*
何度か巡礼路を往復して全ての導力灯を設置し終え、時間ぎりぎりになりながらも下山したエマ達。管理小屋で各々休憩していると、監督役のトーラから夕食に招かれた。
訪れたコテージの一室で彼女達を迎えたのは、テーブルに並べられた料理の数々。恐らくオルディス近海の魚介類がふんだんに使われたであろうそれらは彩り鮮やかで、香ばしい匂いが空きっ腹に刺さる。これには腹の虫も蝉さながらの大合唱であった。
「これを全部トーラさんが?」
「趣味の一つなんだよ。屋敷では使用人が中々作らせてくれないから、こういう機会でもないと腕を振るえなくてね」
朗らかに笑うトーラに促され席につき、そのまま食事が始まる。料理はどれも期待を裏切らない一品で、皆存分に舌鼓を打った。
「今日はお疲れ様。山道を何度も往復するのは疲れただろう」
「正直足が辛いです……毎年こんな準備をしてるんですか?」
「面倒だがね。ただ貴族社会ではこういった行事は決して疎かにはできないのさ。ラウラ嬢も分かるだろう?」
「まあ、色々と手間のかかることもありますが」
唐突に話を振られたラウラが微妙な顔をする。心情的には大いに共感できるが、そこまでぶっちゃけてしまうのも少々はばかられるのであった。
「明日はオルディスから司祭様や職人が来て、山頂の式典場を整えてもらう手筈になっている。君達にはその護衛をしてもらうからよろしく頼んだよ」
「式典とは具体的に何をするんですか?」
「よくある……と言ってしまうとなんだが、様式としては教会と地域所縁の儀式の合いの子でね。カイエン公当主が代表して女神に感謝を捧げ、繁栄を祈るといったものだ。特徴的なのは、山頂までの道中は松明を掲げて歩く点かな」
「松明を?」
「あくまで当時はね。君達が今日設置した燭台型の導力灯があっただろう。あれがその名残なのさ」
トーラが語る。巡礼路に十の篝火を焚き、その炎で松明に火を灯しながら山を登るのだと。そうして得られた十本の松明は、山頂の儀式場に捧げられると言う。現在では安全面を考慮して、見た目だけそれらしく似せた導力灯を用いているそうだ。
「どうしてそんなことを……」
「フフ。どうしてだと思う?」
意地の悪い笑みで問いを投げられ、考えるも答えは出ない。出身でもない地域の文化、それも祭事の由来など専門に研究でもしていない限り推測は難しいのが当然だ。
ただ一人、出身ではなくとも所縁がある少女がいた。
「焔の浄化……いえ、女神による新生が目的でしょうか?」
「……驚いたな。答えられるとは思わなかった」
「ど、どういうこと?」
「この辺りでは火炎崇拝の文化があったということです」
熱を生み出す。闇を照らす。不浄を清める。敵を滅ぼす。歴史を紐解けば、火が人類に与えた影響は計り知れないものがある。そんな火そのものを神聖視・神格化する考えが火炎崇拝と呼ばれるものだ。これは特定の地域に限った話ではなく、七耀教会の聖書にも女神が人に火を授けたという記述がある。
「夏至祭に合わせて行われる儀式なら、年に一度女神に焔を返し、新たに加護を宿した焔を授けてもらうといった意味合いがあるのではないですか? 篝火が十ある理由は……当時の有力者の人数か、清めるべき不浄の概念の数かな?」
「ほぼ満点だ。篝火の数には諸説あってハッキリしないからね。しかしよく知っていたな」
「昔文献に目を通したことがあるんです」
最後の発言は嘘だ。エマが推測を立てる根拠になったのは、トーラの説明がエリンの里で執り行われる儀式に似ていたからである。先んじて戻っていたセリーヌからの報告でも、島の裏手にある遺跡群からもエリンと似た生活様式が窺えると言っていた。
