ギャルゲーの友人キャラに転生したら主人公が女だった。   作:4kibou

10 / 142
綺麗なヒロインだと思っていた人には申し訳ないがここでネタばらし。


一章幕間:彼女のウラガワ ~あなたの色がほしい~

 

 彼女にとって、その言葉は救いに等しかった。

 

『うん。大丈夫。いまはすごい悲しくて、きっと、僕の想像もつかないぐらい、白玖は辛いんだと思う。でも、大丈夫』

 

 母親が死んで、悲しみにくれていた彼女に、その少年は優しく語りかけた。どこか年相応らしからぬ雰囲気と言葉遣いで。必死に、必死に、彼女の心をときほぐそうとしてくれた。

 

『きっといつか、白玖を幸せにする。あと……そうだね、十年もしたら、きっと』

 

 壱ノ瀬白玖はその言葉を、片時も忘れたことはなかった。

 

「……白玖。おまえは本当、母さんに似てきたなあ」

「また言ってる……もう耳にタコができるほど聞いたよ、それ」

「もし死んだら母さんと同じ墓に入れてくれよ? じゃないと化けて出るからな」

「もう、縁起でもないこと言わないでよ。ただでさえ入院してるのに」

「……だな。ちょっと、お父さん空気読めなかった」

 

 最後に交わしたのはそんな会話だったか。父方の実家で暮らしていた白玖のもとに訃報が届いたのは、ちょうど中学三年になる夏休みのときだった。

 

「お父、さん……」

 

 悲しかった。自然と涙は溢れた。枯れ果てるほどに流れて、やがて倒れるように白玖は眠りについた。祖父母はそんな彼女を慮って、色々と親切にもしてくれていたように思う。

 

「…………、」

 

 でも、こればっかりはどうしようもない。胸の中心にぽっかりと開いた穴。なにもかもが手につかなくて、どうしようもない気分に浸っていたとき。――ふとはじめた遺品整理の途中に、古い写真を見つけた。

 

「(あ、これ――)」

 

 映っているのは幼い頃の自分と、濡れ羽色の髪をした少年。名前は十坂玄斗。いまはどうしているのだろうか。母親の死と、父親の体調不良で引っ越してからは連絡もとっていない。懐かしい、と思いながら他の写真を漁っていくと、ひとつ、目につくものがあった。

 

「うわあ、そうだ……これたしか、玄斗と一緒に書いたやつだ」

 

 表裏一体。たしか白玖の父親にカッコイイ四字熟語を聞いて、ふたりで一緒に書き記したものだった。白と黒は表裏だから、ひとつになってひっくり返る、なんて意味の分からないコトを言っていたっけ。

 

「……玄斗、いまなにしてるかな」

 

 一度気になりだしたら、後はもう歯止めがきかなかった。時期的にちょうど良かったこともある。向こうで近所に住んでいる母方の姉に月に何度か訪問の約束を取り付けて、彼女はたったひとり昔の家族で住んでいた家にまで戻ってきた。どこの高校かも分からないまま、正直無鉄砲な行動だったのは否めない。けれども理由はそれだけではないし、と転入した高校へいざ行ってみたところ。

 

「(――見つけた)」

 

 奇跡でなければ運命だ。十坂玄斗はそこにいた。むかしと変わらない濡れ羽色の髪を目元まで長く伸ばして、むかしと同じような口調で白玖に接してきた。……男だと思われていたのは、まあ、仕方ないにしても。

 

「おかえり、白玖」

 

 そして、あの言葉を聞いたとき。白玖の心は、真実もう一度救われた。胸に飛来した想いは十二分に理解できた。辛くて、悲しくて、自棄にすらなりかけていたとき。たった一言、彼にその言葉をかけてもらっただけで、温かいものに包まれた。

 

「(ああ、もう――――好きだなあ)」

 

 転校前に願掛けついでで髪を染めてきたのは正解だった。彼と同じ濡れ羽色。自分の白とうまく混ざり合うように染まった黒髪は、いつも彼の存在を感じられて幸せな気分になる。そうだ。ずっと自分は、この少年と一緒に歩いて行きたかったのだ。

 

「(好き、好き。大好き……他の誰にも渡したくなくなるぐらい……って、重いなあ)」

 

 自覚はしている。きっと自分の心は重い。あの鈍感で天然入った男が気付く筈もないだろう。おそらくはずっと、友人同士の付き合いとして片付けるはずだ。けれど、気持ちを伝える手段はいっぱいある。たとえば、

 

「……惚れてくれてもいいけどー?」

「ほら、玄斗の声って安心するし」

「玄斗のいるコンビニなら毎日行ってあげるよ」

 

