勘違い鬼滅奇譚   作:まっしゅポテト

47 / 51
 


すれ違い 後

 全員で連れションってこと……?

 

「いや、流石に女子は」

「そんなこと言わないで、一門さん!男女なんて関係ないでしょう!?」

 

 おおありだと思うんだが。

 流石に女子も混ぜて連れションは無いだろう。

 

「貴様、甘露寺は強い。彼女も柱だぞ。連れていかないなんて、頭がどうにかしているんじゃないか?」

 

 いや、連れていく方がどうにかしていると思う。

 

「全員で行くと決めたのだ!ならば例外などない!」

 

 煉獄も、だと……?

 男女で連れションするのは普通なのか?俺が変わってるのか?

 周りからの視線が痛い。まるで俺が男女差別をしているみたいだ。

 

 いや待てよ。

 

 

 

(もしかして、全員実は厠に行きたかったけど、勇気が無くて行けなかった……!?)

 

 

 

 

 それならば全てに納得が行く。

 しかし、厠は一つしかないのだ。もしも並ぶ事になれば……

 

(絶対にッ、漏れる!!) 

 

 すまない!だが、俺が先に行かせて貰う!

 

 

――――

 

 

「お前たちの覚悟は分かった。しかし、俺は一人で行かせて貰う」

(いや、お前何も分かってねぇだろ。厠に行くのに覚悟するやつなんかお前くらいだよ)

 

 宇髄は、冷静にそう宣った流に対して信じられないモノを見るような目を向けた。

 経験上、一門が派手に勘違いされている事をすぐさま理解した宇髄。いつもなら爆笑しながら見ているが、今回はまさかの巻き込みである。

 うっかり真実が明かされようものなら一門と一緒に宇髄の株まで急降下だ。

 

「一門!テメェ、俺達を舐めてんのかァ……?」

「すまないが、先に行かせて欲しい。時間がない」

「時間がない、とは。そこまで近づいているということか!?」

「ああ」

 

 煉獄が眉を上げた。

 普通に会話が通じている事に、宇髄は不安になる。もしかして俺が派手に勘違いしているだけなのか……?

 しかし相変わらず一門の尻はプルプルと震えていた。忍び特有の観察力でわかる。あれはどう見ても抑えている。

 

「おい!一門!自分を犠牲にするな!」

「有一郎、お前が何を思っているかは理解している積もりだ」

 

 絶対に理解出来ていない。

 普段の様子はどこへやら、必死の形相で一門を引き留める有一郎。さながら死地に向かう兵士にすがりつく人間だ。

 

「止めろ時透、これ以上の言葉は不要だ。一門、何かあったら必ず呼べ……」

 

 涙を流しながら悲鳴嶼が道を開ける。一門はふっ、と笑って小さく頭を下げた。

 

「ありがとうございます。有一郎、心配するな。なに、直ぐに帰ってくるさ」

 

 小股でそそくさと走っていく一門。

 走れるのかよ。なら耐えてないでさっさと行けよ。

 

 宇髄は一門を冷めた目で見送った。

 

 

「チッ!」

 

 不死川がダン、と音をたてて木を拳で叩いた。その衝撃に木の上に居た伊黒が転がり落ち、甘露寺がさりげなくキャッチする。

 

「クソ野郎がっ!一人で行きやがって!」

 

 酷い言われようだが、実際用を足しに行ったので間違いではない。

 

「俺じゃ、上弦に手も足も出ねえってかァ!?」

 

 なるほど。宇髄のなかで、やっと話がまとまった。

 つまり一門は一人で上弦の鬼に特攻していくと思われてたのだ。

 

 いや、どんだけ勘違いされてんだよ。

 

 

――――

 

  俺氏、離脱成功!

 

 厠の位置はしっかり頭に入っている。俺が今まで何度あの厠の世話になったか!

 毎回柱合会議がある時は、あそこで用を足してから向かっていたんだ!道を違える事は絶対にっ!ない!!

 

 柱達もしぶしぶではあるが行かせてくれたし、今度からは我慢せずに途中退室するのもアリかな。いや、さすがに恥ずかしいな。

 鼻歌を歌いながら厠に入る。

 

 薄暗くて狭い空間。臭いが、妙に心が落ち着く空間だ。

 産屋敷邸で好きな場所ランキング堂々の一位である。

 

 

 

(※何が起きているかは察して下さい)

 

 

 

 よし!今日も頑張るぞ!

