*ある博士の独白だ

※独自解釈というより独自設定の塊です。あくまでこういう世界線あるかもしれないという前提で読んでください。

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Entry No.0

暗く暗くより暗く——とまではいかないが、全体的に灰色の空間に私はいた。

 

自らの発明品に落ちて死んだと思ったがまさかこうなるとは思ってなかったと私は自嘲する。

 

『ばか騒ぎ』(Wingding)などという意味をもつ自身の名にもうんざりしながら灰色の空間——『ミステリールーム』とでも呼ぶべきだろうか——について考える。

 

少なくとも私は『コア』に落ちて死んだはずなのだ。アレにこのような作用があるとは考え難い。むしろ、あったら困る。アレの危険性を最低レベルまでに下げるまでに、どれだけの時間を私たちがかけたと思っている。

 

……まぁ、そんなことはどうでもいい。それについては生きている彼らがやってくれるだろう。

 

問題なのはむしろ今感じる奇妙な感覚だ。まるで、肉体がどこかに散らばっているかのような感覚……まさか、私の肉体は地下世界中に広まってしまったのか?

 

だとすればこの部屋にいる私は何者だろうか?私にはタマシイが無かった。『ソウルレス』とでも名付けておくべきだろうか?とにかく、私はモンスターとしては特異……いや、そもそもモンスターでは無いのかもしれない。

 

タマシイでは無いとすれば……意識だろうか。タマシイが無くとも意識はあったのだ。おそらくこれで間違いは無い。

 

そして、地下に散らばったと思われる肉体を知覚できているならば……この場所から地下世界を観測することが出来るはずだ。

 

……やはりな。地下世界の全てを観ることが出来るし、聴くことが出来る。……アズゴア王。もうティーカップを二つ用意する必要はありませんよ。

 

思えば懐かしいものだ。アズゴア王と一緒にお茶を飲みながら、楽しく話をしたものだ。もっとも、『タマシイ』の無い私は楽しいといった感情を感じることは出来ないが……それでもかつての経験から感じているフリはできる。

 

——さて、地下世界を観測できることがわかったのだ。この場所なら私の目的を果たすことが出来る。

 

私の目的について説明するならば、私の生い立ちを語らねばなるまい。

 

かつて私は————人間だった。

 

この世界に来た日のことをよく覚えている。あの金色の花が私に投げかけた『この世界は殺すか殺されるか』という言葉を今でもはっきり覚えている。

 

しかし、あの花から助けてくれたトリエル——女王様は私に親身に接してくれた。あの時のことはよく覚えている。待っていろと言われたのに子供だった私は、少しも待てずにあの遺跡を歩き回った。

 

そこで様々なモンスターに出会った。カエルのフロギー、気弱なナキムシ、ライムゼリーのようなチビカビ、いじめっ子ルークス、野菜をくれるベジトイド、一人が好きなミ=ゴス、内向的なナプスタブルーク……みな私の友だった。

 

そして、ホームに着いたとき、私はここに残ることに決めた。本当は家に帰りたかったのだが———ここの外にはあの花が言うように『殺すか殺されるか』の世界が広がっていると信じてしまったのだ。

 

それからは女王様の元で虫取りをしたり、どうやって取り寄せたのかは知らないが、持ってきてくれた科学の本を読んだりと悠々自適に暮らしていた。

 

しかし、人間にとって地下での暮らしは過酷なものだった。なにせ太陽の光がないのだ。私は住み始めてから10年くらいの時に体調を崩してしまった。女王様は必死に看病してくれたが———私は虫の息だった。

 

しかし、亡くなる直前、女王様が教えてくれなかったモンスターたちが何故地下にいるのかを、他のモンスターたちが教えてくれたことを思い出した。人間のタマシイが7つあればバリアを砕けるということを。

 

だから、私は最後にお願いをした。死後、私のタマシイはモンスターたちの為に使って欲しいと。女王様はしばらく渋っていたが、最終的には了承してくれた。

 

 

 

———次に目覚めた時は土の中だった。埋葬されたのだろう。久々に動かす体だったからか、土の中で5年ほど過ごすことになったが、どうにか外に這い上がることができた。しかし、地上で最初に目にしたものは——荒廃した地上だった。

 

