人里にて
青き空が続く幻想郷...
その青空の下には、幻想郷の唯一の人間が住む場所...人里が存在する...
人里では寺子屋という建物があり、その人里で住む子供たちは、そこで勉学に励んでいた...
そこで講師を勤めるのは、白い長い髪を靡かせ青い服に身を包んだ女性こと上白沢慧音...彼女は教壇に立ち書をめくる
そして寺子屋の中では、本日最後の授業が行われようとしていた...
side慧音
「よし!本日最後の授業だ!今回は私の好きなモノだぞ!!」
私は教壇に立ち黒板に文字を書き記す...
この授業だけは外すことはできないな!これは永久的に語り継げないといけないものだ!!
「本日最後の科目は伝記の授業だ!!さぁ!!本日も最後頑張ろう!!えいえいおー!!!」
「...」
「...」
「...」
「...」
「...ん?」
返ってきたのは沈黙...あれ?返答なしか?
教室を見回すと子供たちは、飽き飽きしたかのような顔で私を見つめている...
「先生...またそれ?」
「今日の早朝の授業でも...昨日の授業でもソレやった気が...」
「この前の国語の授業でやった耳にタコが出来るが分かった気がする...」
...子供たちの目が向かう先は黒板の文字...人里英雄譚!!私の一番好きな伝記だというのに!!?
「飽きてしまったというのか!?これは!!語り継げていかないといけないものだぞ!!」
私が憤慨すると子供の一人が手を挙げる...
「いえ...飽きてしまったというより...頭に入ってる感じです...少なくとも書の暗記は私達できますし...」
「この書にはまだ隠された謎が多いんだ!!!英雄の名前も分かっていない!!貴重な文献なんだぞ!!」
「確かに貴重なのは理解できますけど...未だに前編だけじゃないですか...後編は?」
「うぐ!!?」
確かに...この伝記には後編の書物がない!!私が見つけ出した書物は話の内容からして前編だけだ...
「なら!今日は総復習だ!!今から音読するぞ!!ダメって言っても先生音読するからな!!」
私は書を捲り英雄譚の文を音読する...
15分後~
「して...え...英雄は...英雄はっ!!村を守ったというのに!...迫害っおおおおおお!!!」
教壇に突っ伏し私は号泣する...やはり涙を堪えられなかった...
本の内容は、とある呪術の家系に生まれた英雄の話だ...英雄は、その家系中で歴代最高と呼ばれるに相応しい人物だった...
しかし...その御家は、人里の住民達によるの襲撃に遭い...一晩で英雄は命からがらお家を追われた...
放浪の末に英雄は、とある里で身を下ろし、人並みの幸せを掴もうとしていた...
しかし...今度は妖怪が里を襲うことになる...
英雄は里を襲った妖怪から里を守るために、己が持つ力を使い妖怪たちを追い払った...
しかし...その力を恐れた里の者達は英雄を、あろうことか迫害するという悲しい物語だ...
この話は読んでいて悲しい!!私がこうなったらと思うとやり切れない!!
「せ...先生質問が...」
1人手を挙げている...
「ぐす...何だ?」
「その英雄って...その後どうなったんですかね?」
「私でも分からん...やはり後編の書がないと英雄たちの末路が見いだせない...」
...この授業が終わったら鈴奈庵へ向かうか...本の続きが多分あるかも...
子供たちは、口々に感想を述べている...
「しかしヒデー話だな...英雄は命がけで里を守ったというのに!」
「人外というだけで追い出されるって酷いよ!!可哀想だよ!」
「!!お前たち!!この話は飽きたと言っていたはず?」
「授業としては飽きたと言っているだけ...この話は私達は好きだよ」
「仮に慧音先生がこの英雄だとしても私達が守るよ!!」
「お前たち!!」
...私は本当に良い生徒を持った!!この仕事をしてて良かったと思える瞬間だ!!!
私は教壇から身を乗り出す!!
