起きるとは予測していなかった。
後世において、帝国参謀本部のレルゲンという軍人が「……軍上層部による極秘裏の自演自作と疑う方が、まだ理解しやすいほど協商連合の意図は理解しかねた」と心中の疑問を吐露するほどにそれは常識から脱却していた。
だが、疑問や不明瞭な点を除きプラグマティズムな帝国軍は実務的に協商連合の大規模越境作戦に即応を命令する。意図に対する迷いはあれ、戸惑いはあれ、紛争の可能性が指摘された時点で規定通りに物資の事前集積は開始され、中央からは大陸軍の各軍団が鉄道線での集結を開始。全て、偏りなく順調に成し遂げた帝国軍組織の手際と組織の勝利と評価される対応をやってのけた。
だが、大量の物資を動かし、部分動員まで行ったにせよ帝国はそれでもなお半信半疑を拭えずに悩まされ続ける。馬鹿な、あり得ない、と。
諸列強の中でも軍備、随して物資輸送技術は頭一つ抜きん出た帝国だ。平時でさえ国境周辺には国境警備隊の名目で軍団規模の駐屯軍を展開させている。そこに、最低限の備えとして動員されティアナとターニャのちびっ子の属する追加の一個軍団。多少の情報戦を考慮し、諸外国のマスメディアを招聘まで行い対応そのものは抜かりなかった。だからこそ訝しむ、本当に攻めてくるのだろうか、と。
ティアナはともかく連合を除く列強諸国の殆どは大義名分もなく軍事強国である帝国に、それもわざわざメディアの前で劣勢な戦力で越境攻撃してくるなど夢にも思わない。
だが、世の中は現実は小説より奇なり、だ。ここまでくればティアナからしても摩訶不思議な展開に発展した。言い方を変えれば、最後の大隊の
“開戦です!!皆さま、繰り返しお伝えします。開戦です!!たった今、戦争が始まりました!!帝国がレガドニア協商連合の越境侵犯に対して、宣戦を布告致しました!!つい先ほど協商連合軍が各地で越境を開始し、これに対応した帝国軍の部隊が続々と国境へ急行しております!!すでに、各所で交戦中との情報が入って来ております!”
だが事実として眼下では、友軍機甲部隊を始めとした各部隊が急速展開中。並行して同行の従軍記者らがネタを見つけ叫び声を上げる勢いで各地で飛び込んでくる速報を全世界に発信している。
戦勝出来る絶対的な自信があるからこそ出来る宣伝戦というわけだろうか。まぁ国力・技術水準・軍備のいずれを比べようと圧倒している以上、次の一手を先に打っておくのは明白だ。
そして開戦に至るにして報道関係者が現地に展開しているということは宣伝を行う程度の余裕がある訳だ。帝国の強大さと正当性を宣伝するのは政治面で見ても悪くはない。加えて、向こうが先に国境を超えたという証明があるので、大義名分にも事欠かせない。そこにマスメディアを招き入れるということは、ようするに勝てる戦争と暗に示しているのだ。自国の負けているところを自由に報道させようと考える首脳陣なぞこの異世界においても幻想だ。隠すことこそしないが、少ないということは順調に事が進んでいる証しだ。
これらの要因はターニャ・デグレチャフ少尉に安心をもたらすと共にティアナに退屈を感じさせる要素だ。正直、北方に飛ばされ研修と聞かされたときは幼女だろうが何であろうが辺境の戦場に送り使う軍事国家と、普通なら私程度の年齢の者など奇跡が起らない限り向かわないであろう懐かしの戦場へ再び立たせてくれた神もとい戦争に幸あれと賛美を送りたい。
だからこそ、湾岸戦争の様に一方的な立身出世の好機を与えてくれるのは嬉しい誤算だ。
勝って当たり前の戦争で、勝って当たり前の軍隊で、退屈な空から雑魚兵を叩いて潰して進軍するだけのつまらない任務ではある。が、悪い話ばかりでは無いのは確かだ。国境哨戒任務は地味さが強く出ている上に戦果を上げたところで政治面からの配慮措置で公式に存在しない業績、つまりは骨折り損のくたびれ儲けと化す。
ただでさえ狙撃の腕はモンティナ・マックスであった頃と比べれば雀の涙程度に向上したが、それに加え色抜け金髪蒼紫眼で色白の幼児。間の悪いことに経歴だけ見れば士官学校の首位五位まで食い込んでいるエリートの魔導師だった。
