もしも暗殺教室の担任が黄色い超音速タコではなく地下出身の怠け骨だったら……というお話。

100%衝動で書き上げた1話限りのクロスオーバー。

※今回挿絵つき小説に挑戦してみましたが、()()()()()()()()()()()()。下手くそな絵なんて見たくねーよと言う方はご注意ください。

殺せんせーっぽい服をサンズに着せてみた。
↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓

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殺せんせーとサンズって意外と似てね?(下図)と思い衝動的に書いてみました。


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第1話

ここは、とある中学校の教室。

 

約30名の少年少女が席につき、始業を待つ。

 

しかし、この教室には異様な空気が漂っていた。

 

始業を待つだけにしては、この教室は()()()()()()()()()()

 

生徒たちの年齢を考えれば、むしろ他愛のない雑談が飛び交い、うるさいくらいの喧騒に包まれていてもおかしくないはずなのだが、この教室においては誰も口を開かず、皆一様に緊張した面持ちで教卓の方を見つめている。

 

この教室に漂う雰囲気を言い表すならば、『殺気』。

 

およそ教育機関であるこの場所には最もふさわしくない空気が、この教室には漂っていた。

 

ガララ

 

教室のドアが開かれ、教師と思しき者が入室してくる。

 

「よし、全員そろっているみたいだな。そんじゃHR始めるぞ、はーい、号令」

 

その教師を一言で言い表すならば、『骸骨』。

 

比喩表現ではない、文字通りその教師は『骨』なのだ。

 

皮膚は勿論、筋肉すらない骨だけの身体が原理は不明だが確かに自立して動いている。

 

丸い頭蓋骨、口元には三日月のような笑みが張り付き、眼球の存在しない眼窩には白い光がそこに存在しない眼球の代わりのように浮かんでいる。

 

「起立‼」

 

日直の生徒の号令で、全員が一斉に立ち上がり、ジャキジャキジャキと銃を構え、教壇に立つ骸骨に狙いを定める。

 

明らかに異常な光景だが、骸骨は何も言わずニヤニヤと生徒たちを見ている。

 

「気をつけ!」

 

そして、引き金に指をかけ―――

 

「れーーーーい!!!」

 

一斉に発砲する。

 

30もの銃口から放たれる弾丸が形成する濃密な弾幕は回避不可能であるように思える。

 

しかし―――

 

「おはよーさん」

 

次の瞬間、いつの間にか男子生徒の机の上に立ってた骸骨が気の抜けたような口調で言う。

 

「そのままでいいから出欠をとるぞ、呼ばれたら返事しろよな、じゃあまず磯貝」

 

骸骨は自分の立っている机の前に立つ男子生徒の名前を呼ぶ。

 

「―――‼」

 

「あーすまねぇが、もうちょい大きな声で頼むわ」

 

「…は、はい!」

 

生徒たちが『磯貝』と呼ばれた男子生徒の机の上に立つ骸骨に銃口を向けなおし、再び発砲するが、その瞬間には既に、別の生徒の机の上に移動している。

 

「岡野」

 

「はい!」

 

「片岡」

 

「はい‼」

 

机から机へと、出欠を取るたびに一瞬で移動する骸骨に翻弄され、生徒たちは狙いを定めることができない。

 

 

そもそもなぜ、生徒たちはこんなことをしているのか。

 

それは、彼らが『()()()』であり―――

 

骸骨は、『()()』だからである―――

 

これは『暗殺者』の生徒と、『標的』の骸骨教師が織りなす1年間の記録である―――

 

 

「遅刻は……いねぇみたいだな。偉い偉い、オイラの怠け者なところが生徒に影響してないみたいでよかったぜ」

 

hehe…と、骸骨は肩を竦めて冗談っぽく笑った。

 

だが忘れてはいけない、この骸骨はいままで生徒全員から蜂の巣にされていたのだ。

 

「だが残念だったな、今日も命中弾はゼロだ」

 

常人には回避不能ともいえる銃弾を一つ残らず回避してなお、骸骨は呼吸一つ乱さず平然としたようすでニヤニヤと生徒を見回す。

 

