人間戦記   作:イスカリオテのバカ

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 さて、まず申し上げる事としましては本作品の世界を描き上げたのは私()()()()私の姉でございます。私は本編しか書くつもりなので代わりに姉に執筆して貰いました。
 一応、この作品を出ている分は全部読ませた上でHELLSING本編を読ませ、私からも後のストーリー展開を軽く説明し私自身流し読み程度の確認はしました。多少の矛盾点が見受けられると思われますが本作品は正規ルート通りの世界線ではないので気にしないで頂けると弟としても嬉しく思います。

 もう一度申し上げますが、この番外編は本編と直接的な関わりは御座いません。どちらかと言うと前戦よりも後方のやり取りが多くなると思います。 




 この作品は戦場の一場面を作者という神の如き権能を用いて切り取ったものです。本来の世界線と統合性はありません。あってたまるか。


人間戦記 【Apocrypha】

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 片銀翼突撃賞__それはとある一人の軍人に与えられた名誉ある勲章。熾烈な戦場を縦横無尽に駆け抜け敵を殲滅し味方を鼓舞する姿に人々は畏怖と敬意を払いネームド持ちであるターニャ・デグレチャフと唯一対等になり立てるその軍人を【片銀】と呼び讃えた。

 そんな誉れ高き勲章を齢九歳の身で授与された英雄ティアナ・ヘルシングが信頼する部下の一人であるアニーシャ・ヘルムート・シュリャホーワ伍長の凄惨な戦場記録を少し覗いてみよう__

 

 

 

 アニーシャ・ヘルムート・シュリャホーワにとって初めての時は震えが止まらなかった。塹壕からスコープを覗いて見ればほら、協商連合所属の陸上部隊のクソッタレが反対側の塹壕から身を乗り上げてくる。

 カチッと音を鳴らし引き金を引けば眼球から抵抗なく侵入した銃弾は奴の頭蓋を砕き脳髄を撒き散らし体は塹壕へ逆戻りだ。

 ふと、私は気が付いた。構えていたライフルの金具が擦り合いカチャカチャと小刻みに鳴っているのを、人を撃ち殺したという現実により震える全身と撃った反動で傷んだ骨が教えてくれる。

 人を殺した、他の誰でもないこの私が……銃を構えて標準を定めて弾を装弾し、引き金を引き撃ち殺した。

 

「良くやったシュリャホーワ伍長。だが虫を一匹殺した程度で泣き出す様ではいけないぞ?」

 

 隣を見れば未だカタカタと震えながら罪悪感と恐怖で知らぬ間に涙を流していた私を嘲笑う上官が居た。何故笑って居られるのだろう、私よりもうんと年下だと言うのに。

 

「さぁ伍長、ここでの散歩はお終いだ。名残惜しいが帰るぞ」

 

 ティアナ・ヘルシング少尉、片銀翼突撃賞を受勲した帝国の切り札の一人にして過ちその物とも呼べる人。こんな頭のおかしな()()だと分かっていればこんな部隊に志願したりなどしなかったのに。いや、過ぎたことを悔いて何になると言うのだろう。

 

「了解……しました」

 

 淡々と少尉殿の後を着いていく。塹壕を戻って行けば連中が投げ込んだ手榴弾の餌食になった友軍が黒焦げになって倒れている。その近くでは体の一部が炭と化し耳穴から大量の血を吹き出しながら座り込んでいる者も複数人いた。恐らくだが至近距離で爆発を受けたが為に鼓膜が破れると同時に飛んで来た破片で顔面がボロボロになったのだろう。

 仲間の死を悲しむより自身が人を殺した事に対して哀しむとは、我が事ながら都合の良い性格をしている。

 保身に走る訳ではないが仲間の死を悲しまない訳ではない。真横に居た仲の良い同期が脳を吹き飛ばされて死ぬ事や不発弾を誤って踏み木っ端微塵に吹き飛ぶ同期もザラに居たのだ、泣き叫ばない訳がない。

 

「………伏せたまえ伍長、どうやら連合の阿呆共はまだピクニックがしたいらしい」

 

「ッ……」

 

 少尉殿の言葉通り塹壕へ身を屈めると案の定頭上を弾丸が通過した。一瞬の気の緩みすら許されないこの世界(センソウ)、まったく清々しい程にこの世の中は夥しい量の数奇な歯車で回っているらしい。それとも神々は我々の様な矮小な存在を嘲る為に戦争を続けさせているのだろうか、だとすれば私は本格的に火薬庫の人間と仲良くする運命にあるのやも知れない。

