ネイア・バラハの聖地巡礼!   作:セパさん

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・この話は後日談であり、蛇足です。ネイア・バラハの聖地巡礼!本編を前提とした話しとなっておりますので、ご了承下さい。

・IF設定が更に独自の進化を遂げた世界を舞台にお送りしております。

・キャラ崩壊注意です。

 以上を踏まえた上でお読み下さい。


【番外編】聖王国の暗雲 (仮)の新施設 

「――カスポンド聖王陛下。」

 

 ローブル聖王国王城、聖王室。執務に精を出すカスポンド聖王陛下の護衛を賜っている聖騎士が、抑えられない怒りを漏れ出させる様に呟いた。

 

「なんだ?」

 

 言わんとすることは察しが付く。それでもカスポンド聖王は素知らぬ様子で聞き返した。その態度が聖騎士を一層苛立たせる。

 

「陛下はあの惨状を、城下の景色を見て何も思わないのですか!?」

 

 それは従者にあるまじき激発した感情の発露だ。不敬罪で首括りになってもおかしくない言動だが、他の護衛たる聖騎士達は何も言わず、止める行動もしない。それは誇り高きローブル聖王国聖騎士の総意だったためだ。

 

 聖室からは中庭しかみえないが、少し歩いて王城の窓の外から城下を見れば、忌まわしきアンデッドを崇拝する団体……ネイア・バラハ率いる『魔導王陛下へ感謝を送る会(仮)』のシンボルマークを佩用した国民が目立ち、聖騎士に対し敵意や憐憫の目を向ける者までいる。ローブル聖王国のため、聖室のため鍛え戦い剣を捧げた身としては我慢ならない事だ。

 

「わたしが何を思うかよりも、我が国の民がどのように思っているかだろう。……ヤルダバオト襲来の爪痕が残る僻地へ支援物資を運び、未だ恐怖怯える民へ我々聖王室は何が出来た?政治的しがらみも無く、分け隔て無く復興に寄与した団体に、飢えに苦しむ自分たちへ食糧を持ってきた団体に、民はどのような反応を示している?」

 

「……それは。」

 

 もちろん復興には聖王室も国家を挙げて尽力してきた、だが全ての民に満足な支援が出来たかと問われれば否である。〝力無き正義は無力、正義無き力は暴力〟――忌まわしき(仮)の教義のひとつだが、この一点だけは身を以って共感出来る。

 

 食糧の不足・奪われた時間と人員による労働力の欠如・破壊された資源・失われた技術への協力に至るまで……。ある意味では一番の痛手を被った聖王家が国土全域へ救いの手を伸ばせるはずもなく、ローブル聖王国復興に一番寄与した団体と問われれば多くの国民は(仮)の名を挙げるだろう。

 

「それに〝救国の英雄へ感謝を捧げる団体〟に対し、わたしがいらない真似をしてみよ。魔導国はどんな反応をするか。聞くところによると聖王家に剣を捧げた者の中にすら、彼の団体へ所属した者がいるそうじゃないか。あはは……、いっそ彼女が聖王女になった方が円滑に国が回るのではないか?」

 

「陛……下。」

 

  自暴自棄を孕んだ、乾き切り疲労した微笑であり、怒りに滾っていた聖騎士達も思わず自分たちを恥じる。聖王家に剣を捧げた身でありながら、聖騎士という地位を捨て(仮)に寝返った背信者は数名いる。カスポンド聖王陛下への報告はしていなかったが、人の口に戸は立てられないと言ったところだろう。

 

「君の質問に答えていなかったな。〝城下の景色を見てどう思うか?〟だったか。……逆に聞きたい、どうすればいいんだ?」

 

 かき消える様な聖王陛下の声に、聖室内は沈黙に包まれる。

 

