・IF設定が更に独自の進化を遂げた世界を舞台にお送りしております。
・キャラ崩壊注意です。
以上を踏まえた上でお読み下さい。
数千人の聴衆が囲む中、壇上に設えられた石像が匕首の一閃によって真っ二つに斬れ、炎を宿して崩れ落ちた。2つに分かれ燃え上がる石像よりも、聴衆の目を奪うのは、6つの紫文字を刻んだ、短い鋼の刃。ネイア・バラハが持つ聖地カルネ村でもらい受けたルーン武器だった。
「皆様がご存じのように、わたくしは剣士ではなく弓手です!今の御業はわたしの力ではありません、聖地アインズ・ウール・ゴウン魔導国における、失われし技術!ルーン文字が持つ能力なのです!」
〝おおおお!〟と聴衆達から歓声が沸く。
「アインズ様……魔導王陛下はこの失われし技術をお嘆きになり、復興をされている。つまりは聖地魔導国のみで得られる技術なのです!我が国の国宝、聖剣サファルリシアですら、このような御業は叶わないでしょう!またわたくしが背負う、魔導王陛下からご下賜頂いたアルティメット・シューティングスター・スーパーにもルーンの偉大な技術が使われております!……
聴衆の目線が一斉に一人の
「そう!このルーン文字、失われた秘宝は聖地アインズ・ウール・ゴウン魔導国でのみ、偉大にして絶対無二の
少数の野次と……野次を打ち消す大喝采が大地に轟く。ネイアはその喝采を少し微妙な気持ちになりながら浴びていた。とりあえずシズ先輩から依頼された事は終わったので、あとは普通にアインズ様の素晴らしさを語ろう。ネイアとしては、演説でアインズ様の力に心酔させるのではなく、アインズ様が正義という真理を伝えたいのだ。
「もちろんアインズ様の素晴らしさはこのような武力だけで語れるものではありません、古今東西あらゆる王という王、その中でも最も慈悲深く、最も偉大な御方であり――」
「…………お疲れ。」
演説が終わり、万雷の拍手を背に戻ったネイアに、シズ先輩がパチパチと拍手をしながら出迎えてくれる。今回シズ先輩から彼の聖地カルネ村で譲り受けた〝ルーン武器〟の素晴らしさを宣伝して欲しいと頼まれた。アインズ様の素晴らしさならば一日中でも滔々と語れるが、間に宣伝を挟む試みなどしたことがないので、何時もの数倍疲れた。
「上手く出来ましたかねぇ、シズ先輩。」
「…………うん。みんなルーンの凄さとアインズ様の素晴らしさを一緒に語っている。流石。」
「わたし自身ルーンに詳しく無かったので、不安でした……。」
「…………アインズ様も喜ばれる。うん。ネイアもわたしも褒められる。偉い。」
「本当ですか!」
ネイアは演説の疲れが一気に吹っ飛んだかのように破顔する。アインズ様のお役に立てたならばこれ程嬉しい事はこの世に存在しない。
「…………そう。ルーンには付加価値がある。凄く大切なこと。アインズ様が言っていた。」
「良かったです!そう言えば、ルーンって凄く特別なものなんですか?」
「…………そう。」
「ですよね、皇帝のお名前にもなっているくらいですし。」
「…………皇帝?」
「ほら、バハルス帝国のジルクニフ様。確かジルクニフ・ルーン・ファーロード・エル=ニクス様ですよね。ルーン文字と関係があるのですか?バハルス帝国にもルーン武器があったようですし。」
「…………う~ん。困った。アインズ様に聞いてみる。」
「はい!ではわたくし、今後もアインズ様のため機会があれば宣伝を頑張ります!……ただあまり本意ではないので、5回に1回くらいで。」
「…………よろしく。」