「仲間を連れてきたのかァ?一緒に喰ってやるよォォ!!!!」
走る。
宇髄が先行し、伸ばされる手を切っていく。
「乗るぞ!」
その内の一つ、大木程の太さのある手に宇髄が飛び乗った。俺も追従する。
音の呼吸、伍ノ型・鳴弦奏々!!
宇髄が刀を体の前で回すと、手は全て爆散した。視界が晴れる。
「今だ!」
俺は宇髄の背中を蹴って飛び上がった。
「ウロコダキィィ!!!!」
無数の手が俺を掴もうとするが、宇髄がクナイを投げるとそれらも爆発して散る。
「水の呼吸、壱ノ型――」
俺が手を交差したその時、手鬼と目が合ったとき。手鬼は笑いを浮かべていた。
「ヒヒッ!!残念だなぁ、手はどこからでも出せるんだ」
手鬼の頭の後ろから一本、生える。
宇髄の援護は、届かない。俺が爆発に巻き込まれるから。
その手を切れば、体勢を崩して鬼に喰われる。
「一門!!」
宇髄が叫ぶ。
俺は決死の思いで体を左に倒した。手がすれすれのところで髪をさらう。
「水の呼吸、弐ノ型――改!」
体全体と地面が水平になる。
今だ!
「横水車!!!!」
体に乗った重力をそのまま利用するように俺は回った。
横水車は止まること無く、手鬼の頸を切り離した。
使いなれていない技だったが何とか成功して、安心する。
これ着地が上手く出来ないからなー。
下手したら首折れるからなー。
「あ……」
そう、今のように高い所ですると、頭から地面に落ちるのである。
「ああああああ!!!!死ぬぅぅぅぅ!!!!」
俺が叫ぶと地面が爆発し、俺は更に爆発に巻き込まれて吹っ飛んだのであった。
「大丈夫か?」
「宇髄が見える……」
目を覚ますと宇髄が覗きこんでいた。
「お前がなかなか起きないもんだから派手に焦ったぜ!」
太陽が上り、隣で宇髄が焚き火をしていた。魚を焼いている。
匂いにつられて俺の腹が音を鳴らした。
「食うか?」
「もらう」
上体を起こして魚を一つ手に取る。
「そっか俺、倒したんだ。手鬼」
「そりゃもう派手派手にな!首が凄い勢いで飛んでいったぜ!」
宇髄は興奮しながら語る。あんまりに俺を褒めるもんだからすこし照れ臭くなってしまう。
「宇髄のお陰だよ」
「その通りだ!」
いや少しくらい謙遜しろや。
ホクホクと魚を食べていると、上半身裸の宇髄が周りの木を切り始めた。
「夜用にやぐらを組むぞ、なるべくでかいのがいい」
「エ?」
「初日に言っただろ。最終日に派手に火をあげるって」
「俺身体中バキバキなんだけど」
「もちろんお前は安心して寝てて良いぜ!俺が守ってやるからな!」
すごくいい笑顔で宇髄はのたまった。
「まず前提として鬼を引き寄せんのを止めろ」
キャンプファイヤーには、誰も来なかった。
――――
朝が来る。
産屋敷あまねは地平線から上がる太陽に目を細めた。
毎回、この瞬間は申し訳なさでいっぱいになる。
大勢の幼い子供が、山から帰ってこない悲しみ。
それでも送り出すしかない、鬼を見たことさえも無い自分。
その思いは母になってより強くなった。
――今年は何人残るのかしら……。
良くて五人、悪くて三人。
誰も帰ってこないなんてこともあった。
鳥居から人の声が聞こえてくる。
ドカドカと足音を立てて誰かがやって来る。
「頼むから服を着てくれ!本当に恥ずかしいから!」
「断る!派手で良いぜ!お前も脱げ!お揃いだぁ!!」
「やめてぇぇ!!!!服を返せ!返せよ!」
この声は、初日に珍行動をした……
「ヨッシャア!鳥居が見えてきたぜ!祝砲をあげるぞ!」
「これ以上俺の黒歴史を増やさないでくれ!!」
ぱーん!!
暁に大きな花火が上がり、半裸の少年が二人、鳥居を抜けた。
産屋敷あまねは、驚愕のあまりヘンな声を出してしまった。
――今回の最終選別。
受験者、二十三名。
重傷者、八名。
死者、五名。
合格者、十八名。
今までに無い、異例の合格率だった。
だからと言って鬼殺隊士になったのは結局三名で、いつも通りだったのだが。
この最終選別の逸話は後に一門流が水柱となった際、急速に(同期から隠になった者たちによって)広まる事になる。
やめてあげて!流のライフはもうゼロよ!