人間戦記   作:イスカリオテのバカ

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 何を考えて姉がシュリャホーワ伍長をティアナと性格の違うキャラにしたのか分かりませんが正直言って滅茶苦茶書きにくいです。
 あと再び評価をお願いします。このままですとモチベーションが急降下して終いには失踪してしまうかも知れません。

    


【Unnatural Sistar's】

 気がつけば、私の意識はあの非常識極まりない謎空間から脱していた。

 しかし、その要因が戴けない。人類というカテゴリーにおいて、最も険悪する変態の声に引き戻されたのだ。

 仮にもし私が帝国法務官史ならば、MADの即刻銃殺刑にする法律を作ることを約束する。さもなくば人的資源をラッドと同じ量を消費する羽目になる。

 

「主はおられた! 奇跡だ!!! 信じる者は幸いなり!!」

 

 ムハンマドも驚愕する狂気的な瞳を宿し預言者の真似事に興じ虚空へ叫び散らすMAD。いやしかし、この世界にはあまり宗教的な物が流行っていないので実質的に預言者の様なものではある。

 

「落ち着かれよ主任、我々も事態を把握し切れていないんだ」

 

 口を閉じてくれるのなら土下座でも何でもしてやる。それが出来ないのならば黙って回れ右して彼処の崖から飛び降りて欲しい。きっと神の下へ行けると思う。

 

「おおデグレチャフ少尉!ヘルシング少尉!実験は、見事成功したぞ!!三人で共に神名を讃えようではないか!!!!!」

 

 信仰心と科学への渇望が化学反応を起こし、手の付けようが無い変態へランクアップしてしまった。もはや戦争がやりたいだなんて言ってる暇はない、今すぐにでもコイツを始末しない限り帝国に()()()未来は来ないだろう。

 

「さあ、さあ、私に奇跡の恩恵を見せてくれ!」

 

 近寄るな、むさ苦しい初老の男に蔓延られて喜ぶ程私は壊れていない。目麗しい女性と()()して最後を迎えた私にとって拷問より酷い扱いだ。

 

「デグレチャフより管制、九五式の制御術式は正常か?」

 

 一刻も早くこの場から去りたい気持ちはデグレチャフも同じらしく、私にドクトルが引っ付いてる隙に管制官へ助けを求める。

 できれば、技術的な障害から静止の声がかかる事を祈る。だが悲しきかな、曲がりなりにもクソッタレの神が悪戯に作り上げた呪いの品だ。()()に抗う術は限られている。

 

「見た限りにおいては。ですが観測機械の故障かもしれません」

 

「やむを得ない……九五式は封印し、研究所で御二方の品を検査するべきだ」

 

 Majestic(素晴らしい)、無理な進行は良からぬ結果を招く物だ。度が過ぎる慎重さがあってこその技術者だろう。これなら私とデグレチャフを見捨ててMADの子守をさせた件も水に流せる。

 きっと彼らはこの結末を迎えた際にMADを静止するために傍観者に徹したのだ。そう思えば許容範囲内である。

 

「何を言う!!今すぐ起動したまえデグレチャフ少尉!!」

 

 しかし、そう簡単に問屋が卸さない。若干希望が見えたが神の御使いを宣う障壁に阻まれたが故に、楽園という名の安全地帯への活路は閉ざされた。

 

「頑張りたまえデグレチャフ少尉、私は一足先に貴官の雄姿を見学させてもらう」

 

「何を言っているのだ、ヘルシング少尉。君の九五式も起動するのだぞ?」

 

「…………え?」

 

 ()()()()()()。まさかザミエルの魔の手はリップバーンでは飽き足らず私まで狙いを定めたのか?ならいっそう標準はあそこで狂喜乱舞してるMADにして欲しい。

 

「……起動します。理論上成功するか吹っ飛ぶかの博打です。私は後者に口座の全額を賭けます。負けた際はデグレチャフの口座に振り込んどいて下さい」

 