「お前ら人数だけは多いからって『とりあえずバラまいとけば当たるだろ』とか思っていたな?目線、銃口の向き、指の動き、何もかもが単純だったぜ。確かに『数』ってのは強力だが、それに頼りきりすぎだな」

 

さらには標的自ら殺し方の講釈を垂れ始めた。

 

「ま、次からはもっと工夫しろってこった。そんなんじゃあいつまでたってもオイラは殺せないぜ?」

 

「本当に全部避けてるのかよ先生!どう見てもこれただのBB弾だろ?」

 

生徒の一人が銃弾を一つ摘まみ上げながら言う。

 

その弾の見た目は、確かに見た目的にはBB弾に酷似していた。少々特殊な素材が使われているだけで、どう見ても生き物を殺傷できるようには見えない。

 

「当たってるのに我慢しているだけじゃねーの!」

 

故に、このような疑惑が生徒から出るのは当然であった。

 

「「「そうだそうだ!」」」

 

他の生徒もそれに賛同する。

 

すると、骸骨は嘆息した。

 

「ヤレヤレ……全く文句ばっかり達者なガキどもだぜ…。しょうがねぇな、なら弾を込めて渡せ」

 

そう言うと、骸骨は近くの生徒から片手で銃を借り、もう片方の手に銃口を向けた。

 

「言っただろ、この弾はお前らにとっては玩具同然だが……」

 

バン!

 

骸骨が銃を発砲すると、銃弾が当たった手が嘘のように吹き飛んだ。

 

「国が開発した対オイラ用の特殊弾だ」

 

後方に吹き飛んだ片手は空中で塵となり霧散する。

 

「コイツを食らえば、オイラなんて濡れた紙同然よ。ま、もともとオイラは貧弱だけどな、なんせ骨しかないもんで」

 

冗談めかして骸骨の片手はいつの間にか元通りになっていた。

 

「ま、ちょっとの欠損ならすぐ直るんだけどな……とはいえ調子に乗って乱射したりすんなよなお前ら。ソレを撃つのはくれぐれもオイラを殺すときだけにしろよ」

 

そう付け加えると、骸骨はまた肩を竦める。

 

「ま、さっきの弾幕を見た限りじゃあオイラを殺すには10年早いと思うがな。精々卒業までに殺せるようがんばるんだな、ガキども。そんじゃチャッチャと片付けて授業始めるぞ」

 

生徒が教師を殺しにかかり、それを通じて教師が生徒を育てる。そんな異常な空間。

 

上空に浮かぶ三日月に見守られながら、そんな『異常な日常』が今日も始まる。

 

 

遡ること数週間前。4月初旬の新学期が始まって最初の日のこと。2つの事件が起こる。

 

【月が!爆発して7割方蒸発しました‼我々はもう一生三日月しか見れないのです‼】

 

原因不明の大爆発により、月の大半が消し飛ぶという大事件。それが波乱の幕開けだった。

 

突然にして教室にやってきたのは動く骸骨と、それに銃を向ける黒服の大人たち。

 

骸骨は生徒にこう告げた。

 

「よぉ、初めましてだなガキども。オイラがお前らの担任で、ついでに言えば月を爆破()った犯人だ。来年には地球も消し飛ばす予定だから、そこんところよろしくな」

 

「「「「「(先ず5、6箇所ツッコませろ‼)」」」」」

 

クラス全員の心が一致した瞬間だった。

 

そして黒服の大人の一人がこう言った。

 

「防衛省の烏間と言う者だ、まずは、ここからの話は国家機密だと理解していただきたい」

 

『国家機密』という中学生には重すぎる言葉を噛み砕く前に烏丸は続ける。

 

「単刀直入に言う、君達にこの怪物を殺してほしい‼」

 

あまりにも突然で、突発的で、突拍子もない烏丸の言葉に生徒全員硬直した。

 

「……え、何スか、ソイツ地獄から蘇ったモンスターかなんかスか?」

 

「hehe……(あた)らずと(いえど)も遠からずってところだな。中々良い線行ってるぜ、記念に握手しようぜ少年」

 

いつの間にかその男子生徒の隣に立っていた骸骨が片手を男子生徒に差し出した。

 

反射的に男子生徒がその手を握り返すと―――

 

プゥ~

 

と、間抜けな音が響き渡る。

 

