ネイア・バラハの聖地巡礼!   作:セパさん

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・この話は後日談であり、蛇足です。ネイア・バラハの聖地巡礼!本編を前提とした話しとなっておりますので、ご了承下さい。

・IF設定が更に独自の進化を遂げた世界を舞台にお送りしております。

・キャラ崩壊注意です。

 以上を踏まえた上でお読み下さい。


【後日談】絶対支配者の憂鬱・絶対指導者の憂鬱

 ナザリック地下大墳墓第9階層執務室。そこでアインズはメイドや八肢刀の暗殺蟲(エイトエッジ・アサシン)に席を外させ、緊張の中に何処か愉悦の感情を浮かべるデミウルゴスと話をしていた。

 

「ローブル聖王国の民は既に重税と圧政により疲弊しており、新たなる王を翹望(ぎょうぼう)しております。統治計画に際しましては、元神官・元聖騎士など、アインズ様をご不快にさせた罪深き者も多くおりましたが、ネイア・バラハの活動によって改心した者に対しては斟酌(しんしゃく)を加え、ある程度の慈悲を与える内容といたしました。」

 

「ふむ、多忙の中報告をご苦労。書類には当然目を通しているが、食い違いがあっては困るからな。」

 

「何を仰いますか、アインズ様!御身の叡智に及ばぬ我々が作成した愚案に御座います。齟齬を御憂慮される至らぬ我々を御赦し下さい。」

 

「そ、そうだな。さて、ネイア・バラハの活動についてはシズからも報告を受けていると思うが、デミウルゴスはどのように思う。」

 

「専念に当来の浄土を渇仰(かつぎょう)すべき下等種族として見本となるべき存在であるかと。そしてアインズ様の御計画、正に端倪すべからざる御身の造漉(ぞうしょう)されたる駒に相応しい働きをしているかと愚考いたします。」

 

「なるほど、同じ意見で安心したよ。……少し思索に耽りたい。もう仕事に戻っても構わないぞ。」

 

「畏まりました。では、御前失礼いたします。」

 

 デミウルゴスは深々と頭を下げ退出し、同時にアインズは玉座へもたれ掛かり、長い長い溜息を―呼吸はしていないが―吐いた。そして……

 

「いや!意味わかんねぇよ!!!全部日本語!?」

 

 ……情報系魔法で外部に音が漏れていない事、メイドや八肢刀の暗殺蟲(エイトエッジ・アサシン)も居ない事を確認したのを良いことに、全身全霊を込めた愚痴を吐き出す。

 

「俺だってさぁ……難しい言葉使いたいよ。でもさぁ間違っていたら恥ずかしいじゃん?俺より頭がよくて、勉強に協力してくれそうな人材は……」

 

 アインズは一瞬パンドラズ・アクターとアルベドの顔が脳裏に浮かぶが、ゆっくりと首を振る。

 

「もうマジどうすりゃいいんだよ。そもそも俺の計画だの、駒だのって、一体何の事だよ……。」

 

 ナザリック地下大墳墓の絶対支配者にして魔導国魔導王アインズ・ウール・ゴウンは瞳の炎を朧げに揺らしながらガックリと項垂れた。

 

 

 

 ●

 

 

 

 ローブル聖王国首都ホバンスに構えられた【魔導王陛下に感謝を送る会(仮)】総本部。北部貴族の屋敷を改装した外観は、よく言えば歴史ある、悪く言えば草臥(くたび)れた様相を呈している。

 

 今やローブル聖王国においては、神殿以上の勢力と、聖王国正規軍を凌駕する武装親衛隊を持ち合わせた他国も無視できない集団である(仮)。その教祖とも絶対指導者ともされるのは、【凶眼の狂信者】ネイア・バラハ。

 

 

 そんなローブル聖王国における絶対指導者は現在机に突っ伏し、頭から盛大に湯気を出していた。

 

 

「孫氏曰く兵者国之大事―― 一に曰く道、二に曰く天、三に曰く地、四に曰く将、五に曰く法なり。―― 兵とは詭道(きどう)なり。―― 廟算(びょうさん)して勝つ者は、算を得ること多ければな……ああああああああああああああ!!もうシズ先輩!脳みそがパンクします!わたし頭が腫れてきてませんか!?」

 

 その湯立った頭を優しく撫でるのは、左目をアイパッチで覆い右目には翠玉(エメラルド)にも似た瞳を宿す美少女。

 

「…………よしよし。」

 

 弱い事は悪であり、弱きを脱さぬ努力をしない者は更なる悪である。

 

 散々にネイアが演説で話している内容であるが、人間得手不得手があるもので、弁論術に関して右に出る者のいないネイアだが、軍隊の運用などしたことがないし、専門の教育も受けていない。まして軍事知識や兵法など聖騎士見習いであったネイアには手に余るものであった。それでも不得手に対し努力を怠らないのはネイアのある意味では悪癖だ。

 

「…………ネイアが兵法を無理に覚える必要はない。ネイアのしもべ……同志たちは有能。」

 

「しかしわたくしがこのざまでは、同志達に示しがつきませんよぉ。」

 

「大丈夫。ネイアにはネイアの味がある。」

 

「ぅぅぅぅぅ。」

 

 (仮)の武装親衛隊は、アインズ魔導王陛下より聖地の軍事書籍を下賜されたことで、未来へと転生したかのような変貌を遂げ、【戦闘は始まる前に終わっている】という金言のもと、アダマンタイト級でも苦戦を強いられる周辺の魔獣さえも討ち倒し、聖王国の冒険者組合に閑古鳥を鳴かせている。

 

 神殿の独占事業であった治癒についても、(仮)が医療支援部隊を結成したことで勢力を下火にし、今やローブル聖王国における絶対的な指導者の地位を確立したネイア。

 

 そんなネイアには当然、20万を超える同志達が望む理想の指導者像が求められる。故に安易に泣くことも、怒ることも、笑うことも出来ない。……その唯一の例外が、今この瞬間。

 

 シズ先輩との一時だ。

 

 ネイアは溜まりに溜まった不安を激発させるように、シズ先輩の優しく温かい小さな手に甘えてしまう。

 

 弱いことは悪だ。心の弱さも当然律して然るべきであろう。だが……

 

「…………後輩。お疲れ。」

 

「シズ先輩……。やっぱりわたくし、指導者なんて柄じゃないと不安に思うのですよね。アインズ様はわたくしのまとめる団体よりも、より適した団体を所望されるのではと……。そう思えば不安で……。」

 

「…………アインズ様に失望される不安。解る。でもアインズ様は偉大な方。ネイアを選んだことにも必ず理由がある。信じる。」

 

「そう……ですね!よし!では続きをがんばります!」

 

「…………その意気。」

 

 ……狂信者であろうが、絶対指導者であろうが、ネイア・バラハとは、未だ若き少女なのだ。友人に甘えることを誰が咎められよう。


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