東方心壊キ録   作:ベネト

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館内にて


書と時計と傍観者

紅魔館の門番、紅美鈴を降した如月白楽は紅魔館内部に侵入し奥を目指す...

 

目標は屋敷のどこかにいるはずの、彼女の主である華扇のペットである竿打の救出、そして現在進行形で紅魔館は異変の真っ最中であり、彼女達は無事に目的を達成することはできるのであろうか?

 

 

 

 

 

side白楽

 

「...」

 

我々の目の前には広い長い廊下が続いている光景...我々が見たことが無い家具やら浮世絵のようなものが飾ってあるようだ...これが異国の文化というものだろうか?興味深いな...

 

だが屋敷に入ったのは良いが...明らかに外観よりも広すぎる...空間がおかしいとしか言えない...何か術的な物が使われているのだろうか?

 

「あまり時間はかけたくないのだが...」

 

日の傾きは頂点を過ぎている、このままでは華扇様が屋敷に帰ってきてしまう...

 

このことは我らとしても喜ばしいことではありません...長く屋敷を空けていたことが露見してしまう...

 

「...はぁ...前途多難だ」

 

我々は廊下を進み竿打の気配を探る...

 

...この先か...かなり近いところみたいだが...どうなることやら...

 

 

 

 

「...はぁ」

 

目の前の廊下には多数の妖精がウヨウヨしている...

 

この廊下を通れば竿打のいるところまで、すぐに向かえるが...そうもいかないな、相手してもいいが...こちらとしては、先程消耗したことだし無駄に力は使いたくない...

 

「回り道がベストだな」

 

我々は近くにあった扉を開けて迂回をする...

 

何となく道順は分かっている...残りは...無事にたどり着くかだ...

 

早く終わらせないと...

 

 

 

 

 

 

 

扉を開けて通路を進んでいくと、辺りには書の纏まった棚が所せましと並んでいる広い空間に辿り着く...

 

「これが図書館って奴か...確かに噂通り本はあるが...まずいかもな」

 

この空間から嫌な空気が流れているし、確実に向かう道を間違えた気がする...

 

「...回復しきっていないのに」

 

...こういう時こそ...落ち着くのです...我らの力は、そこらの者に劣るはずがない...用心して...警戒して進むのです...

 

「...ふぅ...出来るだけ避けていこう」

 

我々は図書館を進んでいく...

 

 

 

 

図書館を歩いて、しばらくすると、広い空間に出てとある光景を発見する...

 

それは白黒の少女と紫色の少女の弾幕ごっこだ...

 

「ほらほら!!行くぜー!!」

 

「待って!!持病の喘息が...むきゅあ!!?」

 

白黒の少女が放った弾幕が紫色の少女を弾き飛ばす...どうやら幕引きらしいな...戦いの過程を見ることができなかったな...

 

「少し遅れたみたいだな...見れなかったのは残念だが...最近の人間って強くなっているみたいだな...」

 

...時代と共に術も強力になりますわ...それは当たり前のことよね...未知の物がある以上、出来る限り避けて行ったほうがいいです...余計なことに首を突っ込む必要はないわ...

 

「...はいはい...分かっている」

 

我々は、その場を後にして奥へ進んでいく...

 

しかし収穫はあったな...幻想郷の人間の観察をしてみる必要性が出てきたということをな...

 

「...面白い...この世界に少しだけ興味が湧いたな」

 

我々は図書館を後にして、竿打の気配がする方へ向かう...

 

 

 

 

 

 

図書館を抜けて廊下に出て竿打がいる方向へと歩を進める...

 

気配が近くなってきた...このまま竿打を回収して早急にお暇だ...

 

竿打は...この先の調理場らしき場所にいる...ですが...このまま楽には進まないようね...

 

「はぁ...」

 

「...今日は来客が多いわね」

 

廊下の奥を見ると、そこには銀髪の女がこちらを見つめている...