男子生徒が手を離すと骸骨の手には所謂ブーブークッションが握られていた。

 

「hehe…引っかかったな。手にブーブークッションをしかけといたんだ」

 

「「「「(小学生か‼)」」」」

 

あまりにもしょうもないイタズラに全員が心のなかでツッコんだ。

 

「生徒と接触する許可はだしていないぞ」

 

「hehe……カタいこと言うなよ兄ちゃん、ちょっと雰囲気を和ませてやろうと思っただけさ。茶目っ気だよ茶目っ気」

 

烏間が窘めると、骸骨は肩を竦めるながら教卓の方へ戻った。

 

「……詳しいことを話せないのは申し訳ないが……さっきこいつが言ったことは真実だ」

 

ヤレヤレといった顔で烏間は続ける。

 

「月を壊したこの生物は来年の3月、地球をも破壊する。このことを知っているのは各国首脳だけ、世界がパニックになる前に……秘密裏にこいつを殺す努力をしている。つまり―――」

 

次の瞬間、烏間はスーツのからナイフを取り出し骸骨に切りつける。

 

「―――――『()()()』」

 

しかしその瞬間にはもう骸骨は烏丸の背後に立っており、ナイフは空を切った。

 

「だが、どういう理屈か不明だがこいつは瞬間移動能力を持っている!殺すどころか顔に落書きをされる始末だ‼」

 

額に『肉』と書かれながら烏間は言った。

 

分かり易くナメられていた。

 

「満月を三日月に変えるほどのパワーと原理不明の能力をもつモンスターだ、他にもまだ能力を隠している可能性も大きい‼つまり……こいつが本気で逃げれば、我々は破滅の時まで手も足も出ない」

 

黒服の大人の一人から渡されたタオルで顔を拭きながら烏間はそう言った。

 

「ま、とはいっても四六時中逃げ回るのも面倒だからな、オイラから国に提案したんだ」

 

筆とインクをしまって骸骨は言う。

 

「殺されるの何て真っ平だが……椚ヶ丘中学校三年E組の担任ならやってやるってな」

 

「「「「「(何で!?)」」」」」

 

あまりにも脈絡が無さ過ぎてまたもや生徒たちは心の中でツッコんだ。

 

「こいつの狙いは分からん、だが政府はやむなく承諾した。君達生徒には絶対に危害を加えないことが条件だ。理由は2つ……教師として毎日教室に来るのなら監視ができるし、何よりも、30人もの人間が……至近距離からこいつを殺すチャンスを得る!!」

 

その理屈は確かに合理的であろう、しかしE組生徒たちにはまだ納得できないことがあった。

 

(どうして怪物がうちの担任に?)

 

(どうして僕らが暗殺なんか!?)

 

当然と言えば当然の疑念だが、それは次の烏間が放った言葉で彼方まで吹き飛ぶことになる。

 

「成功報酬は百億円!」

 

「「「「「!!!???」」」」」

 

「当然の額だ、暗殺の成功は冗談抜きで地球を救う事なのだから、幸いなことにこいつは君たちをナメ切っている。見ろ、この覇気のない顔、命を狙われているというのにまるで危機感を感じていない」

 

「当然だろ、国が寄ってたかって殺しに来るのに比べれば30人の中学生に狙われるの何てどうってことないぜ。この前最新鋭の戦闘機に襲われた時も逆に空中で盛大にデコってやったぜ」

 

「「「「「(しょうもねえ!?)」」」」」」

 

「その隙をあわよくば君たちに突いて欲しい。君達には無害でこいつには効く弾とナイフを支給する。君達の家族や友人には絶対に秘密だ。とにかく時間が無い、地球が消えれば逃げる場所などどこにもない!」

 

「ま、そういうこった……それじゃ、これから一年よろしく頼むぜガキども」

 

かくして、地球を破壊する骸骨と中学生との奇妙な関係『()()()()』が始まったのである。

 

 

キーンコーンカーンコーン

 

「昼休みだな、んじゃオイラはちょっとばかしスペイン行ってシエスタしてくるぜ」

 

そう言い残し骸骨は一瞬で姿を消した。

 

「スペインって今何時だったっけ?」

 

「日本より7時間遅れているから……今朝5時かな」

 