「嗤えないジョークだなヘルシング、まぁ私も金が増えるのは嬉しくもあるが哀しくもある」

 

 中々にユーモアセンスに富んだ問答だと思う。何方にしろ損得勘定は私とデグレチャフの間だけの誓約だ、このご時世で金を使う機会など軍人には回ってこないだろう。

 そんな事はさておき、演算宝珠の回路に魔力を走らせ、四核の同調を開始。途轍もない魔力の奔流により巻き上げられる塵を目尻に絶大な性能に目を丸くする。見ればターニャに関しても同じ表情だ。

 なるほど素晴らしい発明だ。だが、誠に遺憾ながらこいつは呪いの品だ。 

 

「おお、主の奇跡は偉大なり。主を讃えよ、その誉れ高き名を」

 

「賛美せよ。我ら主により産み落とされし御子。共に主を崇めよ」

 

 普段と比べれば明らかに声色が違ったそれは、通常の思考回路を持っていればまず吐く事のない主を讃える言葉だった。

 

「成功した?………まさか、本当に!?」

 

 観測班の疑問の絶叫が禍根へ投げ込まれた事により、我に返った。

 

「………今、私は何を?」

 

「ありえない……そんな、そんな馬鹿な話がある物か…よりにもよって…この………私が?」

 

 余りにも大きなショックは全身を巡り、体の自由を奪っていく。あれ程愚弄した神が私を嘲るかの如く、このような仕打ちを打って出るとは。

 正直、ターニャよりもショックの度合いとしてはこちらの方が大きいやも知れない。

 

「ああ、少尉。君もわかるかね? この信仰が。奇跡だよ奇跡!」

 

「「奇跡?」」

 

「唱えたまえ、主への賛美を。見たまえ、奇跡を」

 

 ここまでが悪夢のような事実。神などといった超常的存在とご対面出来たのは僥倖だったが、それ以外は()()()()()()()()()以下だ。頼むからこの忌々しい記憶を掘り返すこの場から逃げさせてくれ。

 

 そこで来た朗報こそ、わざわざ西方から共和国が宣戦布告。限界まで落ちていた気分は多少晴れる結果となった。

 しかしである。如何にウォージャンキーと言えども、極限まで疲労しきった肉体と不安定な精神は私に追い打ちを掛け、素直に喜ばせてはくれなかった。

 

___なお、博打の件は有耶無耶になった。

 

 

❏❐❑❒❏❐❑❒❏❐❑❒❏❐❑❒❏❐❑❒❏❐❑❒❏❐❑

 

 

【幼年学校 寄宿舎】

 

 私、アニーシャ・ヘルムート・シュリャホーワの朝は苦い珈琲から始まる。

 

「おはようイルゼ、珈琲はいるかしら?」

 

「アーニャには悪いけど遠慮しとく、低血圧には何しても無駄よ。」

 

 大して美味しくもないたんぽぽコーヒーに舌鼓を打ち朝を迎える。のそのそと、隣接した部屋から顔を覗かせた友人、イルゼ・ハイドリヒは普段は女傑の様に規律を重んじる性格をしている。

 しかし朝に限ってはその限りではない。低血圧なせいで、ご覧の通り普段の面影を欠片も感じないだらしなさを曝け出している。

 

 私とイルゼは同期の女性陣と比べ些か身長が高い。栄養も二人とも両親が多少食事に気を配れる程度の賃金は稼げている為、ボディも出る所は出ている。

 とは言え、私とイルゼには決定的な違いが存在する。端的に言えば私はコミュニケーション能力が彼女と比べ低い傾向にある。嫌われている訳ではないのだが、彼女と比べて同期の態度はどこかよそよそしいのだ。

 他人と話すのが苦手な自覚はあり、どうにか改善しようとした過去もある。しかし、それの努力は徒労に終わった。

 