 

海の向こうの世界の格好をしているようだ...可愛い格好だが我々には似合いそうもない...この洋館の内装にあった服装をしているし、明らかに向こう側の人間のようだ...

 

女はこちらへと向かってくる...

 

「...新たな侵入者かしら?...聞いていたのは紅白と白黒の少女と聞いていたけど」

 

「いや...私はそれとは関係は無い...私は如月白楽...侵入者というより...ペットがこの屋敷に入り込んでしまったから探しに来ただけだ」

 

「そう...美鈴...また侵入者を通したのね」

 

銀髪の女は...ナイフを手に取り我々に向ける。

 

 

 

...人間にしては殺気が濃い...面倒な奴にあってしまった...こういう荒事に慣れた者特有の雰囲気を出しているようだ...

 

...竿打まで後わずか...最後の最後で貧乏くじを引いてしまいましたね

 

「...我々に敵意を向けるのは、余りおすすめしない...我々はただペット探しをしているだけだ...それを終わらせたらさっさと帰る...」

 

「本当にペットを探しているだけなら通すけど、お嬢様の命令で侵入者は排除するように言われているのよ」

 

...排除...全く楽に進むことはできないようだ...しかしお嬢様...確実にこの異常気象の元凶というべきか...

 

「お嬢様...この館の主というべきか?」

 

「ええ...そしてレミリアお嬢様に仕えるメイドこと、この私十六夜咲夜でございます...」

 

「...冥土?」

 

...冥土?あの世のことか?言っていることが良く分からない...

 

「...冥土ではなくメイドです...清掃、炊事を行う女性使用人の事を言いますよ?」

 

咲夜と名乗ったメイドは腰に手を当てて溜息をつく...何だ...恥をかいた気がする...無知は罪だ...

 

気を付けた方が良いですね...只の人間に見えるけど、明らかに能力持ち...油断は禁物よ

 

咲夜は再度ナイフを我々に向ける...

 

「で?退くの?退かないの?」

 

「退くつもりはないが...お前が立ちふさがるだけならやるだけだ...」

 

ワタシは薙刀を出現させ回転させながら、咲夜へ飛びかかる!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「馬鹿な人...」

 

咲夜の姿が一瞬で消え、ワタシの薙刀が空を切る?

 

「な...?消えた?いや...足が速い?」

 

バカな...ワタシの力を使ったのだぞ?人間に避けられるはずがない!!

 

辺りを見回すと、こっちに飛んでくるナイフが多数全方向に囲まれている!?

 

「何だこれは!」

 

飛んできたナイフを全て弾く!一瞬でこの量をどうやって展開したというのだ!?

 

...困りましたね?確かにタイミングは完璧だったはず...何かの能力かしら?術者に目を放すのは危険ですね...

 

「どこだ!どこへ行った!?」

 

「後ろでございます...」

 

「!?」

 

後ろを向くとそこには咲夜がナイフを大量に投げている光景が映る!!

 

さっきと同じように飛んでくるものを弾いていくが、向こうの方が手数が多い...取りこぼしでワタシの体が傷ついていく...

 

 

「ぐぐ...ああ...傷ついてしまった...」

 

...着ている物がワタシの血で汚れてしまった...あああ!!華扇様にバレてしまう!!

 

「大きい的ね?当てやすいわ!」

 

遠くでは、我々をせせら笑う咲夜の姿...あのスキマ何たらと似た能力でも持っているというのか?

 

能力はともかく...本気出さないと負けるわね...

 

「...ち!」

 

戦闘は専門ではないが...確かに本気で行かないとやられるのは目に見えている!!さっさとワタシの能力で倒す必要が!

 

一度攻撃を当ててしまえばワタシの勝利は確定する!!何の能力を持っているか分からないが見切ってやる...ワタシの速度を超えることなぞ出来る訳がない!

 

咲夜はワタシを見つめて、腕を組んでいる。

 

「反応が遅いわ...これじゃあ私を捕まえることはできないわよ」

 

「後悔するな!!」

 

 

 

ふっ...

