俺は変態ではない。
道のりは長かった(物理)
藤襲山までの道のりを教えてもらって、先生にGoogle先生顔負けの地図を書いてもらい尚、本来の時間の三倍をかけてやっと着いた。
地図が詳しすぎたのが逆にダメだったのかも知れない。反省。
とりあえず遅刻にならなかったのを喜ぶものの、反面悲しい気持ちがある。
つ、着いちゃったー……最終選別。もう俺死ぬかも、ムリムリやばい膝が震える。
顔は至って平静を保つ、ここで小物オーラを出しても死亡フラグにしかならない。
『流!武運を祈る!』by 錆兎
『流、死ぬな……』by 冨岡義勇
『お、おう。帰ったらまた稽古つけてやるよ……』
なにを言ってしまったんだ俺はァァ!!『これが終わったら……』系は立派な死亡フラグだろうが!!
弟弟子達も意外と可愛いじゃねえか、何て欠片も思ってしまった自分を殴りたい。アイツらは数ヶ月もの間、俺の首を狙っていたんだぞ。
気を許したら殺される事を忘れていたのか!?正しくは、
『流!武運を祈る!(そして俺は貴様を倒し、更なる高みを目指す!)』by 錆兎
『流、死ぬな……(何故ならお前は俺が暗殺するのだから)』by 冨岡義勇
だろうが!
真剣で襲われた恐怖を思い出せ!厳しい事を言ってくるが実は優しく人情に溢れた二人は年上の俺には適用されない!
ムカムカで緊張がほぐれてくる。今まで嫌われ過ぎを避ける為に自分から襲う事は絶対にしなかったが、よく考えたら俺の嫌われ度限界に達してない?俺から襲いかかっても良くない?冨岡義勇の奇襲もキャンセル出来るんじゃない?
よし、やろう。
俺は絶対に生き残る。そのための戦略も組んできたんだ。
『鬼滅の刃にて、鬼殺隊士でありながら生き残る方法(最終選別編)』
・団体行動
・年号鬼全力回避
・予備刀の確保
――この三つである。
団体行動、言わずもがな。なるべく強い奴が好ましいが、せめて二人以上で行動したい。水の確保など、野営にも人手があればあるほど良い。
年号鬼全力回避。ぶっちゃけ俺には勝てる気がしない。狐面は懐に隠してある。錆兎の死亡フラグだが、一年後の事だ。頭から除外する。
予備刀。一応自分のは研いでは来たものの、古いのでいつ折れるか分からない。今までの選別に落ちた人間の刀が一本位残ってるだろうし、それを拾っておく。
よし、安心!
んなわけないだろ早くお家に帰りたい。鬼ってリアルで見たことないけどどんな見た目してんだろうか。SAN値大丈夫かな。正直今もゴリゴリ削られてるんだけど。
「皆様、今宵は鬼殺隊の最終選別にお集まり頂きありがとうございます」
白髪で丸い目の女性がどこからともなく現れた。
産屋敷あまねだ。御屋形様のご内儀。時透無一郎をもってして「白樺の精かと思った」なんて言わせしめた人。
いや、白樺は無いだろ。チョイスが謎過ぎるよ時透くん。せめて花で例えようよ、なんで木なんだよ。
「最終選別は、この山で七日間生き残ること。七日目の朝に、再びこの広間へお集まり下さい」
産屋敷あまねは深々と頭を下げた。
「それでは皆様。武運長久をお祈りしております」
空気が張る。俺は呼吸を使い、足に力を込めた。
こういうのは勢いだ。最初が大事なんだ。
力を一気に放つ。そして前へ――行かなかった。
「ゲェ!!」
首が勢い良く絞まって苦しい、すごく痛い。と同時に服がはだけた。胸が丸見えになる。
こんなことってある!?
たまたま俺を見た産屋敷あまねが顔を袂で隠す。最終選別で真っ先に半裸になったやつは俺が初めてなんじゃないかな、ウン。
俺を半裸にした主は、俺をヒョイと持ち上げた。どうやら襟を掴まれていたらしい。
足が宙に浮く。後ろにいるため顔は見えないが、背が高い事は確かだ。
「悪いな、いきなり止めて。直前まで迷ってたんだが、さっきの気配でお前に決めた」
ん?この声?どこかで聞いたことがあるような……。いや、そんなことより――。
重力で上衣が袴から抜ける。俺は完全に上半身裸になった。だからそんなことより――。
「俺は宇髄天元。お前、地味に強いだろ。俺と組め!」
効果音が着きそうなキメ顔に立ち姿。頭にはジャラジャラと宝石がつき、まさに派手の権化だ。いやでも、
「そんなことよりまずは俺に謝れよ」
主に俺の名誉に対して。
大正コソコソ話
主人公には双子の妹がいます。のちのち出てくるかも。