 それはさて置き、本日は部隊への配属先への移転登記日だ。幸いな事にこの仲の良い友と同じ実戦部隊への配属だったのは僥倖だろう。

 この国の人は皆言う。戦え、祖国の為に戦えと。しかし私は常々思う。()()()()()()と。

 如何に祖国の勝利を願うが為に志願性を取って入軍したと言え()()()()()()()られてはい(Ja)と答える輩は彼の銀翼と片銀翼くらいだろう。私は違う。私は御国の為に命を捨てるのではなく家族と隣人の為に氏に抗うのだ。

 それを全う出来る職場が魔導師だっただけの話なのだ。

 

「「いただきます」」

 

 後方の、舌鼓を打つ美味な食事と比べるのすらおこがましい前線付近の下兵の為の食堂の料理は、味どころか栄養バランスすら考えられていない()()()()()為だけに出された料理に、ようやく適応してきた。

 

「ねぇアーニャ、あの噂本当に信じる?」

 

「噂?ああ、あの噂好きの女が言ってた隊長さんの正体?」

 

 本名は知らない、しかし私達下官間では一人の兵がここ最近目立っていた。セレブリャコーフの友人のエーリャと呼ばれる人物が寄せ集めた情報は不確かな物も含まれて入るが、概ね当たりが多いので有名だ。

 それに不興を買うか好感を買うかは人によるだろうが、私とイルゼは圧倒的に前者である。理由を上げればきりがないが強いて言えば飄々とした性格と情報収集の速さだろう。

 正確に言うと()()というよりも()()()()の方が的を得ているやも知れない。

 

「銀翼と片銀翼が仲良く小隊のお守りの任務。そしてそこに烏合の衆らしく引っ付く新兵に私達も着くと……」

 

「貴女本当に捻くれてるわね。そうもあの女の子の情報が信用ならないの?」

 

「あら?ならイルゼは信じるの?」

 

「まさか、それならサタンの方がまだ仲良く出来そうよ」

 

 実を言うと根本的な部分では、彼女と私の嫌いという定義が異なる。私の場合論理的に考えた末に、得体の知れない情報収集能力を有するあの女が嫌いなのに対し、イルゼの場合は生理的に受け付けないらしい。

 よく居るではないか、初対面であるにも関わらず顔の形状や歩き方、言動から挙動の全てがいけ好かない者。それがイルゼにとってのエーリャなのだ。

 

「まぁ彼女が砲兵隊支援の観測班になってるだけ安心ね。まだ上官が見張っててくれるもの」

 

「それより私よ。貴女は後方だからまだマシよね……まったく、銀翼の教育費は幾らなのかしら」

 

 淡い期待と、特大の不安を抱えながら、私とその友人は朝食を済ませた。

 

 

❏❐❑❒❏❐❑❒❏❐❑❒❏❐❑❒❏❐❑❒❏❐❑❒❏❐❑

 

 

___《数日前》帝都 ___

 

 

「転属、でありますか?」

 

 九五式専任試験要人としてモルモット扱いされる技研から漸く人としての扱いが受けれる許しを得た。二人で毎日神を呪ったのは徒労に終わる事がなかった。

 もし仮にあの転属届けが受理されなければ、単身協商連合の共和国を跨いだ先にある連合王国に建設されてるバカでかい時計塔を爆破してやったと言うのに。

 正直転属云々の事情を抜きにして私個人の願望成就を目的とした上でやりたい気持ちが燻っている。

 

「ああ、転属だ。上はエース二名を遊ばせる気は更々ないらしくてな。第二〇五強襲魔導中隊の第三小隊隊長、及び補佐官ないし副隊長だ」

 

 素晴らしい。やっとこさ部下を持つに至ったわけだ。この幼馴染と、切っても切れない縁に結ばれているのはあの忌々しい事件(九五式暴走事件)以来諦めている。

 これからだ、これからがかつて大隊を率いた私の腕の見せ所だろう。

 

