勘違い鬼滅奇譚   作:まっしゅポテト

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 感想、評価ありがとうございます!とても励みになります。

 他人から見た主人公は三人称視点です。読みにくかったらごめんなさい。
 次回は最終選別かな……。


 台風接近中ですが、皆さんお気をつけて……ちなみに作者は暴風域なう。




だがしかし、主人公は特に何も言っていないのである。

『記憶による呼吸の伝承』

 

 水の呼吸の名門、一門家にいにしえより伝わる業。

 

 言い伝えによると、その業は先祖の水柱が極めた技をそのまま記憶として受け継ぎ、体現する事ができるのだとか。

 水の呼吸の存在さえ知らなかった者がまるで体に染み付いたように技を繰り出す事はおろか、剣を握った事の無い者が突然流麗な剣裁きを持って鬼を制すとか。彼らの逸話は枚挙に暇がない。

 

 記憶が発現する時期は多種多様で、十になる前の者もいれば二十を過ぎてから発現するものもいるらしい。

 引き継ぐ記憶は先祖水柱の内の誰か。時代にはかなり幅があるらしく、それも一門家の歴史の長さを語っている。

 

 

 

 鱗滝がかつて鬼殺隊に属していた頃、鱗滝の前の前にあたる水柱が正に一門家の者であった。その水柱について、鱗滝の師範はよく酒の席で語ったものだ。

 

「一門殿は水の呼吸を捌ノ型までしか修めていなかった。『才能が無い』などと本人はその事を恥じていたが、彼の剣は非常に素晴らしく、私なんぞでは足元にも及ばないものであった。おそらくあれは一門家の秘技が関わっているのだろう。呼吸の型は時代と共に付け加えられていく。もし彼の人の受け継いだ記憶が、まだ捌ノ型までしか無い時代のものであったならば?説明がつくのではないだろうか?」

 

 

『記憶による呼吸の伝承』――それを引き継ぐ者は皆揃って柱と称される剣士になり、鬼殺の歴史に大きな跡を残していった。

 

 しかし血による業は時と共に廃れていくのが定め、一門家は時代に埋もれ、今ではこの話を知っているものも数少ない。

 

 鱗滝は十年ぶりに自分の記憶を掘り起こしていた。

 

 

――なあ、流。

 

 

「諦めるな、お前たち!すぐに立て!鬼は待ってくれない、助けも無い!いつだって自分自身を助けるのは他でもない自分だ!」

 

 

 お前のその言葉は、一門水月の言葉なのか?

 かつて五つの型を持って水の呼吸を確立した、初代水柱の。

 

 

 

====

 

 

 錆兎にとって兄弟子、一門流は常に自分の前に立ちはだかる大きな壁である。

 何もしなければすぐに遠のいて行き、見えなくなってしまう壁。圧倒的なまでの格上。

 

 常人であれば諦めてしまいそうな程の実力差に錆兎はかえって高揚していた。

 

 錆兎は孤児である。八の時に親を亡くし、鱗滝左近次に拾われた。

 彼はすぐに鬼狩りとなることを心に決め、鱗滝に教えを乞うたが、しかし鱗滝は錆兎が十になるまで教えないと言った。

 

「焦ることはない。他の弟子達の稽古を見るだけでも、それは立派な修行となり礎となるだろう」

 

 それが師の口癖であった。

 

 錆兎は鱗滝の言葉の通り、常に兄弟子達の修行に付き添い、時には言葉を交わしながら日々励んでいた。

 実際、彼が十になり鱗滝から手解きを受けた時も錆兎の成長速度は凄まじく、錆兎自身も自らがかつての弟子の中でも特に優れていることを確信して疑わなかったのだ。

 

 

 一門流に会うまでは。

 

『お願いします。俺に呼吸を教えてください』

 

 一門流は錆兎が十一の時に狭霧山へ来た男だ。

 彼は見るからにボロボロで、顔もやつれていたが、その目にはハッキリとした意志が宿っていたことを覚えている。 

 

 恐らく、俺と同じように大切な者を鬼に殺されたのだろう。

 その風貌から、錆兎は推測する。

 

 だがしかし鱗滝がその理由を尋ねた時、その答えに錆兎は怒りを覚えた。

 

『鬼を滅する為に剣を握るのではなく、大切なものを守るために握りたいのです』 

 

 なんと軟弱な!錆兎は叫びたかった。鬼は例外なく人を襲う。そこには情けも憐れみもない。

 守るために戦う?そんな受動的な理由で鬼を殺せるものか!!