巨イナル一を生み出す原因となった二至宝の激突の後、この島まで弾き飛ばされた巨像を追って魔女の先祖である『焔の至宝』の眷属の一部はここに流れ着いた。そして長い年月を経て、彼らの生活や思想がこの地に根付いたのだろう。
故郷から遠く離れた地で、馴染み深い文化に触れるのは不思議な気分だった。
「ちなみに大陸中東部でも、女神と共に焔が信仰されている地域があるんです。あちらは
「へえ、不思議な共通点もあるんだね。あ、ガイウスがよく言ってる『風』も同じようなものかな?」
「ああ確かに。帰ったら訊いてみよう」
「……思い返せばレグラムの石碑についても良く知らぬな。今度帰ったら久しぶりに書斎を覗いてみるか」
馴染みの薄かった精霊信仰について興味を持ったラウラ、エリオット、マキアスの三人は思い思いに言葉を交わす。その様子を、嬉しそうにエマは眺める。
導力革命以降、急速に発展を続ける≪表≫と≪裏≫の時代の差は大きく開き、≪裏≫の世界は御伽噺となって久しい。今はまだ魔術が導力に優位に立てる部分もあるが、そう遠くない未来には自分達魔女も彼方へと置き去りにされるのかもしれない。
けれど過去と未来は地続きで、現代まで残った文明は過去を生きた人達の確かな足跡だ。そのことを良く知る
この知識が彼らの将来に役に立つことは、きっと少ない。
それでも、ふとした時に思い返してくれれば、報われるものもあるだろう。
*
夕飯の片付けを手伝った後、レポートを纏めて早めにベッドに入ったB班。寝息だけが聴こえる深夜に、エマは重い目蓋を開いた。
「ん……セリーヌ?」
「はいはい。ここにいるわよ」
ベッドの上で身体を起こすと、傍らの使い魔は尻尾を揺らしていた。
「今何時?」
「二時よ。時間ないしさっさとしなさい」
「はぁーい……」
寝巻から手早く制服に着替え、小屋を出る。
遊撃士が初めての赴任地を徒歩で歩いて土地勘を養うように、巡回魔女もまた初めて訪れる場所の霊脈を調べて回るのが習わしだ。特にこのブリオニア島は抜け殻とはいえ至宝が眠り、霊窟が封じられている場所。代々魔女が定期的に訪れる地でもある。ここしばらくはローゼリアが直々に行っていたが、今回エマにお鉢が回って来たのだ。
霊窟の仕組みについてはローゼリアに聞いている。島に三か所ある石碑に魔力を与えれば、別位相に隠された霊窟が現れるのだ。今回は位置確認だけで、霊窟の本格的な探索は明日以降の予定だ。
日中に調査していたセリーヌの案内で島を巡り、石碑の位置と霊脈の流れを頭の地図に書き込んでいく。これといった異常もなく、一人と一匹はその場所にやって来た。
「これが……」
「『
山頂まで届く百アージュ近い巨体の大部分は闇に沈んでおり、意匠どころかシルエットすらハッキリしない。ただその存在感だけがひしひしと感じられる。エマは頭を上げて、祖先が犯した罪の象徴を見上げた。
敵を滅ぼせという願いの衝突と融合の果てに生まれた巨イナル一は、その成り立ち故、自己相克によって無限に力を増していく性質を有している。過去に焔と大地の眷属が巨イナル一の封印に失敗したのは、際限なく増幅していく力を抑えきれなかったからだ。
このまま力を増していけばいずれ決定的な爆発が訪れることを察した眷属達は、巨イナル一の力が人間の闘争心に強く呼応する性質に目を付けて、七体の騎神を作り上げた。担い手たる起動者の意思──闘争を通じた願いによって巨イナル一より力を引き出して消費させ、巨イナル一を安定させるために。
そうして千年もの間、眠りと目覚めを繰り返しながら騎神は数多の戦場を駆け抜けてきた。善行か悪行かは別にして、騎神でなければ成せないことも多くあっただろう。しかし騎神は遥か昔の過ちのツケを、その時代の人間に払わせているとも言える。
