ギャルゲーの友人キャラに転生したら主人公が女だった。   作:4kibou

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まっさらトラウマ持ちと金髪こじらせ忠犬系とチャラ系女性恐怖症。こう並べると乙女ゲーみたいだなって。


生徒会三大巨頭

「そんじゃあ集まったな」

「…………、」

「――、――……!」

 

 若干一名の射殺す視線を華麗にスルーしながら、鷹仁がニヒルな笑みを浮かべる。調色高校第一生徒会室。そこに座っているのはいつものメンバーに入る男子と、いつもなら絶対に関わり合いもないふたりである。どういうわけか、腕章は彼らのもとにあった。

 

「状況を確認するか。朝起きたら腕章が副会長に代わってた」

「……白玖が僕のコトを忘れてた」

「…………妹にフェ○されそうになった」

 

 射殺す視線の主へ返すように視線が突き刺さった。腕に巻かれた布だけが変わってたいしてなにもない男子と、交友関係にとんでもないズレができてしまった男子。それとは比べものにならない、こう、なんとも言えない闇の深さが飢郷逢緒にはあった。

 

「おい、どうした。笑えよ……」

「まあ、なんだ……ご愁傷さまだ」

「あはは……」

「いまだれか俺を笑ったか……?」

「ごめん」

 

 頭を下げる生徒会長(仮)に、ふんと鼻を鳴らしながら逢緒は腕を組んで足を机に乗せながらふんぞり返る。イキリ女性恐怖症。誰ひとりとして苦手な異性がいないという状況に、この男さっきまでとは打って変わってすこし調子に乗っていた。

 

「俺たちは日なたの道を歩けない……」

「まあそれはどうでもいいとしてだ」

「どうでもいいとか言うなよぅ……」

()()()()()()()()()だ」

 

 鷹仁の強調した言い方に逢緒が拗ねた。自業自得である。

 

「なんだよう……どうせ俺なんて……」

「ああもう話が進まねえだろクソホモ野郎! いいから黙って聞け!」

「誰がホモだアァン!? オォン!?」

「やるかぁ!?」

「いいよこいよぉ!!」

「ああ……白玖……白玖ぅ……」

 

 死屍累々だった。唯一まともだったはずの玄斗ですら壱ノ瀬白玖(たぶん)記憶喪失事件によってメンタルブレイクされている。人生初の彼女をたったの一月足らずで失った男の末路だった。地味に三人のなかでいちばんダメージを受けているとも言える。

 

「玄斗も落ちこむんじゃねえ! 忘れただかなんだか知らねえが、それならもう一度惚れさせりゃいいだけだろうが! アタックしてこい!」

「! なるほど。鷹仁、君よく天才って言われないか?」

「まあそれほどにはなるが」

「なんで君たちの日常会話ってそんなコントみたいなの?」

「存在自体がコントみてえなヤツに言われたくねえわ」

「シンプルに()

 

 うっと心臓をおさえた逢緒がそっと姿勢正しく座り直した。交友関係が微妙でも三人寄れば馬鹿をやる。男子とは得てしてそういう生き物だ。決して文殊の知恵的ななにかが浮かぶわけではない。なにせ高校生である。

 

「んで話を戻すが、なにか起きたのは間違いないとして……てか、なにが起きてやがる……?」

「そんなの僕も知らないよ……というか、この席に座ってるはずの赤音さんは……」

「はっはっは、そんな真面目に話しても解決しねえだろ。……いやわりとマジでな……」

 

 手詰まり、というのは考える前から分かっていたコトだ。たかだか男子三人。集まって知恵を振り絞っても絞らなくても現状を受け入れることすら難しい。単純に鷹仁はどうでもいいからこそ冷静であり、玄斗はそんじょそこらのコトでは動揺しないぐらいなもので、逢緒に至っては諦めかけていた。三者三様、パニックになるほど取り乱さないのだけが共通している。

 

「つーか俺が生徒会ってマジか……どうなってんだ……」

「んなこと言うなら俺は副会長で玄斗は会長だ。悪くはねえが、スッキリもしねえな」

「夢なら覚めて欲しいけど……そもそも、朝のあれはなんなんだ……?」

「良いこと言ったぞ十坂。あの稀に見る女子の大群はなんだ」

「ファンだろ。てめえらの」

「「()らにそんなのはないけど!?」」

 

 がたんと立ち上がってふたりが抗議する。実際囲まれているのだからどうしようもないが、認めたくも無いという最後の意地だった。もともと女子との交流については苦労していなかった男ひとりが、ニヤニヤと余裕の含んだ笑みを浮かべている。

 

「あとは……そうだな。おまえら、今日が何日か知ってるか?」

「? 九月一日だろう」

「だな」

「……やっぱりな。どうりで鈍いワケだよ」

 

 すっと携帯を取り出して、なにやら操作した鷹仁がズイッと画面を見せてくる。ありがちなカレンダー……というよりは日付の画面である。現在時刻である八時二十分というデジタル表示の下に、ちいさく本日の月日が示されていた。――十月、十六日。

 

「……木下。これ、日付狂ってるぞ」

「狂ってねえよ飢郷。スマホだろうが」

「そんな……」

「ほら、玄斗はすぐ受け入れて……、」

「――僕、いつの間にか十七歳になってる……!」

「飢郷。しばけ」

「いまそこちゃうやろがい」

「痛い!?」

 

 十坂玄斗、知らない間に誕生日を迎える。ちなみに九月十六日である。

 

 

 ◇◆◇

 

 

 たとえば、五加原碧の場合。

 

「おっはー、会長。うん? なに? ……屋上? 一緒に? いや……えっと、なんのこと……? その……あたし、あんまりそういうのは……ちょっと……あー、会長は嫌いじゃ無いけど……タイプじゃないっていうか……」

