Fate/Apocrypha 英雄カルナの妻   作:星空 柚木

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第三話

「槍を収めてくれ、カルナ。セイバーにだろうとお前に手出しはさせないと誓う」

「なっ!何を勝手なことを!!サーヴァント如きがマスターになりうる魔術師に喧嘩を売るんじゃない!セイバー!その女ごと威してやれ!」

「…と言っているが、どうする。セイバー、私を討つか?」

「…いや、辞めておこう」

「何をしているセイバー!誰が口を聞けと言った!」

 

「おやめなさい、セイバーのマスター。バーサーカーが矢先を向けているのは貴方ですよ」

 

ピタリとゴルドが動きを止める。

冷静な思考でバーサーカーを見ればセイバーの剣を受け止めたその手がセイバーの体の影からこちらに向けた矢を引き絞っているのが見えた。

セイバーがバーサーカーの腕を切り落とすより先にその矢がゴルドの首をはねとばすことは分かりきっていた。

口を噤んだゴルドにセイバーはやっと剣を下ろした。

バーサーカーが味方だろうと動けば容赦はしないと行動で示しているからこそ、逆らわぬ方が得策であった。

 

「槍を下ろせ、カルナ。お前の目的がなんであれ私と戦っても決着はつかないぞ」

「ああ、そうだな。お前が敵対すると言うならあまり余裕もあるまい。此度の勝敗、お前に預けるぞ」

「構わん。セイバーとお前が再戦を望む限り私の責を持って再戦を誓おう」

 

その言葉にカルナは槍を霊子化させる。

バーサーカーも弓を霊体化させてルーラーとセイバーを一瞥した後カルナと向かい合う。

 

「カルナ。お前に聞きたい事がある」

「何だ」

「此度の聖杯戦争にかける希望についてだ。お前が、聖杯にかける希望があると言うのか」

「___ある」

 

静かに、けれど決意を含んだ声だった。

モニター越しで眺めていたカウレスにもバーサーカーが息を詰めたのが分かった。

 

「そうか。そう、か。それは、…それはどんなものだ」

「何故お前に言う必要がある」

「…確かにその通りだ」

「もし口にするとしても、」

 

「お前に言おうとは思えない」

 

バーサーカーが下唇を緩く噛む。

ふぅ、と長い息を零したあと顔を上げたバーサーカーは真っ直ぐカルナを見詰めていた。

 

「なら言いたくさせるまでだ。引け、カルナよ。この答えは次会った時に聞き出そう」

「そうか。お前とは度々争いをしてきたが陣営を分かつことは初めてだ。容赦はせんぞ」

 

言うが否や空を駆けていったカルナを見送ったバーサーカーはフードを目深に被り直した。

セイバーとそのマスター、ルーラーに向き直って先までの不遜はなんだったのかという程に丁寧に頭を下げて霊体化していった。

 

 

 

「マスター」

「戻ったのか、バーサーカー」

「生きているな。放ってしまって悪かった。悪いが状況が変わった。私はこれから度々お前を放ってしまうだろう」

「バーサーカー。あのランサーは」

「私の夫だ。マハーバーラタ施しの英雄カルナ。…私が呼ばれたのもつまりそういうことだったのかもな」

 

カウレスの無事を確認したバーサーカーはそう言ったあとに顔を上げて玉座へと視線を向ける。

 

「バーサーカーよ」

 

「ああ。我がマスターに手を出さなかったことを感謝する。それで、何だ」

「王の前だ。ローブを外せ」

 

ダーニックのその言葉にバーサーカーは黙って外套を外した。

灰色の身体を隠す外套から晒されたバーサーカーを見ると、今まで見えていなかったステータスが目に見えるようになった。

そしてまたカウレスは驚いた。

バーサーカーがステータス隠しの道具を持っていたことではない。

彼女のステータスが"上がっていた"事についてだ。

 

「ほう。筋力と敏速が共にEXか。どういう事か説明せよ」

「…ああ。以前話したが、私の狂化はEランクだ。だがあるスキルが条件が揃うと自動的に発動される。そうなれば私の狂化はEXとなり、筋力と敏速も同様に際限なく上がる」

「スキルの発動条件は」

「スキル_愛が故の狂行。これは、カルナに関する事に私が関わると自動的に発動する。筋力と敏速が共に大幅に上がるが…」

「代わりに狂化がEXになると言う事か」

 

こくりとバーサーカーが頷く。

彼女が最初に聞かれた時答えなかったのはスキルが発動する事は無いと踏んだからだ。

それは間違っていない。

生前の知り合いに会う確率なんて低くて当然なのだから。

心配になって声を掛ければバーサーカーはなんてことはないと手を振って制した。

 

「バーサーカー。貴様は生前の夫へと矛先を向けれるか」

 

なんて質問だとカウレスは思った。

だがそれは確かに聞いておくべきことで、カウレス自身が問われているわけでないのに目線をどこに向けたらいいのか分からず下を向いた。

 

「向けれる」

 

それに対したバーサーカーの言葉は短かった。

顔を上げてバーサーカーの横顔を見る。淡々と、されど真っ直ぐランサーを見詰めてそう言ったバーサーカーにランサーは愉快そうに笑った。

 

 

 

バーサーカーに出撃命令が降りたのは次の日の昼だった。

ケイローンの迎えに黙って従い着いていこうとしたバーサーカーを呼び止めて自分もと言おうとすればケイローンにフィオレと共にいるように言われる。

 

「安心しろ。ランサーの警戒を一身に寄せるこの身は何をするにしてもランサーの信頼を勝ち得ている者の監視がつく。手練がそばに居てそう易々と殺られるものか」

 

そう仏頂面で言ったバーサーカーはそのまま背を向けて歩いて行く。

けれども不安そうに眺めるカウレスにケイローンは安心させる様に笑った。

 

「御安心下さい。彼女の言う監視にはセイバーと私が充たります。狂行スキルが発動していないとしても彼女も神話を生き延びた英傑です。そう簡単に倒せる程弱くはありませんよ」

 

そう言ってケイローンはバーサーカーとは逆方向の高台の方へと向かっていった。

 

 

 

「赤のバーサーカーの対処はランサーとライダーか?」

「…」

「そうか。じゃあこっちは援護部隊を迎撃という訳か」

 

シュウという音を立ててバーサーカーの手の中に弓が1つ浮かび上がる。

それを横目に見たセイバーも無言で剣を構えた。

 

「喋るな、か。難儀な令だな。人はいつも自分に出来ない事を他人に求める」

「…」

「気に触ったなら謝ろう。…何にせよ、今日はいい夜だ。

 

 

___なぁ?赤のライダー」

 

 

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