勘違い鬼滅奇譚   作:まっしゅポテト

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 加賀見さんの大人感が異常に飛び抜けていた(感想)

 スッズムシーさん、誤字脱字報告ありがとうございました!


感謝

「一門君から、妹さんを庇ったんですね?」

「違いまっひゅ!」

「その妹さんは、もしかして鬼ですか?」

「違いまっひゅ!」

「あ、分かりました。鬼になった妹さんを守るため、一門君に斬りかかってしまったんですね」

「…………」

 

 どうしてバレたんだ!?

 加賀見さんは質問しているだけなのに!

 

「図星ですか……。ついでにもうひとつ。妹さんは、まだ生きていますか?」

 

 禰豆子は、生きている。生きているけど……。

 

「大丈夫ですよ、炭治郎君。別に言いふらしたりしませんから」

 

 視界が滲んだ。加賀見さんからは、嘘の匂いがしない。

 

「生きてます、生きてますけど……一門様を庇って俺が斬って以来、目を覚まさないんです。もう一年以上経つのに……」

「一門君が、庇われた……?」

 

 加賀見さんが、初めて笑顔以外の表情を見せた。

 

 

 

――――

 

 

 

「麓から点火を初めて下さい!くれぐれも火事には気をつけて!」

 

 

 攸花ちゃんがビシバシと指示をしていき、舞の準備をしていく。松明を持った男たちはみんな汗を流して走っていった。

 

 

 へえー、火を焚くんだ。

 十年前くらいはこんなに派手じゃなかったと思うんだけど。すごく熱い。

 

 

「何度見ても圧巻だな!この様子は!」

 

 主に横にいる人間のせいで。

 

「露葉殿の舞は『行雲流水』という言葉が正にふさわしい!決まった形を持たず、五つの型を半刻ほどの舞のうちにどのように入れていくのかが毎年変わる!しかし彼女自身に迷いは見られず、剣術の全てを尽くして舞う姿は年を追う毎に洗練されている!これは唯人には出来ない事だ!」

「そうだな」

 

 煉獄杏寿郎、鬼殺隊の炎柱。どこを見ているのかいまいちよくわからない。

 

 俺は煉獄の方に顔を向けずに答えた。

 

 

 へえー、毎回変わるんだ。

 十年前くらいはこんなに派手な舞じゃなかったと思うんだけど、すごいね俺の妹。

 

 

「俺との手合わせの時も、その足運びは非常に捉えにくく、『水』がすり抜けていくような剣技に何度感服したことか!指南書だけでは得られない物を、俺は彼女から教わったといっても過言ではない!」

「そうだな」

 

 

 へえー、煉獄に稽古をつけたんだ。

 炎柱になっちゃうような才能の固まりに稽古をつけたんだ。すごいね俺の妹。

 

 すごいなー、すごいなー…………。

 

 

 

 

 ちょっとこいつ言ってる意味が分かんないんだけど!!

 露葉ちゃんヤバくない!?人間止めてない!?なんでただの田舎道場の師範が呼吸使ったりしてんの!?どういうこと!

 

 俺さっきから『そうだな』しか言ってないんだけど!『そうだな』じゃなくて『そうなの!?』て叫びたいわボケェ!!

 

 

 

「さすがは一門殿の妹君!」

 

 その一門殿の予想のはるか上を行く優秀さ!

 

 攸花ちゃんが『双子なのに、私には剣の才能が無い……』なんて言っていたが、こんな人間が何人も居たらたまったもんじゃねぇよ!

 もはや神に愛されてるレベルだわ!

 

 

「その顔……一門殿にとって、露葉殿はまだまだというわけか!始まりの呼吸の記憶を持つ貴方にとって、あれほどの才能も驚くに値しないと!やはり俺もまだ未熟!精進せねばだな!」

「精進せねば……」

「む!自らを戒めていたのか!これは失礼!」

 

 露葉ちゃんに一体何が起こったんだよ。

 露葉ちゃんの方が実は強いとか!アリエール!!

 

 と、とりあえず……負けないように俺も頑張ろう……。

 

「兄として、不甲斐なし……」

「露葉殿の友として、不甲斐なし!」

 

 

 あのさ、さっきから気になってたんだけど、君たちどこで知り合ったの?

