ネイア・バラハの聖地巡礼!   作:セパさん

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・この話は後日談であり、蛇足です。ネイア・バラハの聖地巡礼!本編を前提とした話しとなっておりますので、ご了承下さい。

・IF設定が更に独自の進化を遂げた世界を舞台にお送りしております。

・キャラ崩壊注意です。

・お蔵入りにしようか迷った物語です。

・筆者のチェスのレーディングは結構残念です。

 以上を踏まえた上でお読み下さい。


【番外編】盤上の夢 サイド:ナザリック

 パンドラズ・アクターは、対面に座り眼鏡を指で整え微笑するデミウルゴスを前に、ワナワナと震えていた。盤上では白の魔司祭(エルダーリッチ)が黒の将軍(ジェネラル)守護者(ガーディアン)両方を睨み付けている。

 

Scheiße(なんということだ)降伏(リィザイン)です!!まさか序盤のEXC4+(エルダーリッチテイクスシーフォーチェック)が最終局面でわたくしの守護者(ガーディアン)を取る布石だったとは!」

 

 オーバーリアクションで頭を抱え仰け反りながら、パンドラズ・アクターは絶叫する。そして顔に手を当て、慈しむように、自軍の将軍(ジェネラル)を自分の指でゆっくりと倒した。

 

Niederlage ist notwendig für den Sieg.(勝利のためには敗北も必要なのですよ)。……だったかな?これでわたしの7勝34分け5敗だね。白星を重ねられて安堵しているよ。」

 

「Oh!わたくしの決め台詞まで奪っていくとは!この男、正に悪魔!このパンドラズ・アクター二重の苦しみ!」

 

「いやいや、今のところこの盤上遊技でわたしが黒星を喫した相手は、アルベドとパンドラズ・アクターくらいだ。君の言うように勝利した盤上よりも、敗北した盤上から学ぶことが多いように思える。アルベドが定石を網羅し堅実な論理に基づいた守備重視の打ち手だとすれば、君は千変万化の読めない打ち筋だ。至高の御方々にそうあれと作られた性格が出るようで面白いよ。」

 

「それをいうのでしたらデミウルゴス殿、あなたは1つの駒・1つの打ち筋に複数の役割を持たせ、相手の心と精神を打ち砕く。おお!正にウルベルト様がそうあれと、創造されたる悪魔の権化!」

 

「流石は御方々の住まう世界に存在した叡智の盤上遊技。君が下等生物たちに広めると言い出した時は正気を疑ったものだが、今考えて見ればこれほどの適材もなかった。駒の動かし方なら子どもでも理解出来るが、盤上で行われるのは、単なる計算ではない。芸術であり、論理であり、巧みな心理戦。何処か哲学的でもある。」

 

「そう!個人の叡智と叡智がぶつかり合い、互いの戦闘団(カンプグルッペ)が一手一手と重ねられる棋譜は正しく芸術!!」

 

「いずれアインズ様とお手合わせ出来れば、これ程の幸福はないだろうが、アインズ様はこの様な児戯など嗜まれないだろう。もっとも我々では相手にもならないだろうがね。」

 

「ええ、アインズ様でしたら盤上というキャンバスに、どれほどの芸術を造り出されるか!いえ、世界の全てをキャンバスとするアインズ様です!このような小さな盤上では余りにも不敬というもの!」

 

 ……アインズがナザリック内でのチェスブームに、どうやって対戦を断ろうか頭を抱えて苦悩していることなど、二人は知らない事である。

 

 

 ●

 

 

 ナザリック地下大墳墓ショットBAR。シャルティアはグラスを重ね、キノコ頭を持つ紳士的なバーテンダーである副料理長とカウンター越しに盤を囲んでいた。

 

「……<蘇生(リザレクション)>でありんす。」

 

「恐れながらシャルティア様。チェスで位階魔法は使えません。」

 

「んじゃぁ!さっきのわらわのガーディアンは、スケルトン如き返り討ちにしたでありんす!!」

 

「残念ですが倒されました。序でにわたくしのスケルトンは、最終列に達したのでガーディアンに成っております。」

 

「あ~~~~!!もう勝ち目がないじゃありんせんか!」

 

「はい、後一手でチェックメイトですね。」

 

 シャルティアは一気に酒を煽ってカウンターに突っ伏した。

 

「あのゴリラ女どころか、アウラやマーレにも勝てないでありんす……。」

 

「まぁ階層守護者の皆様がお強すぎるのですよ。」

 

「わらわに勝っておいてその言い草はイヤミでありんす!!」

 

「……シャルティア様が全力でこいと仰るので。」

 

「ああ!!」

 

「ま、まぁ、お酒も入っておりましたし、シャルティア様も全力を出せなかったのでしょう。」

 

「ううう……。至高の御方々の盤上遊技……。は!そういえば同じ盤上遊技ならば、ペロロンチーノ様が残された〝だついまーじゃん〟が得意でありんす!」

 

「頼みますので、絶対BARに持ってこないで下さいね。」

 

「ああん!」

 

(本当、出入り禁止にしようかなこの人……。)

 

 副料理長は表情が表に出ない自分の身体に感謝しつつ、グラスを磨いていた。


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