ネイア・バラハの聖地巡礼!   作:セパさん

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・この話は後日談であり、蛇足です。ネイア・バラハの聖地巡礼!本編を前提とした話しとなっておりますので、ご了承下さい。

・IF設定が更に独自の進化を遂げた世界を舞台にお送りしております。

・キャラ崩壊注意です。

・蛇足の蛇足という相変わらず訳の解らないものです。

 以上を踏まえた上でお読み下さい。


【番外編】魔導王陛下降臨、幕間・後日談

 ローブル聖王国の王城、聖騎士の詰め所。本来立派な壁や机、調度品は巨人の指先でチーズを摘んだような異様さを呈している。呪詛に染まったレメディオス元団長が英雄クラスの力を以って八つ当たりであちらこちらを破壊した結果だ。

 

 そんな聖騎士の詰め所では、現聖騎士団長グスターボ・モンタニェスが、悲痛な顔に歪む聖騎士達から様々な懇願とも愚痴とも付かない不毛な話を聞いていた。

 

「カスポンド聖王陛下は何をお考えなのですか!こんな屈辱があります!?魔導王……一国の王がローブル聖王国へ入国しながら、王家へ入ることもせず、あの忌まわしき(仮)にのみ顔を出したのですぞ!?」

 

 グスターボに懇願する聖騎士の内心は屈辱と不甲斐なさに塗れたもので、何時の間にか聖騎士の職業病となっている強烈な胃痛も合わさり、見るに堪えない酷い顔となっていた。

 

「聖王陛下が魔導国より伺ったのは入国の許可のみ。向こうは〝新生聖王室へアンデッドたる自分が立ち入ってはいらぬ不和を招くだろう〟と配慮していた。……事実、我々は魔導王を心から歓迎出来るか?」

 

「それは出来ませんが……。ならば入国そのものをしなければ良かったのです!あのアンデッドめ!」

 

 向こうが国王でありながら、ローブル聖王国の聖王室を訪れなかった大義名分は十分なものだ。かといって〝救国の英雄〟を聖王室や貴族ではなく、新興宗教団体・民間政治団体に過ぎない(仮)が歓迎し、魔導王も(仮)の施設を視察に巡るなど、それこそ国内に不和をもたらす最悪の展開だ。

 

 ただでさえ聖王室は、南部の神官や貴族に対し権限の大幅な譲渡・規制緩和を行い、弱体化しつつある。今回の一件は〝聖王室は一国の王……それも救国の英雄が立ち寄る価値もない〟と国民に判断されても仕方がないだろう。逆を言えば、あの忌まわしき(仮)の評価が相対的に上昇する。

 

「それにしてもカスポンド聖王陛下は何をお考えなのです……、南部と融和するには権限という餌が必要な事は解りますが、南部の貴族や神官連中が権力を握れば民の暮らしがどうなるかなど、火を見るよりも明らかではありませんか!」

 

「内戦へ発展させ、幾多の血を流すか……。それとも、時間稼ぎでも国民同士の不毛な対立を避け、民に犠牲を強いようとも国を団結させるか……。最早取れる手が無いことは理解出来るが、よりよいローブル聖王国のために行動しているとは……。」

 

 カスポンド聖王陛下……聖王家の血を継ぐ唯一の人間は、ヤルダバオトの収容所で地獄を味わってから人が変わってしまった。以前はカルカ聖王女と同じく、慈悲深く民を思う方だったのだが、その変貌は正しく別人だ。グスターボは不敬な発言を繰り返す部下達を御する立場なのだろうが、自身も同じ思いなだけに強く言うことが出来ない。

 

 何よりグスターボがカスポンド聖王へ覚える違和感は、日に日に強くなる一方なのだ。まるで国内の不満を溜めこむ下ごしらえをしているかのように感じる。

 

(まさか……。いや、ありえるはずがない。)

 

 最悪の想定は一層益々強まっていく、もし……万が一、ありえない話だが、聖王陛下が偽物だとすれば、この国はどうなってしまうのだ?グスターボは思わず、聖王陛下より下賜された聖剣サファルリシアに手を当てた。

 

 

 ●

 

 

「皆様お疲れ様です!氷塊は大浴場を管理している同志の下へ!」

 

 

 時刻は深夜。『魔導王陛下へ感謝を送る会(仮)』の中でも騎馬と輸送技能に長けた親衛隊は、16人掛かりで1tを超える巨大な氷塊を改造した馬車に積み、プラートから本部のある首都ホバンスまで運び終えた。

 

 一行の目的は、冷洞窟を有するプラートの貴族に氷塊採掘の許可を貰い、氷塊を言い値で買い取り、迅速に採掘し、20時間以内に輸送する事。

 

 恐らくローブル聖王国でこれほど俊敏な動きを見せられる組織は(仮)くらいなものだろう。今回代表ネイア・バラハより、魔導王陛下がローブル聖王国へ訪問される事、そして光栄な事に、『感謝を送る会(仮)』の施設を視察なされる事を伺った。

 

 この氷塊は普段親衛隊が利用している大浴場……ネイア・バラハが聖地アインズ・ウール・ゴウン魔導国で学んだという〝すぱ〟の水風呂に浮かべるため使われる。

 

 魔導王陛下は入浴を好まれ、万が一だが恐れ多い事に、この施設でご入浴をされる可能性があるというのだ。自分達の垢で汚れた浴場を使って頂くなど、トンデモナイ話であり、豚鬼(オーク)を筆頭とした同志達によって徹底的な清掃と消毒が行われている。

 

 別の場所に目をやれば、魔導王陛下を出迎えるため、魔導国の国旗を掲揚するという誉れを賜った同志達が、ネイアと共に居るシズ先輩から様々な指導を受けていた。

 

「…………呑み込みが早い。まずまず。」

 

「大丈夫でしょうか、シズ先輩!?何分1日の準備ですので、無礼が御座いましたら!」

 

「…………アインズ様も突然なので最低限でいいと言っていた。」

 

 その〝最低限〟の基準がどれほど高いものであるかは、7日の聖地巡礼でネイアは身に染みている。今首都ホバンスには、ネイアが緊急発令を掛け、2万人の同志達が集結している。距離的に間に合わない支部の同志には申し訳無いが、埋め合わせを考えるのは後で良いだろう。

 

「…………わたしはそろそろ戻る。じゃ。また10時間後。」

 

 シズ先輩はそう言って別れを告げ、物陰に移動して気配を消した。そうして感謝を送る会は、創設以来最大とも言える大仕事、引いては団体の存在意義。神の出迎えを前に、不眠不休の準備を行っていた。上意下達の徹底、部隊運用の練度。その動きは、後に話を聞いた聖王室や南部をより一層畏怖させるものだったが、本人達に伝わることは無かった。

 

 

 

 


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