ネイア・バラハの聖地巡礼!   作:セパさん

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・この話は後日談であり、蛇足です。ネイア・バラハの聖地巡礼!本編を前提とした話しとなっておりますので、ご了承下さい。

・IF設定が更に独自の進化を遂げた世界を舞台にお送りしております。

・キャラ崩壊注意です。

 以上を踏まえた上でお読み下さい


【番外編】御褒美にはチョコレート味

「ベルトラン・モロ書記次長!計画しておりました親衛隊大訓練に際し、各支部の同志たちに募った献金なのですが、達成目標金額を大幅に超えた280%が集まっております。同志達の献身はとても嬉しいのですが、毎回この様相では会員費(ざいむ)に余剰が生じ、お金を遊ばせる結果となってしまいます。困窮者も未だ多い母国と魔導王陛下への背信となることは避けたいのですが、いかがいたしましょうか。」

 

「書記次長!会員規則(ほうりつ)についてなのですが、バラハ様によりますと驚くべきことに魔導王陛下に対する不敬罪は聖地アインズ・ウール・ゴウン魔導国において一切の罰則がないとのことです。しかも魔導王陛下御自らがお決めになったことであり、我々では陛下の深淵なる御心を汲み取ることは叶いませんが、刑罰に見直しが必要であるかと。」

 

「書記次長!聖王室より復興に際しての区画整備について相談がありました。ご存知の通り、バラハ様の演説に感銘を受けた同志たちが、是非魔導王陛下の素晴らしさを直に聞きたいと各地域の演説会場が設置されている支部の周辺に居を構えるようになり、交易の拠点として更なる発展を遂げております。そのため聖王から同志達の正確な情報を求められましたが、どのようにいたしましょう。」

 

「お忙しいところ申し訳ありません、書記次長!魔導王陛下より賜った聖典(ぐんじしょせき)を応用した当会独自の治水施設ですが、レンジャー部隊の同志達より無断で設計図らしきものを書き込んでいる怪しい影が報告されております!如何なさいますか?」

 

 ローブル聖王国北部、【魔導王陛下へ感謝を送る会】総本部。その執務室で書類の山を目の前にした書記次長ベルトラン・モロははらりはらりと抜け落ちる髪の毛も気にせず過度の疲労と焦燥感から頭をかき乱していた。

 

 今や会員数20万超、大小合わせれば100を優に超える支部を持ち合わせる【魔導王陛下へ感謝を送る会】。【書記長】の肩書は教祖にして絶対指導者ネイア・バラハが持っているが、実質事務の最高責任者は書記次長であるベルトランであり、今やその役割は単純な事務や庶務に留まらない。

 

 軍事を含めた各同志による連合同盟の成果掌理・会員規則(ほうりつ)の運用と改訂・破滅と抱き合わせと錯覚してしまうような膨大な財務管理……果ては魔導王陛下をよく思わぬ反乱分子や敵対組織に対する武装親衛隊の運用や、弾圧・粛清といった血生臭い仕事も含まれている。

 

 確かにベルトランは指導者ネイア・バラハと共に黎明期より今日(こんにち)まで【魔導王陛下へ感謝を送る会】を支え続けた一人であるが、本を正せば貴族に仕えていた執事でしかない。日々膨大となっていく仕事に心は悲鳴をあげていた。

 

「ご多忙を極める……そしてお優しいバラハ様にこのような些末な取捨選択を行わせる訳にはまいりません。」

 

 ベルトランは魔導王陛下より賜った恩義に報いるため、そしてあの小さな背中に人々を真実へ導くと言う重責を背負った偉大な指導者ネイア・バラハのためにも、感謝を送る会の〝雑務(よごれしごと)〟は自分が担わなければならないと活を入れる。

 

「まずは財務管理についてでしたね。草案の中に良いものがあればいいのですが……」

 

 そういって気合を入れるためカップに注がれた飲み物をいっぺんに飲み干し……舌から脳へ突き抜ける旨さに絶句した。ほろ苦く、それでいて不思議な甘さを孕んだものであり、身心の疲れが一気にほどけていく。

 

「これは……魔導王陛下のお導きでしょうか?」

 

 そう考えれば飲み物など準備していなかったことも同時に思い出す。一体だれが何のために?そんな疑問さえ口福の中に溶けていく。ベルトランは改めて魔導王陛下へ祈りを捧げ、仕事へ向かい合った。

 

 

「…………御褒美には甘いものが良い。偉大な御方の一人が仰っていた。シモベに褒美も与えられないなんて出来の悪い後輩。先輩として後で指導が必要。」

 

 

 彼の背中で可愛らしく胸を張るそんな姿には気が付くことも無く。

 

 

 ●

 

 

「…………ネイアはアインズ様のために献身出来ない日があると言われたら何て思う?」

 

「死んだ方がマシです!」

 

「…………気持ちはわかる。でも人間は脆い。とてもとても脆い。」

 

 シズ先輩から発せられた突然の質問に、ネイアはその意味を咀嚼する。

 

「同志の皆は頑張りすぎ……ですか?。」

 

「…………そう。」

 

「たしかに聖地アインズ・ウール・ゴウン魔導国では休暇制度が充実していると聞いています。やはりアインズ様は疲労を知らない超越者でありながら、下々の者の事を考えられる偉大な王であると実感した次第です。当会のように七日七晩働き続けるのはやはり違うのではないかと議題になったこともあります。」

 

「…………その結果は?」

 

「魔導王陛下に献身出来る喜びこそが我々の精神の安らぎであり、休暇などいらないという結論になりました。」

 

「…………うん。偉い。」

 

「ありがとうございます!」

 

「…………。」

 

「…………。」

 

「で?何の話でしたか?」

 

「…………なんだっけ?」

 

 シズとネイアは二人そろって首を傾げた。


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