仮面ライダービルドと天気の子の簡単なクロスオーバー小説になります。
ライダーとクロスはしてますが、変身させる予定はありません(笑)

天気の子 本篇終了後
ビルド  本編終了後

ビルドに関してはまだグリス映画などを見ていない部分もあるので、一部矛盾する箇所もあるかもしれません。

2019 9/29 完結しました。
ありがとうございます。

1 / 1
降り続く雨と馬鹿二人と自己犠牲と

「ドッペルゲンガーと平行世界?」

 須賀さんから電話で呼び出された僕は、須賀さんから提案されたバイトの内容を確認していた。

バイトの内容は3年前と変わらない。

歴史と権威ある雑誌(胡散臭いオカルト雑誌)」に寄稿する記事の取材。

3年前、100%の晴れ女……陽菜さんの記事を依頼された時となんら変わりない。

違うといえば

「もう3000円じゃやりませんよ?」

「心配しなくても3000円より払うよ」

と須賀さんはニヤニヤと笑みを浮かべる。

 

3年前、島から家出してきた僕にこの小さな編集社の社長をしているCEOをしている須賀さんがくれた仕事。

それがインタビューを記事にするためののテープ起こし、伝票処理、そして料理とかの雑務だった。

月給は3000円。

 

……出るとこに出たらすごく怒られそうな金額だったらしい。とのちに当時一緒に働いていた夏美さんから教えてもらった。

まあ当時の僕は16歳、履歴書も出せなければ身分も証明できない。

挙句当時住んでいた島から家出してきていた家出少年だったのだ。

 

当然世間はそんな怪しい人間を雇わなかった。

どこに行っても落とされたり罵倒された

そんな当時の僕を雇ってくれたのが須賀さんだった。

 

月給3000円、住み込み、通信費無料。

今考えてみると怪しい未成年を雇うことも考えてみれば破格の条件であると思う。

その時僕がしていたのが「100%の晴れ女」取材だった。

当時は事務所にいた夏美さんと一緒に取材をしていたのだが……

 

「夏美はいないんだよ、別の取材に行ってる」

僕の考えを読み取ったのか、須賀さんが手で近くの掲示板を指さす。

 

英雄と幽霊取材!

そんな風な事が各社員の名前の横の予定欄のうち、夏美さんの予定欄に記入されていた。

 

「え、俺だけで大丈夫ですか?」

晴れ女取材以来のバイト。かつ初めての一人での仕事。僕の胸中には不安がよぎった。

ただでさえ仕事が遅いだのなんだの当時は言われていたのだ。

自分一人でこの記事を書き上げることができるだろうか。

 

「心配すんな、一人じゃねえ、陽菜ちゃんにもおなじ依頼をしてあんだよ」

「え?陽菜さんにも?」

3年前、僕がひょんなことから知り合った「100%の晴れ女」

 

天野陽菜、17歳。晴れ女取材時には14歳。

祈れば空を晴れに出来た少女。

もっとも3年前、その力は失われたのだけど。

今は分け合って須賀さんが保護者代わりになっていて、3年前に居なくなったバイト……まあつまり僕の代わりにたまに仕事を依頼してるとか。

僕より仕事が丁寧だからいいわーと夏美さんが言ってたのを聞いたことがある。

 

ほいと須賀さんから資料を渡される。

そこには二人の人間の顔写真と雑なプロフィールが書かれていた。

桐生戦兎。自称"天才物理学者”

そして

 

「あ、この人見たことありますよ須賀さん!格闘家の万丈龍我ですよね!」

万丈龍我、格闘家。

格闘技にあまり興味のない僕でもテレビで見たことある有名人の写真がそこにはあった。

 

 

「それがなー」

須賀さんがページをめくるように促す。写真と新聞の……テレビ欄?

