やっとこさ原作突入といえるかも。
so-takさん、The sleeperさん、誤字脱字報告ありがとうございました!
「よし、頑張るぞ」
炭治郎は気合いを入れて、藤襲山に入る。
とうとうこの時が来た。最終選別、この山で七日間生き残れば鬼殺隊に入れる。
義勇さんから最終選別のいろはを教わった。食事の確保に応急処置の仕方、時間の使い方。
『最終選別もまた一つの鍛練となる。常に己の高みを目指せ。そして自分のするべきことを見つけろ。無茶はするな』
義勇さんは意外によく喋る事を知った。
黒髪と白髪のそっくりな少女たちが最終選別の説明をしている中、炭治郎は目を閉じて嗅覚に意識を集中させる。
最終選別は二人以上で行動する事が望ましい。義勇さんは錆兎さんと、真菰さんはその場で知り合った姉妹と共に行動したそうだ。
俺も始まる前に見つけなければ。
選ぶ、というのも烏滸がましいが、なるべく強い人を選んだ方が安全ではある。答えてくれるかは分からないけど、話しかける意味はありそうだ。
鼻を研ぎ澄ませ、感情を嗅ぎ分けていく。
強い人というのは自分の鍛練を信じ、落ち着いている人の事だ。
――無理無理無理怖い怖い怖い死ぬ死ぬ死ぬ……。
不動心、不動心だ。炭治郎!
――例えここで生き残っても死ぬ。一人で死ぬ。もう無理ですよ俺は。
あの桃色の袴の子、強そうだ!
――ああ、俺って今日が命日なんだろうな……。どうせ俺が死んでも誰も悲しまないんだろうな。
炭治郎はくわっと目を開けた。
説明が終わると同時、すぐ横に居た少年の襟元を掴んだ。
「どうしてお前はそんなに恥をさらすんだ!最終選別にどうして来たんだ!」
「ヒィィ!!いきなり酷い事言われた!」
「帰れないのか!?帰る場所が無いのか!?」
「本当は来たく無かったよォ!でも育手のじいちゃんにビンタされて来るしかなかったんだよ!俺は死にたくないけど、がえったらごろされるぅぅ!!」
「なら俺と一緒に来い!お前を守ってやるから!もう泣くな!」
炭治郎は怒鳴った。このままだと本当に少年が死んでしまう気がしたのだ。
「ハァァ!?!?お前優しすぎでしょ!ありがとうございます!!!!」
瞬時に泣き止んだ少年、名を我妻善逸という。
――――
とりあえず山の中に入り、周りを警戒しながら歩く二人。鬼が一体だけ来たが、炭治郎が切り伏せた。
善逸が炭治郎の背中を指差す。
「炭治郎、そのでかい箱には何が入ってるの?」
「これか?そろそろ目的地だから、そこに着いたら見せてあげるよ」
にっこりと笑う炭治郎。地図を片手に、大きな荷物を持って歩く様子はまるで登山者だ。
第一印象がヤバかったが、普通に明るい奴だと善逸は認識を改める。
数分ほど歩いた所で日が上り、川べりで二人は腰をおろした。
炭治郎はうきうきとした様子で荷物を広げる。
「最終選別に向けて、沢山準備してきたんだ!火打石に水筒、包帯――」
どんどんと箱から取りだし並べていく。それなら善逸も持っている。
「そして鍋に、米、たくあん――」
善逸は驚いて見ていた。
「義勇さんに貰った罠作り用の工具、最終選別の手引き書――」
善逸は驚きを通りこして真顔になった。
炭治郎が一層幸せそうな顔で黒い玉を取り出す。
「会ったことは無いけど、流さんに貰った花火だ!最終日の朝に打ち上げよう!!」
「炭治郎、スゴいね……」
善逸は乾いた声で笑った。
炭治郎のすごさは止まらない。
兄弟子ではなく宇髄天元と同じように昼日中に鬼を殺しに行き(善逸は三回気絶した)
兄弟子ではなく宇髄天元と同じように夜中に火を焚いて鬼を誘き寄せた上で罠にはめ、後ろから頸を切り。(善逸は五回気絶した)
兄弟子ではなく宇髄天元と同じように服を脱いで自然と一体化しようとし(善逸は普通に気絶した)
そんなんで哀しそうな顔で
「鬼はかわいそうな生き物だ……」
とのたまう炭治郎に、善逸は本気でビビった。
(あれだけ積極的に鬼を殺しにかかっといて、どういう事だよ……!!ヤバいよこいつ!!)
炭治郎と善逸が頑張ったおかげで、最終選別の死者は数人だった。
でもやはり入隊を諦めた人が多かったので、五人しか入らなかった。
大正コソコソ話
炭治郎がやべぇ奴になってしまったのは、勿論兄弟子達のせいです。
義勇さんは、流と離れて蝶屋敷にいる内に、亀より遅いですがコミュ力を取り戻しています。