仮に(ティアナ以外の将校の考えで)抜擢して使ってみても失敗なんてすれば前途ある幼児を使い捨ての駒として利用したと悪評が立つのは避けられない。実力は良いとして外見が付いてきてない酷くアンバランスな存在が今のティアナ・ヘルシングなのだ。
教官らの受けは射撃以外は比較的良かったが、部下を率いるために昇進するには「嬰児の魔
だが、今までは示す為の機会がなかった、と言うよりかは与えられる事がなかった。つまりは、私は「軍人の魔導師」として見なされておらず「小娘の魔法使い」としてしか評価されて来なかった。
四肢を糸で操縛られ自ら動けない
しかし、皮肉なことにも帝国軍が圧倒的に優位な戦場で実戦の場を設けられ初戦を飾れるとは思ってもいなかった。
噂では地獄その物になると言われたノルデンの地、そんな素敵な場所で戦争に赴けるなど、オマケに目を付けられる程度に活躍すれば地位を手に入れる事のできる戦場ときた。
素晴らしい、全く持って素晴らしい!Splendidこの上ないこの状況を利用しない手立てはない。
「あゝ、愉しいな……だがコレでは足りない、もっと戦火を……もっと、もっと戦果を」
無意識の内に口から漏れていた呟きを理解してくれる者は今は居ない。何れはこの思想に共感を感じてくれる同士に巡り会えるのを、また密かに楽しみとしておく。
「フェアリー09、此方ゴリアテ06。射撃の効果を求む」
「ゴリアテ06、此方フェアリー09。効力射撃を認む。繰り返す、効力射撃を認む」
素敵な我々の敵がバタバタと倒れ、焼かれ、刺され、死んでいく様を見て、溢れ出る笑みを押し殺しながら陸で頑張って殺し回っている砲兵隊へ転送する。
術式を展開しつつ、無線通信機を担いで飛ぶのは馴れないうちはフラフラとしてしまうが帝国の演算宝珠は中々に有能らしく普通数年の月日を掛け実戦で効を成すものが若干扱いは難しいが早い段階から実践投与に移れる優れ物だ。
最初に観測研修生として派遣される通達が来たときは溜息が出そうになったがここまで来ると懐かしの戦争の空気に酔い痴れるのだから良しとする。
「フェアリー09より、ノルデンコントロール。応答願う」
「こちらノルデンコントロール、感度良好」
「フェアリー09了解。現在面制圧進行中、制圧セリと判断。敵歩兵部隊は組織的統制を損失しつつあり、総進を続行されたし」
眼前において壊走し、散り散りに逃げ始める人間だった糞袋共は呆気も取らず榴弾のにより木っ端微塵に粉砕された。
「フェアリー09よりノルデンコントロール。所定の位置に前進セリ」
「ノルデンコントロール、了解。こちらも確認した。現在軍団砲兵隊に現状を転送中。着弾観測の継続をされたし」
「フェアリー09了解。引き続き下さ着弾観測に当たる。オーバー」
「ノルデンコントロール、了解」
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__神に許しを乞うな
__この世の不条理は大小の歯車により廻る
__その歯車の企画者こそが神そのモノなのだから
作者は少佐ほどナツィオナールゾツィアリスムス(平たく言えばナチズム)の国家社会主義のイデオロギー保有者ではないしターニャほど資本主義じゃないので……
どっちかと言うと利益がある方に傾く人間なので時として資本主義、かと思えば共産主義など簡単にコロコロ変わりますね。
基本的なイデオロギーが立憲主義なのはルールを重んじる日本人なので仕方なし。
少佐改めティアナには死んで貰いたいですね……出来ればティアナは反逆罪じゃなく別の方法で死んで欲しいものです。
満足に死んでもらえれば良いんですけどね、何分何をしでかすか作者にすら分かりかねないキャラなので正直成り行きで死ぬのは止めてもらいたいです。
最初は何処かのシーンで上層部の一人ぶっ殺して軍を引っ掻き回してから銃殺刑の予定でしたがやめました。
ターニャとの仲自体は悪くも良くも無いです。まぁ下手な兵よりはお互い信頼しては居ます(分かりやすく言えば利用する側とされる側)
今後ターニャにとってのヴィーシャの様なキャラを少佐にも作ってあげる予定です。
次回を書くかは未定ナリ……