写真にはスマホで撮影したのか位置情報と時間が入っていた。そういう風になるように設定したのだろう。

そしてテレビ欄。そこには万丈龍我の試合の生放送部分に赤線が引いてあった。

 

写真が撮られたのが……先日の21時のようだ。どうみても万丈さんと思われる男がどこかでみたマックの席に座りぼんやりしている。

それを見てからテレビ欄の時間を確認する。

 

「21時……!?」

「な?おかしいだろ?」

須賀さんはそう言いながら近くにあったテレビをつけて、録画されていただろう万丈さんの試合を流す。

 

<さあ21時!試合開始です!>アナウンサーがそう叫んだところで再生を止める。

 

「ちなみにプロフィールを見る限り万丈に兄弟もいない」

資料の何枚目かに挟まれていたホームページから印刷されたであろう万丈さんのプロフィールには確かに兄弟の記載はなかった。

つまり万丈さんに隠れた兄弟がいるか「万丈さんが二人いる」という事に他ならない。

 

「なんともうさんくさい"天才物理学者”の方には陽菜ちゃんに行ってもらった。お前はこの万丈?と思われるとこに接触して話を聞いてきてくれ」

「え、じゃあ俺はさっきの記事の「ドッペルゲンガー」のほうを担当するって事ですか?陽菜さんが並行世界で」

「並行世界のほうは頼りにしちゃいなけどな、なにせ経歴もわかんねえ自称”天才物理学者”だぜ?」

 

そう須賀さんと雑談を交わしながら、万丈さんのマックの写真をもう一度見る、ああ、やっぱりここ……

「じゃ、行きますね須賀さん」

「待てよ帆高、場所わかんのか?」

須賀さんがいぶかしげに見るが僕は笑顔で答える。

 

「ええ、とてもよく知ってる場所です」

ーーー3年前すべてが始まった、あの場所だ。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「ああああ……」

決まらねえ。俺の横には破られた封筒が置かれている。

そこには先日受けた面接の結果と返送されてきた履歴書が入っていた。

 

万丈龍我様、厳正なる選考の結果ーーー

もうなんかい見たかわかんねえ不採用通知に俺は頭を抱える。

 

「自分が何をしてきたか」みたいな部分でどうしても説明できねえ。

というか出来るわけがねえ。別の世界で地球外生命体と仮面ライダーになって戦ってた、なんて。

そしてもう一つ俺に立ちはだかる問題があって

 

「すいません、格闘家の万丈龍我さんじゃないですか!?サインください!」

この世界にはなぜか別の万丈龍我がいることだ。

理屈は戦兎に説明されたけどよくわかんねえので忘れてしまった。

 

「あー、ごめんな、よく似てるって言われるけど別人なんだわ」

本人だけどな!

この世界に来てから戦兎が作ったガラクタ……本人に言ったら怒るけどな

を売ったりもしたが、すぐにある壁に直面した。

 

金である。戦兎も俺も世界が変わる前の金ならば持ってたけど、そんなもんこの世界で出した日には大変なことになるらしい。

まあつまり、一文無しの状態から始まったのだ。

 

戦兎は頭がいいので体よくどこかの研究所にもぐりこんだらしいが俺はそうもいかなかった。

体を使う仕事ならいいんじゃねえかなとも思ったが、すぐに万丈龍我という名前が邪魔をする。

 

戦兎の場合この世界に桐生戦兎という人間はいないからある意味ゼロからのスタートだが、俺には万丈龍我がいてしまうのでどうしたって怪しまれるのだ。

戦兎は「俺が稼いできてやるよ」とはいうが、さすがにそれはなんかプライドが許さなかった。

 

「はあ……」

戦兎が帰ってくるのは確か大体いつも21時過ぎだ。

俺はここ数日間面接を受けてはマックの二階でうなだれていた。

通知をもらえればまだいいほう、その場で不採用を食らうのがほとんどだったからだ。

 

寒い懐具合をごまかすようにポタージュを啜る。暖かい飲み物が胃に入ったからなのか、それとも純粋に雨の中歩き続けて疲れたからなのか、俺の意識は落ちかけて……

 

「---どうぞ、奢りです」

美味そうな匂いで意識を覚醒させた。

 

「……へ?」

俺の視線の先にはいい匂いのする大きなハンバーガーが置かれていた。

とりあえず視線をそれから離して、ハンバーガーを置いた主を見る。

少し細めの10代くらいの青年……か?