 

「なっ?」

 

「もらった!!」

 

能力を使用し彼女の後ろを取った!...避けることなんでできるわけがない...薙刀を振り下ろせば終了だ!

 

「足が速いようね?...でも遅いわ」

 

ザクザク!!!

 

「うぐ!!!?」

 

背中に激痛が走る...ナイフが刺さっている!!そして後ろにいるのはメイドこと咲夜が...何でこの女...ワタシの後ろにいるんだ?さっきまでワタシが後ろを取っていたというのに!?

 

「何時の間に移動した...な...何だ...お前...」

 

「タネのない手品よ...貴女は隙だらけなのよ」

 

...狂人...悪魔だ...さっきからヒトの事をザクザクと刺して...血も涙もない...だから人間は嫌いなんだ...

 

...少しイラッと来ましたわ

 

 

 

 

side咲夜

 

「赤い景色...腐臭...亡骸...」

 

白楽は顔を青くしながら後退している...さっきまでの威勢は何処へいったのかしら?何かぶつぶつと呟いているし...私に対してびくついている...

 

それに...あの白黒目を見れば分かる通り確実に妙な能力を持っているわね、動きは速いようだけど大したことない...気にすることはないわ

 

「さて...と...そろそろ排除させてもらうけどいいかしら?」

 

「血も涙もない...だから人間って嫌なんだ..」

 

何やらブツブツ言っているわね?さて...この子に構っている暇はないわ...時間も有限だし早く他の侵入者を...

 

「ううう...フフフ♪」

 

「!?」

 

「アッハッハッハ!!!!」

 

...先ほどまで狼狽えていた白楽が急に笑い出す?何よ...この寒気のする不気味な笑い声は...

 

「アハハ!!...面白いですね?まさか我らが、ここまで追い詰められるのも中々の絵になるというものです...」

 

白楽は自身の血を指につけ唇に塗る...さっきまでと雰囲気が全く違うわ...瞳も赤から紫へと変色しているし白い髪もどんどん黒く変色してきている...彼女に何が起きているというの?

 

「貴女の能力かしら?」

 

「ええ...正解です...でも言う必要はありませんよ...貴女はここで終わるのですから」

 

ばしゅ!!

 

突如脇腹にに衝撃が走り吹き飛ばされる!!

 

「かは...」

 

一体何が起きたの?何も見えなかったわ!時を一瞬止めて白楽から距離を取るが彼女は驚きもせずに高笑いするだけ...

 

「アッハッハッハ!!!...反応が遅いのは貴女も一緒じゃないですか...幾ら貴女の力が強力でもワタシの攻撃から逃れられる術はありません」

 

白楽は笑みを浮かべながら手鏡を取り出して化粧をしている...

 

丸で別人にでもなったと思うくらい変貌しているわ..何かやばそうね...先程と比べて余裕があるみたい...でも明らかに態度が違くなったわ...

 

「...貴女白楽よね?念のために聞くけど?」

 

彼女が化粧をし終えると私の方を見つめる。

 

 

 

 

 

「その名前は正しくありませんね...その名前はワタシの妹の名前...ワタシの名前は如月嘉玄...ごきげんよう...」

 

(如月嘉玄 きさらぎ かふか 通り名:???導師)

 

「嘉玄?」

 

名前が違う?何このヒト多重人格者なの?妹がお世話になったということは...

 

嘉玄は急に笑みを消して私に指を向ける...

 

「さて...と...竿打の回収もしないといけないし...貴女と遊んでいる暇は無いのですよね...」

 

このヒトは不味い...この先に通したらお嬢様の身に危険が及ぶわ!!!

 

「通すわけないでしょ...っ!!」

 

時を止めようとすると私の体が動かなくなる?何で?

 

「が!?」

 

「フフフ...何の能力かまでは分かりませんが...侵食された体では辛いでしょう?...散々白楽を痛みつけたみたいだしあの子の仇をとりましょうか...」

 

まずい...ここは...

