ネイア・バラハの聖地巡礼!   作:セパさん

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・この話は後日談であり、蛇足です。ネイア・バラハの聖地巡礼!本編を前提とした話しとなっておりますので、ご了承下さい。

・IF設定が更に独自の進化を遂げた世界を舞台にお送りしております。

・キャラ崩壊注意です。

 以上を踏まえた上でお読み下さい。


【番外編】(仮)の日常。

 【(仮)対策本部】

 

 現在、ローブル聖王国南部の貴族や大神官を筆頭とした有権者達は〝打倒カスポンド聖王〟を秘密裏に掲げ、かつて無いほどの団結を見せている。この間抜けにも思える対策本部の名前であるが、会議に集まる者の面持ちは深刻だ。言うまでも無くそれが指し示す団体は、今や名を言うも憚るようになった【魔導王陛下に感謝を送る会(仮)】。

 

 死を司る忌まわしきアンデッドを神と崇拝する狂信者の集団であり、聖騎士・神官勢力の強いローブル聖王国において、生者を憎悪するアンデッドとは周辺国家以上に不倶戴天の敵である。少し前ならばこんな集団、異端審問に掛けられ全員縛り首になっていただろう。

 

 だがヤルダバオト襲来以降、ローブル聖王国は全ての歯車が狂ってしまった。【凶眼の狂信者】ネイア・バラハ率いる(仮)は会員数20万を優に超え、〝力なき正義は無力〟という教義の下、会員のほぼ全員が聖王国正規軍精鋭部隊も真っ青な苛烈極まる訓練を嬉々としてこなしている。

 

 3万人の支援者親衛隊は、南部貴族や神官たちが手出し出来ずにいる内、20万もの武装親衛隊へと変貌を遂げた。そして勢力は未だ拡大する一方なのだから、危機感は徐々に絶望感へと変化していく。

 

「だから最初の時点で、異端審問でも宗教裁判でも掛けて、聖王国民を誑かすあの悪魔を抹殺するべきだったのだ!!」

 

 円卓の重い沈黙に堪えかねたように、怒号と机を叩きつける拳の音が響く。もちろんネイア・バラハの存在はカスポンド聖王が即位された当初から……いや、その以前から危険視されていた。だが【救国の英雄である魔導王陛下へ感謝を送る】という以上の大義名分を得られるはずもなく、為す術無く坐視していた結果がこれだ。

 

 今や北部では聖騎士・神官という地位を降りてでも(仮)へ所属する背信者が多く居るほど……。武力・財力・魔法技術・人材……そして彼の忌まわしきアンデッドが支配する魔導国とのコネクション。どれをとっても現在ローブル聖王国における最大勢力であり、挙げ句(仮)の最終目標は【ローブル聖王国を忌まわしきアンデッドに支配してもらうこと】だというのだから、指を咥えて待つことは、処刑台への段数を数える事と同義だ。

 

「……我々は手を誤りました。レメディオス元聖騎士団長を槍玉に挙げ、打倒カスポンドの大義名分を作っている内に、まさか第三勢力に至るまでネイア・バラハが力を持つとは。」

 

 生者に憎悪するアンデッドを崇める狂った集団、そんな(仮)を多大に支援するカスポンドを、南貴族や神官は最初鼻で嗤いながら見ていたくらいだ。南部に【真なるローブル聖王国を取り戻す】大義名分を与えてくれるようなもの。

 

 やがて北部と南部の対立が明確になった際、聖王家の血筋を引くカスポンドを引きずり下ろすだけの大義名分は生半可なものでは、簒奪者と罵られ、王位を継承しても統治など上手く行くはずもない。……南部の敗因は敵をカスポンド聖王に定めていたことだ。

 

 今南北が明確に対立すればやがてどうなるか……。勝敗の有無に関わらず、カスポンド聖王は統治者としての資格は無しと判断され、聖王の座を降りなければならなくなるだろう。では南部は?

 

 ヤルダバオト襲来で疲弊しているとはいえ、こちらも痛手を被る。空席となった玉座に息の掛かった者を座らせようにも、(仮)がそれを許さないだろう。

 

 待っているのは魔導王……アンデッドによる聖王国の支配だ。最早南部も北部も戦争行動に移り潔く散るか、真綿で首を締め上げられるように殺されるか。選択肢は2つに1つしかない。

 

「あのアンデッドは、最初からここまで計算していたのではあるまいな。」

 

 誰の呟きか解らないが、会議に参加する全員の総意だ。……だが、気がついた時には全てが遅かった。

 

 

 

 ●

 

 

「お疲れ様です、バラハ様。」

 

 万雷の喝采を背に、テントへ戻ってきたネイアへ、冷たい水で絞った布が渡される。元々感謝を送る会(仮)への所属者が多い要塞都市カリンシャで行われたネイアの演説は聴衆6000名に達するほどで、魔導王陛下を讃える声は大地に轟き、死傷者が出かねない-もちろん親衛隊が警備をしているが-狂躁を呈している。

 

「ありがとうございます。」

 

 未だ神官勢力が大きいアインズ様に無知蒙昧な地区の民に、素晴らしさを説く演説もやりがいはあるが、支援者の多い場所で行う演説もよいものだ。

 

「本日中にカリンシャを出て、明日の朝には本部へ戻る予定となっております。以前より計画されている、親衛隊による海洋大演習及び上陸後山岳訓練に向けての会議に、ネイア様も是非参加して欲しいとのことです。」

 

「ええ、わたしも演習訓練には参加したいのですが……。」

 

「いえ、1ヶ月ほどの大行軍訓練ですので、バラハ様がその間不在になられるのは不味いかと。」

 