「あと半分……」
旧校舎地下の封印機構は問題なく作動しており、つい先日も第三層を突破した。新たな階層が開放されるペースは月に一度。このままいけば、三か月後には試しが始まる。
その前に、彼に問わなければいけない。騎神を手にするか否か。帝国とゼムリア大陸で暮らす多くの人間の運命を左右する覚悟があるのかを。
巨像の形をした闇は問うてくる。背負わせるのかと、ただでさえ重い宿命を負ったあの少年に、更に
「あいつは大丈夫よ」
「ふぇ?」
気づけば、器用に肩へ乗ったセリーヌが、エマの頬に肉球を押し当てていた。
「どうせリィンが起動者になるか考えてたんでしょうけど」
「な、なんで分かるのいひゃい!」
「アンタは顔に出やすいの。そこんとこはもうちょっとヴィータを見習えばよかったのにね」
呆れたように言ったセリーヌが更に腕をぐいぐいと伸ばしてくる。エマのほっぺが潰れて大分愉快な顔つきになった。
「アンタはただ道を示すだけでいい。あいつがどんな選択をするにしろ、絶対にアンタを言い訳にはしないわ」
「セリーヌ……」
深い信頼の乗った言葉だった。
セリーヌとリィンの付き合いもエマと同じく長い。エマとは異なる視点で彼を支え続けてきた。その人の好さから≪表≫の事情に入れ込み過ぎるところがある年若い二人を、魔女として諫めることも多かった。
「まあ他人の心配する前にもうちょっと腕を磨くことね。さっきの霊脈探査はちょっと時間かかり過ぎよ」
「はーい……」
島を半周して小屋まで戻ってきた午前四時前。
夜風に乗って、旋律が聴こえた。
「……オルゴール?」
音を辿るとそこはコテージだった。海側に面したバルコニーで、デッキチェアに腰かけたトーラがいる。夜色に溶けた水平線に送る眼差しは、宵闇よりも尚昏い愁いを帯びていた。
足音に気づいた彼は、はっとしたような顔を向けてくる。
「起こしてしまったかな」
「いえ、早く目が覚めたところに懐かしい曲が聴こえましたから、つい。こちらこそお邪魔してしまいすみません」
「構わんさ。……立ったまま話すのもなんだ。飲み物でも持って来るから座りない」
トーラが持ってきた椅子に座ったエマは、音楽を奏で続けているオルゴールに目線を落とす。どこか悲しげで、しかし耳に残るその曲の名前をエマは知っていた。
「星の在り処ですよね」
「そうだ。割と昔の曲なのによく知ってたな」
「姉が好きで、よく口ずさんでいたんです」
懐かしい思い出だった。魔術の修業の合間に、人気のない場所で歌う義姉の姿が目蓋の裏に映る。特に母が生きていた頃はエマも歌をせがんだり、一緒に歌ったりしたこともあった。……年齢が上がるにつれて、なんとなく恥ずかしくなって聴くだけになってしまったけれど、あの澄み切った歌声は今もエマの耳に残っている。もし魔女でなければ歌手でも目指していたのではないだろうか。
「私にとっては、若い頃の思い出の曲というやつさ」
小さく溢した笑みには、深い皺が寄っていた
「さっきは驚かされたよ。随分と博識だったが、将来は学者を目指していたりするのかい?」
「具体的にはまだ考えていないんです。本が好きなので、色々と読んでいた中にあったというだけで」
「それだけでも十分凄いさ。月並みな言葉だが、勉強は若いうちにしておきなさい。いやそれだけでなく、遊びや……恋、なんかもね。どれも自由にできる時間は、案外短いものだ」
ティーカップを傾け、紅茶を飲み干したトーラは続ける。
「ちょうど君達くらいの頃だ。日の昇る時間に、恋人とこの浜辺を歩くのが一番の楽しみだったよ」
「恋人ですか?」
「うんまあ、妻のことではないけどね。色々とあったのさ」
