勘違い鬼滅奇譚   作:まっしゅポテト

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 ここでのしのぶさんはカナエさんが生きている為にツンツンした性格です。
 タイトルに恋愛要素は含んでおりません。

 so-takさん、誤字脱字報告ありがとうございました!


ぎゆしの(物理)

――霞の呼吸、肆ノ型 移流斬り。

 

――水の呼吸、参ノ型 流流舞い。

 

 

 有一郎が錆兎の横を抜け禰豆子に襲いかかろうとするのを、錆兎は流流舞いでもって封じる。

 刀どうしがぶつかり合い、甲高い音をたてるのを、炭治郎は呆然と見つめていた。互いの一挙一動が速すぎて着いていけないのである。

 

(これが、錆兎さんの力……!)

 

 

「炭治郎!禰豆子を連れて走れ!」

 

 数合の打ち合いの隙間に錆兎は時透から視線を外さず炭治郎を一喝する。

 炭治郎はようやく正気に戻ると、眠ったままの禰豆子を抱えて走り出した。

 

 

 力と経験で優位の錆兎、相対するは才能と持ち前の速さを生かす有一郎。

 二人の力量はほぼ互角。

 

「どけっ!」

「断る!」

 

 錆兎は有一郎を足止めしつつ、状況を打開する策を考じていた。

 

 禰豆子についてはお館様から箝口令が下っている。鬼殺隊を混乱させない為だ。

 恨みのあまり、鬼殺隊士には鬼を前にすると冷静さを保てない人間が多い。もしも炭治郎と禰豆子の存在が広まれば彼らの身が危険にさらされる。実際、今がそうだ。

 知ってしまったからには事実を話すべきだが、不幸な事に錆兎の手元には禰豆子が認められている事を示すものが無かった。

 

 なにより錆兎は有一郎より階級が低い。

 

 本当に、流がこの場所に居ない事が悔やまれる。

 

 

――――

 

 

「炭治郎!禰豆子!」

 

 良かった生きてた!

 俺は二人を見つけて側に寄った。炭治郎は俺を認識すると、足をもつらせて倒れそうになる。俺はすぐにその体を支え、傷をざっと確認した。

 深い傷は無いが、出血が多い。貧血と疲労によって立っているのも辛かったのだろう。

 

「一門様!今、錆兎さんが俺を庇って、戦っていて……!」

「名前は分かるか?」

「俺と同い年くらいで、白い刀の……」

 

 有一郎君、本当に代わってくれたんだ。

 

「おつうちゃん!」

「ワカッタ」

 

 一言で全てを察したおつうちゃんが飛んでいく。俺はこの二人を朝まで守らなければいけないので、とりあえず包帯を炭治郎に巻き付けていった。

 

「あ、ありがとうございます」

「気にするな。禰豆子は大丈夫か?」

「ずっと寝ているだけなので、大丈夫です!最近は起きてる時はすこぶる元気ですから!」

「良かった」

 

 すこぶる元気な禰豆子、きっとかわいいな。にやけてしまう。

 

「あの、一門様。禰豆子は、他の鬼殺隊士に受け入れられるのでしょうか?鬼と対峙して、禰豆子が他の鬼と全く違う事を知りました。鬼殺隊には鬼に恨みが多い人がいると聞きます。俺たちは……」

「炭治郎」

 

 俺はその言葉を遮った。有一郎君に襲われてかなり気が滅入っている。

 本当にごめんなさい。

 

「俺が半年前に言った事を覚えているか?」

「はい。もちろん、他の鬼殺隊士が禰豆子を殺そうとする事に覚悟はしていました」

「炭治郎。俺や錆兎、義勇に真菰しか禰豆子を受け入れてくれる隊士はいなかったのか?」

 

 炭治郎は少し詰まると、首を横に振った。

 

「いいえ、他に三人いました」

「それを誇れ。この短期間でよくやった。お前は自身の心で周りを変えたんだ」

 