 天井に向かって手を挙げ、決意新たに俺は立ち上がった。

 

 挙げた手に何かが当たり、目の前にぼとりと落ちる。

 

 

「キー……キー……」

 

 

 それは眼球に足が生えた謎の物体。

 俺が少し潰したせいで、血が流れていた。

 

 

「キメェェェェッッッッ!!!!」

 

 

 俺はそれを認識した瞬間に、刀を抜き、刺し殺した。

 

 

――――

 

 

 キメェェェェッッッッ――

 

 キメェェェェッッッッ――

 

 キメェェェェッッッッ……

 

 

 産屋敷邸中に、一門流の悲鳴がこだまする。

 

「『鬼滅』!一門からの合図か!皆、行くぞ!」

 

 先に走り出したのは煉獄。全員がそれを追いかけた。

 

「一門、無事か!?」

 

 鍵のかかっている厠の扉を無理やり開け、煉獄は中に入った。

 

 そこにいたのは手を血に濡らし、地面に刀を突き刺している流。

 顔を伏せて、刃の先を見つめている。

 

「おい、なんだそれは?」

 

 伊黒は刃に貫かれてほぼ形を失っている異形の物体を指さした。

 

「異形の鬼?いや、血鬼術か……。まさかこんな所にまで潜り込んでいるとは」

「目だ」

 

 流はそのまま続けた。

 

「全て見ていたんだ。目だけで」

 

 

「なるほど」

 

 煉獄は流があくまで一人で行く事に固執した理由を知る。

 

「確かに柱が揃って見られては、ここが鬼殺隊本部だと教えるようなものだったな」

 

 煉獄は目を見張った。

 なんということだ。全く存在に気が付けなかった。

 一門は、柱合会議のあの場所から、これを察知したのか!?

 

「お館様に何かある前で良かった……。しかし、場所が鬼に割れたのも事実。早急に本部の移転を申し出よう……」

「それもあるが、上弦が近づいてんだろォ?柱同士の稽古もした方がいいんじゃねぇか?」

「そうだね。今の俺達じゃ力不足だ。柱全員で同時にやるのは無理でも、特定の階級ごとに隊士を鍛えるかなにかして戦力の底上げをしよう」

「柱稽古ね!」

 

 厠で始まる柱合会議。

 大事な所を鬼にガン見されていたショックから意識が飛ぶ一門流。

 流の意識を必死に取り戻そうとする宇髄天元。

 蝶屋敷の中で冨岡義勇を合法的にぶちのめす算段がつき、薄ら笑いを浮かべる胡蝶しのぶ。

 

 混沌とした状況で、会議は進む。

 

 

 

 

 その頃、お館様は――――。

 

 

 

 柱合会議に柱が一人も来なかった事に、ショックを受けていた!

 

「ひなき、にちか、分かっているよ。子ども達に、もう私の手は必要無いんだね」

「っ、お館様……!!」

「炭治郎、皆はいないようだから、君だけには伝えておこう。ひなき、文を見せてあげて」

 

 縄をほどいてもらった炭治郎は、屋敷にあげてもらい、文を渡された。禰豆子も日陰なので、箱から出ている。

 

 

『もし竈門禰豆子が人を喰った際は、竈門炭治郎、鱗滝左近次、一門流が腹を斬ってお詫びします』

 

 

 炭治郎は目から溢れてくるものを堪えて、お館様に頭を下げた。禰豆子も、炭治郎と同じようにする。

 なんて、暖かい人たちなのだろう。

 

 鱗滝さん、錆兎さん、真菰さん、義勇さん、カナエさん。そして、一門さん。

 俺たちは、色んな人に支えられて生きてきたんだ。

 

 一門さん。いや、流さんにあの時出会えて、本当に良かった。

 

「俺と禰豆子は、絶対に、鬼舞辻無惨を倒します!必ず!」

「期待してるよ」

「はいっ!!」

 

 お館様は隠、と呼ばれる人たちを呼び、去っていった。

 

 

 

 

 

 

☆柱合会議、閉会!!

 

 




 勘違いって書くの大変なんだな、と思ったまっしゅです。
 感想返信放棄してすいません。かなり私生活が忙しいので、更新が遅くなります。今回はフリじゃないです。

 活動報告の方のリクエストもしっかり見ました!ありがとうございます!
 私生活が落ち着いてきたら更新します!

 これにて柱合会議編は終了です。機能回復訓練というか、修行編?が次になります。
 お気に入りが5000人突破したので、何か番外編とかでもいいなと思ってる。いつも読んでくれている皆さん、ありがとう!!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。