・オーバーロード本編、くがね先生と異なる文体を使っております。アンチ・ヘイトのつもりで書いておりませんが、そんなの無理という方はブラウザバックしてください。
・so-bin先生がXで投稿された美しいシズ先輩とネイアちゃん〝https://x.com/soubin/status/1840419025572270138〟を見て書きたくなった駄文です。
何でもない通学路、その帰宅道。大きな店のウインドウが商品を飾ってあって、うっすらと制服姿の自分も反射して見える。じっと自分の目を見ていると、がっかりする。目の美しいことが一番良い……とまでは思わないが、これから会う約束をしている子はまるで
今朝から10月、吹く風はどこか肌寒い。ローブル聖女学院冬服の制服、左胸の襟にあの子から貰った〝いちえんシール〟とかいうお気に入りの証を貼ってみる。何でも可愛くてお気に入りのものに貼るのが趣味なんだとか。〝…………ちなみにネイアは可愛くないけれど〟と何度も言われるのは流石に傷つくけれど。
「シズ先輩!待たせちゃいました?」
「…………ううん。今来たところ。」
わたしとは違う制服姿の下にカーディガンを着て、迷彩柄のマフラーを巻いている少し背の低い幼さの残る可愛らしい顔立ちをした女の子。鞄にはペンギンらしき魔物と脳みそに目が生えたような魔物のストラップが飾ってある。シズ先輩は〝かわいいから〟というが、ペンギンはまだしも脳みその魔物は少しだけグロテスクだ。
ああ、そうそう。〝先輩〟なんて呼んでいるけれど学年は同じだ。でも慈悲深き御方の創造された学園に在籍する彼女は、わたしよりもずっとずっと〝先輩〟だ。何より〝先輩〟をつけないとシズは〝むっ〟とする。それはそれでかわいいのだが、尊敬すべき相手には敬称をつけるべきだ。
「…………じゃあ行こう。後輩。」
「はい、アインズ様のお話、沢山聞かせてください!」
そう言ってわたしとシズ先輩は手をつなぎ街を歩き始めた。シズ先輩は教師をやっている長姉の話、学園でまわりの女の子からチヤホヤされて困っていること、最近見つけた可愛い生き物……そして何よりアインズ様の神話を語ってくれた。
しばらく歩き続けると喫茶店が目に留まったので、入ることにした。わたしはストロベリー味を、シズ先輩はチョコレート味のドリンクを頼み、再び話に花を咲かせる。ローブル聖女学院の同志たちとアインズ様の素晴らしさを語り合うのも大好きだが、シズ先輩との時間はやはり特別だ。今、わたしは少しだけ幸福な人物かもしれない。
喫茶店でほかの席を見つめていると、仕事の休憩中であろうか労働に従事する年齢のスーツを着た人たちが濁った魚のような目で座っているのが見える。なんて嘆かわしい光景だろう、皆がアインズ様の偉大さに一端でも接することが出来れば御身に仕え働ける素晴らしさに目覚め、仕事を苦と思うことなど絶対ないと思うのに。
「…………ネイア。何を見ていた?」
「いえ、アインズ様の偉大さを理解されない矜恤憐憫極まる方々です。」
「…………人間だから仕方がない。慈悲を与えるべきとアインズ様も仰っている。」
「シズ先輩も人間じゃないですか。」
「…………むっ。そうだった。…………ん?」
シズ先輩は不思議なことを言い出して小首をかしげた。いつも無表情なためどこか機械じみた印象を受けるシズ先輩だが、誰よりも感性豊かなのは長い付き合いで知っている。とはいえシズ先輩が満面の笑みを浮かべる様子など想像もできない。もしそんな顔を見せられたらわたしは人生で一番の衝撃と困惑を覚えるだろう。
「…………飲み終わった。次はどこにいく?」
「そうですねぇ……、久々にカラオケとかどうでしょうか。」
「…………じゃあそれで。」
そうしてお会計を済ませ、再びシズ先輩と街へ出て近くに見つけたカラオケ店に入る。確か割引券がまだ残っていたはずと財布を探ったが残念ながら別の店のものだった。明るくライトが照らされた部屋でシズ先輩と横に並び、何を歌うか話し合う。正直歌う時間よりもこうしてシズ先輩と色々悩んでいる時間の方が好みだ。
「…………どんちゅーぎみよーらでーぱっしょん。」
シズ先輩はその美しい声に似合わず歌があまり得意ではない。本人曰く〝【
「~~~♪」
「…………ネイア。ラップ音楽がうまい。多分韻を踏むのが上手。演説が上手いだけある。」
歌い終わったわたしにシズ先輩は拍手を送ってくれた。少しだけ気恥ずかしい。一通り歌い終わったわたしたちは再び街へ出る。すると少し怪しげな男性がわたしたちに近寄ってきた。
「お忙しいところ恐縮です。ファッション雑誌の記者をしている者なのですが、是非一枚写真を撮らせて頂いてもよろしいでしょうか?」
……シズ先輩の美貌は道行く人を振り返らせるほどのものだ。正直二人とも制服姿なのでファッションもなにも無いと思うのだが、確かにシズ先輩の美貌なら雑誌の見栄えもよくなるだろう。大体は無視するか断る案件だ。
「是非お二人の麗しい姿を写真に収めたいのです。ご協力いただければ幸いです。」
「え!?わたしもですか!?」
「もちろん!その麗しい金髪に整った鼻立ち、是非当雑誌のモデルになっていただければ。」
この人はわたしの目だけ見えない謎の重い病気にでも罹っているのだろうか?自分にモデルが務まるなど夢にも思わない。
「…………ネイアと一緒なら。いい。」
「シズ先輩!?」
普段なら歯牙にもかけない勧誘だが、何故かシズ先輩の琴線に触れたようだ。わたしは慌てふためいてしまう。
「…………ただし条件。わたしとネイアにも写真を送ってほしい。」
「それはもちろんです。ではふたりとも並んでいただいて。」
「ちょっと待ってくださいシズ先輩!わたしがモデルだなんてそんな!」
「…………後輩。覚悟を決める。」
シズ先輩の
「ではいきますよ。ふたりともピースサインでお願いします。」
カシャリとカメラの音が鳴る。自分はどんな顔をしていただろう。緊張もあったが、シズ先輩の……わたしと写真を撮りたいという気持ちがうれしくて、自然に笑顔になれた気もする。出来上がりを見るのは少し怖いが。
「…………じゃあ行こう。」
「ああ、お待ちください。是非謝礼を。」
「…………いらない。写真を送ってくれればそれでいい。」
シズ先輩は何事もなかったかのように街を歩き始める。その表情は少し満足気で、どこか誇らしそうだった。……それがわたしのためだとすれば、なんて考えるととてもうれしくて。シズ先輩を追いかけ笑顔で手をつなぐ。
まだ時間は夕方に少し差し掛かるころ。まだまだ時間はたくさんある。アインズ様のお話をたくさん聞こう。そして、シズ先輩とのひと時をもっと楽しもう。街を歩くだけの何でもない時間が、とても幸福に思えた。