水柱就任編、完結です。第一部完、という感じ。
番外編をちょこちょこ入れるか迷ってるんですけど、そういえばリクエストページは活動報告にまだありますよ?何も入ってないけど()
『記憶による呼吸の伝承』ってそんなデメリットあるの"!?
一門家が鬼殺から身を引いた理由がわかった気がする。身内が精神崩壊したらそれはつらいだろう。
でもよく考えたら俺関係ないし。そんなに驚く事でもないかも……。
宇髄が不安そうな様子でこちらを伺う。俺は「大丈夫だ」と小さく呟いた。宇髄には事前に文でとんでもなく勘違いされていることを打ち明けているのである。俺の言葉は正確に伝わっているはずだ。
「フフッ!驚いてるな!」
下弦の弐はとても上機嫌である。おじさんには俺が呆然としているように見えているのか。というかなんで早く攻撃して来ないんだろう。小物臭がすごいな。
でも所詮は無惨のパワハラ被害者だし、大したことないんだろう。よし!
大丈夫だ!俺は強い!水柱の継子になって、階級を『甲』まで上げた!
「一門、呼吸は整えたな。俺が撹乱するからお前が頸を切れ」
宇髄が鬼に聞こえないくらいの声で俺に作戦を伝える。見たこともないとはいえ、一族の仇だ。俺に頸を切らせてくれるようだ。
先手必勝。鬼が油断している今が絶好の機会である。
――一瞬で、終わらせる。
「行くぜ!」
宇髄の合図に合わせて俺は走った。お互いが反対方向から鬼を囲うようになる。
鬼が目線で追いかけるのは俺の方、それでも宇髄が先に攻撃をしかけて視線を反らさせる。派手に爆発をおこして二人の姿が煙に包まれた。
「小癪な!!」
鬼が叫ぶと地面から泥の手が生まれる。宇髄は呑み込まれそうになるが、それも爆発で弾き飛ばした。
宇髄は切るのではなく爆発させるのが主であるから、泥の攻撃とは相性がよい。
泥の手は俺にも襲いかかるが、俺は全て避けた。地面が泥まみれになり、非常に動きにくい。泥は切っても刀はすり抜けるばかりで、防御する事ができない。避ける事に専念するため、一度刀を鞘に納める。
俺は地面に足をつけることを止め、木に着地しながら頸を斬る算段をしていた。
泥が刀をすり抜ける以上、『炎雷』では処理できない可能性がある。なぜならあれは空間の飽和切りで防御をするからだ。全てすり抜けてしまっては意味がない。
俺と下弦の弐、その一直線上に泥が塞がらず、視界が晴れる瞬間を見つける。
いや、見つけてから飛び込むのでは遅い。予測するのだ。
「水の呼吸――」
足の筋肉を一本一本意識する。
宇髄が大量の火薬玉を取り出して投げるのを確認する。
今だ!!
「拾弐ノ型 炎雷」
一気に踏み込み、鬼へ向かって跳ぶ。俺に気付いた鬼が直ぐ様泥の壁を出すが、俺は視界が一色に埋め尽くされるのにも構わず、居合切りの要領で刀を振り抜いた。
確かな感触。
崩れていく泥の壁に飲み込まれながら、俺は目を閉じて薄く笑った。
やっぱり小物だったぜ……。
「お前……それは水の呼吸じゃなくて雷の呼吸だろ。どう見ても地味な『霹靂一閃』にしか見えなかったぞ。まあ頸を斬れたからいいが……」
後に宇髄は困惑気味にそう語ったという。
――――
下弦の弐討伐の一週間後……。
加賀見銅鏡の水柱引退と、一門流の新たな就任が鴉達によって伝えられた。十六歳というのは異例の若さである。
「天元さまも、柱まであと一歩ですね!」
「あれはほぼ一門が倒したようなもんだからな。俺も派手に下弦を倒すとするか!」
とある忍び夫婦は奮起し。
「む、流石ですな」
「入って一年……異例の早さですね。貴女も励みなさい」
とある女師弟は感心し。
「義勇、俺は流に継子にしてもらえるよう、これから水柱邸に向かう。お前も来るか?」
とある少年は更なる高みを目指した。
「いや……」
冨岡義勇は兄弟子から貰った刀袋を撫でた。そこには『為すべき事を為せ』と書いてある。
「俺は、別にやる事がある」
錆兎は義勇の端から見たら何とも言えない顔に男の覚悟を感じ取った。であれば、もはや言葉を重ねる事は不要。
親友は、別々の道を歩み始める。
大正コソコソ話
流やった霹靂一閃ぽいものは、最後に足を止めて居合切りしたので少し違います。
大正コソコソ話その2
一門家が鬼殺関連の資料を抹消したのはお祖父さん。四代前が精神崩壊したというのは、お祖父さんしか知りません。表向きは鬼に破れたとだけ伝えられています。