「ですよねぇ……。解りました。では同志達を信じて――お久しぶりですシズ先輩!」

 

 ネイアは突如後ろを振り返って、虚空に向けて指を差した。徐々に虚空は人の形をみせ、幼さの残る美少女……シズ先輩が驚きの感情を宿して立っていた。手には〝いちえんシール〟が握られている。

 

「…………驚かせるつもりが。驚かされた。3度目」

 

「ふふふ!いつまでも驚かされるわたしではないですよ!」

 

「…………完全不可視化ではないけれど。結構頑張ったのに。」

 

 ネイアは神出鬼没なシズ先輩の出現を、5回に1回くらい見破れるようになっていた。何で解るかと問われたが、ネイアも〝そこにシズ先輩が居た気がしたから〟としか答えられなかった。

 

「この調子ならもっと頻度が高く……うひゃあ!」

 

 ネイアは背筋をつーっと指でなぞられ、ゾクゾクとした悲鳴を挙げてしまう。さっきまで目の前にいたシズ先輩が何時の間にか背後に回り込んでいた。

 

「…………ふ。わたしに勝とうなど。まだまだ甘い。」

 

「い、いつの間に!?」

 

「…………それで。山岳行軍と海洋特殊訓練があると聞いた。わたしも交ぜるべき。」

 

「いいんですか!?シズ先輩!」

 

 初となる大規模な親衛隊による順応訓練だ。シズ先輩からご教授頂ければこれほど頼りになるモノは無い。

 

「…………構わない。なので今日は泊まる。」

 

「ありがとうございます!!」

 

 翌日行われた演習訓練の会議は、普段の寡黙を何処かへ置き去ってしまったかのようなシズ先輩から、様々な提案が成された。

 

 人体の許容ギリギリの基礎訓練から始まり、水路学なる学問、各種武器の扱いや弓手による精密射撃訓練、レンジャー部隊による長距離偵察訓練、ロッククライミング訓練、航法、隠密潜入及び離脱、小部隊戦術を交えた濃密なものとなり、その後感謝を送る会(仮)では、その精鋭たる武装親衛隊をもってして、年に2、3回行われる【地獄の訓練】と呼ばれるようになる。

 

 

 

 ●

 

 

 ローブル聖王国首都ホバンスに本拠地を置く『魔導王陛下に感謝を送る会(仮)』総本部。そこに新たな使用人・清掃婦(夫)が増えていた。

 

「おはようございます。本日も魔導王陛下のお導きが御座いますように。」

 

「ええ、お仕事お疲れ様です。あなた様も魔導王陛下のお導きが御座いますように。」

 

 感謝を送る会(仮)のシンボルマークを佩用するその姿は、人間に近い身長の二足歩行する豚のような顔を持つ亜人であり、豚鬼(オーク)と呼ばれる種族だ。感謝を送る会(仮)代表のネイアは、いずれローブル聖王国をアインズ様の慈悲深き御手で統治して頂きたいと考えている。

 

 その上で懸念されるのは、ローブル聖王国の亜人への偏見だ。元来アベリオン丘陵と敵対関係にあり、ヤルダバオト襲来時には亜人に地獄の苦しみを味わわされた者も多い。だが、魔導王陛下の統治は全ての種族に対して平等だ。勿論偉大にして至高なる御方であるアインズ様であれば、そんな問題直ぐに解決してしまうだろうが、甘えて何もしないのは悪だ。

 

 亜人との融和は、同志たちでも顔を顰める者が多く、頭を悩ませたネイアは同じく収容所で地獄の苦しみを味わい、尚かつアインズ様への感謝をしっかり持ち合わせている豚鬼(オーク)を、シズ先輩の力を借り、本部で雇うことにした。

 

 元来綺麗好きで、同じように魔導王陛下へ感謝の念を持ち合わせている豚鬼(オーク)達は仕事の丁寧さもあり、本部でスムーズに受け入れられていった。亜人との融和など考えられなかったローブル聖王国では偉大な第一歩だ。

 

「同志の皆様!お仕事お疲れ様です!」

 

「これはバラハ様。」

 

 豚鬼(オーク)達は掃除の手を止め、軽く頭を垂れる。背負う月光の如く煌めく弓、光に反射する射手の籠手、顔の上半分をミラーシェードで覆い、彼の〝豪王〟バザーの鎧を纏ったネイア・バラハ。その姿は、思わず平伏したくなるほど神々しい。しかし、あくまで皆を〝同志〟と呼び、ネイアが過剰な敬意を好まない事を知る豚鬼(オーク)達は、軽い一礼に留める。

 

「慣れない環境の中、丁寧なお仕事に皆感謝しております。」

 

「いえ、これもネイア様と魔導王陛下の御慈悲の賜物に御座います。人間の部族……住処が我々を受け入れて下さるなど、魔導王陛下の素晴らしさを改めて実感した次第です。」

 

「いえ、わたし達が無理にお願いした事です。ご不満や不平などがありましたら遠慮なさらずに仰って下さい。」

 

 不安はまだ若干残るが、不満はない。文明・文化の違いに当惑することは未だ多いが、人間の同志達が懇切丁寧に教えてくれるのだ。部族の恩人である魔導王陛下、その直属の部下からの頼みとあらば、どんな理不尽にも耐えるつもりだったが、ここに住む人間達は異なる自分たちの価値観を尊重さえしてくれる。

 

「いえ、今後も魔導王陛下のため、この身この魂を改めて捧げさせて頂きます。」

 

 目の前の少女……彼女の語る魔導王陛下の素晴らしさに、改めて目覚めた豚鬼(オーク)達は自然に深々と一礼していた。ネイアはその姿を見て、更にアインズ様への尊敬を深めるのだった。

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