 

 鱗滝がその返答を認めた事も、錆兎は気に食わなかった。

 

 

 こんな腑抜け、修行の厳しさについて来れずに直ぐに家へ帰るだろう――。錆兎はそう思い、修行中も一門流を無視し、一切口を聞かなかったのだ。

 視界に入れる事すらも嫌だった。

 

 

 

 それを見たのは、一門流が来てから半年が経過していた頃である。

 

 一門流は鱗滝の指示の下、型の練習に励んでいた。

 

 呼吸を学び始めたと言うことは、剣術の基礎を修めたという事である。

 半年は……認めたくは無いが、かなり早い。

 

 鱗滝が手を鳴らすと、一門流は静かに剣を抜いた。

 

 水の呼吸、壱ノ型・水面切り。

 放たれた技は重心が露程にもぶれない。

 

 弐ノ型、水車。

 真っ直ぐ、降り下ろされる剣筋。

 

 参ノ型、流流舞い。

 足さばきは今まで見たどの弟子達よりも見事なもの。

 

 肆ノ型、打ち潮。

 流れるように繋げられる剣。

 

 伍ノ型、干天の慈雨。

 横なぎ。速度も、高さも、完璧だ。

 

 一門流は残心を取ると、暫くしてから剣を納めた。

 

 流麗。

 

 天才とはこのこと、彼の剣は本当に素晴らしかったのである。息を止めて見つめてしまう程に。

 

 

「錆兎、分かったか。お前に足りないものが」

 

 錆兎はいつの間にか横に居た鱗滝を見つめた。

 

「流は最初から剣術を習得していた。儂がしたことは型を教える事のみ。この半年間、彼奴はひたすらに型のみを練習し続けていた……剣は才能に依るものであっても、型は努力によるものだ。才に溺れず、ひたすらに技を磨く……簡単ではない」

 

 錆兎は自覚した。そして恥じた。

 自身が井の中の蛙となっていた事、周りが見えていなかった事に。

 

 錆兎は鱗滝の言わんとしていることを察した。

 目の前に大きな壁が在るのに、それを越えずして何が男か。

 

 錆兎は木刀を握った。

 

「一門流!俺はお前を越える!」

 

 錆兎は振り上げた木刀を一門流に向かって振った。

 

 

 

 

 

『鬼を滅する為に剣を握るのではなく、大切なものを守るために握りたいのです』

 

 錆兎はもう、その言葉を軟弱と揶揄したりはしない。

 錆兎と同じ境遇でありながら、その考えに至った彼を、心の底から認めていた――。

 

 

 

 

 「いやそいつ六ノ型以降は難しくて、練習サボった挙げ句に伍ノ型までばっかり半年間やり続けただけだから」とか「実家が道場だから、物心ついたときにはもう稽古始めてたから」とか「そもそも家族みんなピンピンしてるどころか鬼に会ったことすらないから」と彼らにツッコむ人間は一人も居ないのである。

 

 そして後から話を聞いて鵜呑みにした冨岡義勇も言わずもがな。

 

 

 ちなみに流の言う『大切なもの』とは自分の命と名誉である。

 「鬼殺隊に入るまで家に帰るんじゃねぇぞ(意訳)」と言われた彼は泣く泣く狭霧山へ向かったのである。

 

 方向音痴故に数日間他の山をさ迷ったすえ。

 

 




大正コソコソ話

 主人公は流流舞いが一番得意です。
 というのも雫波紋突きが使えないので、回避能力を高める為に足さばきをめっちゃ練習しました。

 
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