 

 

 

 

 

――――

 

 

 

 

 

「どうしても、斬ることに躊躇いを感じてしまうと」

「はい……」

 

 結局、俺は加賀見さんに全てを話してしまった。加賀見さんはとても話を聞くのが上手い人だ。

 ついでに自分の悩みも打ち明ける。

 

「助言。というよりも実例と言いましょうか?私は君によく似た子を知っています」

 

 加賀見さんは何かを懐かしむように、空を見上げた。

 

「その子はかつて、実の親に虐待されていました。姉として何度も兄弟を庇い、日銭を稼いで、ボロボロになりながら生きていました。私が彼女を見つけた時も、酷い有り様だった」

 

 加賀見さんは眼鏡を外した。

 

「それでも小さい子は、どんな簡単なことでも死んでしまう。一番下の弟は蹴られて死に、妹はいつの間にか居なくなっていた、と言っていました。最後に残ったのは四つ下の妹だけだったそうです。そうして、ある日、その妹が無理やり連れて行かれる様を見て……実の親を、その手で刺し殺したのです」

 

 加賀見さんは一度言葉を切った。俺は不意に涙が流れてきた。加賀見さんから、酷い、悲しみの匂いがしたから。

 

「私は偶然その場に居合わせました。彼女の妹は逃げてどこかへ行ってしまった。彼女は呆然と、親の死体を眺めていました。私はすぐに彼女を連れて保護しました。一年間は全く喋りませんでした……これを聞いたのも、五年後の事でした」

 

 その人は、俺のあり得たかもしれない未来だったんだ。禰豆子が身を呈して止めてくれた未来。

 もしあの時、俺が一門様を殺していたら、俺はどうなっていたんだろう。人を殺すというのは、そういう事なんだ。

 

「行き場を失った彼女に、私は呼吸を教えました。『自分の命をかけて、誰かを守れるのなら』といって、鬼殺隊士になることを望んだからです。でもやっぱり彼女は手合わせとなるとどうしても動きが止まってしまう。今の炭治郎君と同じですね」

「俺と、同じ……」

「私はそれを見て、『ならば鬼狩りになるな』と言いました。実を言うと、彼女には普通の人生を送ってもらいたかった。でも、彼女は次の日から変わりました。心を深く閉ざして、過去の事を全て忘れたのです。全てを忘れる事で自分の過去を無かった事にした……。あれほど自分の発言を後悔した時はありませんでした」

 

 過去を忘れる。その子は、どのような気持ちでその選択をしたのだろうか。

 

 加賀見さんはふっと笑って立ち上がった。

 

 

 

 

 

「その後彼女はめきめきと力をつけていき、弟子をとったら過去も振りきれたみたいで何とかなりました。めでたしめでたしです!」

「ええ!?」

 

 話はあっさり終わってしまった。

 なんというか、すごく、雑だ!

 

「これは実際にあった事であって、炭治郎君にこういう風にしてほしいとかではありません」

 

 加賀見さんは困惑している俺の額に指を当てた。

 

「ただ、一つ言えるのは、『自分を後ろめたく思う必要はない』という事です。真菰さんも鱗滝さんも、君が幸せになる事を願っています。一門君だってそうです。そうでなければ鬼を庇うなんて事はしません。君は彼らに対して感謝こそすれ、気負う必要は無いのです」

 

「でも、俺が禰豆子を斬った事は紛れもない事実です!それを後悔しないなんてっ」

 

「君はもう十分に後悔して、苦しんだのでしょう?なら、そろそろ前を向きなさい。禰豆子さんは君を守るために、君に幸せになってほしいから、人を庇った。他でもない君自身が彼女の行動を誤解してはいけません」

 

 

 

 

 

 

 

『幸せかどうかは自分で決める。大切なのは"今"なんだよ、お兄ちゃん』

 

『前を向こう。一緒に頑張ろうよ。戦おう』

 

『謝ったりしないで。お兄ちゃんなら分かってよ。わたしの気持ちを分かってよ』

 

 

  

 

 

 

 

 

 

「逃げるな。竈門炭治郎」

 

 

 

 心の霧を、一気に晴らされるような、そんな感じがした。

 

 

 禰豆子、ごめんな。こんな兄ちゃんで。

 でも、俺は禰豆子と一緒に居たいんだ。禰豆子とまた、笑って、青空を見たいんだ。

 

 

「禰豆子は、俺を許してくれるでしょうか……?」

「それを聞くのは私ではないでしょう」

 

 

 山のしたから徐々に火が上がっていくのが見える。綺麗だ。

 

 

「行きましょうか、炭治郎君」

 

 俺は加賀見さんに手を引かれて立った。

 

「加賀見さん、ありがとうございます」

「どういたしまして」

 

 

 

 

 禰豆子が起きたら、まず謝ろう。そして。

 

 そして、禰豆子に伝えよう。

 俺の気持ち、俺の出会った人、禰豆子が寝ている間に起こった全ての事を。

 

 

 感謝を。

 

 

 

 

 




 なんか炭治郎大丈夫っぽいですね……?

 舞を見たら善逸と最終選別に行きます(予告)

一人称と三人称、どちらが読みやすいですか?

  • 一人称
  • 三人称
  • どちらでもいい
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