 

 

 

 

 

 

 

side嘉玄

 

「...あら?」

 

咲夜の姿が消えワタシの術が空を切る?...つまらないですわね...もう少し遊んであげようと思ったのですがね...

 

(...逃げられたようだな...嘉玄)

 

白楽が話しかけてくる...落ち着きを取り戻したみたいですが...相変わらず詰めの甘いようです...

 

「五月蠅いですよ...白楽...貴女が苦戦しているからワタシが出ることになってしまったのですわ...反省なさいな」

 

(悪かった...強かったんだ...)

 

白楽が謝罪をしていますが...些末なことです...しかし...

 

「少し術が甘かったですかね?」

 

札を取り出し妖力を込める...

 

「あのメイドとかいう者がまた来るかもしれませんし...この子に相手をしてもらいましょうか?」

 

ワタシは札を投げる...これで対策は打たせてもらいましたよ...

 

「...う」

 

眩暈がして、景色が歪み体がふらつく...

 

...あまり力は使えませんか...やはり相当弱っているみたいです...長年の封印が堪えましたか...

 

(...大丈夫か?)

 

「...後は任せますよ...残りの仕事はちゃんとこなしなさいな...」

 

白楽に器の所有権を渡して引っ込みましょう...流石にも...

 

 

 

 

 

side白楽

 

「...すまない...気を付けるよ...嘉玄」

 

(分かっているなら...さっさと終わらしてくださいよ)

 

「分かった...」

 

嘉玄も封印明けで消耗しているみたいだ...無理をさせてしまったな...ここからはワタシの力で何とかしないといけないのに...

 

「...迅速に終わりにしよう...残りは竿打の救出のみだ...」

 

我々は竿打の下へと急ぐ...早くこの危険な場所から退散するとしよう...

 

 

 

 

 

 

 

 

一方その頃...紅魔館の廊下にて...

 

 

「ちっ...不覚を取ったわね...あの侵入者は厄介ね...お嬢様の下に近づかれる前に倒しておくべきね...」

 

白楽・嘉玄から逃げ出した咲夜は廊下の隅で息を整える...余力が戻ったら再度嘉玄達を追撃しようという魂胆なのだろう...

 

だが...彼女の心理を予測していた者は彼女の次の行動はお見通しであった...

 

「...?」

 

咲夜の目の前に一枚の紙が床に落ちる...

 

その紙が弾け飛ぶと同時に辺りの影がグネグネと蠢き次々と集合して人型を形成していく...

 

「...な...何なの?嫌な予感が!!」

 

身の危険を感じ、咲夜はその影に攻撃を仕掛けるが、時すでに遅し...

 

 

キィィィン!!

 

 

「...!?」

 

「...」

 

影は形成をし終え、咲夜の攻撃を弾き、咲夜は目の前の光景に目を見開く...

 

「なっ?」

 

彼女の眼前には、自分自身...十六夜咲夜自身の姿をした者の姿だった...

 

その咲夜の姿を写した者は黙ってナイフを本物の咲夜に向ける...

 

「敵意丸だしね...嘉玄の能力かしら?」

 

咲夜はナイフを自身の偽物に向ける...

 

「悪いけど...時間がないのよ...そこを通してもらうわ!

 

咲夜は攻撃を仕掛けるが、偽物はいとも簡単に攻撃を弾く...

 

「な?」

 

「...」

 

咲夜は偽物から距離をとり、驚きの表情で偽物を見つめる...

 

戦闘慣れしている彼女だからこそ今の瞬間に理解する...この偽物は自分と同等の力を持っているのだと...

 

「...こんなものに時間を取られるわけにはいかないのに...」

 

彼女はナイフを大量展開し偽物へと向かう...

 

足止めが成功している今...白楽達の目的は無事に達成されるのか?

 

 




メイドとのバトルともう一人の主人公の登場です...

ではこれにて

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