「未だわたしに面従腹背している南部と明確に対立するか?……南北が疲弊した頃、漁夫の利を得るのは(仮)と魔導国だ。バハルス帝国のように属国を懇願するか?……彼の皇宮のように我が聖王家が生き残るのは不可能だろうな、アンデッドに従属するなど許されることではない。最早聖王家には、聖王国民を幸せにする力も道しるべもないのだよ。レメディオス元団長さえも聖王家……祖国を裏切った、わたしには民を幸せにする道が見つからない。」

 

 レメディオス元聖騎士団長失踪事件。自宅に置き手紙もなく神隠しが如く姿を消し、必死の捜索をしているも姿は見えない。一説には反魔導国の秘密結社に所属したとも、スレイン法国へ亡命したとも言われているが、真相は闇の中だ。……ただ1つ確実なのは、聖王陛下に無断で国を去ったという現実だけ。

 

 元々カスポンド聖王陛下の即位には否定的であり、閑職へ追いやられた彼女の心境を思えばローブル聖王国に見切りを付けることも致し方ないと……頭では解っているが、崩壊していく聖城を象徴するかの様で、聖騎士達へ与えた影響は大きい。この国は一体どうなってしまうのか。

 

 ……何処かでまた上げられた、〝魔導王陛下万歳〟という止まない喝采が聖室まで轟いた気がした。

 

 

 

 ●

 

 

 

 『魔導王陛下へ感謝を送る会(仮)』本部に新たな施設が増設された。それは聖地アインズ・ウール・ゴウン魔導国の真なる王城で見た大浴場-もちろん規模はかなり小さいが-であり、湯船にお湯を溜め、肩までお湯に浸かるという今までローブル聖王国にはなかった風習だ。

 

 本部は清貧を尊び、贅沢を排他した施設だったが、いずれアインズ様の慈悲深き御手にローブル聖王国を包んで頂こうと活動しているのだ、文化だって聖地を模倣し導入してみてもいい。そんな考えから造った施設だったが、同志達からの受けは良好だ。

 

 濃密な鍛錬と鍛錬後に流す汗、適度なリラックスは訓練の効率性が段違いに上がり、夜中も働く文官も一休みにやってきて、清掃時間を除きほぼ24時間フル稼働状態だ。そんな大浴場は現在2名によって貸し切りとなっている。

 

「…………うん。中々。悪くはない。」

 

「ありがとうございます!シズ先輩!」

 

 ネイアはシズ先輩からの賛辞に、素直な喜びを示す。正直真なる王城で見た中で、木製の湯船に柑橘の皮を浮かべた浴槽・木炭を浮かべた浴槽・サウナしか再現出来ていないが、<大浴場>は、同志である豚鬼(オーク)達が管理しているため、常に清潔で、バハルス帝国の一等宿屋で見た大浴場よりも上である自信がある。

 

「…………アインズ様もお風呂を好まれる。だからお風呂は良いこと。」

 

「そうなのですか!」

 

 ネイアは思わず湯船から立ち上がる。思えばヤルダバオト襲来時、アインズ様は湯浴みはおろか、清拭さえされていなかった。アインズ様はアンデッドなのでそういうものだと思っていたのだが、なんて失礼な事をしてしまったのだろうと今更に羞恥心が込み上がってくる。

 

 今度アインズ様がローブル聖王国へ訪れた際は、その非礼を詫びよう。この浴場ではアインズ様がご入浴されるに相応しいか不安が残る。お身体を清める従者も……その立場に自分がなれたらどれ程の僥倖であろう。ネイアの脳裏に〝背中を流す事を許す〟と命令するアインズ様の尊き姿が幻視され……

 

「…………むっ。ネイア悪い事を考えている。」

 

「そ、そんなこと無いですよ!あははは!」

 

「…………シャワーが無いのがちょっと残念。しょうがない。ここで洗いっこ。」

 

「ああ!はい、ではシズ先輩。湯船の中ですが、お背中を流しますね。」

 

 ネイアがタオルを持って後ろを向いたシズ先輩の背中をこする。

 

「…………あ。いや。だめ。」

 

「ですからそのセリフは、言わないと死ぬんですか!?」

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