・IF設定が更に独自の進化を遂げた世界を舞台にお送りしております。
・キャラ崩壊注意です。
以上を踏まえた上でお読み下さい。
「ユリ姉、この前セバス様お気にいりの下等種に膝枕をしているのをみたわよ。あんな下等生物でも、栄えあるナザリックに身を置いたのですから甘やかしすぎはどうかと思うのだけれども。」
「ツアレは一生懸命やっているわ、弱音を吐きだすこともしない……いいえ、性格的に出来ないのでしょうね。厳しく指導することも勿論大切だけれども、心が弱っているときは甘えることだって大切なの。」
「自分の膝に下等種の頭が乗るなんて想像するだけで身の毛がよだつわ。本当、理解できないわね。」
「でも膝枕っすかー!いいっすね。今度エンちゃんの前で夫を寝取ってみようっすかね!アッハッハ!」
「わたしは抵抗無いわよ。欲望を丸出しにしている人間を頭から捕食するなんて、想像するだけで面白いじゃない。」
「私もぉ、目の前にお肉ぅ。いいなぁ。」
「そういうことじゃないでしょ、まったくあなたたちは……。」
ユリは妹たちの意見に溜息を吐いた。その様子をチョコレート味を飲みながら無言で眺めていたシズは、自分は何度ネイアに膝枕をしただろうかと数え……数えるのが面倒になったのですぐにやめた。
シズは何度目かそれこそ数える気にならない不思議な心模様に若干の困惑を覚える。自分は光栄にも至高の御方々よりナザリック最終関門の侵入者迎撃という大役を仰せつかった
……だというのに、こんな他愛もない雑談のとき、ふとあの友人の顔が脳裏に浮かぶ。それだけではない、〝いまネイアは何をしているのだろう?〟〝元気なのだろうか?〟〝またいらないことで悩んでいないか?〟そんな【どうでもいいはずのこと】が気になって仕方がないのだ。
「…………うん。先輩なんだから仕方がない。本当に手のかかる後輩。」
シズは自分に言い訳するように小さくそう呟いた。その呟きは口論する他の
お茶会は解散し、各々が自分の仕事に戻っていく中、シズは未だ得体の知れない心模様が拭えずにいた。これからナザリックのギミック点検の仕事がある。ナザリックの一員として手を抜くなんてありえない、ミスが許される仕事ではない。そしてシズは少し思い事をしているというだけでミスをするほど愚か者ではない。
それでも一度気になれば余計なのか、つい考え事をしてしまう。〝このギミック、今のネイアでは突破できない。〟〝そういえばネイアは寒冷地の訓練をしていない。氷河どころか雪原で死ぬ。〟〝開かない扉、ネイアなら自害を選ぶのか、最後まで抵抗するのか。〟
なんだかんだと考えつつもギミック点検を全てミスなく終え、シズは<
「…………アインズ様、ナザリック全階層のギミック点検が終了いたしました。いずれも不備はございません。」
(ご苦労、シズ・デルタ。何分こればかりはシズにしか頼むことができない仕事でな、階層守護者たちもそうだが、各員多忙になっている中、碌に休みも報酬も渡せないことを不甲斐なく思っている。)
「…………ナザリックの一員として当然の責務です。」
(一仕事を終えた直後ですまないが、ローブル聖王のネイア・バラハについて少し聞きたいことがある。1時間後に、わたしの私室まで来てくれるか?)