少なくともこんな知り合いはこっちでも向こう(東都)とかでも見たことはない。

どっかで知り合ったっけ?と思い出そうとするが、こんな感じの優男はせいぜい昔一緒に戦った医者くらいだが、目の前のこいつはどう見ても医者ではない。

 

「すいません、なんか懐かしくて見てられなかったので……」

そいつは何か苦笑いしてどうぞ、と手で促す。

食べろってか?

……ま、奢ってくれるってんならありがたくいただくか。

俺はその大きなハンバーガーにかじりつき、三口ほどで食べきった。

あー……正直足りねえけど生き返る……。

 

 

俺のあまりの喰いっぷりの良さにそいつは目を丸くしていたが、俺が食い終わってから

「おう!誰だか知らねーけどありがとな!」

と俺が言うと俺の横に座った。

そいつは持っていたカバンからクリアファイルみたいなものを出して、机の上に置いた。

 

「万丈龍我さん……ですよね?」

あ!もしかしてこいつこっちの俺のファンだから俺にこれ奢ってくれたのか!?

だとしたら悪いが、こいつは間違ってないが間違ってることになる。

おごってもらった申し訳なさもあって俺は、知らないそいつに対して壁を取っ払って気楽に接することにした。

 

「あー、ごめんな?俺よく似てるって言われるけど万丈龍我じゃ……」

こいつは悪いことしたなあ。

いつもこれでこっちの万丈龍我ファンをごまかせてきたからこれでなんとかなんだろ。

 

「あ、申し遅れました。俺、森嶋帆高って言います」

俺の言葉を遮るように、森嶋帆高と名乗ったそいつは名刺を俺に渡す。

 

「株式会社K&Aプランニング……?」

「編集社ですよ、ちょっと万丈さんに取材したいことがあるんです」

取材?俺に何聞こうっていうんだ、こっちの万丈龍我については話せねーぞ。

そのいぶかしげに見ていた俺の視線に気づいたのか、帆高はクリアファイルから雑誌を取り出す。

「都市伝説って知ってますか?例えば幽霊とか天候操作とか宇宙人とか異世界とか」

 

その雑誌には「過去の東京には晴れ女がいた!?」とかいう見出しがあった。

あー……そういうなんとも胡散臭い《オカルト》系かあ……。

 

「ごめんな!俺そういうの詳しくねえわ!」

戦兎ならともかく、俺はその手のことがまるで分らなかった。

まあ、宇宙人というか地球外生命体には嫌というほど身に覚えがあるんだけどな!

あと異世界もな!

 

「そうですか……」

と残念そうな顔でうなだれる帆高。

こいついくつの男か知らねえけど、なんか犬見てえだな。

青年だとは思ったが、まだどっか顔幼いし。

 

「結局、万丈さんではないって事でいいんですか?」

帆高は何やらクリアファイルから取り出しながらこちらに尋ねる。

そこにはテレビの新聞欄といつ撮られたものかわからないが。俺の写真があった。

あー、試合の時刻と俺がここにいる時刻がかぶってんのか。

 

「ああ、俺は万丈龍我じゃない、よく似てるって言われるけどな!」

……まあ、ある意味本人だし。

 

「あー、そうなんですか。じゃあお名前なんて言うんでしょうか?ずっと俺万丈さん万丈さん言ってたんで申し訳なくて……」

……しまった、そこまで考えてなかった。

名前、名前かあ。まさかここで万丈龍我と名乗るわけにもいかねえしと考えていると頭に何かが走った。

そんな名前を使ったこともない、近いやつにその名前がいるわけでもないそんな名前が。

 