 化物を構築し 化物を兵装し 化物を教導し 化物を編成し 化物を兵站し 化物を運用し 化物を指揮したこの私に掛かれば、たかが知れている()()を教育するなど、余程のロートルとアマチュアじゃない限り失敗しない。

 

「それと、おめでとうデクレチャフ少尉。先の戦功で貴官には航空突撃章が授与される。流石に銀翼と比べると劣るがな」

 

「ありがとうございます」

 

「そしてヘルシング少尉、貴官も戦線には参戦して無いながらも見事な後方支援であった。今後もその手腕を奮ってくれるのを期待している」

 

「至極恐縮です」

 

 若干不服そうな表情が読み取れたが、上官からすれば愛国心故の戦場に赴けなかった事に対する雪辱だと処理し、好感すら抱けた。実際ティアナにとってもそれはあながち間違いではなく楽しみにしておいた戦場に行けなかったのは精神衛生上大変よろしくない。

 それはそれとして両者共々答礼。手際よく宿舎の荷物の整理に取り掛かる。テキパキと進めて行き私物を将校用旅行鞄に詰め込んでいく。女性としても、軍人として最低限の荷物だけだった為少なくて済みすぐ様管理責任者に対する辞令。提示しさっさとトンズラする。

 幸いにして、拠点への移転は問題なく行われた。指定された友軍部隊の中隊長を始めとした補佐の副隊長達との面会となった。

 

「第二〇五強襲魔導中隊の第三小隊副隊長へ配属された、ティアナ・ヘルシング魔導少尉だ。先達の手を煩わせない事を誓おう」

 

「よろしく少尉、まず中隊長に代り着任を歓迎しましょう。第二小隊員のアドレア・ジョーンズ軍曹であります」

 

 素晴らしい。末端の兵ですらこれ程の覚悟と度胸を持ち合わせているとは。仮に前世で彼が居たのであれば間違いなくラスト・バタリオンに勧誘していただろう。

 

「こちらこそ、よろしく軍曹。厚かましくあると思うが、縦社会に殉ずれば貴官は私よりも階位は下なのでこの口調で行かせてもらう」

 

「片銀翼保持者に覚えてもらえるのは光栄でありますな。早速ですが隊長方から通達された作戦と少尉殿の子守り……失礼、教育なされる新兵達の資料です」

 

 渡された書類に目を走らせる。一瞬、何が書かれているのか理解に苦しんだ。一思いに書類を引き千切らなかったのは上官としての矜持故のものか、はたまた思考の放棄によるものか。

 

「軍曹、これは未経験の新兵の充当と聞いていたのだが……私は児童預かり所の入園手続きに目を通したのか?」

 

「仰っしゃりたい気持ちは十分痛み入ります」

 

 分かるのか、この書類に書かれている情報が何の偽りもない事実だった場合の絶望を。これでは愉しむどころの話ではなく、私が唯一()()()戦争である()()()()()()()戦争に発展する。

 人は皆闘争本能を内に秘めている。それが顕現するのは何時の世も命の危機に瀕した時だ。それは例え新兵であっても変わりはない。しかし、ここに書かれている事が事実ならば愉しむ間すら無いに等しい。

 

「率直に申し上げますと第三小隊の練度不足は目を当てられない程の物です。それに関しましてはシュワルコフ中尉も分かっておられました」

 

 そうだろうな、じゃなけりゃ一体どれ程の無能だろうか。

 幼年学校の基礎課程を修了した魔導士、聞けば才能に恵まれて何色にも染まっていない優秀な兵と捉えるだろうが現実はその逆、戦場におけるセオリーを何一つとして理解していないアマチュアなのだ。