 

「デグレチャフ中尉は未だ雪山から帰って来ないしで暇で仕方ない。まったく上層部の能無し(クズ)共め、まだライミー共とのランデブーの方が数京倍マシだ!」

 

 普段愚痴を零す姿を見せた事のない上官が珍しく顔を訝しめ上層部の人間に怨佐の念を溢れさせている。

 同意見かと問われれば、まず間違い無く「Ja」と答えるだろう。首輪の掛け方を間違えた飼い主に苦しい思いをする飼い犬が機嫌を損ね食い付きかねない状況と良く似ている。きっとこの上官なら己の野望の障害となるなら祖国だろうが何だろうが問答の余地無く滅ぼしに掛かってくる。

 

「シュリャホーワ伍長」

 

「は、はい!」

 

 突然、先程の激情が鳴りを潜め普段通りのいけ好かない声色で私に呼びかけて来た。

 

「君は仮に無事に帰れたとしてこの後何があると考える?」

 

「質問の真意が理解出来ません」

 

 くるりと体を反転し、私を舐める様な目線で問う少尉殿の真意の全てを、推し量る事は現時点の啓蒙では心許なかった。

 未だ鳴り止まない戦火の轟音を遠くへとやり上官の言葉へ耳を傾ける。彼女の言葉は凡人には理解できない、しかし汎ゆる物事の本質を捉えたその言霊は聞き逃すには勿体無い。

 

「ではヒントを与えよう。このまま行けば我が帝国は間違いなく勝利する。しかし協商連合の連中は顔を真っ赤にして周りの痴呆共と手取り合ってダンスに興じ兼ねない。そうなれば……」

 

 つまりはアレだろう、常日頃から呟いてる列強諸国を巻き込んだ大きな戦争、【世界大戦】を暗示してるのだろう。あゝ恐ろしくて敵わない、悪名高き彼女の思考回路をほんのりとだが理解出来る様になってしまった自分自身が恐ろしくて敵わない。

 

「我々も舞台に強制参加の上で独り寂しく踊り狂う事になる……という事ですか?」

 

「八〇点だ伍長」

 

 隣に敷かれた塹壕に手投げ爆弾が投げ込まれ戦友の断末魔が聞こえて来た。それでも少尉殿は歌う様に語る。まるで仲間達の悲鳴が聞こえていないかの様に嬉々として私に囁く。

 

「孤独なダンスは私も御免被る。しかしもはやこのまま行けば避ける事は不可能、であれば各々が楽しく踊るのをただ眺めているだけなんて()()

 

「火種を作るのはあくまで我々、だけど勝手に焚きつけるのは連中なのだよ伍長」

 

「我々は北風と太陽の太陽だ。列強諸国が北風の如く協商を奮い立たせようと圧倒的武力の前では膝を突く。ならば我々が太陽となり連中を誘導すれば良いのだよ」

 

 正直この会話を報告書に纏め上げて上層部に提出すれば国家反逆罪及び交戦規定の侵害の罪で死罪に出来るがそうなると帝国の支持率やプロパガンダに対する影響力の低下が懸念されるので却下となる。

 

「砲撃が強くなって来たな、急ぐぞ伍長」

 

「はい」

 

 自らを機械と律し淡々と命令に従えば良いのだ。例え叛旗を起こそうが起こさなかろうが待っている結末は少尉殿の言うとおり悲惨な戦争だけ、そこに気付いてしまえばもう同じ穴の狢である。

 

「あのゴミクズ共と踊るのは少々腹立たしいが贅沢は言えまい」

 

 帝国は協商連合による不可侵条約の破局を前提とし、終局的段階の位置において重大な選択を迫られている。踊るも踊らないも、結局は歯車の嵌り具合で汎ゆる具合に帰結する。

 故に帝国としては、少尉殿の言う通りゼートゥーア准将閣下やルーデルドルフ准将閣下の様な聡明かつ大局的に状況を示唆出来る切れ者が指揮する以外は破滅とも言える大戦への道のりを刻一刻と歩む事になっている。

 たった一つの手違いが、万人を巻き込む凄惨な事態を招き兼ねない。

 

「まったくその通りですね」

 