言葉を濁して苦笑する。その顔に差す影が濃いのは、トーラが彫りの深い顔立ちというだけではないのだろう。里で最も高齢の魔女(祖母は色んな意味で規格外なので除外する)がたまに浮かべる表情と同じ、濃い年月を重ねた人間が見せる深みがあった。
その影に吸い寄せられるように、唇から問いが零れる。
「……ご迷惑でなければ、ひとつ相談しても良いですか?」
「私で良ければ訊くが、何かな?」
「私の友人……別の班のクラスメイトのことで悩んでいまして」
リィン・シュバルツァーは強い。本人は迷ってばかりの未熟者だと自分を卑下するが、どんな苦境でも誰かの為に戦える彼の優しさと強さをずっと側で見てきた。
そんな彼だからこそ、騎神を手にする意味は途轍もなく重いのだ。
力に溺れた者。力ある者の責務に磨り潰された者。力に振り回されて大切なものを取り溢した者。
輝かしい夢、素晴らしい志を胸に騎神を駆った善き起動者の末路は、その大半が悲劇に終わる。リィンの幸福を思えば、起動者の資格を手放すよう説得するべきかもしれない。
しかし起動者とならなかった先の未来で、もし失ってしまうものがあるとするのなら。強い後悔は彼を歪め、鬼の力への依存を強めるだろう。
「その人には天性の素質があって、正しく扱えば多くの人を助けることができます。でも、その素質は本人が望んだものでは無いんです」
道を示すだけでいいと、選択の責任は起動者のものだとセリーヌは言った。冷酷だが、同時に正しく誠実でもある。彼は≪表≫で自分は≪裏≫、コインのように重なる関係は今だけのもの。同じ道を往けない人に過度な干渉は余計なだけだ。
けれど割り切れない恐怖がある。自分が背中を押した道の先で、もし彼が足を踏み外してしまったらと考えるだけで目の前が真っ暗になる。
「望まない才能が大切な人達の幸福に繋がるのなら、どちらを選ぶべきなのでしょうか」
「……ふむ」
会話が止み、オルゴールの音色が薄く広がる。馴染み深いメロディに釣られて自然と歌詞が頭に浮かんだ。
大切な人と積み重ねた
「優れた軍人になれる素養があるが本人は争いごとを好まない、といったところかな」
やや唐突に尋ねられて、エマは慌てて首肯して先を求めた。
「やはりそれは当人が決めることだろう。結局のところ、自分の人生の責任を取れるのは自分だけだからね」
「……そう、ですよね」
「だから、それ以上を求めるのならしっかりと話し合うことだ」
「君が迷っていることも含めて、その友人に伝えてみると良い。共有した悩みは問題になって、解決すべきものになる。一人で抱えていた問題でも、二人なら案外あっさりと答えが出たりするものさ」
語り聞かせるようにそう告げて、トーラは立ち上がった。暗かった水平線はいつの間にか白み始めている。
「偉そうに言ったが、まあ所詮年寄りの戯言だ。そういう相談はもっと信頼できる人にしなさい」
「そんなことはありません。ご教示いただきありがとうございました」
片付けを手伝い、丁寧に感謝を述べたエマは小屋へと歩き出した。もうそろそろラウラ達も起きている頃だろう。
(話し合う……)
言われてみれば、起動者について詳しく話し合ったことは無かったと思い至る。リィンは鬼の力、エマは義姉の捜索という目先の問題に力を注ぎ、協力し合うので精一杯だったからだ。騎神のことは早くからローゼリアより聞いていたが、まだ先の話だと見送って以来話題に出す機会が無かったのである。今思えば随分と暢気だったと反省さぜるを得ない。
「…………でも、それは駄目よね」
騎神について話し合うのは良い。けれどこの迷いを明かすことは出来ない。
なぜなら自分は彼の篝火。
導く側の自分が、迷いを見せてはいけないのだ。
*
遡ること数時間前。夜中の暗い海を進む、一隻の船があった。沖合での漁を終えてオルディスへ戻ろうとする、とある漁船である。