「長瀬だ」

なんでこんな名前が頭に浮かんだのかわからない。名乗るならヒゲとかカズミンで良かっただろ俺。

まあ万丈と名乗ってこっちの万丈やカスミに迷惑かけるよりはいいだろ。

「長瀬さん、ですか、今回は本当に失礼しました。本来ならこういうのは事前にアポとるものなんですけど、長瀬さんの所在ってわからなかったんで」

帆高は小声で「須賀さんめ……!!」とか呟いていた。

帆高はそいつの指示で接触してきたんだろうか。

 

正直俺は最初何らかの組織の人間とかかと思わなかったわけでもない。

だが、それにしては帆高はあまりにも隙がありすぎるし、弱っちそうだった。

本当に単なるオカルト雑誌の取材だったんだろう。

 

「なあ、そういう変な取材ならさ、知り合いに”天才物理学者”を名乗ってるやつがいるから紹介してやろうか?」

ハンバーガーをめぐ……奢ってもらった手前、なんもなしで帆高を返すのは何か気が引けた。

恐らくアイツなら帆高のネタになるような話くらいはしてくれるだろう。

 

帆高はその俺の言葉を聞くと苦笑いして

「そっちのほうには僕より出来の良い子が行ったらしいですよ」

と、机に広げていた胡散臭い雑誌やら写真やら新聞の切り抜きをしまっていく。

その中の雑誌の見出し、「晴れ女」を見て、俺は疑問にずっと疑問に思っていたことを帆高にぶつけていた。

 

 

「なあ、なんでずっと雨降ってるんだ?」

「え」

片づけを続けていた帆高の動きが固まる。

 

「ここ一か月くらいさ、ずっと雨なんだよな」

こちらの世界になった時にまず感じたこと。

それは常時降り続くこの雨だった。

日本を三つに割る壁もないし、地球外生命体もいなかった。

当たり前だろう。そういう世界をあいつ(戦兎)は望んだのだから。

だが、こっちの東都、つまり東京はずっと雨が降っていた。

強くなったり弱くなったりはしてるようだけど、雨はずっと降り続けていた。

東京も俺たちの知っている東都に比べて沈んでいる部分が多かった。

 

 

「長瀬さん、東京に来たのは何時頃ですか?」

「……ん?ああ一か月くらい前じゃねえかな」

あぶね、日ごろ長瀬なんて名前使わねえから反応できなかった。

 

「この雨は3年前から降り続いています。一日も止まずに」

「へ!?3年降り続いてるだあ!?」

帆高は下を向いている。今まで軽く接してきたのがウソのように、なんだか暗くなっていた。

東京が雲に覆われて、常時雨が降り続いているってのはわかっていた。

それがいつからかなんてことは初めて知って、ましてやそれが3年前なんてレベルで俺は驚愕した。

戦兎が「なんらかの力が働いている!調査する!」とか言ってはいたけど。

まだなにもわかってないとかぼやいてたなあ。

 

戦兎にもわかんねえことがあるんだなあ。

昔会った自称元幽霊の仮面ライダーのことも理解できなかったらしいし。

戦兎曰く「科学とオカルトは相性が悪い!!」とか言ってたが。

 

……オカルト、そうだ!