 魔導の基礎を齧っていればこの決定が如何に馬鹿げた決断か分かるだろう。ティアナの信条以前の問題として洗浄において基礎課程を修了したばかりの兵など、肉壁どころか邪魔者でしかない。自分で考えず敷かれたレールを何の疑いも持たず走る列車など危ない云々以前の問題である。

 

 そして、このある意味戦力外通告に等しい兵たちを率いる事になったのが我らが第三小隊。要するに隊全体としては期待してないが()としての戦力動員としては多少の信を置いている訳だ。

 

「で……これを受託したのか、私の部隊の隊長殿は」

 

「何分急な通達でしたので。拒否権もない上、教育的指導を目的とした軍功を得なければなりません」

 

 分かっていた事とはいえ、いざ言われると中々に堪えるものが疼く。せめて多少の融通は聞かせて欲しいものだ。練度不足の固定戦力は先進にエサを釣ったまま吸血鬼の群れに突っ込むよりも無謀極まりない。

 キャリア? 戦績? 今更そのような物に固着する性分では無いが要らないわけではないのだ!

 

「皆まで言うな。私だって命令されたのならば()()()ではなく()()()()と言ってやるところだ」

 

「流石帝国が誇るネームドですね。ともに戦える事は名誉であります」

 

 しかし哀しきかな、軍人には『はい』と『YES』と『ja』しか返事は存在しない。ましてやティアナはターニャに次ぐ帝国の主要戦力、その存在は生存している事実だけでも十分なプロパガンダ効果を発揮する。裏を返せばイメージを崩す事は自らを無能だと自己紹介してるに等しい。

 だからそ厄介な存在に追っかけ回される事になったと言えよう。いっそ邪魔者達をターニャと裏口合わせて一斉放射で皆殺しでしてやろうか。

 

「うむ、そうだな。これは存外にヴァルハラ行きの通達か」

 

「これでもオブラートに包んでいる気らしい。帝国主義者もこれには参ることだろう」

 

「デクレチャフ少尉殿!?」

 

 満を持して登場した我らが隊長の顔色は幼馴染だからこそ察せられる色をしていた。どうやら会議も終わったらしく急ぎ足で外に待機してる新兵達の元へ向かうつもりらしい。全く不愉快極まる。

 

「ではなジョーンズ軍曹、次は塹壕の中で会おう」

 

「早く行くぞ、遅れてしまっては示しがつかん」

 

 

 

 

 帝国軍、西方方面司令部直起動打撃群第七強襲梃団、第二〇五強襲魔導中隊所属ティアナ・ヘルシング少尉とターニャ・デクレチャフ少尉の第一印象は、まず誰もが目を奪われる病的なまでに白い肌と酷く濁った印象を与えるキツい目つきだった。

 予想できるか?あの厳格なシュワルコフ中尉がホクホク顔で連れて来た銀翼及び片銀翼保持者が幼年学校どころか入学資格すら満たさないような子供だったのだ。蒼紫の瞳と白く透き通った人形の様な肌、独特な跳ね方をした髪型の色素の抜けた金髪以外はターニャ・デクレチャフ少尉と瓜二つなのも驚愕の理由だろう。

 

 次に感じた()()()()()()()()()()()点だった。常識に当てはめればこの場に相応しくない年層の少女二人が軍服に身を包んでいるのは可笑しいのかも知れない。だが、今この場に彼女達がいる事こそが寧ろしっくりする。

 

 そんな私の不安を露知らず、私の同期が声を上げた。

 

「クルスト・フォン・バルボルフ伍長、イーダル=シュタイン幼年C大隊第一中隊より参りましたっ!」

 

「ハラルド・フォン・ヴィスト伍長、同じくイーダル=シュタイン幼年C大隊第一中隊より着任いたしました」

 

 物好き二人がはつらつとした表情で名乗りを上げる。私やセレブリャコーフの様に徴兵制による半強制送還ならば文句を言う立場に立てるかもしれないが、彼らの様な志願兵は正直なところ埒外の存在だ。きっと思考回路が全面的に献身的かつ保国的なのだろう。