おそらくだが、人間とモンスターは再び戦争をしたのだろう。人間はモンスターが人間の子供を殺したことを理由に、モンスターたちを殺し回ったのだろう。それにモンスターたちは抵抗したがあえなく敗北して滅んだ。無論、私の推測だが。

 

私は後悔したかった。あのとき、自分のタマシイを使えなどと言わなければこんなことにはならなかっただろうと。しかし、当時は気づいていなかったが、タマシイの無かった私にはそのような感情を抱くことが出来なかった。

 

同じように人間への憎しみが沸くこともなかった。しかし、かつてモンスター達から受けた恩と優しさを記憶として思い出すことが出来た。そして、私は決意したのだ。モンスターたちを救おうと。

 

その為の知識はかつて読んだ科学の本に書いてあったことが幸いした。——タイムマシンの理論だ。人間の技術ではあと何年も先のことだろうが、モンスターには魔法があった。人間では無くなった私も、かつて少しだけ教えてもらった理論で魔法を扱うことが出来た。

 

そこから何十年もの時間をかけてタイムマシンを完成させた。その研究の過程で偶然、『ケツイ』が物質に与えうる可能性を発見した。それが『ソウルレス』の誕生に繋がることも。強い『ケツイ』を抱いたものが、死ぬと低確率で蘇ったものが『ソウルレス』となる。そう私は結論づけた。

スケルトンのモンスターでは無いが、一応骨?だからスケルトンなのかは知らないが、少なくとも私はそうして蘇ったことを発見したのだ。

 

さて、肝心のタイムマシンだが、未熟だった私は試運転も無しに起動して、モンスター達が一度目の人間との戦争より前の時代へ向かった。今の私からすればこの行為は無謀としか言いようが無いものだった。

 

結果は半分成功、半分失敗だった。目標の時代についたものの、タイムマシンは大爆発。あやうく二度目の死を迎えるところだった。その時、助けてくれたのがアズゴア王と女王様だった。

 

助けられた後、アズゴア王は私が作ったタイムマシンの残骸を見たのか、その技術力を活かしてみないかということで、王宮直属の科学者にならないかと誘われた。

 

無論、私の目的を果たすためにもその言葉に二つ返事で了承した。私には三人の助手が付けられ、好きな研究をしていいと言われた。

 

そこでまずは人間たちに対抗するために、『ガスターブラスター』と名付けた武器を開発した。しかし、試作品がようやく出来たころに、人間との戦争が始まってしまい、試作品で戦うことを余儀なくされた。

 

試作品は高い火力を持っていたが、扱いが難しく普通のモンスターには扱えなかった。そこで地下に追放された後にそこを改良した完成品を作ったが、こちらは誰でも扱えるが、使うモンスターで威力が変わってしまうという別の意味で扱いが難しいものだった。

 

結局、これを扱えたのは私と地下に来てから雇ったサンズ君だけだった。……彼は今どうしているのだろうか。ある日を境に科学者をやめてしまってからは見ていない。

 

そして、地下に来てから3年後、私の作ったもので最も有名であろう『コア』を完成させた。これがあればモンスターたちはエネルギーには困ることはないだろう。

 

まぁ、その稼働式で落ちてこうなったのが私なのだが——そういえばあれからどれだけの時が経過したのだろう。アズゴア王の様子を見る限りそこまで経っていないと思うが……

 

……タマシイが6つ!?馬鹿な!?私が死んだときはまだ一つも無かったはずだ!?一体あれからどれだけの時が流れたのだ!?そして、アズゴア王はいつまで私の死を引き摺っているのだ!?

 

……だが、タマシイが6つあるということはそろそろかつての私がこの世界にやってくるころだ。ようやく私の目的を果たせる。

 

私の目的——それは、かつての私を何を成すかを観測し、モンスターたちを救うこと。

 

かつての私が何らかの行動を諦めて決意を失ったとき、私は世界をリセットして、もう一度観測し直す。かつての私がモンスターたちを救うまで。

 

それまではかつての私に全ての権限が委ねられるが———さほど問題では無いだろう。

 

だから、かつての私————いや、フリスク。モンスター達を救ってくれ。

 

これがタマシイ無き哀れな存在、W.D.ガスターからの最後の願いだ。




フリスク=ガスター説とかいうとんでも理論が浮かんだから書きました。

タイムマシンくらいガスター博士なら作れるだろという理論です。……実際、フリスクが過去に行くAUがあったと思いますし…


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