俺はさっきちらっと見えた記事の見出しを思い出して、軽く帆高に話しかけた。

 

「なあ、100%の晴れ女ってのになんとかしてもらえばいいんじゃねえの?」

俺も正直オカルトなんて信じちゃいない。

だが、地球外生命体だの火星のお姫様だのとそんなことがあった後だから、戦兎よりは信じる気があった。

だからか、その見出しの晴れ女って奴がいればこの東京を何とかしてくれるんじゃないかと思ったんだが

 

「その人は力を失ってしまったんです」

帆高は顔を上げて、先ほどの暗そうな顔ではなく、どこか遠い目をしていた。

 

「なるほどなあ、そいつが力を失ったから東京はずっと雨なんだな」

ありえねー話だとは思う。なまじ火星人やら地球外生命体見てなきゃ信じもしないだろう。

 

「長瀬さん、例えばなんですけど」

「ん?」

帆高が真剣な顔でこっちを見ていた。

その顔は先ほどまでのどこか犬みたいな顔ではなく、何かを決意した顔だった。

 

「この天気がその「晴れ女」の犠牲で収まるとしたら、どう思いますか?」

「犠牲?」

犠牲ってなんだよ、天気なんてものが人の犠牲で収まるのか

 

「晴れ女が人柱になれば、空は晴れたって話があるそうです……わかりやすくいえば生贄、ですかね」

「それは、お前…………っ!?」

人一人の犠牲って奴で狂った世界が元に戻るならそれは本来喜ばしいことって奴なのかもしれない。

 

戦兎は世界を作り替えた。だがそれはある意味、この新しい世界においてたった一人犠牲になったって事だ。誰もそれを覚えてない

頭痛がする。誰かが犠牲になればいい、生贄という言葉を認識してから、頭が痛かった。

俺はせめて後ろに倒れないように、席に倒れ伏す。

俺は……

「長ーさー!?」

叫ぶ帆高をよそに、俺の意識は静かに沈んでいった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

そいつは、生まれたことが罪だといわれた。

そいつは生きたい、と願った。

だが、世界はそいつが生きることを望まなかった。

あとから聞いたことだが、そいつは成長が早かったそうだ。

生まれて数年しかたってない子供。だが、そいつは高校生と見間違うほどに成長し、

俺はそいつを利用して金儲けをしていた。

人を食う異形の怪物。……いや、怪物の正体もまたほとんどは人だった。

食うものが人間であった、というだけだ。

下らねえどっかの会社の実験で誕生したその怪物は、当然のことながら人間に忌み嫌われ、駆除されていた。

怪物側も、人間に抵抗した。人間に怪物の原因となる細胞を感染させ、その数を増やそうとした。

完全に駆除されるわけにはいかなかったんだろう、彼らも生きている、人として、怪物として。

だが、人間はそれを許さなかった。当然だ、自分達を食う怪物なんてもの、容認できるわけがない。

だから組織だって怪物を狩ったり、人間に協力する怪物によって怪物を狩ったりした。

 

そいつはある事故によって誕生してしまった、新たなる怪物だったんだ。

今までの人を食う怪物の細胞よりもより凶悪な細胞。

 

人にも感染し、そいつと同類の怪物を増やす細胞。

 

人類にとってそんなものは許されない。

当然そいつは「駆除」対象となった。

 

俺からしてみればそいつは普通に恋もして、生きていた。

だがある日、世界から「死ね」と言われ、世界中がそいつを殺しに来た。

父親ですら、そいつを殺しに来た。

そいつは泣き叫んだ「生きたい」と

世界は拒絶して「死ね」といった。

 

そいつは最期、こういったそうだ。

「俺は最期まで生きるよ」と

 

最期までそいつは「人」として死ねたんだと、俺は思う。

だからこそ、そいつにとって死は救いだったんだろう。

だけど俺はーーーーーー

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「おい!万……長瀬!長瀬!」

「大丈夫ですか!長瀬さん!」

大声で目が覚める。そこは、たぶん病院の天井で、俺の横には帆高と戦兎、それに見知らぬ女の子が立っていた。

帆高が言うには、俺が倒れてから慌てて救急車を呼び、それから俺の持っていたスマホから戦兎に電話したらしい。

 

当時ちょうどこの女の子、天野陽菜から取材を受けていた戦兎は陽菜ちゃんと一緒にこの病院に駆け付けた、という話だ。

おそらく帆高から聞いてはいたからか、戦兎は俺の事を万丈とは呼ばず、長瀬と呼んだ。一瞬ぼろ出てたけどな!!

