Fate/Apocrypha 英雄カルナの妻 作:星空 柚木
「燃えろ!」
バーサーカーの言葉と共に炎球が現れる。
チリチリと余波の魔力で焼ける様な魔力の渦に草木が首を擡げてその先を燃やしている。
それが赤のセイバー_モードレッドに触れる前に剣によって打ち砕かれる。
「ハッ!バーサーカー風情がキャスターの真似事か!」
「成程。私がわざわざ自身の不得意とする魔術で高い対魔力スキルを保有するセイバーに攻撃を仕掛けたと本気で思っているんだな。
___アグニよ!」
「ッ!」
「避けたか。勘は働くと言うのに私の攻撃すら見分けれなかったのか」
「ゥるせぇ!!」
切り捨てられた炎が意思を持つように蠢いてモードレッドへと迫り来る。
それら全てを避けてバーサーカーの喉元へと踏み込んだ。
「___落ちろ、トリャンバカ」
「_!」
それを避けようとしないバーサーカーに剣先が首に触れる一瞬、モードレッドの腕は大きな衝撃を受ける。
「て、っめ…!」
「その一撃は_破壊の一手となる!」
「_ア"ア"ア"!」
バキリと自身の体を覆う鎧が剥がれていく。剥がされていく。
本来のモードレッドの鎧は重厚で、令呪のバックアップを受けたサーヴァントの攻撃を喰らおうとて問題なくモードレッドの身を守ってくれる。
だがそれは、同時にそれに見合う程の"魔力を有している"。
バーサーカーの放つシヴァから貰い受けたその力は"魔力に反応して威力を増す"。
バーサーカーがモードレッドの鎧を砕くのは簡単だ。
1部だけでも破壊出来る魔力を込めて鎧を傷付けることだ。
そして今、モードレッドの剣を握る右腕には貫通して矢が突き刺さっていた。
「クラレントォ!」
「!」
モードレッドの声に剣は魔力反応を起こしてモードレッドの左手に収まる。
間髪入れずに切り上げて来た剣をバーサーカーは弓で塞いだ。
その反応にモードレッドは挑発的に笑った。
「ハッ…やっと武器を見せたかバーサーカー。てめぇ、いつの間に弓を打った?」
「………。」
「だんまりか!いいぜ!てめぇを殺せばんな事些細事だ!」
魔力放出により炎を渦巻いていた辺りに赤雷が交じる。
純度の高い魔力はバーサーカーの肌を走る様に蠢いてその肌を傷付ける。
けれどその痛みを感知していないのかバーサーカーはゼロ距離で弓を剣へと変えて斬り掛かる。
クラレントにより容易く弾かれるその一撃は距離を取るために態と力を込めていないものだった。
「てめぇも回復が早い質か」
「お前も同じ様だな。今回の聖杯戦争は耐久Aランクが多くて嫌になる」
「言ってろ!」
魔力放出を駆使してモードレッドが距離を詰める。
上から叩き付けるような一撃を臆することなく剣で受け止めた。
カチカチと刃物の擦れ合う音が響く押し合いの中滑るようにモードレッドの蹴りが腹を狙う。
「うちのセイバーとは大違いな程粗悪だ」
「てめぇは全バーサーカーに喧嘩売ってるぜ」
ギンと鈍い音を立てて剣同士がぶつかった。
バーサーカーがふっと笑い、モードレッドは嫌な予感に力を込める。
バーサーカーの剣が弾かれて、モードレッドはその勢いのままバーサーカーの首に剣で貫いた。
一瞬で片を付けた方がいいと思ったが故にだ。
「___成程、直感持ちか」
外れだ。
そう笑うバーサーカーの首は目の真下までに剣が切り込んでいる。
首からコポリコポリと泡と共に血を零すバーサーカーを、モードレッドは首を跳ねたつもりであった。
だが動かない。
剣は確かにバーサーカーを傷付けたが_黄金の鎧は傷付けれない。
なんて無茶な戦い方だ。
首の半分を飛ばされてなおバーサーカーはうっそりと笑ったのだ。
バチリとバーサーカーの辺りの魔力がざわめく。
___宝具か。
《セイバー!撤退だ!令呪を使う!》
《ああ?!なんでだよ!》
《赤のバーサーカーが暴走状態だ!今に宝具が撃たれる!》
モードレッドはバーサーカーに警戒しながら騒がしい方を見遣る。
騒ぎの中心には男であったものが膨れ上がり体から血とも魔力ともつかぬ何かを溢れ零しながら一直線にルーラー_その手前に自身らはいる_に向かっていた。
だがモードレッドはこれくらいで恐れない。
「邪魔だデカブツ!」
バーサーカーの首から剣を抜く。
魔力放出を使い飛び掛り脳天から胴体の半ばまで真っ二つに切り分けた。
本来ならばこれで倒れ起き上がる事は無い。
___だが、赤のバーサーカー・スパルタクスは人間としての本来にも叛逆をしていた。
体を2つにした剣筋には肉が盛り上がり、新たな頭部が形成された。
「穿て、矢よ」
モードレッドの背後_黒のバーサーカーがそう呟けば彼女の手から放たれた矢が轟音と共にスパルタクスに新たに造られた首を跳ね飛ばした。
その衝撃に1度揺れるスパルタクスの体もまたすぐにその傷から頭部を再生させた。
「この、デカブツめ…!」
モードレッドは理解した。
それは直感であったが、直感スキル持ちの彼女がそう感じたのであればどんな理論よりも信用が出来るだろう。
このデカブツは殺せない。
スパルタクスの宝具・疵獣の咆吼[クライング・ウォーモンガー]は受けた傷を魔力として溜め込み、怪我を癒し、ステータスを補強する。
その防御を上回る程に強い魔力を叩きつければ倒せるかもしれないが、今のスパルタクスは文字通り手に負えない。
宝具を叩き込んだとしても貯め込んだ魔力が貯めきれずに爆発を引き起こすキッカケにしかならないだろう。
そしてその爆発には耐久Aであろうとて耐えられない。
それがスパルタクスの受けた傷であるのだから。
であれば、モードレッドの取る行動はその爆発範囲から令呪を使用してでも逃げる事だ。
だが___、
「真の英雄は___」
「マスター!宝具だ!こいつはここで仕留める!」
それは自身の脱落を覚悟した言葉だった。
使える令呪は一つだけ。
撤退に使う事も出来るそれを切り捨ててまでモードレッドはバーサーカーを討ち取ることを選んだ。
それは彼女の在り方としてのプライドであったが、それと同時に彼女は感じた。
この女は戦場を誰よりも掻き乱す。
《_分かった。持って行け、令呪と俺の魔力全部だ》
《ハッ…ありがとな、マスター!》
だからこそ彼女はここで命を捨てる。
願望を捨てる。
誰かの為に戦うというバーサーカーの在り方は_真にモードレッドが望んだものであったからバーサーカーの前にいる限りモードレッドは逃げたくなかった。
ここで宝具を撃ってバーサーカーを討ち取ってもモードレッドはスパルタクスの魔力解放に巻き込まれて消滅する。
それが分かっていて尚宝具を撃とうと、身を滅ぼそうとするのは___。
「_これこそは、我が父を滅ぼし邪剣!」
「_目で、殺す!」
自身が羨んだ在り方を死してなお成し遂げるバーサーカーに賞賛を返したかったからだ。
「
「