「昼寝になってないじゃねぇか……」

 

「しかもあの骨向こうに行ってる間にテストの採点までしてるんだぜ」

 

「マジ!?」

 

「うん、いつの間にか机の上に採点済みのテストが置かれてる」

 

「てかアイツ何気に教えるの上手くない?」

 

「わかるー私放課後に暗殺に行った時ついでに数学教わってさぁ、次のテストよかったもん」

 

骸骨を話題に彼らの会話も良く弾む。どうやら少しだけ他の教師とは違う骸骨だが、生徒たちとはそれなりに上手くやれているようだ。

 

そして―――

 

「ま……でもさ」

 

「所詮俺らE組だしな」

 

「頑張っても仕方ないけど」

 

―――彼ら生徒も、少しだけ他とは違うのであった。

 

「おいフリスク」

 

ガタイのいい如何にも『不良』といった感じの男子生徒が取り巻き二人を連れて長い髪の眼の細い中性的な生徒へと声をかける。

 

「ちょっと来いよ、暗殺の計画進めようぜ」

 

「…………うん」

 

高圧的な不良3人に翼は仕方なく従った。

 

「あのホネの観察をしとけって言ったやつできてるか?」

 

校舎外にあるグラウンド、そこに降りる階段に不良が腰かけ他の取り巻きが威圧するかのように翼の横に立つ。

 

「作戦がある、あいつが一番『油断』しているときだ、お前が刺しに行け」

 

それはおよそ、作戦とは言い難いお粗末でありきたりのもの。

 

その程度で殺せるならば誰も苦労はしていない。

 

「僕が?で、でも……」

 

口籠るフリスクに不良はさらに高圧的に迫る。

 

「良い子ぶってんじゃねーよ、俺等はE組だぜ?進学校の授業についていけなかった脱落組……通称『エンドのE組』毎日山の上の隔離校舎に通わされて、あらゆる面でカスみてぇに差別される……落ちこぼれの俺等が百億稼ぐチャンス何て…社会に出たらこの先一生回ってこねぇぞ、脱け出すんだよ、このクソみてぇな状況から」

 

そう……いまこの不良が語ったことがこの椚ヶ丘中学校3年E組を取り巻く状況の全てだ。

 

「たとえ……どんな手を使ってもな」

 

不良はそう言って、ポケットから何かを取り出しフリスクに押し付けるように渡し、校舎へと戻っていった。

 

椚ヶ丘高校三年E組

 

またの名を『特別強化クラス』

 

彼らは勉強についていけなかったドロップアウト組として、所謂『劣等生』の烙印を押され、劣悪な学習環境の下、他のクラスと比べてありとあらゆる面で冷遇され、差別され、嘲笑の的となっている。

 

そして何より、E組の彼ら自身がそれを受け入れて何もかもを諦めてしまっているのだ。

 

彼、『風里(かぜさと)(たすく)』もその一人である。

 

彼がE組行きを宣告され、『弱者』となった際、その瞬間から彼は徹底的に侮蔑と軽蔑の対象となった。

 

【フリスクのやつE組行きだってよ】

 

【うわ~終わったなあいつ】

 

【俺。あいつのアドレス消すわ】

 

【同じレベルだと思われたくないし】

 

弱者になった途端誰も彼を見なくなった。仲の良かった友達も、その瞬間から最初から友情など存在しなかったかのように離れていった。フリスクは誰からも相手にされなくなった。

 

「……」

 

そんなことを思い返していると

 

「よぉどうした?そんなサムい駄洒落を聞かされたような顔して」

 

「……おかえり先生、どうしたの……『ソレ』」

 

いつものように急に現れた骸骨は片手にロケットランチャーと思しきものを担いでいた。

 

「スペインで軍隊に待ち伏せされてな、せっかくだから記念に武器を1つ拝借してきたぜ」

 

それは立派な犯罪なのでは……?という考えが頭をよぎったが、そう言えばこの骨地球を爆破するんだっけと思い返し、今更なので口には出さなかった。

 

「標的だと大変ですね」

 

「hehe……まぁな」

 

骸骨はロケットランチャーを近くの木に立てかけながら言った。

 

