・IF設定が更に独自の進化を遂げた世界を舞台にお送りしております。
・キャラ崩壊注意です。
以上を踏まえた上でお読み下さい。
【後日談】ナザリックラジオ計画
ナザリック地下大墳墓、宝物殿の談話室。アインズの前には塔のようなパンドラズ・アクター作製のマジック・アイテムが置かれていた。塔の内部には
「おお!偉大にして至高なる御方!アインズ様!この度は至らぬわたくしにアインズ様御自らのお力まで賜り感謝の至りに御座います!」
「なに、構わん。民を持った王となった以上、王の力は民へ還元するべきだ。」
「流石はアインズ様!なんと慈悲深い御方!」
(そういえば税金とかどうしてるんだろう?アルベドがうまいことやっているとは思うけれど、〝税金の無駄遣いだ!〟って反感を買わないかな?)
アルベドやデミウルゴス曰く【魔導国情報先進国及び、プロパガンダ構想】の一環として出来上がったのが目の前のマジック・アイテムで、アインズの知識で言う〝ラジオ〟だ。
ただ、データ化や小型化はまだ難しく、とりあえず公園などの一定区画ごとにこのラジオを設置し、近所迷惑にならない程度の音量で興味を持った者に集まって貰い、口コミで広めていこうというのが計画の第一段階。……デミウルゴスは第五弾までを計画しているらしいが、当たり前のように「アインズ様であれば既にお見抜きでしょう。」と教えてくれなかった。
(放送スケジュールとかどうなってるのかな。俺を讃える番組ばかりでも困るぞ?まぁアルベドやデミウルゴス……そして変にやる気なパンドラズ・アクターにある程度任せるとして。最初は無難な
アインズがこの計画にここまで乗り気なのも、情報を拡散させるという計画は正にこの地に来ているかもしれない仲間へのメッセージとして最適と思えたからだ。剣槍矛戟が乱舞する国盗り合戦ばかりが名を広める手段ではない。様々な側面からアプローチするのはいいことだ。
「ふむ、ナザリックがこの地に来るまでは〝魔法先進国〟と言われていたバハルス帝国でさえ、このような試みを行ったことはない。言わばこの世界では初の試みだ。挫折することも多いだろうが、頓挫することが無いようにな。」
「勿論で御座いますアインズ様!このパンドラズ・アクター、既に様々な構想が浮かんで仕方が御座いません。この偉大なる発明は、アインズ様、そして至高なる41人たる御方々の叡智の結晶!……で、あれば!!御方々の秘宝を任されたる宝物殿領域守護者たるわたくしも、此度の栄えある
「う、うむ。まぁほどほどにな……。」
アインズは
「話は変わりますがアインズ様。彼の
「ふむ……。まぁわたしもモモンをしていた時、リ・エスティーゼ王国から特に褒美は貰わなかったな。そういうものなのか。しかし恩義には報いたいものだ、冒険者というのも難儀だな。」
「でしたらアインズ様!!」
パンドラズ・アクターがその場で華麗に旋回すると、深紅のマントに漆黒の鎧を纏った巨躯〝英雄モモン〟へ変化する。
「このわたくしが可憐な
「やめろ、モモンの姿でその動きはマジでやめろ!あとその提案は却下だ!」
鎧姿の巨躯が床をカツカツと打ち鳴らしながら仰々しい動きで踊るその姿に、アインズは頭を抱え奇声を挙げて悶え転がりたくなる。
(ああ、何で俺はこんなものが格好良いと思っていたんだ……。)
●
エ・ランテルの街並みを2人の男女が歩いてた。男は猛禽類を思わせる鋭い眼差しをもつ屈強な体格を執事服で覆った白髪の老紳士、もう1人は簡素な明るい色のドレスを着た少女であり、執事は少女の歩幅に合わせて歩いている。一見すると高貴な家の令嬢とその執事を思わせる。
セバス・チャンとツアレニーニャは、アインズより褒美の休暇を賜り、久々にエ・ランテルの街を一緒に歩いていた。……ツアレの心の傷は簡単に払拭出来るほど軽いものではなく、最初の内は男性や
しかし何十回と
「ツアレ、今回の任務ですが本当にお疲れ様でした。ナザリック初となる他国からの客人へのお付きにツアレが選ばれ、その責務をこなした事。更にはこうしてアインズ様より褒美まで頂けるとは、わたくしも誇らしい限りです。」
