・IF設定が更に独自の進化を遂げた世界を舞台にお送りしております。
・キャラ崩壊注意です。
以上を踏まえた上でお読み下さい
魔導王陛下へ感謝を送る会(仮)総本部。その執務室で、研究に従事している文官たちが目を爛々と光らせてネイアの前に立った。
まず一人の女性がネイアの前に出るや否や、短刀を取り出し、
「以上の品が、我々【魔導王陛下医療支援同盟】が魔導王陛下より賜りました
「秘匿通信のマジック・アイテムをアインズ様より賜り行っていた例の作戦ですね。」
「はい。皮下脂肪または筋肉組織へポーションを基盤とした特殊な薬液を注入することで、薬液を体内に残留させることに成功しました。 位階魔法でいうならば回復魔法に<
ネイアは目を爛々と輝かせ熱を込めて話す同志と反比例するように、〝はえ~、すご~い。〟という感情しか湧いてこない――そもそもどうやって作ったのか機序が全く理解出来ない――のだが、思考の放棄はアインズ様への背信だと自分に活を入れ、【絶対指導者ネイア・バラハ】としてどう対応すべきか考える。そしてしばらく長考し……
「技術の発展は大変喜ばしいことですが、管理を誤れば暴走する危険なものでもあります。〝注射器〟に懸念される技術革新のデメリットについて意見を。」
結局【アインズ様語録】の引用に頼ってしまったことに悔恨の情を抱きつつも目の前にいる同志の返答を待った。
「はい!バラハ様!ご存じのように〝飲む・振りかける・
「詳しく話を伺っても?」
「ご存じのようにリ・エスティーゼ王国で猛威を振るい主流となっている【黒粉】なる麻薬はライラという植物を精製し、
「なるほど……麻薬に耽溺する同志がいるとは思いませんが、一般普及に関しては重要な管理が必要ですね。 また、アインズ様の慈愛を信じられぬ無知蒙昧な輩に技術の転用などされれば……。 わたしの首ひとつで赦されることを祈るほかありません。」
目の前の女性党員は改めて注射器を強く握りしめ、重要性を再認識する。
「かしこまりました。聖地魔導国との合作です。第一級秘匿神器として、厳重な管理をさせていただきます。」
「お願いします。ひとつはわたくしが持っておきます。」
「では続いて【魔導王陛下魔法研究同盟】に引継ぎをさせていただきます。」
女性が一歩下がり、後ろに控えていた男性が緊張した面持ちでネイアに一礼する。
「以前捕縛した幽霊船の調査報告について進捗報告を失礼いたします。 船内の構造やアンデッドと化した乗組員を精査するに、幽霊船となった船は120~130年ほど前に沈没した護衛船と推測されております。 今回当会が捕縛した幽霊船は50年前より目撃情報があり、恐らくは船員たちの未練が瘴気にあてられ幽霊船となるまで、80年近くを要したと考えられます。 人工で幽霊船を作り上げる構想についてですが、10年以内には現実的な着手ができるかと。」
「では次に魔導王陛下特殊能力研究同盟より報告を申し上げます。以前お話をさせていただきました異なる<
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「うわあああああああああああああああんんんん、どうすればいいでしょう。シズ先輩。」
ネイアはシズが来訪するや否や普段の威厳を月の彼方まで吹っ飛ばし、年相応の少女……いや、
それ以上に退行しているかのように飛びつき抱き着いた。シズは慣れた様子でネイアの頭を優しくなでる。
「…………【進みすぎた科学は魔法と区別がつかない】。博士の金言。でも魔法のある世界でここまでの技術革新。アインズ様も薬液の精製に頼らない新たなポーション技術の作成や魔法に頼らないアンデッド作成研究には大きな関心を持たれている。ネイアの団体があったから出来たこと。偉い。」
【アインズ様からの期待】、その重責にネイアの身体が光栄と畏怖でブルリと震える。
「わたしは恐ろしいのです、シズ先輩。わたしはただ同志たちが作り上げる品々に対し理解も思惟もできず、薄ぼんやりと鷹揚に頷くだけ……。こんなわたしが【絶対指導者】と祭り上げられるなんて確実におかしいですよ。」
「…………またそう言う。ネイアがいなければ出来なかったこと。自信を持つべき。」
「なにもしてないですけどねぇ。」
「…………もし今回の技術が他国に流出した場合。ネイアはどうする。」
「この首一つで足りるかわかりませんが、アインズ様へ……。ですが、同志たちと会合を重ね、欺瞞情報も含め第一級の管理をさせていただいております。同志に裏切者がいるならば……、わたしは死など生ぬるい永劫の罰を受けるべきでしょう。」
「…………うん。そういうところ。ネイアの団体はシモベの絆がしっかりしている。だからこそアインズ様も技術革新に対して寛大であられる。ネイアのお手柄。」
「そうなのですかねぇ……。以前シズ先輩はアインズ様が過度な技術革新は好まれないと仰っていたことをきいたので、我々の団体は道を誤っているのではないかと不安で不安で……。」
「…………それだけネイアの団体を信じているということ。先輩として誇らしい。」
「それでももう……そもそも成り行きでトップなんかになってしまったわたしに20万もの人間を率いるなんて無理だったのかなと、弱きは悪であると常々説いているわたくしの心に時折過るのです。」
ネイアがシズに慰められているその時、執務室まで駆け寄る足音とノックの音がほぼ同時に鳴った。シズは完全不可視化で姿を消す。
「バラハ様!急に申し訳ございません!屋敷の周りを神殿勢力の信徒……魔導王陛下の慈愛に無知蒙昧な輩どもが囲んでおり、我々を糾弾しています。その数は数百名。相手は全員非武装であるため、武装親衛隊による強制排除も難しく、是非バラハ様のお力を借りたく存じます。」
その瞬間少女ネイア・バラハは溶けて消え、凛とした顔つきの【絶対指導者】ネイア・バラハが顔を出す。
「北部にもまだアインズ様を忌避する憐れな方々がいらっしゃったとは……。大丈夫です。わたしが皆様の誤解を解いて参りましょう。すべて私に任せてください。」
シズは不思議に思う。剣もない、槍もない、銃もない、楯もない。それなのになぜネイアはこうも堂々と数百名の暴徒に笑顔で向かっていけるのか。おそらくネイアのことだ、数百名の暴徒は数十分後には数百名のシモベになっているだろう。
そんな後輩を誇らしく思い、シズは先輩としてネイアの頭をなで、激励代わりに背中を軽くポンと叩いた。