「よし!!今日の授業は終わりだ!!英雄譚の感想文...それが本日の宿題だ!」
「...ゑ?」
子供たちから素っ頓狂な声が聞こえるが、それは空耳だろう!!
「原稿用紙10枚分だ!!お前たちの感想!心待ちにしているぞ!では!解散!」
私は荷物を纏めて教室を後にする
(先生ー!!無茶だよー!!!)
子供たちの声はあえて聞き流そう!
英雄譚の内容を詳細に知りたいという質問だろうが、ここはあえて心を鬼にする!!
自分の力で英雄譚を知ってくれ!子供たちよ!!
さて!鈴奈庵で後編の捜索を!!
私はその足で鈴奈庵へ向かう...
鈴奈庵
人里に存在する古本屋...鈴奈庵...
その暖簾を掻き分け書を探す私は、店主(代理)に挨拶する...
「やぁ!小鈴!少し邪魔をするぞ!」
橙色の髪をした少女こと本居小鈴がカウンター越しで椅子に座りながら私を見て笑みを浮かべる...
「あら?慧音先生!何かお探しでも?」
「ああ...少し欲しい書があってな...少し探しでもいいか?」
「ええ!どうぞ!先生はお得意様ですから!!」
「ああ!!今日こそ見つけてみせる!!」
私は鈴奈庵の本棚を見つめる...
4時間後...
「...すまん邪魔した」
「またの起こしを~!」
私は鈴奈庵を後にする...
やはり後編の書は見つけることはできなかった...
絶対あるはずだが、この人里での唯一の本屋で見つけられなかったとなると...幻想郷では無理だというのか?
「...はぁ...ある意味私が前編の書を持っていることが幸運か?」
すでに日は落ちかけている...夕食だけ買って帰ろうか...
私は歩を進める...
「そこの...何か落としたぞ」
「ん?」
声のする方を振り向くとそこには長い白い髪をした女性がいた...
白い中華服に身を包み、彼女の手の中には一冊の本がある!
あれは...英雄譚?
私はバックの中を探るが、私の原本の英雄譚がないことに気づく!!
「ああ!!?すまない!!大事な物なんだ!!」
「...」
白い女性は私に英雄譚を渡す...良かった!これだけは大切なモノなんだ...
女性は不思議そうに私を見つめている...
「その書が大切なのか...随分と古い物みたいだが」
「ああ!私の好きな物語なんだ!感謝するよ!...そういえば名前を言っていなかったな!私は上白沢慧音!この人里で教師をしている!」
「教師...ね...どうりで...」
女性は長い白い髪を軽く撫でた後、口を再度開く...
「如月白楽...それがワタシの名だ...」
白楽と名乗った女性は口から何かを出して紙に包んでポケットの中へと入れる...
何か甘い匂いがするな...ガムか?
白楽は懐から再度ガムを取り出して口に入れる...だがその視線の先には、私が抱える原本にそそがれている...
「興味があるのか?」
「いや...その本よりも字体と文に興味がわいただけだ...」
字体と文?どこかおかしなところがあったのか?
「何か?あったか?」
彼女はガムを膨らませながら考えるように額に指をつける
「...特に理由はない...只字体が我々が使っていた時と違っていたのでな...」
白楽は、本を細かく指さす...
彼女が示した先は、通常の文が書かれている部分だ...
この本の作者の名前が書かれているが...文字が掠れて読めない箇所がある...
「何かおかしいか?」
「少なくともワタシが見たことが無い字があるってだけだ...あの時から何百年経過しているかは分からないが...」
「!?」
何百年?幾ら人間であっても一生は長くても80年くらいだ...これだけ若いという事は彼女の年齢もそれなりにいっている...明らかに人外だな...本人は自身の失言に気づいていないみたいだ...
「何百年?お前...人間なのか?」
白楽は僅かに動揺をする...
「...口が滑った...安心しろ...ここでは迷惑はかけないようにするからな...」
「...お願いする...私も立場としては人里の守護者だからな...」
「心配は要らない...首輪付きだからな...」
白楽はガムを膨らましながらそっぽを向く...