「おや?ようやく伍長も分かってくれる様になったか」

 

 冗談じゃない。口が裂けても戦争至上主義のイカれに賛同など出来るものか、あくまでも私が賛同するのは上官だからと言うだけである。

 私はこれでも常識人のつもりである。今だって人を撃つことに嫌悪感は抱くし、人を人と思わない上官も同僚も同じ人間としての目線を汲みたくなど毛頭無い。不条理演劇は狂人同士で勝手にやってくれと言う訳だ。

 

「少尉殿に質問なのですが何故連中は情報操作に尽力しないのでしょう」

 

「簡単だよ伍長、連合も引くに引けない大局に至っている。今さら退ける何て選択肢を取るようならば今まで味方だった列強諸国に一網打尽にされてしまうのは目に見えている。

 だから下手に情報操作は出来ない、連合が一度我々に敗けた事実はどうあっても覆し様のない事実なのだよ」

 

「でしたらだからこそなのでは?風の噂では協商に援助をしている国の一部地域では除倦覚醒剤の流用は御法度と聞きました。そう言った面での情報操作程度であればやらないという選択肢は無いのでは?」

 

 底辺に属する兵士では入手し得難い情報は、大抵がホラ吹きが垂れ流した信憑性の薄い情報ではあるが大国として名高く、新参国と呼ぶに値するルーシー連邦は政治面での情報網は抜け穴があるらしく情報提供に尽力してくれる御仁の話では比較的信憑性は基準を満たしているらしい。

 

「なる程……良い所に目が行くな。確かにルーシー連邦は近年になってアンフェタミン類の除倦覚醒剤の取引は反対の運動が盛んならしいが、連邦は内部粛清の動きがまだあるらしく便乗の形に乗って撲滅運動に乗り出してる。魔導士にとって精神状態が左右され易いシラフの状態だと不安だと思うのだが………いやはや連邦の考える事は私にも分からん」

 

 本日何度目となるであろう『お前が言うな』と言う言葉が喉元まで出掛かったが抑え込む。

 常識に当てはめたとしてもルーシー連邦の考える政策は正直な所常識に当て嵌めたとしても信じ難い。そう言えばそんな事が先鋒の協商連合軍との条約違反でも似通った事態があったと記憶している。

 

「嘗ての協商連合の総力戦と何処となくですが似通ってますね」

 

「応、そうだとも、あれは馬鹿で愚かで愚図でキチガイで果てしなくイカれていた。()()に何の違いも有りはしない。結局のところ突き詰めれば戦争馬鹿であるのに我々と彼らで違いは無いのだ」

 

 またトリップし始めてしまった。除倦覚醒剤を使った素振りは見せなかったので恐らく感情が高揚して脳内麻薬が分泌されたのだろう。支離滅裂な発言が多くなっている。

 狂人の子守をさせられるのは()()()体調に直結するストレスを感じさせるのか。そう考えるとターニャ・デグレチャフの相手をさせられるレルゲン上官の胃が殺されそうになるのも道理である。

 

「さあ行くぞアニーシャ・ヘルムート・シュリャホーワ伍長、戦争の時間だ」

 

 そう綺羅びやかに狂気を含んだ笑みを浮かばせながら帝国の英雄、ティアナ・ヘルシングは塹壕を飛び出した。




 初めまして、イスカリオテのバカの【姉】です。

 シュリャホーワ伍長は大局を見る目がありますが、それを活かせません。この時代にしてはまぁまぁ珍しい自分本位の資本主義的思考回路をしています。

 これは単純に自分の本性を未だ自覚していないが為に起きた誤差です。自分では大義名分の下、私刑を正義と称し振り下ろしているに過ぎません。
 如何なる場面で本性を自覚するのか私にも分かりませんがもしそうなった場合、きっと彼女は今の上官ではなく同じ資本主義的思考回路の持ち主であるターニャに着くと思われます。

 私は愚弟と違い長く話すのが苦手なのでここで切らせて頂きます。

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 はい、イスカリオテです。姉の作ったオリキャラであるシュリャホーワ伍長なのですが「誰がここまで悲惨な目に合わせろと言った?」の限りですね。
 別にモブが死のうが構いませんしキャラが不幸な目に会おうと気にしない方針でしたが何でここまでリアルに死体の描写書けるんですかね?(困惑)


 次回はまたもシュリャホーワ伍長の苦労を描いた与太話。
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