「ま、でも仕方ねぇんじゃねえか?ほら、オイラって全人類の脅威だし、そりゃあ目を離せないよな」

 

「!」

 

「よし、あんまり寝れなかったが5時限目を始めるぞ」

 

骸骨が放った言葉はフリスクの心を深く抉った。

 

『力のあるものは誰からも注目される』

 

その言葉は、誰からも注目されなくなった『弱者』のフリスクにとって何よりも深く心を抉るナイフとなった。

 

「(そんな怪物に……期待も警戒もされなくなった、認識すらされなくなった人間の気持ちなんて……分からないよね)」

 

【お前のお陰で担任の評価まで落とされたよ、唯一よかったのは…もうお前を見ずに済むことだ】

 

脳裏に前のクラスの担任の言葉がよぎった。

 

「(誰も僕を見ていない……見えていない……きっと先生にだって…だったら、()れるかもしれない……僕が…この怪物を……)」

 

フリスクは不良に渡されたものを強く握りしめて骸骨を見据えた。

 

ところ変わって教室

 

「今日はお題にそって短歌を詠んでみろ、五・七・五・七・七のどこでもいい、『骨』又は『スケルトン』のようなそれに類する言葉を組み込んで短歌を作れ」

 

ケタケタ骨を鳴らしながら骸骨は言った。

 

「で、オイラはスペインで取り損ねたシエスタの続きをするから出来たら持ってこい。それでオイラが笑えると思った奴から合格ってことで帰っていいぞ」

 

「「「「(無茶振りだ!?)」」」」

 

「先生しつもーん」

 

まるで古文関係ない無茶振りに生徒がツッコみを入れる中、女子生徒の一人が手を挙げた。

 

「……ん?どうかしたのか、茅野」

 

「今更だけどさぁ、先生の名前何て言うの?他の先生と区別するとき不便だよ」

 

「それはお前がお題をクリアできたら教えてやる、ほら、さっさと取り掛かれ」

 

骸骨がそう言うと、生徒達は黙々とお題に取り掛かる。

 

そして、しばらくすると、骸骨の目蓋(骨のくせに何故目蓋があるのかはさておき)がだんだんと落ちていき、骸骨がうとうとし始め、やがて寝息を立て始めた。

 

それを見たフリスクは音を立てないよう慎重に席を立ち、ナイフを忍ばせて足音をさせないようにゆっくりと骸骨に近づく。

 

 

昼食後のこの時間、生徒が最も眠くなる時間に、先生とて同じく眠くなる。

 

観察で得た情報として、骸骨の瞬間移動にはそれなりに体力を使う。

 

朝の号令で数十回、昼にスペインに行って1回、さらに向こうで待ち伏せされたらしいのでそこでも数十回使ったとして、帰りに1回。

 

結構な数で骸骨は瞬間移動を行っており、体力の消耗もそれなりのはず……茅野への反応にタイムラグがあったことから今先生は最も『油断』しているはず…。

 

そう推測し、骸骨を起こさないように近づくフリスクの狙いに他のクラスメイトも気づく。

 

『弱者』は思う。

 

「(どこかで見返さなきゃ……親や友達にやればできるって……『()()()()()()』って……)」

 

ナイフの射程距離まで慎重に近づく。

 

心臓が早鐘を打ち、ドクドクという音が体内から聞こえる。

 

耳が熱くなり、汗が噴き出す。

 

それでも、焦る心を押さえつけ、フリスクは慎重に慎重を重ねて骸骨に近づく。

 

そして、ナイフの射程圏内に入ると同時に隠し持っていたナイフを思い切り振りぬく―――

 

しかし―――

 

「おーっとそうは問屋が―――」

 

骸骨がナイフを回避してフリスクの後ろに立ったその直後、その首に二本の腕が絡みつく。

 

観察の結果、骸骨には攻撃を回避するとき背後にまわるクセがあることを見抜いたフリスクがあらかじめそれを予期して抱き着いたのだ。そしてその胸元には―――

 

「(BB弾グレネード‼)」

 

「(特製のな!もらった‼)」

 

それを見ていた不良がほくそ笑みながらスイッチを押した。

 

バァァン‼‼

 

フリスクと骸骨の間で大量のBB弾が炸裂した。

 