首輪付き?...何かの比喩か?
だが...問題はないか...少なくとも人外のようだが、暴れたりしないみたいだ...
私はバックから写本を取り出して彼女へと渡す
「...?」
「お礼だ!これは写本だが物語はちゃんと書いてあるぞ!」
「...書なんか久しぶりだな...一応礼は言っておく」
白楽は本のページを捲って黙読している...
「...」
彼女は次々とページを捲っていく読むのが早いな...
「...!」
だが...ページが進むにつれて僅かにだが、彼女の表情が険しくなってきており、やがて彼女は読むのをやめて私を見つめる...
「どうした?内容が気に入らなかったのか?」
「...ああ...ワタシとしても好ましいものではないな...何でこの物語が好きなんだ?...明らかに良い結末ではないと思うが...」
彼女は不服そうに鼻を鳴らす...
やはり、この話は賛否が分かれるのか...だがこれだけは知ってもらいたい!
「...確かに良い結末にはならないだろうな...私も英雄には幸せになってもらいたかった...だが!この物語を広めていかないと彼女が報われない!私はそう思うんだ!」
「...報われない?」
「確かにお前のように否定的な意見も出るだろう...だが...このまま歴史の闇に葬ることは私にはどうしてもできない...彼女が確かに存在したという証...それがこの英雄譚なんだ!」
白楽は私を見つめている...
「...ふ!」
そして彼女は笑いだす...初めて見せた彼女の笑顔だ...こうしてみると年相応の顔をしているな...
「!」
「...ふぅ...成程...確かに英雄にとっての一種の供養かもな...君とは仲良くできそうだ...では失礼するよ...買い物の途中だからな先生...」
「ああ!すまない引き止めてしまったな...」
「気にするな...」
白楽は踵を返し人里の奥へと向かう...
だが途中で立ち止まった後、私の方を向く...
「先生...」
「何だ?」
白楽は書を指で弾く...
「...この書...添削が必要だ」
「添削?...どこか文に間違えでもあったのか?」
嘉玄は首を横に振り、本を捲る...
「いや?文はおかしくなかった...ワタシも細部まで見ていないけどな...問題は物語だ...肝心な部分が抜けている...これが無いと本当の意味を知ることは出来ないはずだ...」
「肝心なところが抜けているだと!!!馬鹿な!少なくとも!そんなところは!!」
「...ワタシが言いたいのは1つ...呪術師の家系が人間に襲われ、そこから生きて逃げ出した英雄が放浪の末に辿りついた里の前...その過程が抜けているんだよ...意図的かはどうかは知らないがな...」
「な?」
...英雄が家族を失った後から里へたどり着くまでの過程だと?そんなものが存在するのか?
いや待て!何で白楽はそんなことを知っているんだ!!読んだだけでは、そんなことまで分かるはずがない!!
「何を知っているんだ!!」
「...それはまた次回にしよう...さっきも言ったはずだ?買い物の途中だとな...ではな...」
白楽はそのまま通りの角を曲がる!
私はその後を追いかけようとするが、通りには白楽の姿はどこにもなかった...
「...」
どうやら彼女は何かこの話を知っているみたいだな...長生きのようだし...もしかしたら英雄を知っているのか?
「如月白楽か...覚えたぞ...」
私はその場を後にし...自宅へ戻る...
また彼女とは会える気がする...その時に全てを聞いてやるさ...
side白楽
「...ああ...久しぶりだな...この感じは...」
買い物を済ませたワタシは書を捲りながら、帰宅する...
書を捲っていくにつれ、話の内容が細かに記されている...まるで見て来たかのようにだ...
...全く忌々しいですわ
「...細かいことを考えても仕方がない...とりあえず今だろ」
書をしまい、我々は本拠地に向かい走る...
嫌なことは...体を動かせば忘れるだろ...
軌道修正が大変だ
ではこれにて