狭霧山からとうとう出発します。
結局、足の骨が砕けたので歩くのにも一苦労し狭霧山で二週間を過ごす事になった。
瞑想をしていつの間にかできてた『全集中の呼吸 常中』の精度を高めたり、素振りしたり、弟弟子達の稽古に口を出したりしてたらあっという間に時が過ぎ、刀鍛冶の人が狭霧山に来た。
先生は俺の隣に座り、錆兎と義勇は玄関からその人を観察している。
ひょっとこ面をつけたその人は鋼山銘鉄というらしい。結構なお爺さんだ。
「これがお前さんに打った刀じゃ……抜いてみいや」
箱から一本の刀を出して、俺に持たせた。
藤の花を彫った丸い鉄鍔に、青い紐が巻き付けられた持ち手。正真正銘、俺の日輪刀だ。
息を飲む。伍ノ型までしか使えない俺には、本当に水の呼吸は合っているのだろうか。
俺はすらりと刀を抜いた。縦にして、刀身を見つめる。
「おお……」
そう洩らしたのは誰か。
俺の刀の刃は根本からじわじわと深い藍色に染まっていった。
ヨッシャァァ!!!!
内心、盛大なガッツポーズを取る。藍色とか、すごいカッコいい。どうだ見たか弟弟子らよ。
「さすがじゃな。一門の男の子なれば、記憶の遺伝もあるのじゃろう……」
「え?」
え?それ、一年前に聞いたやつ……。
『記憶による呼吸の伝承』てガチにあんの?親父のでまかせじゃないの?
「あと、お前さんにこれを」
俺の困惑を他所に鋼山さんはもう一本、刀を差し出した。
「お前さんの同期の村雲宗治という女の刀じゃ。居場所が分からんのでな。お前さんの次の任務で一緒になるというから、渡しておくれ。くれぐれも抜いてくれるなよ……」
「はい」
むねはる?最終選別の時に居た女の子か?ものすごい男みたいな名前だな。
宇髄と俺を見ても表情一つ変えなかった事くらいしか覚えていない。
「頼んだぞ……」
ヨボヨボしながら鋼山さんは帰っていった。
錆兎と義勇はいつの間にか先生に追い出され、小屋には二人だけになる。
「流、これからお前はそのまま任務に行くのか?」
「いいえ。一度家に帰ってから、向かう予定です。任務は一週間後になると思います」
「そうか……」
先生は少し間を開けた。
「お前は同年代の中でも優秀な男だ。これから危険な任務に赴いても、必ず生き残るだろう。ただ、辛くなったらいつでも狭霧山に帰ってきなさい」
「先生……!」
「先祖の記憶を持つお前は確かに周りから浮くことも有るだろう。だが覚えておいてくれ、儂は流を錆兎や義勇と同じように大切に思っている。例え孤独を感じても、自ら周りを拒絶する必要は無いんだ」
「先生……!?」
「行ってこい!」
先生が背中を押す。
持ってるのは先祖じゃなくて前世の記憶です!
というか俺は孤高に振る舞っているように見られてたの?厨二病を無意識に再発してしまったの!?中学時代に『俺は周りとは違うぜ』って言ってクラスで浮いたの人生最大の黒歴史なんだけど!!
というより地味に『記憶による呼吸の伝承』なんていう謎設定が有名になっているのだが。絶対知られたら面倒臭いことになりそう。
唐突な言葉の衝撃がヤバい。
「流!」
外に居た義勇が駆け寄ってくる。
「俺達、来年には最終選別受けて、鬼殺隊に入るから!それまでたくさん修行して、絶対に『凪』を習得して見せる!」
いや、この前の『凪』は記憶から消していいから。というか先生の前で言わないで、絶対。
俺は誤魔化すために義勇の頭をぐしゃぐしゃとかき混ぜた。
ついでに遠くでチベットスナギツネの顔をしている錆兎が目に入る。
――え……?なにその顔……?
「流、俺は頑張る」
錆兎はそれだけ言うとてちてちと山へ向かった。
錆兎のチベスナ顔が頭に焼き付く。一瞬頭が真っ白になった。
「流、元気でね!流は強いから、絶対大丈夫だけど!」
義勇が大きく手を振った。お前は錆兎のチベスナ顔が気にならんのか?
「義勇。ありがとな」
俺はチベスナ顔を頭から追いやった。
「錆兎も!!」
大声を出して錆兎に呼びかけると、錆兎はいつもの表情に戻っていた。
「武運長久を祈る!!」
そう一言叫んで、山へ走っていく。
元気になったらしい錆兎に俺は満足して、鎹鴉の後を走って追った。
大正コソコソ話
流は厨二病発症経験があります(前世)結構痛いヤツでした。
チベスナ錆兎の理由『もしかして俺はずっと勘違いをしていた?』
これから先、柱就任までを細かくやるとオリキャラが連立しますが構いませんか?(作者的には十二鬼月討伐とか書きたいけど、読みにくくなるかも知れない)
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分かりやすくする…ならば……構わない……
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杏寿郎、お前も原作に突入しないか?
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オリ柱のネタなら俺が派手に考えてやるぜ!
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俺は作者じゃない(何故なら俺は最(ry