 事実、徴兵制度による新兵は彼らを不審な目で見詰めている。

 

「アニーシャ・ヘルムート・シュリャホーワ伍長、イーダル=シュタイン幼年D大隊第二中隊の出自であります」

 

 この場におけるたった二人の徴募組における心境としては疲労を覚えた。順調に行けば、組分けは同じ幼年学校出身の者同士で組まれる仕組みとなっている。つまり徴募組の私とセレブリャコーフは隊長と副隊長の何方かと組む事になるのだ。

 

「貴官が私とペアを組む新兵か。ティアナ・ヘルシング少尉、貴官と同じくイーダル=シュタイン幼年D大隊からの出だ。仲良くやろう」

 

 そう言って笑った少尉殿の目は、濁っていた。

 いや、口では労いに等しい事を言ってくれては居るのだが如何せん、壇上に登った時のあの表情が頭から離れずにいる。

 

「とは言ったものの。無様を晒す様な士官候補生を子守するつもりは毛頭ない。そういう奴等は須らく死ぬに越した事はない」

 

 優しさと圧政的思想が入り混じり過ぎた情報量に思考が頓挫し掛ける。それは、最前線で戦ってきたことにより得た教訓か。はたまた単なる持論なのか分からない。

 

「隊長殿からのありがたい御言葉だ。聞いておきたまえ」

 

 雰囲気が変わる。何を言い出すのかワクワクしている様な表情を浮かべる副隊長の視線の先には、悠然と佇み気を伺うターニャ・デクレチャフ少尉の姿があった。

 

「傾注! この場に集まった勇気ある新兵諸君に告げる。諸君は祖国に詰め寄り軍衣に身を包んだ以上、為すべき事を為せ。さもなくば臆病者と断じ即刻退去してもらう」

 

 簡潔に纏められたそれは、使えれば()()()()使い潰し使えなければ()()()潰すという意思表示にも思えた。

 呆然とその意志を噛みしているのも束の間、気が付けば野外へと蹴り出されていた。

 

「さあ行くぞシュリャホーワ伍長、愉しい共和国から降り注ぐ野戦砲の雨あられの時間だ」

 

「え、ちょっ…ええ!?」

 

 着任早々に塹壕貴族の仲間入りを果たし共和国軍の定期便を浴びる羽目になった。

 そして来るわ来るわの榴弾のスコール。魔導士として基礎技術が基準値に達しているかの再確認が待っていた。それと同時に私たちは理解した。今まで如何様な理由で士官候補生が給料泥棒呼ばわりされていたのかを、この場において給料泥棒以下のゴミであるのかを。

 

 踏んだり蹴ったりな地獄を踏破し、私たちの何人かは精神がブッ壊れた。

 特筆するなら、クルスト・ハラルド両伍長が隊長と副隊長に不敬にも盾突き、呆れた両名は中尉殿との決断で懲罰は表向きされなかった。

 

 ………そう、表向きはの話だ。

 

 彼らは単純に前線での面倒が見きれず後ろに配属されたのだ。

 

 

 

 その結果が、地を赤く染め上げる事になるとは当時の私には予想し得なかった。




 作者はエーリャは好きです。諜報部員とかカッコいいじゃないですか。ですがここは腹を括ってシュリャホーワ達には嫌われてる設定にしました。

 理由としましては諜報部という得体の知れない機関の人間に近い性質をもつエーリャは、少々性格に難があるシュリャホーワには受け付けなかったと言う設定です。
 人間誰しも、何処からともなく情報を入手してくる人間を無作為に信頼しませんよね?私だったら幾ら人が良かったとしても一切信頼なんてしません。


 

何処から始めます?

  • ライン戦線から(十中八九遅くなります)
  • ヴィーシャ登場(シュリャホーワも登場)
  • お好きにどうぞ(これが私的に一番楽)
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