Fate/Apocrypha 英雄カルナの妻   作:星空 柚木

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終章

「____以上が、私が参加した聖杯大戦だ」

 

そう言って自身の主を見上げたバーサーカーは口にする。

南極に位置するここカルデアスに取り残された人類最後のマスターはその赤毛を揺らして大振りに驚いた仕草をした。

 

「フランちゃんの参加した聖杯大戦とは違うんだね」

「生憎私は自身が参加した聖杯大戦の記録しかないがな。彼女が本来の手筈通りに召喚された記録も彼女の代わりに私が召喚されたと言う記録も何も間違ってはいないだろう」

「そっか。じゃあフランちゃんとバーサーカーは聖杯大戦の記録が1つしかないんだ」

「ああ。確か、カルナ達は2つの聖杯大戦の記録があるのだったな」

 

バーサーカーはその膝に頭を乗せて眠っているジャックの髪を撫でる。

その様を机越しに眺めていたアキレウスは口を開いた。

 

「シェイクスピアの言ってた事を踏まえて考えるならバーサーカー、お前あの時霊基壊れてたのかよ」

「ああ」

「確かに吾輩壊しましたよ。彼女の霊基を」

 

アキレウスは顔を顰める。

その様をケイローンは宥めるような笑みを浮かべて眺めていた。

 

「そこまでなってもバーサーカーは人類を護ったんだね」

「…少し、違うな」

「うん?」

「カルナが私を拒まなかったから、私は変わらずカルナの愛したものを護ったに過ぎない」

 

お、とアストルフォが呟いた。

バーサーカーは変わらずにジャックの髪を撫でる。

 

「私がカルナを想う事が許されたから、世界を護れたんだ」

 

仏頂面でそう言ったバーサーカーにマスターは目を瞬かせた。

 

「…それって、もしカルナがバーサーカーの事好きじゃなかったら世界を護らなかったって事?」

「そういう事になる」

「うへぇ…なんて言うか、それは……。カルナがバーサーカーの事好きで良かったよ…」

 

不躾ながらにもそう言われた言葉にバーサーカーは顔を上げる。

 

「その様な心配は無意味な事だ」

 

バーサーカーの視線の先にいたカルナはそう言ってマスター達のいる机へと向かう。

カルナと共に居たジークフリートもカルナが向かう先に気付いて寄ってきた。

バーサーカーの膝の上に眠るジャックがその気配にパチリと目を覚まして頭を持ち上げた。

 

「シュミレーション終わったんだ。で、無意味な事って何?」

「俺が妻の想いをもし否定していたら世界は滅んでいたと言う話についてだ」

「ああ、それ?カルナさんのおかげで世界救われたようなものだからさ」

「不要だ。それは俺のおかげではない」

「うん?」

「俺が妻の想いを否定する事はない」

「そっか…?」

 

マスターが首を傾げる。

カルナは変わらず無表情でマスターを見下ろしていたが、バーサーカーは落とす様に息を吐いた。

その様をまじまじと見つめていたケイローンはああ、と息をこぼす。

 

「つまり、貴方はバーサーカーを愛しているのですね」

「えっ?」

「ああ、その通りだ」

「えっ」

 

ケイローンとカルナの顔を交互に見たマスターは訳が分からない…と呟く。

その言葉にカルナは少し困ったように目を閉じた。

 

「言葉が足りんか…。…愛が相手の全てを慈しみ受け入れるものであるのなら、妻はまさに俺にそれを向けていた」

「まあ、それは分かる」

 

マスターの相槌もおざなりにカルナはバーサーカーへと視線を移した。

 

「俺も妻を愛した。ならその全てを慈しみ受け入れるのは当然だ。故に俺が妻の想いを否定する等といった仮説は破綻している」

 

その言葉への周りの反応は様々であった。

ジークフリートやアストルフォ、アキレウスとケイローンは笑みを浮かべて、ジャックは首を傾げ、静観していたモードレッドはゲェと顔を顰めた。

マスターは向かいに座るバーサーカーへと視線を移す。

バーサーカーはその頬を染める事こそしていないが目を眇めて、とても分かりにくいが__口角を薄らと上げていた。

 

(両想いってより、愛し合ってるって感じだなぁ)

 

勿論、マスターである少女は野暮ではないから言わないが。

 

 

 

 

「気が付いたら日時が1年進んでたってのに、随分落ち着いてるんだね」

「は?」

 

イギリス、魔術協会。

時計塔を構えるその機関で教材を整理していた少年は友人の言葉に顔を上げた。

 

「君はもっと何か言うかと思ってた」

「そりゃ…驚いたけど、それだけだろ」

「それだけって…まあそうなんだけど」

 

整えた教材をカバンに詰めて立ち上がった少年_カウレスは僅かに大人びた表情で言った。

 

「今生きてられるなら気にする事じゃない」

「魔術師にあるまじき考え方だ」

「かもな。まあ人からの受け売りだしな」

「へぇ、どんな人?」

「ただの女だよ」

「はぁ?君たまに脈略無くなるぞ。つまりどう言う事だよ」

「つまり、まあ要約すると__」

 

カウレスは言葉を止める。

何と言って落とし込めばいいかと考えるように数秒間を置いて口角を上げた。

 

「俺は世界を救う愛も、それを護る愛も知ってるって事だな」

 

終ぞ友人は顔を顰めて首を傾げた。

 

 

 

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