「ようやくの到着か……」
船首に立った一人の男が、水平線の先に見える光群──三日ぶりとなるオルディスの様子に顔を綻ばせる。海の上で過ごす時間の方が多くなって久しいが、陸地が見えた時の安堵感はいつになっても変わらない。こればかりは人間の本能なのだろう。
今回の漁も成果は上々で、悪くない稼ぎが期待出来る。この後に長めの休み貰えることもあって、男は明日にでも貰えるであろう給金の使い道について想像を膨らませていた。背後では仲間の船員たちも、やれ酒場で飲むやらラクウェルで女と戯れるやらと騒ぎ立てている。
そろそろ下船の準備でも始めるかと考えていた男は、そこで奇妙な音を聞いた。
「……なんだこれ、歌か?」
男では到底出すことの出来ない透き通るようなソプラノボイスには、一定のリズムがあった。気になって周囲を見渡せば、音源と思しき影を見つけた。
それ自体が光を放っているかのような、美しい金髪を夜風が梳く。上半身だけの海面から出した身体は完全に後ろを向いているが、シルエットからして年若い女だ。おとがいを上げて、空に祈りを捧げるように歌っている。
船乗りの男は知ってる。この辺りはまだ水深が深く、岩礁もない。泳ぎはまだしも立つことの出来る足場などないのだと。
だが、
「……………………」
陸地を目指していた筈の船が、女の方向に舵を取る。しかし男はそれを指摘することなく、無言で女の歌に耳を傾けていた。本当に惚れ惚れするほど綺麗な声で、馴染みの酒場で心地よく酔った時のような気分。身体は火照り、思考は蕩け、周囲の音が遠のいていく。歌声だけが耳に届くのだ。
声が届くほど船が近くに寄れば、女はこちらを振り返った。美しい歌声に相応しく、その容姿も息を呑むほどに麗しい。艶やかな唇が、男に向けて何事かを呟いて。
気付いた時には、全てが終わっていた。
「……は?」
最初に違和感を覚えたのは、視界の明るさだった。夜中だというのに、周囲は真昼のような光に包まれている。何気なく自分の身体を見下ろしてみれば、光は自分の身体から──自らの身体を薪にして、炎という形で放出されていた。
……身体が火照っていたのは当然だ。寧ろどうして、今までこの火達磨の中で何の痛みも感じなかったのか。
「ヒ……ギィィィアアアアアアアアアアアアアァ?!!!!!!」
正気に戻った肉体が遅すぎる警鐘を鳴らす。灼熱のヴェールに包まれた男はその場に倒れのたうち回る。
「だ……誰か、ダレカ火ひひヒヒを消シテ……!」
助けを求めた男だったが、視線の先にいるはずの仲間は既に燃え尽き、黒いナニカへと変貌していた。これも考えてみれば当たり前のこと。急に船の進路が変わったのに誰も止めなかったのは、自分と同じくあの歌声に囚われていたからなのだ。
既に男の手足は炭化し、水分を失った眼球はその機能を失った。最早正常な思考は焼け落ちて、あるのは強烈という言葉では生ぬるいほどの渇きだけ。
「ミ……ズ……」
最期となる思考で、男はこの渇きを癒す方法を思い浮かべる。残された力を振り絞って船体の端まで這って進むと、暗い海に身を投げた。水面に叩きつけられる衝撃で触覚も霧散。安堵と共に、男の全てが闇の中に溶けて消える。
──以上が、僅か十分の出来事。陸地を心待ちにしていた筈の十人の船員は、残らず灰となったのだ。
「……違う……じゃ……ない」
凄惨な光景を眉一つ動かさず眺めていた金髪の女性は、か細い声で呟くと海に潜る。
波間から覗く女性の腰から下は、鱗で覆われた魚のそれであった。
迷ってばっかりの魔女さんですが、それだけスケールの大きい悩みなのです。
あと本作は黎の軌跡レベルにはモブに厳しくなると思います。