「いえ、全てはセバス様のおかげです。わたくしの全てはセバス様のものなのですから。」
「そう……ですか。」
今後ツアレはエ・ランテルの館におけるメイド長となってもらう予定となっている。今はまだナザリックでメイド修行中であるが、基本的な作法はナザリック基準でも及第点に達している。ただホムンクルスのメイド達からは、自分の仕事を取られるからとあまり良く思われていない。ツアレは
……そういう意味ではナザリックを出ることは理想なのかも知れないが、セバスとツアレが共に過ごせる時間は減るだろう。未だ危うい部分の残るツアレを思うと、セバスは複雑な心境を隠せずにいる。
「それにしてもセバス様?何やら奇抜なマジック・アイテムが見えますが……あれは何でしょうか?」
ツアレの目に映るのは小さな塔。天辺には四方向に拡声器のようなものが付いている。
「ああ、現在ナザリックで試験運用している〝ラジオ〟……という物だそうです。住民に娯楽を楽しんで頂こうとアインズ様がお考えになっているのだとか。わたしも街に配置された実物を見るのは初めてですね。流石はアインズ様、既にここまで計画を進められているとは。」
「まぁ、素敵ですね。朝早くに子ども達が集まっているようです。どのような内容なのでしょう。」
「ふむ……。わたくしも詳しい内容までは伺っておりません。」
「少し聞いていかれますか?」
「いえ、わたしのような老骨が楽しむ子ども達に交じっていても異物なだけでしょう。」
何が放送をされるのか解らないが、楽しそうに時計を見つめて盛り上がる子ども達に笑顔を向け、背を向けて歩きだそうとするが……
〝魔導戦士、マジックマン参上!良い子の諸君!今日もこの魔法の剣が、魔導王陛下に仇成す悪を討つ!〟
……そんな口上と共に弦楽器による音楽が響き、子ども達、主に男児たちが盛り上がる。セバスの脳裏に純白の鎧を纏う赤いマントをはためかせた至高の御方、自身の創造主であるたっち・みー様が後光を差して脳裏に浮かんだ。
「……と、思いましたが。子ども達がどのような反応を示しているか見ていくのも悪くないでしょう。勿論
「ええ、セバス様がそういうのでしたら喜んで。」
「では倚子やベンチ……は全て埋まっているようですから、立ちながらでも構いませんか?疲れが出たようならば無理をせず仰って下さい。」
「勿論です。セバス様。」
ツアレは初めて見るセバスの一面。調査と言っているが、無邪気な子どものような瞳に、思わず口に手を当てて笑みを隠してしまう。
……セバスの創造主であるたっち・みー。彼が無類の特撮ヒーローマニアであり、語り出すと他のギルドメンバーが急な用事を思い出すほどの人物であることなど、セバスもツアレも知らないことだ。
内容は簡単に言ってしまうと、普段は冴えない暮らしをしている男は、実はヒーローに変身する能力をもっており、陰でアインズ様……魔導王陛下の民を苦しめる悪の組織と戦う物語だ。
〝なんでわざわざマジックマンは素性を隠しているのか?〟
〝なんで敵の組織は「誘拐した子どもを6時間後処刑する」なんて時間の猶予を与えた上、ご丁寧にマジックマンとやらに自らの居場所まで伝えたのか?〟
〝敵の幹部は「くくく、あと30分だ。」と言っているが5時間半ものあいだ、マジックマンは何を呑気にしていたのか?〟
〝変身するとき爆発音は必要なのか?爆発魔法ならそれで敵を倒してしまえばいいのでは?〟
〝何故敵の幹部とやらは人質にした子どもを連れもせず配下を連れて荒野に現れたのか?〟
〝悪の幹部はやられて「覚えていろ!」と逃げたが、人質の子どもの管理が杜撰すぎないか?〟
正直ツアレでも色々とツッコミたくなるような内容だったが、無邪気に盛り上がる子どもたちと……同じくらい無垢な瞳で放送を傾聴するセバスを見て、そんな考えを胸に仕舞い込んだ。
その後セバスはツアレに〝魔導戦士マジックマン〟の今後についての考察や、誰が脚本を書いたのか、題材となったものは何なのかなど、様々な熱弁を振るっていたが、ツアレは心からの笑顔でそんなセバスを見つめていた。