 炭治郎を激励する。炭治郎はとても優しいから、最初は禰豆子に否定的だった錆兎も、今では彼らを庇うほどに変わった。

 

「一門様……。俺、弱気になってました!すいません!!」

 

 頬をぱんぱんと叩いて炭治郎は立ち上がる。

 俺も笑って、その肩を叩いた。元気になって良かった。俺はやっぱ台本読みより普通に話した方が良いんだな。

 

 禰豆子が目をさまし、俺の裾を引っ張る。

 頭を撫でてあげると、嬉しそうに目を細めて「ありがとう」と言った。もはや言葉は不要である。

 

 

 とはいえ。

 

 

 背中に鋭い殺気を感じた俺はすぐさま刀を抜き、振り返った。

 それはふわりと頭上を舞い、着地する。

 

「もう何なんですか、一門さん!鬼の頭を撫でたりして!そんなんだから私は貴方が嫌いなんです!というか頓珍漢な行動をする貴方の弟弟子含めて嫌いです!」

 

 

 流の心にクリティカルヒーーット!!!!

 

 

「え、俺もですか?」

 

 

 炭治郎の心にもクリティカルヒーーット!!!!

 

 

「俺は、嫌われていない…………」

 

 

 何気にしのぶに付いてきた義勇の心はバリアを張った!

 

 

「なにふざけたこと抜かしてるんですか冨岡さん。わたし、貴方の事が嫌いですから。すぐ約束すっぽかすし、言葉が足りなさすぎて周りを怒らせるし、何度まわりが『あいつの言いたい事が分からない、訳してくれ』と泣きついてきたと思ってるんですか?」

 

 

 義勇は倒れた。

 

 

――胡蝶しのぶ、勝利!!!!

 

 

 

 

 しのぶさんは禰豆子から庇うように義勇の前に陣取ると、眉を寄せながら話を続ける。

 

「この話はさておき、一門さん。どういう事ですか?鬼殺の妨害ですよ」

 

 しのぶさんは柱の中でも有一郎君に次ぐ速さだ。正直、庇いながら戦うのは非常に分が悪い。

 

「炭治郎、後で合流する。とりあえず走れ」

「質問に答えませんか……、しょうがないですね」

 

 いや、今から答えようと……。

 しのぶさんが禰豆子を刺そうとするのを、俺は弾いた。炭治郎はしのぶ殿の横を通り抜け、走っていく。

 

「一門さん。わたしに継子が二人いることをお忘れですか?」

 

 ふらりと立ち上がる義勇。俺としのぶさんは同時に叫んだ。

 

「冨岡さん!」

「義勇!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「了解」

 

 義勇は小さく返答すると、しのぶさんの背後から手を出した。彼女の細い首に腕を巻き付け、一気に絞めあげる。

 いわゆる裸絞め、一度形を作られたら、よほどの体格差がなければ抵抗できない。 

 

「あなた……後で、覚えて……なさ、いよ……」

 

 しのぶさんは驚きの表情を浮かべた後、気絶した。

 

「よし、決まった」

 

 義勇は満足そうな表情でムフフと笑った。

 

 いや、確かにしのぶさんを無力化するのが最適だけれども。そうなんだけれども。

 

 なんていえばいいんだろう。この感じ。

 しのぶさん、ごめん。

 

 

 

 

 

「流!義勇!炭治郎は――――」

 

 錆兎が有一郎君と共に走って来る。

 錆兎は義勇の腕の中で気絶しているしのぶさんを見て血相を変えた。

 

「義勇お前、それはちょっと……やり過ぎじゃないか……?」

 

 有一郎君もドン引きした顔で呟く。

 

「継子なんだよね、一応」

 

 合流していたカナエさんも真顔になった。

 

「冨岡君……あなたいつか本当にしのぶに愛想尽かされるわよ?」

 

 義勇は心外、といった表情を浮かべた。

 

 

 

 

 

 

 

 炭治郎は、お館様の伝令が届くまで逃げ切りました。

 




 何気に原作と同じような事をする冨岡さん。

 
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