ネイア・バラハの聖地巡礼!   作:セパさん

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・この話は後日談であり、蛇足です。ネイア・バラハの聖地巡礼!本編を前提とした話しとなっておりますので、ご了承下さい。

・IF設定が更に独自の進化を遂げた世界を舞台にお送りしております。

・キャラ崩壊注意です。

 以上を踏まえた上でお読み下さい。


【番外編】ネイアの大演説会

 宵闇の中、本来軍用に使われるサーチライトが演説台を照らす。サーチライトの光芒は四方から円柱となり、神々しい大聖堂を思わせる荘厳で幻想的な空間芸術の世界を作り出していた。広大な野に突如として製作された光の大聖堂には、10万超の聴衆が集まっていた。

 

 そんな光の大聖堂で演説を行うのは、満月よりもなお燦然と煌めく弓を背負ったネイア・バラハ。その姿は決して装備に見劣りすることのない勇ましくも可憐な姿であった。

 

「この国を襲った大きな厄災に、艱難辛苦を共にし、アインズ様……魔導王陛下の下団結されしみなさま!今尚苦難と貧窮に耐え忍びし中、魔導王陛下への信義と忠誠がゆえに集ったみなさま!魔導王陛下への信心を確かとし、力強く戦われるみなさま!わたし達の運動は生き続け、こうして20万の同志が集まるまでになりました。」

 

 一糸乱れぬ整列を成す完全武装の老若男女、そしてその様子を熱狂した様子で見つめる一般聴衆。これは『魔導王陛下へ感謝を送る会(仮)』主催の〝親衛隊お疲れさま会〟なのだが、その様子は国家の閲兵式の様相である。

 

「今後も魔導王陛下の素晴らしさを説く運動が生き続け、戦い続ける限り、尚もそびえ立つ無知蒙昧な勢力にも、理解される日がやってくるでしょう! ……今尚〝常識〟という檻の中にいる憐れな人々を解放するのです! アインズ様は王の中の王、国家が造り上げた王ではありません、アインズ様は自らが国を造り上げたのです! そしてアインズ様の統治されたる聖地は、万年続く慈悲に溢れた御手に抱かれたる国です!」

 

「その偉大にして至高なる聖地の隊列に加わらせて頂くためにも、我々はもっと強くなる必要があります。もう二度と魔導王陛下の御慈悲に甘んじるだけの存在へ堕ちないために!ローブル聖王国を魔導王陛下の偉大なる御手で抱擁していただくために!親を兄弟を子どもを友人を、もう二度と失う悲劇が起きないために!」

 

「同志のみなさん! これまでみなさまが証明し続けた魔導王陛下への忠誠は、今後もアダマンタイトが如く強固な団結の下、変わることがないでしょう! 偉大にして至高なる御方、アインズ・ウール・ゴウン魔導王陛下にこの地を抱いて頂くためにも! 今後もわたしたちは、魔導王陛下へ誓いを立て、運動を続けていくでしょう! 偉大なるアインズ様への誓いが言葉などという風に消える儚いものであってはなりません、その命・その魂、行動を以ってしてわたしたちは誓いを立てるのです!」

 

 隊列を成していた親衛隊から雄叫びが挙がる。

 

「わたし達の行動そのものが誓いなのです!運動の真髄であり!朽ちることなき不滅の象徴となるのです!……力無き正義は無力であり、正義無き力は暴力です。魔導王陛下が示して下さった道を、その高潔な魂をもって、われわれは体現するのです!魔導王陛下万歳!」

 

 ネイアが天に指差すと、弾かれたような喝采と魔導王を讃える止まない崇拝の声が轟く。ネイアは深々とお辞儀をして、壇上を去り、テントへと戻っていった。

 

 

 

 パチパチパチ と拍手をしながら、無表情のシズ先輩がテントで〝チョコ味〟を飲んでいた。

 

「シズ先輩!どうでしたか!?」

 

 供回りから冷たく絞った布をもらい、未だ演説で火照る身体と高ぶる精神のまま、ネイアは一目散にシズ先輩の下へ駆けつける。本来空軍部隊が索敵に使う兵器、あれだけの光のマジック・アイテム【サーチライト】を、演説の演出に使うという大胆な発想をしたのはシズ先輩なのだ。

 

 いままで【親衛隊お疲れさま会(閲兵式)】は多くて5000人位の親衛隊と、聴衆を合わせて1万人ほどがやってくる集会だったが、聖地巡礼後初となる【親衛隊お疲れさま会(閲兵式)】に参加したいという親衛隊の数は20万ほぼ全員となり-もちろん各支部が回らなくなるので半数くらいに絞ったが-ネイアは会場の確保に苦慮する羽目になった。野外に集まった親衛隊8万人、その様子を見に来た聴衆が2万人。ネイアの伝道師としての活動でも、最大の聴衆を前にしての大演説。上手くいったか不安が募る。

 

「…………アインズ様の為に忠義を尽くす。アインズ様の為に強くなる。良いこと。」

 

 シズ先輩はネイアに向けビシっと親指を立てた。ネイアは思わず破顔する。

 

「それにしても野外で行うから簡素なものになりそうでしたが、素敵なアイデアまでありがとうございます。」

 

「…………構わない。武器や兵器は多様な使われ方をされるべき。」

 

「ふぃあ……でも流石に緊張しましたぁ。」

 

「…………よしよし。」

 

 シズは机に突っ伏したネイアを優しく撫でる。

 

「本当にアインズ様は、我が国をその慈悲深き御手で包んで下さるでしょうか……。」

 

「…………ネイアが頑張れば必ず。」

 

「そうですよね!そのためにもわたし頑張ります!」

 

「…………ネイアの頑張りは凄い。わたしも真似出来ない。」

 

「先輩はまた謙遜を。」

 

「…………む。」

 

「あ、シズ先輩。前々から一つ隠してた事があるんですが。」

 

「…………わたしに隠し事とは生意気な。なに?」

 

「シズ先輩の〝む〟って、可愛いですよね。」

 

「…………む。」

 

 シズ先輩は先程よりも不機嫌な〝む〟を発したが、その様子はやはり可愛らしさが先に出るもので、ネイアは思わず苦笑いしてしまった。


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