・IF設定が更に独自の進化を遂げた世界を舞台にお送りしております。
・キャラ崩壊注意です。
以上を踏まえた上でお読み下さい。
「バラハ様!地図によるとここがアベリオン丘陵、ここから東に進んだ先が目的地となります!」
少年と少女は絶対指導者ネイア・バラハに傅いて最敬礼をとる。尤も最敬礼の形が正しい様になっているかわからない、とはいえ確かめる手段などないし、ここにはそれを
つまり親衛隊の中でも新兵を抜けたばかりという稚拙な自分たちがいざとなれば命を捨てバラハ様の盾とならなければいけない。
「どうぞ頭を上げてください、我々は同志です。そこまで過剰な敬意は必要ありません。」
〝無理だ〟
バラハ様の慈悲深い言葉とは裏腹にそんな心の声が木霊する。偉大なる魔導王陛下の代弁者にして20万以上――その数もかなり以前の演説で語られた過去のものであり今はそれ以上だろう――もの同志を束ねる絶対指導者。そんな人物に敬意を排して接するなど出来ようはずがない。
ましてバラハ様は自分たちの身勝手さが招いた私情故にその身を危険に晒しているのだ。自分たちが未だ敬意を崩さぬ様子にバラハ様は様々言葉を紡ぎ自分たちの心を解きほぐそうというお心遣いを覚え、心痛むと同時に敬意を募らせる。何と思慮深くお優しい方なのだ。
「それにしてもお二人のお話には興味が尽きません、本部でもお話は伺いましたが、もっと深く聞いてもよろしいでしょうか?もちろん、無理にとはいいません。」
遠方で見ていた凛々しく勇ましいお姿とはまるで違う様子に、恐らく自分たちを安心させようと一般の少女のように演技をしてくださっているのだろう。自分たちの馴れ初め、そして現在に至るまでを事細かにお話しする。バラハ様は自分たちの拙い話を興味深く聞いて下さっているようだった。
「それにしてもバラハ様、やはり馬車の護衛くらいはしても問題なかったのではないでしょうか。」
「祝言のご挨拶へ向かうのです、こちらが要らぬ武装を固めていては失礼にあたるでしょう。」
「何を仰いますか、バラハ様の偉大さは我々の部族でも広く周知されております!その身を護られることに何の不思議が御座いましょう。」
「よろしいですか、お二人の体現されたるお姿は聖地アインズ・ウール・ゴウン魔導国でわたしが目にした〝他種族との共存〟という無限の可能性。その偉大なる第一歩なのです。お二人の婚礼を祝うためわたくしが貴方様の集落へ足を運ばせて頂くこと自体、わたくしの我儘であり、非礼を詫びなければならない立場です。族長様とのお話も実りあるものにしなければなりません。そのため相手を警戒・不快にさせるなどアインズ様への背信であり、わたしの身など考慮する必要は御座いません。」
凛々しく二人に説法を説き始めたバラハ様に、やはり先ほどまでの少女然とした立ち振る舞いは演技だったのだと確信する。魔導王陛下へ感謝を送る会(仮)にて清掃夫を行っていた
その二人が愛を育み、婚礼にまで話が進んだと聞いたバラハ様は大層喜ばれ、こうして
結果、二人の愛は誰しもに歓迎された。また、バラハ様が
ネイアは過剰な敬意を解いてくれない二人に苦心するも、ローブル聖王国では初となる美しい愛に心を弾ませていた。
●
【親衛隊お疲れさま会】……その名の通り最初は所属する訓練を終えた親衛隊にネイア・バラハが直接労いの言葉を掛けたり、演説を行う集会に過ぎなかったのだが、今や国家の閲兵式の様相を呈している。前座となる親衛隊の男性が演説を終え、遂に絶対指導者ネイア・バラハが壇上へ上がる。その月光の如く煌めく弓、そして装備に見劣りしないカリスマ性。その可憐な姿に聴衆はざわつくが、ネイアは静寂を待つ。そして聴衆に静謐が戻ったことを確認して言葉を紡ぎ始めた。