 こんなふうに、本気の冗談(・・・・・)を織り交ぜてみたり。

 

「(まあ、気付いてもいないだろうけど)」

 

 所詮冗談で処理されるものだ。軽口でちょっとまあ冗談にならない気持ちを伝えるだけ。そんな面倒くさいコトをするような性格でもなかったはずなのに、人間どこでどうなるかなんて本当に分からない。……いきなり決まった一緒に登校するという一大事に、一睡もできなかったコトとか。

 

「(思わず図書室で寝落ちしちゃったし……なーんか粋なコトしてくるし)」

 

 わざわざメモを残して握らせ、ブレザーを肩にかけてくれたのは心底驚いた。ついでに玄斗の匂いにつつまれて幸せだった。我ながらちょっとそれはどうかと思う。

 

『僕が約束を破ったことって、あったっけ』

「……本当、ないから怖いんだよ。玄斗は」

 

 嘘なんて一切ついていない。実際、彼女が知っているなかで玄斗が白玖との約束を破ったことは一度もない。

 

「(まあ? 他の先輩とか、女子とかのアレコレは……ちょっと気になるけど)」

 

 とくに廊下でネクタイを締めてきた生徒会長。あれは危険だ。副会長なんかに玄斗を据えられたら一緒に過ごせる時間が減ってしまう。というよりピシッと直すのはそれはそれでいいが個人的に気に入らない。玄斗のあのゆるいネクタイはちょっと気怠さと着崩すまでには至らない中間にあるからなんかこうエロくて良いと思うのに。

 

「(うん。やっぱりブレザー姿の玄斗はエッチすぎるよ)」

 

 熱いものがこみ上げてきた。こんな姿は玄斗には見せられない。いつかは見せることになったとしても、今はまだ〝軽い関係におさまっている友人程度〟でいいのだ。時間はたっぷりある。少しずつ、彼の気をこちらに引いていけば良い。外堀から埋めていくというのも良いかもしれない。

 

「(……そうだよ。玄斗は約束、破らないんだよ)」

 

 彼は忘れているだろうか。幼い頃に彼から取り付けた大事な約束。けれど、忘れていたって白玖にとっては問題ではない。なにせ、それですら彼は叶えているのだから。

 

「(ね、玄斗。……私を絶対、幸せなままで居させてね)」

 

 冗談めかしてそんなコトを思う。半分は本気だった。だからそう、本当に、誰にも渡すつもりはない。この立ち位置を譲ってやるつもりもない。どこのどいつが相手だろうと、向かってくるなら迎え撃つ。

 

「(そう。私は玄斗に幸せにしてもらった。だから、今度は私が玄斗を幸せにする)」

 

 そう決意した。……決意したのだが、ほぼ告白まがいの台詞を素直に受け取らないのはどうかと思う。幸せになるためにあなたが必要とか、正直プロポーズもかくやといったものだと思ったのだが、彼はそうだね頑張ると答えるだけで意味を正しく理解してはいなさそうだった。

 

「(本当、ばか玄斗。……玄斗が隣に居るだけで、私は幸せなんだから)」

 

 その想いが彼に届くのは、もうすこしだけかかりそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ところで玄斗のブレザーを脱いだワイシャツ姿は控えめに言って最高ではないのだろうか。あの一枚剥いたというエロティックと白という清楚な色が合わさってもうドリームズカムトゥルーって感じだしあれだよね公共の場でする格好じゃないよねもう本当えっちだし私の前だけでやるべきっていうか普通にあれだよ警察に逮捕されちゃうってあのエロさはやばいよねブレザー早く着せないともう決壊しそうだったよもう本当もう玄斗ってばもう――




名前:壱ノ瀬白玖

性別:女

年齢:16歳

趣味:炊事、洗濯、お掃除

特技:隠れ潜むこと(?)

備考:ヘヴィー系ゆるふわ幼馴染み原作ギャルゲー主人公(♂)→(♀)という属性盛り合わせの末に生まれた現代に隠れ潜むヤンデレ(微。本作主人公が好きすぎてもう愛が止められなくなっている模様。なお向こうが歪んでいるとは知らない。原作主人公(♂)の場合、ヒロインが決定すると染髪イベントが発生し、各ヒロインと同色の色を自らの白髪に加える。それが既に起きているということはつまり……

ちなみに転生オリ主系野郎を救えるのは彼女だけである。
(彼女しか恋仲になれないとは言ってない)











壱ノ瀬白玖がこういうヒロインだと知ったあとに読み返すと「あっ……(察し」ってなる会話を結構仕込んでたりしたようなしてないような。うん?
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。