 

「……俺は」

なにか、夢を見た気がする。夢というか、なにか奇妙なものを。

俺であって俺の記憶ではない何かを。

ただ、今ならきっと、帆高の質問に答えられる気がする。

 

「なあ、帆高」

「はい!」

帆高はなぜか目に涙を浮かべていた。もしかしてこいつ倒れた俺を心配して涙流してくれたのか、知り合って大して時間もたってねえのに。

多分本当に良いやつなんだろうな。

 

「人柱がいれば、東京はまた晴れる……って言ったよな、お前」

「……」

「え?帆高……?」

 

それを聞いた帆高は、俺でなく、戦兎の横にいた女の子を見ていた。

女の子は驚愕の瞳で帆高を見ていた。

俺はあることを悟った。バカバカ言われてはいるが、勘は良いんだ、これでも。

寝起きだからか知らねえけど、勘がさえていた。恐らく、100%の晴れ女ってのは

 

「俺は、そんなの糞くらえだ」

「え?」

 

横では戦兎がなんだかニヤニヤしていた。

後で軽くはたいてやろうかアイツ。

 

「誰かが犠牲になって世界が救われた、とかいうのは悲しいじゃねえか」

 そうだ、本来は俺もすべての元凶(エボルト)の細胞を受け継いでいた。

ある男は俺も死ななきゃいけないといっていた。だが、俺は生きている。

 

それに、胸の中で何かが叫んでいるのだ

 

アイツ、ーーだって生きたかったんだ。と

 

結局望むのは完全無欠のハッピーエンドだ。悪いやつがいて、そいつを倒して世界は救われた。

みんな笑顔でそれでいいじゃねえか。

 

「どうした、万……長瀬、今日のお前なんかキャラ違くないか?」

戦兎が帆高の頭にポンと手を置きながら俺の横に座る。

お前芝居下手だぞ戦兎、帆高がなんか泣きそうになっていなければごまかしきれないレベルだ。

 

 

「うるせえ!なんかセンチュリーになる日もあんだよ!!」

「……センチメンタルだよお馬鹿!」

戦兎がなんかウルウルしてる帆高の頭をなでながら俺をいじる。

ついでに帆高は本人もなんかウルウルしてる陽菜ちゃんにも頭をなでられていた。

いよいよもってなんか犬みたいに見えてきた。

 

戦兎は笑いながら窓際に立った。

「誰がこんな世界にしたのかは俺にはわからない。けどな」

あ、あのどや顔は……いつものやつだなこいつ。

「てぇんさい物理学者の俺に不可能はない!いつかこの東京に晴れを取り戻してやるよ!

 世界が狂ってんならそれを治すのが科学者の仕事だ!」

病室に沈黙が訪れる。

うん、戦兎、初見の相手にそれは無理がある。

 

帆高は席を立ち、陽菜ちゃんを手招きする。

陽菜ちゃんはそれに応じて席を立ち、病室の端に行く。

「……陽菜さん、一つ聞いていい?」

「何が聞きたいのか大体わかるけど、帆高、何?」

案の定帆高と陽菜ちゃんは席を立ち、こちらから離れた場所でコソコソと何かを話している。

 

「変な人?」

陽菜ちゃんは答えず、苦笑いでごまかしているようだった。

「青年!聞こえてんぞー!失礼だろ!」

「すいません!!」

 

どうやら帆高はなんというか、そういう気質なのだろう。

とにかく弱い。弟気質というか。

見た目でいえば陽菜ちゃんより年上なのに帆高帆高呼び捨てにされてるのもそういう事なんだろう。

実際、今も戦兎に頭をぐりぐりやられている。

 

そんな帆高に

「あ、ねえ帆高、長瀬さん起きたんなら渡さないとだめじゃない?」

と、陽菜ちゃんが何かを思い出したかのように帆高のカバンを指さす。

「あ」

しまった、という顔で帆高は慌ててカバンから封筒を取り出す。

 