「ローブル聖王国は今まさに岐路に立ち、その片道は少しずつ崩壊への道を歩みつつあるのです!それは言うまでもない、アインズ様……魔導王陛下を無知蒙昧にも敵視する神殿勢力です。母国復興という危急存亡の時分において権力闘争という稚拙な事象に精を出し、それでもまだローブル聖王国の民を護りたいなどという妄言を宣う存在に存在価値などあるでしょうか?そもそもローブル聖王国を救いたいと真面目に思っているのであれば、なぜ今日までそうしていないのか?我が国を救いたいと神殿が本当に思っているのであれば、なぜ今日まで救われていないのか?神殿勢力は本当にローブル聖王国を救おうとしていたのか?もちろん神殿勢力に属する者にも良心はあり、魔導王陛下の素晴らしさに目覚めた同志となり浄罪を受けた者はおります。しかしながらその数はあまりにも心許ない。神殿勢力は傲岸不遜にもローブル聖王国民へ「自分たちだけがあなたたちを救うことができる」と民に思い込ませてきたのです!これは蒙昧を通り越し
ネイアの天に掲げる指先と共に、〝魔導王陛下万歳!!〟という止まない喝采が大地へ轟き天空へ達する。同時に親衛隊たちは国璽に付随する印を神殿から奪い取ったという些末な事象に満足していた自分たちを恥ずる。魔導王陛下の偉大なる統治を頂くためにはもっと努力が必要であり、バラハ様はその高みをご教授下さった。
「はぁ……はぁ……。あれ?」
ネイアは息も絶え絶えに汗だくとなり疲労を隠さず天幕へ戻った。そしていつもは冷たい布を渡してくれる御付きの女中が居ないことに不思議さを覚え……
「…………相変わらず凄い勢い。体重も演説前と3kgも減っている。最大のダイエット。」
「シズ先輩!?聞いていたのですか!?」
「…………今日はネイアが大勢のシモ……同志たちにアインズ様の素晴らしさを説く日。アインズ様へネイアのことをご報告するならこの日にするべき。」
「あ、アインズ様へ!?」
ネイアは突如訪れた言葉に光栄と恐懼の念を覚える。本日の演説では敵対組織といえる神殿勢力の脅威を伝えるためアインズ様の威を借る真似をしてしまった。アインズ様はご不快に思われないだろうか……。
「…………まぁとりあえずお疲れ。これ。」
そういってシズが虚空から取り出したのは派手なピンク色をした〝ストロベリー味〟だった。ネイアはありがたく受け取り、その鮮明で一気に飲み干したくなる甘さに陶酔する。
「ぷは……。美味しかったです。しかしシズ先輩、今回の演説でわたくしは恐れ多くもアインズ様の威を借る真似をしてしまいました。失望されないでしょうか……。」
「…………威を借る真似ではない。アインズ様の偉大さを説いていた。だから大丈夫。多分。」
「多分!?」
ネイアは思わずシズ先輩の肩を掴みかかり詰め寄りたい気分に駆られた。例え0.0000……%であろうと至高の御身を不快にさせるなど許されるはずがない。
「…………でもアインズ様はネイアの演説に驚かれていた。それに間違いがあったならわたしが訂正する。安心していい。」
「アインズ様がわたくし如きに……。」
「…………演説の前後で体重が2kgも減っていたと報告したら凄く驚いていた。今回は3kg。もっとすごい。」
「いや、そっちですか!?内容は!?」
その後もシズとネイアの会話は続き、先ほどと異なる〝少女ネイア・バラハ〟はシズ先輩とのひと時を楽しんでいた。
久々に大演説をするネイアちゃんを書きたくなりました。読みにくかったら申し訳ございません。