ネイア・バラハの聖地巡礼!   作:セパさん

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・この話は後日談であり、蛇足です。ネイア・バラハの聖地巡礼!本編を前提とした話しとなっておりますので、ご了承下さい。

・IF設定が更に独自の進化を遂げた世界を舞台にお送りしております。

・キャラ崩壊注意です。

 以上を踏まえた上でお読み下さい。


【番外編】弓手と銃兵の祈り

 【魔導王陛下へ感謝を送る会(仮)】総本部、その執務室には文官・武装親衛隊を纏める高官や各支部の支部長たちが集まり、絶対指導者ネイア・バラハへ新年の挨拶へ訪れていた。

 

「バラハ様、旧年中はわたくしどもの未熟さ、魔導王陛下への不信心さ故多大なるご負担をお掛けいたしました。本年はより魔導王陛下のご慈悲に相応しい者となるべく研鑽を積み精進をする次第にございます。また年末に行われました親衛隊への閲兵式(おつかれさまかい)では同志たちはより一層の結束をみせ、改めてバラハ様の御力には敬意が募るばかりにございます。」

 

「いえ、わたしの力など些末なものに過ぎません。アインズ様……魔導王陛下が余りにも偉大であるからそのように錯覚をしているだけです。本年も魔導王陛下の素晴らしさを広め、未だ偽りの正義に囚われている蒙昧で哀れな方々に真実を説き回りましょう。」

 

 ネイアの静かながらも力強い導きの言葉に支部長や高官たちは一斉に礼をする。(かしず)く家臣を睥睨(へいげい)し真実へ導く御言葉を告げる絶対指導者……という体裁を見せているネイアだが、彼女の持つ凶眼と膨れ上がったカリスマ性がそうさせているだけで、ネイア本人としては同志なのだからもっと気軽に接してほしいと思っている。更に言うならば膨れ上がった自身の虚像をどう取り除くかということも目下の課題だ。

 

「畏まりました。魔導王陛下のご慈悲に甘えないよう粉骨砕身の決意で本年も活動を続ける次第です。」

 

「ええ、良い一年となるようアインズ様への忠義と忠誠を忘れないように。」

 

 ネイアは一人一人に力強い握手を交わし、高官や支部長たちは深い礼をして少しずつ執務室を去り、そしてネイア一人となった。

 

「もう、なんで皆わたしをここまで持ち上げるのかなぁ……。わたしの代わりなんて幾らでもいるのに。」

 

「…………お疲れ。後輩。」

 

「ありがとうござ……シズ先輩!?」

 

「…………代わりは幾らでもいるなんて冗談でもダメ。ネイアは一人しかない。そうだ。あけましておめでとう。」

 

「あ、あけまして?はい、お互い新年を良い年へいたしましょう。それにしてもシズ先輩その恰好はどうしたのですか?」

 

 シズ先輩が身にまとっていたのは恐ろしく上品な一枚の白い厚い布――ところどころに紫や淡い赤色で花の刺繡が施されている――をこれまた豪華で太めのな帯で締めた異国風の服装で、形だけをみれば聖地で出会ったエントマなるメイド悪魔の着ていた服や、聖典(ぐんじしょせき)に記されていた格闘術ジェドーの練習着に似ている。しかしその溢れ出る品性は桁違いで、シズ先輩の持つ美貌も相まって幼い異国の姫君が城下へ降りてきたかのような様相を呈している。

 

「…………これは〝キモノ〟。新年に着る限定アイテム。〝ミコ服〟と迷ったけれどわたしは神官(クレリック)の職業レベルを持っていない。こっちにした。」

 

「キモノ?ミコ……ふく?クレリック?」

 

「…………こっちの話。ナザリ……ネイアの言う〝聖地〟には新年に初めて神様にお祈りをする〝ハツモウデ〟という儀式がある。ネイアの団体がアインズ様の偉大な御手に抱擁されたいならば文化も模倣すべき。大丈夫。ネイアの分の〝キモノ〟も持ってきた。」

 

「わ!いきなり脱がせないでください!自分で着ますから!」

 

「…………〝キモノ〟は着付けが大変。ネイア一人では無理。大人しく先輩に従うべき。」

 

「うううぅぅぅ……。」

 

 ネイアは仕方なく顔を赤く染めながらシズ先輩に〝キモノ〟を着せられる。先輩の言ったように恐ろしく手間のかかる服装であり、確かに一人で着ることはできなかっただろう。色は赤を基調として、ところどころに白で花の刺繍が施されている。まるで小さな鞄のように後ろの帯をとめると、晴れてネイアはシズ先輩と同じ〝キモノ〟衣装となった。

 

「あの……シズ先輩、本当にこんな高価な品わたし如きが着てもいいのですか?もし汚しなんてしたら……。」

 

 ……自分の首だけでは済まないのではないか。いや、むしろ自分が着ることそのものが冒涜ではないか。アインズ様の王城にあったであろう品だ、そんな恐懼の念がネイアを襲う。

 

「…………大丈夫。ネイアのために用意したと報告したらアインズ様も喜ばれていた。」

 

「アインズ様が!?」

 

 シズは不安がるネイアにそう言って親指をビシっと立てた。その言葉の効果は強烈で、ネイアの顔が一気に晴れやかなものとなる。

 

