・IF設定が更に独自の進化を遂げた世界を舞台にお送りしております。
・キャラ崩壊注意です。
以上を踏まえた上でお読み下さい。
シズの操る黒いデスナイトが、白のエルダーリッチを弾き、護衛の薄くなった白のジェネラルは黒のデスナイト、エルダーリッチ、ガーディアンに囲まれる。盤上は完全に
「
ネイアは半ばヤケ気味に机に突っ伏し、ジェネラルの駒を指で弾き倒した。
「…………Thank you for a very enjoyable game.」
「ええ!楽しいゲームでしたよ!何しろ記念すべき100敗目ですからね!」
シズ先輩の無自覚な煽りに、ネイアは詰んだ盤上を前にして涙目となっていた。ネイアからすれば何語を話しているのかも分からないが、【ありがとう。楽しいゲームでした。】という意味らしい。毎回シズ先輩は勝利する度に、この言葉を呟かないと気が済まないようだ。
「…………盤上遊技に勝利したらこう言うべき。博士の金言。」
「も~~。1回も勝つどころか、引き分けすら出来ないんですが……。」
今ローブル聖王国の北部ではチェスのブームが起きていた。本来キングとなる駒は、魔導王であるアインズ様に不敬ということで、
元を辿れば、ナザリックで行われた〝ラジオ〟のプロパガンダ計画で、この盤上遊技がどれくらい広まるだろうかという実験で作製したに過ぎなかったのだが、ラジオが普及されているエ・ランテルやバハルス帝国帝都で想像以上の爆発的な流行を見せた。
その熱はネイアの知らない所……ナザリック内でもプチブームを起こしており、相手の心や精神を砕くこの盤上遊技は、何処か芸術的だと、珍しくデミウルゴスやアルベドも気に入っていた。
完全に余談だが、ナザリック内レーディング1位はデミウルゴス、僅差でアルベド、パンドラズ・アクター。階層守護者チェス最弱の座はシャルティアが不動のものとしている。
そんなナザリックチェスをシズがネイアの所に持ってきて、ネイアが【聖地魔導国における、盤上遊技を模した精神の鍛錬器具】と宣伝し、ローブル聖王国内でも多くの人々に知られ、半ば神聖なものとして普及した。今では文字が読めなくても、チェス駒の動かし方は解るという者が多く居るくらいだ。
そして、これほど宣伝に寄与したネイアだが、肝心のシズ先輩には連戦連敗。ネイア自身、チェスの強さは感謝を送る会(仮)でも上から数えた方が早いが、一番ではない。ネイアの特技は戦術よりも心理戦。上手く事が運べば勝率はかなり高いのだが、シズ先輩には心理戦など一切通用しない。
「…………ふ。イージーモードのわたしに手こずっているなど。まだまだ。」
「今聞き捨てならない事言いましたよね!?何ですか?まだまだ強くなっていくんですか!?」
「…………イージー。ノーマル。ハード。エクストラ。4段変形。」
「これ以上心折るのやめてくれません!?」
「…………大丈夫。ネイアなら死ぬまでにはハードモードまでいける。多分。」
「本当、良い精神の修行になりますよ……。」
「…………よしよし。」
シズ先輩をひとつでも上回れる日など来るのだろうか……。ネイアはガクっと項垂れた。