勘違い鬼滅奇譚   作:まっしゅポテト

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 副題は『流、人生最大のうっかり!』です。
 次回から鬼とのバトル入ります。

 書く方も読む方も主人公も困惑した前話は頭から消しさって大丈夫です☆ 


村雲宗治という女

 村雲宗治は鍔にてをかけながら夜の町を疾走していた。手には血のついた羽織の切れ端を持っている。

 血のにおいというのは普通、風に流されて消えていくものである。しかし村雲は血のにおいが消えずに、ある一点へと糸のように繋がっているのを感じていた。俗に言う、血鬼術というものである。

 

 この力は普通の人間には無い、彼女特有の能力。彼女には周りの空気の揺れ、淀みを感じる力を持っていた。風のように見える事から彼女自身はそれを風と呼んでいる。

 

 村雲は中国地方の小さな村で育った。父は元鬼殺隊士で、鬼殺隊に入る為上京し、鬼狩りをしていた。彼はかつて知り合いを鬼に殺されていた。

 しかし、鬼殺隊は主に鬼舞辻無惨の動向を探って関東を中心に行動するため、地方の鬼は見過ごされるというのが現状だ。その事実に落胆した彼は実家に帰り、漁業の傍ら鬼の噂を聞けば狩りに行く仕事をしていた。

 西の地方は関東に比べて鬼は少なく、弱いものばかりだったので問題はなかった。

 

 村雲はそんな父の元で剣術を学び、父と共に鬼を狩った――とはいえそれは二度しか無かったが。村雲の母は物心つく前に他界していた為、村雲は男手一つで育てられた事になる。

 彼女の口調が全く女らしくないこともそれに起因する。

 

 ある日、父は病にかかった。彼は自分が居なくなった後の村雲を案じて言葉を残した。

 

『俺はお前を一人にしてしまった事を大変悔やんでいる。鬼狩りなどは本当はなるべきではなかったのだ。普通の女としての幸せを与えてやれなくてすまない』

 

 当然、村雲は反対した。

 

『父上、そんなことを言わないで下さい。私は鬼狩りになって良かったと思います。この性格では村の女のように身を着飾ることも家庭を持つことにも生きがいを感じることは無いでしょう。私は貴方が居なくなっても貴方の意思を継ぐつもりです』

 

 父は涙を流して娘に感謝した。

 

『ならば東京に行き、藤襲山の選別を受けて鬼殺隊に入りなさい。一人で居てはいつか必ず破綻する。志を等しくする友を作りなさい』

『それが父上の望みであれば』

 

 村雲は鬼殺隊なるものが一体どういう仕組みなのかは露程にも知らなかったが、父に言われた通りに藤襲山の選別を受けた。『鬼殺』という文字から鬼を殺す組織なのだなくらいにしか思っていなかった。隊律の存在も知るはずがない。

 

 刀は父の遺品があるし、鬼の場所は持ち前の力で分かる。ならば鋼も鴉も要らないだろうと思い、進行役の女性にそれを伝えた。

 女性は何かを言わんとしていたが、村雲はすぐに山をかけ降りてしまったので分からない。

 隊服だけは黒服男に渡され着用しているものの、生地が硬く、動きづらいので嫌いだった。

 

 

 そして鬼に家族を殺された少女に会い、そこに残っていた羽織の切れ端から二週間、鬼を追い続けていたのだ。

 鬼の風は本当に微かであったが、村雲は昨日やっと居場所に当たりをつけた。それが件の道場破り達の溜まり場である。近所の人々もだいぶ迷惑をこうむっていた様である。許すまじ、鬼。

 

 鬼がいる、と言っても誰も信じないから『悪い風』と言葉を濁したが、相手は立ち入りを拒否。しかしそこで怯んでは被害が拡大する。そうして村雲は心を痛めつつも強硬突破した。

 

 

「あの男、なかなかに手強かったな」

 

 

 村雲は一人ごちた。道場破り共に一人だけ優れた者がおり、そいつに手こずっていたらいつの間にか日が暮れて鬼を再び見失ってしまったのだ。はて、何処かで見たような気がしたが……。

 

 

――――

 

 

 起きたら周りの奴らが頭を下げてて意味が分からぬンティウス。

 

 とりあえず反省していたみたいなので、実家の看板だけ貰って帰ろうとしたら『弟子にしてください!』と頭を下げられた。たぶん元は心優しき剣道少年達だったのだろう。こいつらも。最近の刀はオワコンブームに心が挫け、非行に走ってしまったに違いない。

 ならば一門道場に来い、とだけ俺は言った。宣伝出来たぜ。

 

 ところが意気揚々と帰路についた所、おつうちゃんがスピンをしながら俺の眉間を刺したのだ。

 

「アホカオマエ!コレダカラ新人ハ!今オマエガ守ッテイタゴロツキ共二鬼ガイタノダゾ!!鬼殺ノ妨害、隊士同士ノ私闘!立派ナ隊律違反ダ!!ワタシガイナイ間二……!ハヤク鬼ヲ追エ!!」

「鬼の気配なんて全然感じなかった!きっと物凄く強い血鬼術を使うに違いない!!」

 

 おつうちゃんの言葉に間髪いれずに返し、故意でないことを主張する。

 

 初任務でやらかしてしまった。俺、斬首かな。斬首じゃなくても先生に伝わったら怖すぎて裸で逃げ出す自信あるのだが。

 俺は実家に急いで帰り、隊服に着替えて刀二本を持ち、全力疾走した。

 

 おつうちゃんに連れられたのはとある雑木林。

 そこに地面から死体を掘り出す鬼がいた。




大正コソコソ噂話
 
 村雲宗治の特技は遠泳、巣潜り。瀬戸内海を泳いで横断したり、数分間海に潜ったりして肺を鍛えました。
 だから常中ができ、更に体力もあります。
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