「長瀬さん、あの、これ少ないんですけど」

「お、おう?」

帆高からそれを受け取り、中を見る。

中には何枚か札が入っていた。

 

「へ?なんで?」

「取材料ですよ」

おお!正直寒い懐にはありがたい……けど、これを俺は受け取るわけにはいかなかった。

だって

「いや、俺はお前の取材に答えてねえんだ。受け取れねえよ」

 

ドッペルゲンガーとやらの取材には俺は結局たぶん役に立たなかった。

むしろこいつには貸しができてしまったレベルなのに。

「近いうちにビッグマック奢ってやるよ……仕事決まったらな、うん、出来るだけ早く」

受けた恩は返さなくちゃならねえ、それは最低限のことだ。

 

帆高は封筒を受け取り、カバンにしまう。

その横ではなんかやたら陽菜ちゃんがニコニコしていたが、なんかビッグマックに思いででもあるんだろうか?

 

俺は帆高を手招きし、スマホの連絡先を交換する。

近いうちに必ず礼はすっから、と言い含めて。

何故か戦兎も交換してた。お前交換する必要あんのか?

 

 

そして、帆高と陽菜ちゃんと戦兎は今日はもう帰ることにしたらしい。

俺は一応今晩だけは病院に残されることになってしまった。

最初は良い、今日で帰るから良いといったのだが、久しぶりに見た研修医……いや、今は小児科医らしい先生に押し切られた。

なんか雰囲気変わったな、あの先生。

 

 

「じゃ、今晩はおとなしくしてろよ馬鹿」

「長瀬さん、今日はありがとうございました。帆高のこと、またよろしくお願いします」

そう言って陽菜ちゃんと戦兎は先に病室を後にする。

戦兎はともかく、陽菜ちゃん、それじゃまるで君が帆高の保護者みたいじゃんか。

 

「……じゃ、俺も今日はこれで……あ、そうだ、長瀬さん」

最後、帆高は去り際にちょっとした提案をしていった。

 

……まあ、そのうち、どうしてもだめだったら頼ってみっか。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

陽菜さんと二人並んで歩く。

再開してからこんな風に夜遅くに歩くのは、初めてかもしれない。

基本的には陽菜さん家行くにしても僕の家に来てもらうにしても陽菜さんが17歳、翌日に学校もある年だから、普通に帰ってもらっていた。

今日は長瀬さんが倒れたのもあって、夜遅くなってしまったので、僕が送っていくといったのだ。

 

陽菜さんは僕の少し前を軽い足取りで歩いていた。

まるで、いつかの日を思い出す。

あの日もこんな風に雨が降っていた。

……まあ、三年間ずっと、雨が降っているんだけど。

 

僕は、陽菜さんに謝らないといけないことがある。

そのために僕は目の前を歩いている陽菜さんに口を開く。

 

「陽菜さ

「帆高」

ああ、こんなところまであの時と一緒だ、と。

陽菜さんもそれに気づいたのか、くすっと笑っていた。

ただ違うのは、彼女はもう「晴れ女」ではないこと。

体も透けてはいないし、空とつながってもいない。

 

「帆高、長瀬さんに話したんだね、あの夏の事」

……そうだ、僕は長瀬さんにその秘密を話した。

あの事件の後、晴れ女のことは記事になった。

長瀬さんが言った通り、今彼女の力があれば空が晴れるのではないか、という祈りの記事だった。

 

記事になったというだけで、彼女自身の特定までつながったわけではなかったのだが。

それでも、あの夏起こったことは僕らや僕らに関係した人間しか詳細は知らなかった。

もし、彼女が晴れ女だと知られてしまえば、多少なりとも彼女やその周辺の生活に影響を及ぼすかもしれない。

僕はその秘密を少しとはいえ、長瀬さんに話したのだ。

 