「それは幸甚に存じますシズ先輩!それで、〝ハツモウデ〟とは何処で何をする儀式なのですか!?」

 

「第九階そ……ネイアの言う〝真なる王城〟の一区画へ入室のご許可を頂いた。そこで行う。」

 

「し、真なる王城に!?これから!?待ってくださいシズ先輩!いきなりすぎて何が何だか……。せめて身を清めてから……。」

 

「…………折角ご用意していただいた転移門(ゲート)が消えてしまう。時間をかけるのは防衛面でもよろしくない。早く潜る。」

 

 いつの間にかネイアの眼前には聖地巡礼で何度も使わせていただいた転移魔法の極致、変異した空間である転移門(ゲート)が広がっていた。ネイアはシズ先輩に手を引かれ、その門をくぐる。足を踏み入れた先は石畳であり、石畳の先には不思議な形の門があり、木製でありながら厳乎(げんこ)たる異国風の小屋が立っていた。

 

「ここは……神殿とは違うようですが……。」

 

「…………死獣天朱雀様が御造りになられた場所。人間が作った神殿なんかと一緒にするのは不敬。」

 

 ペロロンチーノ様や博士同様、またもネイアには聞き覚えのない名前が出てきたが、長い付き合いから問うてもシズ先輩が無口になるタイプの話だと判断し、首を縦に振るだけにとどめる。

 

「しかし新年に初めて神様にお祈りするということは、ここにアインズ様が祀られているのですか?」

 

 神といえば当然アインズ様であり、変わることのない不変の摂理だ。しかしアインズ様はアンデッド、不死の王にして地上に顕現する正義。わざわざ真なる王城に祭壇を設けるという意図がわからない。……そこまで考え、アインズ様を崇拝する者の多さを考える。わざわざ新年の挨拶のためひとりひとり謁見していては新しい年が来てしまうだろう。もちろんあの慈悲深いアインズ様であれば嫌な顔はしないだろうが、だからこそこのような場所が必要なのだと納得をする。

 

「…………う~~~んと………うん。そう。」

 

 しかしシズ先輩の喉に何かが閊えたような言葉に違和感を覚える。とはいえそもそもの話この〝ハツモウデ〟自体、アインズ様がシズ先輩を通しわざわざ自分にご用意してくださった儀式。決して信心を穢すものではないだろう。

 

「あの、シズ先輩。」

 

「…………どうした?後輩。」

 

「変なこと聞きますが、シズ先輩の神様とはアインズ様なのですよね?」

 

 元はヤルダバオトに仕えていた眷属メイド悪魔だ。これまでの付き合いからどれほどアインズ様を信仰しているかわかりきっているが、どうしてもこれだけはハッキリシズ先輩の口から聞いておきたかった。

 

「…………そう。アインズ様と……」

 

 そう言ってシズ先輩の無表情は深い悲しみを宿して口を噤んだ。もしその神と崇める一柱がヤルダバオトならば到底許せないことだが、だとすればヤルダバオトが討伐された際あれほど嬉しそうな反応を見せたことの説明がつかない。恐らくシズ先輩が思い浮かべているのは別の神様……それが何者なのか及びもつかない。しかしネイアは不快感を覚えることはなかった。シズ先輩の無表情に浮かぶ悲しい感情はまるで、親からはぐれた幼子のようなものであり、深入りしてはいけない傷を抉った罪悪感にさえ苛まれる。

 

「す、すみません!本当に変な質問をしました!」

 

「…………ううん。かまわない。はいこれ。」

 

「これは……変な銅貨?ですね。綺麗な丸い穴に麦でしょうか。銅貨にしては凝りすぎた意匠に見えますが。」

 

「…………ごえん」

 

「ごえん?」

 

「…………そう、〝ごえん〟。ご縁があるようにあの〝サイセンバコ〟に投げる。そして願いを祈る。」

 

「なるほど、これもシズ先輩の言う〝キカンゲンテーアイテム〟というものですか。」

 

「…………よくわかっている。サイセンバコに五円を投げたら二回礼をして、二回拍手、そのあと手を合わせて礼をする。」

 

「はい!」

 

 チャリンと二枚の硬貨が舞う音が鳴り、パン、パンと柏手を打つ音が響く。そしてしばらくの静寂が空間を支配し……

 

「これで儀式はおわりですか?」

 

「…………うん。これで大丈夫。じゃあネイアの拠点に戻る。」

 

 そして二人は再び転移門(ゲート)を潜り執務室へ帰ってきた。

 

「…………ネイアは何を祈った?」

 

「それはもちろん!アインズ様の御役に立てますようにです!」

 

「…………わたしも同じことを祈った。」

 

「もちろん祈るだけではダメなことは身を以て知っております!行動し強くなるため精進を怠りません!」

 

「…………さすが後輩。えらい。でもわたしは我儘すぎた。3つも祈った。」

 

「3つですか?」

 

「…………もう一つは今年もネイアと元気でいられますようにって。」

 

 ネイアの心臓がひとつ跳ねた気がした。〝自分も同じ願い事をした。〟……そう言えばシズ先輩はどう思うだろう。しかしそれを口に出す勇気はネイアにはなく、再び神であるアインズ様にシズ先輩との出会い、その奇跡に感謝をしていた。




・新年あけましておめでとうございます。今年も稚拙な二次創作をちまちま書いていきますのでよろしくお願いいたします
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