でも、こうしないと本当に主人公が死んでしまうんだ。すまない。
何度もギャグ修正しようとしましたが、無理でした……
『禰豆子』
『お姉ちゃん』
『姉さん』
家族のこえが聞こえる。
みんな、どこへ行ってしまったんだろう。
わたしを置いて、どこへ……。
『お願い禰豆子!炭治郎を止めて!人殺しなんか、させないで!!』
おかあさん!
禰豆子は、思考の霞を払った。
――――
「ヒノカミ神楽――円舞!!」
炎を纏った一撃が俺の目に映る。
炭治郎は必死の形相で、俺を睨んでいた。いいお兄ちゃんだ。
なんでヒノカミ神楽使えんのよコイツ……。
本来なら刀の柄で背中を叩きつける積もりだったが、もう遅い。
しかし俺に被さるようにして、少女が前に出た。
――――
「だめ、だよぉ……お兄ちゃん」
「ね、ずこ……?」
炭治郎の放った決死の一撃。それは男に届く事はなく、別のものを斬り裂いていた。
最愛の妹、禰豆子の体である。彼女の体には今、炭治郎の持つ斧が刺さっていた。
どうして、禰豆子がこんなことに?俺が、斬ったのか?
突然の圧迫に耐えられなくなった肺が出血し、口から血を吹き出す。
斧が手から滑り落ちて、雪に埋もれた。禰豆子の体も同じように崩れ落ちて、炭治郎にしなりかかる。
「おかあさんがね。人を殺しちゃ、いけないよぉ……」
「禰豆子!禰豆子!!」
意識を取り戻した禰豆子は、幼児のようにつたなく喋る。
だめだよ、と繰り返しながら禰豆子は目を閉じた。同時に体がしゅるしゅると音をたてて小さくなる。
「禰豆子!起きてくれ!死なないでくれぇ!!」
炭治郎は顔中を濡らしながら、禰豆子の体を揺すった。禰豆子は見じろき一つせず、目を閉じている。
俺はなんてことをしてしまったんだ!斧で、人を殺そうとして、妹の身を斬った!
家族を守るどころか、家族を傷つけたんだ!!
「俺は、俺なんか……長男じゃない……」
震える手で斧を取る。それを首に当てようとして、炭治郎の意識が落ちた。
――――
「本当にごめん」
自分クソさに腹が立つ。炭治郎の斧が肩に少し引っ掛かったが、この程度、二人の傷に比べたら軽いものだ。
俺の間抜けな行動が、二人を極限まで追い詰めてしまった。優しい炭治郎に妹を斬らせたのだ。許されるようなものでは無い。
だが、これで彼らを庇う理由ができた。
そんな思考が浮かんでしまった。クソが。
流は刀を握り直すと左真横に振った。確かな衝撃と共に、弾き返す。
「流!?なぜ鬼を庇う!」
「この鬼は俺の命の恩人だ。この少女が居なかったら俺は死んでいた」
錆兎が白色の衣を翻して、眉を上げた。
「恩人……?もしや、その肩の傷は少年に?」
「妹を守ろうとして俺を斬ろうとしたんだ。でもこれは全て俺が招いた事だ。俺が、二人の心を引き裂いた……」
「そんな!流は鬼殺隊として当然のことをしたまでで」
流は首を振る。今さらそんな言い訳をするつもりは無い。
「この兄妹の命、俺が預かる。鬼殺隊といえども、殺させはしない」
腹でも何でも切ってやる。
俺が水柱というのならば、その責務は果たさなければいけない。
錆兎は暫しの間、思案した。
鬼殺隊士が鬼を庇うなど、前代未聞だ。柱であれば尚更。
だが、本当に鬼が流の恩人であるとしたら、それは最大限感謝すべき事であるに違いない。柱と継子という以前に、二人は兄弟という絆で繋がれているのだから。そして、流は嘘をつくような人間ではない。
錆兎は刀を鞘に納めた。
「とりあえず、これからどうするんだ?」
「義勇を狭霧山に呼ぶ。鬼である以上藤の家には運べないし、蝶屋敷は他に柱がいる。連絡を頼めるか?」
「相分かった」
「俺はお館様に連絡する。あの人なら分かってくれるだろう……。それと三日ほど担当地区を離れるから、代わりに頼む。真菰も呼ぶから」
「問題ない」
流は懐から傷薬と包帯を取りだし、二人の応急処置を始めた。
意識を取り戻してしまったので、禰豆子弱体化します。そのぶん長男が頑張るから大丈夫。
『次回予告』
「お前(のその毒の技術)が欲しい」
「ハァ……?」
☆さらば冨岡義勇、胡蝶しのぶにぶっ飛ばされるの巻――!!