「……ごめん、陽菜さん」

「……糞くらえ、かあ」

陽菜さんは僕の謝罪の後、長瀬さんの発言をまねるようにそうつぶやいた。

 

「誰かが犠牲になって世界を救ってもそんなのは悲しい」と長瀬さんは言った。

僕はそこまで考えていたわけではない。

ただひたすらに陽菜さんに会いたくて、陽菜さんを人柱から救い出したかったのだ。

僕は選んだんだ、この狂った世界を。目の前にいる彼女を。

 

彼女はずっと悩んでいた。

あの夏の決断が間違っていたんじゃないかって。

沈んでいく東京を見て、私人柱になったままなら、私の力が戻ればって。

だから、僕は

 

「陽菜」

「……へ?」

陽菜さんとの距離を詰める。陽菜さんのことを呼び捨てにしたのは三年前以来だ。

それこそあの空の上で呼び捨てにして以来かもしれない。

 

傘を置き、雨に濡れる。

僕はポケットから三年前にも渡したそれを取り出すと、陽菜さんの左手を取って、薬指にそれを通した。

 

「僕は、君の「大丈夫」になるよ」

頼りはないかもしれないけど。と小声で付け足す。

誰かが彼女を支えていかなきゃならない。

いつか、戦兎さんのような科学者が世界を元に戻すのかもしれない。

でも、きっと膨大な時間がかかるんだろう。

 

沈んでしまった東京や狂ってしまった世界で、僕はそれでも君に付き添いたい。

そういう思いで、僕は陽菜さんに二度目の指輪を渡した。

 

「……ずっと、言えなかったんだ」

「え?」

薬指に通した指輪を見て、陽菜さんはつぶやく。

 

「指輪無くしちゃったんだ、私、あの日の空の上で」

「だから俺は陽菜さんが空の上にいることが分かって追いかけられたんだ」

「そっか」

陽菜さんはまるで雨の中でも太陽みたいな笑顔でニコニコしている。

 

「ふっふーん。三度目の告白だね!」

「え?」

三度……?えーと、ホテルの時と……と指折り数えていたら

陽菜さんに君ぃ、真面目だにぃといじられた。

 

陽菜さんは指輪を見ながらウキウキで前を歩き出す。

 

「あ、そうだ帆高、結局万丈さんじゃなかったんでしょ?長瀬さん」

そうだ、長瀬さんにあった理由の本来はそれだ。僕はいつの間にか晴れ女の話してたけど。

 

「……いや、多分万丈さんなんだよ」

え?どゆこと?と首をかしげる陽菜さんを横目に長瀬さんのことを思い出す。

 

彼は、東京の雨が降り続いていることを知らなかった。

あの当時、異常気象だなんだで確かニュースは海外にまで及び、連日連夜報道されていたはずだ。

それを彼は「知らなかった」

挙句この雨が一か月くらいしか降り続いてんなと言っていた。3年止んだことのないこの雨を。

それに戦兎と彼が呼んでいた人物がしょっちゅう万……と呼び間違えていたのも聞いていた。

 

「ドッペルゲンガーと平行世界……かあ」

もしかしたら、万丈さんは別の世界から来たのかもしれない。

そこでも僕や陽菜さんは出会うことができるんだろうか、なんてことを思いながら

後日須賀さんにする言い訳を考えながら陽菜さんを僕は送っていった。

 

後日、陽菜さんはしっかりそれっぽい記事を書き上げた(以外にも戦兎さんはそれっぽいこと話してくれたらしい)のに対し、僕の記事ができてないこと。それに

 

「帆高てめぇ!!猫拾ってくるのとはわけが違うんだぞ!!」

と怒鳴りつけられ、夏美さんの助手が増えた。

 

 




完結しました。
最後まで駄文を読んでくださったあなたに何よりの感謝を。
またどこかでお会いしましょう。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。