「ッしゃあやったぜ‼百億いただきィ‼」

 

不良とその取り巻き達3人が大喜びで教卓の方へ駆け寄った。

 

「ざまァ‼まさかこいつも自爆テロは予想していなかったろ!」

 

「ちょっと寺坂‼フリスクに何持たせたのよ!」

 

茅野が不良―――寺坂に詰め寄る。

 

「あ?オモチャの手榴弾だよ、ただし火薬を使って威力を上げてある、三百発もの対先生弾がすげえ速さで飛び散るように」

 

「なっ……‼」

 

絶句した。

 

確かに至近距離でそんなものが爆発すればあの骸骨を殺せるかもしれないが、自爆したフリスクとてただでは済まない。

 

それを分かっていて実行したのだ、この3人は。

 

「人が死ぬ威力じゃねーよ、俺の百億で治療費くらい払ってやらァ」

 

それはまるで、フリスクをモノとしか思っていないかのような発言。

 

『壊れたなら直せばいい』人の命をその程度にしか思ってないのだ。

 

「実はな、オレには瞬間移動の他にもちょっとした特技があんだ」

 

「っ!?」

 

するはずのない声が天井から聞こえてきた。

 

驚愕して上を見上げると、そこには爆破に巻き込まれたはずのフリスクが()()()()()()()()

 

「あんな風にな、重力の働く向きと強さを変えられんだ。それを使って爆弾を床に押し付けて威力を殺し、俺達は上に避難した」

 

「「「うわぁぁ‼」」」

 

突然底冷えするような低い声が背後から聞こえ、寺坂たちは腰を抜かしながら振り返った。

 

そこには、殺したはずの骸骨が濃密な殺気を漂わせながら立っていた。

 

右の眼窩に灯っていたいた目のような白い光は消え失せ、左の眼窩には青く光る目が寺坂たちを睨みつけるように凝視していた。

 

口元に張り付いた三日月のような笑みは変わってはいないが、寺坂たちにはそれが憤怒の表情に見えていた。

 

 

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「寺坂、吉田、村松、クソガキ共が……お前らの差し金だな?」

 

そう言うと、骸骨は突然教室からいなくなったかと思うと、約3秒後に何かを腕一杯に抱えて突然戻ってきた。

 

ゴトリと、骸骨が抱えていたものが落ちる。

 

「え……あ……」

 

寺坂たちが落ちたモノを見る。

 

それは―――

 

「「「(俺等ん家の表札!?)」」」

 

骸骨が抱えていたのは、寺坂たちの家の表札だったのだ。

 

いや、それだけではない、E()()()()()()()()()()を骸骨は3秒で取ってきたのだ。

 

つまりそれは―――

 

「これだから約束ってのは嫌いなんだ。政府との契約でオレは『お前ら』に危害を加えることはできない。だが、もしまた今の方法で暗殺に来たら……()()()()()には何をするかわからねえぜ……家族や友人……いや、お前ら以外全員地獄の業火に焼かれてもらうぜ

 

3秒間で皆が悟った。

 

例え地球の裏まで逃げたとしても、この骸骨からは逃げられない―――

 

どうしても逃げたいなら……この骸骨を殺すしかない―――

 

目の前にいる骸骨は、それほどまでに恐ろしいモンスターなのだ。

 

いつもの気だるげな姿からは想像できないが、このモンスターには先ほどの発言を実行するだけの力をもっているのだ。

 

そんなモンスターの殺気を真正面から向けられ、寺坂たちは恐怖に慄く。

 

「なっ……なんだよテメェ……迷惑なんだよォ‼いきなり来て地球爆破とか暗殺しろとか……迷惑な奴に迷惑な殺し方して何が悪いんだよォ‼」

 

寺坂は恥も外聞もなく泣き喚く。

 

「迷惑だと?まさか!お前らのアイデア自体はすごく良かったぜ」

 

途端に骸骨はコロッと殺気をを収め、打って変わって寺坂たちを賞賛した。

 

「特にフリスク、お前にはしてやられたぜ……まさか移動するときの癖を見切られてまんまと捕まっちまうとはな。オイラはすっかりしてやられたぜ」

 

天井からフリスクを下ろしながら、骸骨はフリスクを褒める。

 