「…………畏まりました。」
1時間後、シズはアインズの私室の前に立つ。本日のアインズ様当番であるメイドがアポイントをとり、すぐに戻ってきた。
「アインズ様がご許可を出されました。どうぞ、お入りください」
そのまま入室し、シズは絶対支配者であるオーバーロード、アインズの前に跪く。
「…………アインズ様。シズ・デルタ。お呼びとあり参りました。」
「そう改まるなシズ。まぁ椅子に腰かけてくれ。」
「…………ありがとうございます。」
「まずシズよ、これはわたしの私物であり使いどころのないガラクタなのだが、破壊してくれないか?」
「…………御赦しくださいアインズ様。例えご命令であろうと偉大なる御方々の私物を破壊する真似は出来ません。」
「勅命であると言ってもか?」
「…………御赦しください。」
「もしできなければ殺すと言えば?」
「…………どうぞこの命を御身に捧げます。」
「ふむ……やはりフレンドリーファイアが解禁されても、NPCはギルドに不利益な行動は出来ないか。しかし模倣試合で武器を壊すことはできたな。どこに基準があるのか……ふむ、興味深い。おっとすまないシズ、今の命令は忘れてくれ。では質問を変えよう、あのネイア・バラハならばこのガラクタを壊してくれるか?」
「…………恐れながら確定的な情報を申し上げられません。」
「では今聞いてみてくれ。」
「…………畏まりました。」
シズはアインズに許可をとり、<
「…………後輩、今暇?」
(し、シズ先輩!?どこにいるんですか!?)
「…………<
(あ、そうですか。はい、丁度執務室で書類仕事をしていたところです。何のご用件でしょうか?)
「…………ネイアはアインズ様の私物を破壊できる?」
(そんな!恐れ多くて出来るはずがありません!)
「…………それがアインズ様のご命令でも?」
(ええっと……、それならば話は別です。アインズ様が望まれるのでしたら、それは必要な行動。わたくしは躊躇いなく実行いたします。)
「…………わかった、ありがとう。アインズ様、不肖の後輩ネイア・バラハでしたらアインズ様の御手持ちの品を破壊できるそうです。」
「ふむ、シズはその事実をどのように考える。」
「…………若干不愉快ですがアインズ様のご命令であればわたしが思うことなどございません。」
「なるほど、自分では実行できないが、出来る者に対して明確な敵対心を覚えるわけではないと……。いや、これはシズだからという可能性もあるな。まだまだ検証が必要だ。」
シズにはアインズ様が何を思考しているのかはわからない、アルベド様かデミウルゴス様がいればその一端でも嚙み砕いてご説明くださるだろうが、今は御身の御役にたてているという幸福感が胸を支配する。
「ああ、話は変わるがシズ。もう一月ほどバラハ嬢のもとへ行っていないのではないか?寂しくはないか?」
「…………寂しい?いえそのようなことはございません。」
「そうか……。ふむ……。」
アインズ様は目に見えて落胆していた、ローブル聖王国はいずれアインズ様の慈悲深き御手に抱擁されたる大地。ナザリック内の業務ばかりに注力し、任されていたローブル聖王国の偵察・指導業務を一月も怠ってしまった。おそらくその事実に失望されているのだろう。シズの内心が一気に曇る。
「ええと……、次はいつ行く予定かな?もし別の業務で忙しいというのならばわたしが日程を調整するぞ?」
「…………失望を挽回する契機を頂き光栄に思います。明後日には時間を作ることができます。」
「そうか!それは喜ばしい!そうだ、これはこの前土産にくれた手作りクッキーの御礼だ。是非バラハ嬢に渡してくれ。」
そういってアインズは木の実のように宝石の拵えられた光輝く木の枝を取り出した。
「…………いえ、あのような稚拙な焼き菓子にお礼を頂くなど不敬の極みにございます。とても受け取れません。」
その後シズとアインズの押し問答は続いたが、シズが固辞したためアインスはしぶしぶ木の枝を引っ込めた。シズはアインズに再び跪いて私室を後にする。先ほどまで苛まれていた不思議な心模様は晴天のように澄み切っていた。その代わりに、あの手のかかる後輩に何をしてあげよう。どうすれば喜ぶだろう。あの可愛くはないが味のある笑顔を追想しつつ、シズはそんなことを考えていた。
・クッキー作る話は別の蛇足参照です。読まなくても大丈夫ですが。
・ネイアちゃんの登場が少なかったので次はもっとシズ先輩とネイアちゃんの掛け合いを書きたいです。