ネイア・バラハの聖地巡礼!   作:セパさん

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・この話は後日談であり、蛇足です。ネイア・バラハの聖地巡礼!本編を前提とした話しとなっておりますので、ご了承下さい。

・IF設定が更に独自の進化を遂げた世界を舞台にお送りしております。

・キャラ崩壊注意です。

 以上を踏まえた上でお読み下さい。


【番外編】ネイアの憂鬱

 ネイア・バラハは現在、ローブル聖王国首都ホバンスにある『魔導王陛下へ感謝を送る会(仮)』総本部に居住している。亡き両親との実家に若干の未練もあったが、ネイアは現在20万の同志を導く長という立場に……何時の間にかなっている。些細な私情など、魔導王陛下の素晴らしさを説く使命と比べるまでもない。

 

 魔導王陛下が如何に素晴らしいかなど、愚鈍な自分でも気がついたのだから、他の人間が代わってくれても良いと思うのだが、同志達は口を揃えて〝バラハ様の代わりなどおりません〟という。聖騎士見習いの従者から、いきなり団体のトップに祭り上げられるのは結構精神的に疲労が溜まる。

 

 ……事務方の長、書記次長のベルトラン・モロからの報告を聞いている時は特に。

 

「――バラハ様、以前より構想されていた当会所属の同志からなる、【魔導王陛下農業同盟】【魔導王陛下鉱業同盟】【魔導王陛下司法官同盟】【魔導王陛下医療支援同盟】【魔導王陛下教員同盟】【魔導王陛下軍士同盟】【魔導王陛下青少年団】……などなどの職業別下部組織が正式に結成されました。今後一体感が強調され、同志達から本部へ上げられる支援品管理の円滑化、魔導王陛下が如何に素晴らしいかという真実の浸透にも大きく影響する事でしょう。」

 

「大変素晴らしいことです!ただ地区を管理する同志支部長と同盟の長が諍いを起こさないよう、細心の注意をはらって下さい。」

 

「勿論に御座います。魔導王陛下の偉大さ、そしてバラハ様の尽力もあり、同志達が諍いを起こすことは御座いません。結成式は済んでおりますので、お時間を頂ければ団結した同志達に労いの言葉を掛けて頂ければ幸いに御座います。」

 

「解りました!わたしに出来る事ならばなんなりと。」

 

「ではお時間の調整は、僭越ながらわたくしが行わせて頂いてもよろしいでしょうか?」

 

「是非おねがいします。」

 

 ……というかネイアにそんなタイムマネジメントを行う能力などない。同志達とアインズ様の偉大さを語るのは大好きだが、代表として激励の言葉を掛けるのは、年齢も下で、職業も聖騎士従者しかしたことのないネイアには未だ慣れない仕事だ。

 

 こうしてあらゆる職種の同志達が団結したのも、いと尊きアインズ様の御威光があっての事。ネイアは自分の力ではないと思うのだが、アインズ様の素晴らしさに目覚めた同志達からの要望を裏切る訳にもいかない。

 

(ああ……、アインズ様がお声を掛けて下されば、どれほど素敵なことでしょう。)

 

 ネイアはアインズ様の慈悲深き御手が祖国を抱擁してくれる日を願うことで、今にも起きそうな頭痛を緩和していた。

 

 

 

 ●

 

 

 

 『魔導王陛下へ感謝を送る会(仮)』総本部、代表ネイア・バラハの私室。昨日は同志達との語らい〝魔導王陛下への感謝を抱いて〟が行われた日であり、珍しく外での演説も無く丸一日を本部で過ごした。

 

 部屋には立派な額縁に入ったアインズ様の大小様々な肖像画が飾られており、【アインズ様語録】と銘打たれた様々な言葉が立派な木彫りの文字にされ、壁に所狭しと飾られている。生活用品は極めて少なく、服は同じ様なものが数着ハンガーに掛けられて部屋の片隅に吊るされており、あとはベッドと机とクローゼットしかない。机にはアインズ様の石像がピカピカに磨かれて置かれている。

 

 クローゼットの横には祭壇があり、聖地アインズ・ウール・ゴウン魔導国で下賜されたアルティメット・シューティングスター・スーパー、射手の籠手、バイザー型ミラーシェード、バザーの鎧が祀られている。

 

 ネイアは目覚めの歯磨きをして、クローゼットを開け、寝間着を脱ぐ。そこには全身を映す鏡があり、〝凶眼〟と称される目付きが変わっていない事に落胆する。そして弓手として、左右非対称に鍛えられた独特の身体と……、全く成長する気配が見えない胸部を少し恥ずかしげに触ってみる。

 

 脳裏にはアインズ様の玉座の横でたおやかな笑みを湛える絶世の美女、魔導国宰相アルベド様の姿が浮かぶ。女性としても、アインズ様のお役に立つ存在としても完敗だ。ネイアも一応年頃の少女なのだ、思わずガックリと項垂れてしまう。

 

「…………ふにふに。」

 

「うひゃあ!!」

 

 不意に後ろから身体を触られ驚いて吹っ飛んだ拍子にクローゼットの角に頭をぶつけてしまう。

 

「シズ先輩!何をするんですか!?ってかいつの間に!?」

 

『バラハ様!どうかされ……』

 

「何でもないです!今絶対に開けないで下さい!」

 

『あ、はい。失礼致しました。』

 

 恥ずかしい姿を見られ、顔を真っ赤にしたネイアが思わず叫んでしまう。ネイアの私室は強固な親衛隊に護られているはずなのだが、神出鬼没なシズ先輩の前では全く無意味だ。親衛隊員も誰が来たのか察したのだろう、そのままドア越しに声を掛け、開くことなく去っていた。

 

「…………ネイアが悩んでいたから悪戯してみた。ルプーがよくやる。」

 

 真なる王城で出会った、シズ先輩の姉妹だという、全く似ていない5人の美女。その内褐色肌の天真爛漫な赤毛の美女が浮かぶ。確かにこんなイタズラをしそうなタイプだ。

 

「…………で。何に困っている?先輩は偉大。相談するべき。」

 

 ふん。と可愛らしく胸を張ったシズ先輩を見て、色々な意味で相談出来ない内容だと苦悩する。ただ宝石の様な目を光らせているシズ先輩を前に、どのように誤魔化そうかとネイアは思わずため息を吐いた。


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