 

 たとえば、三奈本黄泉の場合。

 

「……会長? いいえ、違うと思います。不思議。でも、あんまり好きにはなれなさそう。……あなた、誰? 私の知ってる生徒会長とは、違いますよね」

 

 たとえば、二之宮赤音の場合。

 

「はい、ほら蒼唯。口あけて」

「…………、」

「あーんって、ほら。やんなさいよ」

「…………あー

「ん」

「……、…………」

 

 たとえば、四埜崎蒼唯の場合。

 

「……もう一口お願い」

「はいはい分かってるわよ。本当だらしないわね……」

「でも赤音ならしてくれるでしょう」

「まあ、幼馴染みではあるのだし」

……じゃあ遠慮も要らないじゃない

「あー、まあそのほうがアンタらしいか……」

 

 たとえば、十坂真墨の場合。

 

「ごめん普通に話しかけないで邪魔」

 

 たとえば、たとえば、たとえば――

 

「きゃあああ会長ーっ!」

「すてきーっ!」

「今日もかっこいいですぅう!」

「あーたまんねえぜ」

 

 廊下を駆け抜けて生徒会室に入りながら、玄斗は真っ先に鍵を閉めてへたり込んだ。なにかが違うとか変だとかいうレベルではない。まるで別世界だ。目立たないはずだった十坂玄斗が生徒会長で、多数の生徒から人気を集めていて、彼自身が築いてきた関係の一切がなくなっている。――誰も、彼との思い出を覚えていない。

 

「いやこれはどう考えてもおかしいって……」

「だな」

「ハゲドウ……また髪の話してる……」

「飢郷おまえひとりでそれやってて悲しくないか?」

「だって誰も乗ってくれねえじゃん……」

 

 私は悲しい……と言いながら目を伏せる飢郷少年。いつもよりふざけ気味なのはギャグで傷心を紛らわそうとしているのか、それとも元からこんなものだったか。考えて、玄斗は後者のほうが合っているような気がした。

 

「収穫はどうだ? 会長」

「とりあえず僕の知り合いは全滅だった」

「俺の知り合いは生きてたぜ! なんか、すっごい塩対応されたけどな!」

「駄目じゃねえか……俺はまあ、諸々変わってねえな。だから情報網だって残ってた」

「……おお……」

 

 玄斗が感嘆の声をあげると、ドヤ顔で鷹仁が手帳を取り出した。そのやり取りを逢緒が傍から馬鹿を見る目で眺めている。彼もそのうちのひとりだとは気付いていない。

 

「じゃあまず最初、玄斗から行くぞ」

「僕……?」

「――甘いフェイスで女子の八割を虜にした新進気鋭の生徒会長。またの名を漆黒の十字架。その瞳に見られた者はまるで磔にされたみたいに動けなくなるという。生徒会三大巨頭のひとり」

「待って」

 

 玄斗は額をおさえながら俯いた。気持ちは誰しも理解できる。

 

「なんだそれ……!?」

「知るか。だいたいのヤツに聞いて回った結果をまとめたらこうなった。面白いな」

「面白がってる場合じゃない……! それは間違いなく噂が一人歩きをしてるレベルだ!」

「あははははは! じゅっ、十字架っ……! 漆黒の十字架っ……ホストかよ! 十坂やべー……っ!」

「笑わないでくれ……ホントに……!」

 

 あたまがいたい。いまの玄斗の心境を一言で表せばそうなる。たしかに忘れられている――と言って良いものかどうかも分からないが――というのはとても心にクルが、正直言ってしまうとその程度でへこたれるほど柔でもなくなっていた。一学期に散々振り回された結果である。十坂玄斗の心はいまや衝撃にとても強い。

 

「そんな爆笑している飢郷逢緒くん。軽い雰囲気とちょうど良い容姿で女子人気ナンバーワンを獲得した学園の男性アイドル。またの名を青い餓狼。今まで付き合った女子の数は優に百を超えるという」

「ちょっと待って?」

 

 逢緒は額をおさえながらうつむいた。気持ちは以下略。

 

「俺は誓ってそんなプレイボーイじゃない……!」

「でも俺のデータだとそう出てる」

「そのデータは間違いだな! ……大体そんなコトできたら女性恐怖症で苦労しねえよ……」

 

 呟きながら、逢緒は制服の下に浮かんだじんましんをかいていた。まったくもって切実すぎるぼやきにちょっとだけふたりも同情してしまう。実害が目に見えて出ている分、苦労は相当なものだろう。

 

「こんなもんかな」

「いや待とう。まだ鷹仁の評価を聞いていない」

「そうだな。木下。副会長はなんて言うんだ?」

「馬鹿か。おまえらな、俺が情報仕入れてんのにそんなの分かるわけ――」

 

 と、逢緒がなにやらわざとらしく手帳を取り出して。

 

「会長の右腕。鋭い切れ長の瞳と横柄な態度で一部の女子のハートをキャッチした色男。またの名を仁義の金鷹。なおごくごく一部の女生徒間では会長×副会長ネタが量産されており――」

「待てテメエ最初から全部知ってやがったな!?」

「ふっ……情報収集は得意なのだよ。金鷹殿?」

「その名前で呼ぶんじゃねえ二度とケツが拭けねえ体にしてやるからな!?」

「ヒエッ……ナニをする気なんですかねえ……つか後ろ側ってことはおまえ受けかよ」

「飢郷ォ!!」

 

 ガタガタと暴れる鷹仁を玄斗はどうどうとなんとか押さえつける。まとめると、どこがどう転んでも自分たちの常識が覆っていた。これは、一大事である。 




二部だから無印勢の今までの関係は全部ぽいしちゃうね……(なお野郎ども)

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