「…………!」

 

「だが……」

 

再び骸骨の両目の光が消える。

 

「寺坂はフリスクを、フリスクは自分を省みなかった。そんなクソガキには暗殺の資格はない」

 

そう言うと、骸骨は他の生徒たちの方へ向き直る。

 

「お前ら全員誰にも憚ることなく堂々と殺しに来い。お前らはそれができるだけの能力を持っている。オイラからのアドバイスだ」

 

瞬間移動で怒られて、骨だけの手で褒められる。

 

この異常な教室で異常な骸骨教師は、それでも生徒たちに正面から向き合っていた。

 

ふと、骸骨の視界に先の爆発で教卓についた焦げ跡が入る。

 

【あなたの時間をくれるなら……我が子達(my children)を教えてあげて……】

 

【……なんて素敵な手…………‼】

 

【この手なら……きっとあなたは……素敵な……教師に……】

 

「…………」

 

脳裏に映るいつかの記憶を思い返しながら、骸骨は焦げ跡に触れる。

 

「さてフリスク、問題だ」

 

骸骨は暗殺者に問う

 

「オイラは殺されてやる気何て微塵もない。お前ら全員と三月まで教師生活を楽しんだら地球を爆破だ。それが嫌ならお前はどうする?」

 

その殺意を、その『()()』を、神出鬼没の骸骨は問う。

 

「………その前に先生をを……殺します」

 

そして、暗殺者は『決意』する。

 

この標的(ターゲット)なら、『殺意』でさえも受け止めてくれると信じて。

 

「heh……やって見な、ガキども」

 

生徒は―――『殺し屋』

 

標的は―――『先生』

 

「あ、そうだ先生、そう言えば先生の名前って何なの?」

 

「オイラは『サンズ』骸骨(スケルトン)のサンズだ」

 

生徒と教師の『暗殺教室』

 

始業のベルが、明日も鳴る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




最後までお読みいただきありがとうございました。

ホントのホントにノリだけで書き上げたこの短編、楽しんでいただけたのなら幸いです。

挿絵は……うん。(遠い眼)

この短編は暗殺教室の殺せんせーをサンズで置き換えた、ただそれだけの小説です。

なので、これから先を書くと設定的に無理が生じる(筆者が考えてない)ので最初の第1話限りとなっております。

誰かほかの人が最後まで書いてくれてもいいのよ?

自分で書け?

(書け)ないです。

筆者には一部キャラの設定と配役ぐらいが限界で本格的に暗殺教室の設定を違和感なく改変して盛り込むなんて高等テクは見切り発車の衝動100%で小説書いた筆者には無理無理カタツムリです。

取り敢えずキャラ設定だけ載せとくので続きを書きたい、もしくはアンテ暗殺クロスを自分でもやりたいという人は参考程度にどうぞ。

殺せんせー役

『サンズ』


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言わずと知れた骨兄貴。瞬間移動する。

元科学者だから実は教師とか向いてるんじゃね?思ったり思わなかったり。


潮田渚役

『風里翼』

ニックネーム『フリスク』


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主人公ポジ。観察力に優れている。

物静かだけど決意は固い。そんな主人公役はやはりアンテ主人公のフリスクしかいないなと思い配役。意外と違和感ない気がする。

赤羽カルマ役

(にのまえ)キアラ』

ニックネーム『キャラ』


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登場してないけど設定だけ存在。戦闘力高い。

ナイフの扱いが得意だったり戦闘力高めだったり主人公と友達だったり、何かとキャラと通じるところがあるので配役。つよそう(小並感)

雪村あぐり役

『鳥居恵美子』

ニックネーム『トリエル』

こちらも設定だけ。サンズとカップリングするならパピルスかトリィしか居ねえなとおもい配役。


柳沢(シロ)役

『須田日向』

ニックネーム『ガスター』

黒幕の科学者キャラと言ったらこいつしか居ねえなと思い配役。

筆者の中ではガスターの仮面をつけた人間ってイメージ。

筆者が違和感なく配役できたのはこのぐらいですかね……細かい設定?んなもんねえよ。

寿司姉貴をイトナ役にしようかとか考えたけれどあまりしっくりこなかったので没。


つ づ か ず。


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