アークザラッドの短編小説です。
普通のハンターが宝石強盗団からお店を守るお話です。

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※最初に····
主はアーク2未プレイです。が、色々調べて書いたので大丈夫だと思います。
無理な方はブラウザバックお願いします。
それでも良いという方はよろしくお願いしますm(_ _)m


アークザラッド短編 普通のハンターの俺が宝石強盗を追っ払うだけの話

アークザラッド短編

 

普通のハンターの俺が宝石強盗を追っ払うだけの話

 

────────────────────

 

朝。

窓から差し込む陽光で彼は目覚めた。

身体を起き上がらせ、大きく背伸びをし、自身を覚醒させていく。

一つ呻き声を上げて、彼はベットから降りた。

欠伸をしながら服を着替え、顔を洗い本格的に意識を覚ました。

 

「行ってきます」

 

誰もいない部屋に投げかけ、彼は鍵を閉める。

それが彼の日課であり、ルーティーンとなりつつある行為だ。

アパート二階の一室を借りている彼は、階段を降りエントランスから外へ出る。

 

そこに広がっていたのはありきたりな市街地。

しかし、この世界の技術力ではとても進んだ風景だ。

ここは東アルディアのインディゴス。

鉄とコンクリートの街を彼は歩いていく。

 

彼が目指している場所は、インディゴスハンターズギルドだ。

ここには様々な依頼人が後を絶たない。

そして、彼は依頼者ではなくハンターの側だ。

 

その証拠に、彼の格好は白い外套を着込み、その下にある二本のナイフがかちゃりと音を立てている。

ナイフの音が止んだ。

それと同時に目の前を見れば、いつの間にかギルドに着いていた。

 

見慣れた戸をくぐり、入口の目の前にあるギルドカウンターに顔を出した。

カウンターにはいつもの中年男性がいる。

男は白い外套の彼の顔を見て少し目を開くと口を開いた。

 

「おう、お前さんか」

「お前さんだよ。で、依頼は何かないのか?」

「依頼なら····」

 

手元にある様々な依頼が書かれた紙をめくり始める。

その中の一つに惹き付けられたのか、彼の前に出してきた。

 

「ここら辺に宝石店があるだろ?」

「あるな」

「あそこに犯行予告があったらしい、それを何とかしてきて欲しい」

「なるほどな。報酬は?」

「1000Gだ。」

「····安すぎないか?」

「冗談だ」

 

小さく舌打ちしつつ、青年は親父から依頼用紙をもぎ取り、詳細情報を見る。

銀行強盗の正体までは書かれていなかったが、例え人でも化け物でも依頼を受けるのみ。

報酬は0が一桁多かった。

 

用紙を受付に返すと、彼はギルドの手配書が貼られたほうへ歩いていく。

これも毎日の日課の一つ。

手配モンスターの姿や特徴が書かれたそれは、ハンター稼業をしている中で自身の名を上げるに良いターゲットであり、懸賞金まで出る云わば一石二鳥の対象である。

順に見ていこう。

 

スライム族のアジュ。

ゾンビ族のシャムス。

メイジ族のホイスラー。

ドール族のドクスン。

謎のモンスター、ジーン。

そして、精霊魔法を使う男、アーク。

 

アークの懸賞金はこの中でも群を抜いており、幾つもの0が並んでいる。

とてつもない額であるアークの手配書。

彼は他にもドール族ドクスンの手配書に少し興味を持った。

 

ドクスンの手配書に書いてある詳細や姿を良く見る。

見てから小さく頷くと、彼は仕事場であるインディゴス宝石店へと向かった。

 

──────────────────

 

「あなたが、ギルドが寄越したハンターなのね?」

「あぁ、そうだが」

 

インディゴス宝石店。

高価そうなスーツに身を包んだ客が、売られている宝石をじっくりと眺めている中で、受付近くの白い外套と青いスーツは一際目立っていた。

 

白い外套はハンターで青いスーツの女性は依頼人だ。

女性はハンターのことを侮蔑の目を含みながら、淡々と言う。

 

「じゃあ、さっそく今夜からお願いするわ」

 

ハンターはこのご時世では荒くれ者の集団と認識されており、危険から距離が遠い一般人からはあまり良い顔はされない。

散々投げかけられ慣れた視線を流して、一つ頷いた。

 

夜まで時間がある。

ハンターは白い外套を翻すと一度アパートの方へと帰ることにした。

自宅には持ってきていない装備があるからだ。

 

「また夜に行く」

「わかったわ」

 

軽くやり取りをすると彼は歩き出した。

装備の他にも薬草なども買い足そうと思い出したから。

白い外套は道行く人に印象深く残った。

 

──────────────────

 

深夜。

大きな爆発音と共に壁が破壊され、瓦礫が舞った。

壁にはぽっかりとした大穴が作られ、そこから一つの影が現れた。

 

ボロボロのコート、伸びた髭。

普通の人間に見えるそれは、手の先に人形を使役しているドールマスターと呼ばれるモンスターである。

 

「今夜もいただきだぜ」

 

小物の悪役にありそうなセリフを堂々と吐き、宝石店内に入ってきたのはギルドが手配しているモンスター、ドクスンだ。

ドクスンは穴の方に野郎共、と呼びかけると自身が使役しているスタンゴーレムを数体呼び出す。

 

スタンゴーレムは宝石店の端っこのガラスケースの前に陣取ると、ドクスンの一声で同時にケースを壊し宝石を奪い始めた。

その様子をしばらく見ていた彼は、ようやく宝石店の中へと入っていた。

 

「まさか、モンスターが宝石を盗むなんてなぁ····」

「ゲッ!!ハンターか!」

 

驚いた様子のドクスンが視界に入れたのは、一人の男。

白い外套を羽織り、ダガーを右手で遊んでいる者だ。

白い外套の男は続ける。

 

「世も世紀末だなこれは····ま、宝石置いてくれたら見逃すけど」

 

ハンターの降伏勧告。

しかしドクスンはそれを無視して、ありったけの声で泥人形達に命令した。

 

「相手にするな、盗るもん盗ってずらかるぞ!」

「させねぇよ」

 

白い外套が揺れ左手にもダガーが握られる。

ドクスンはペパットを少し操作し、調子を見るとハンターに向かって突撃した。

ハンターの方もダガーを逆手に持ち、体勢を低くし忍者の如く奔る。

 

ぶつかり合うダガーとパペットの刃。

赤い火花が散り、白い影はドクスンに弾き飛ばされた。

 

滞空時間、その間に彼は左手のダガーを投げ左右の太ももに装着しているホルスターから、化学の武器ハンドガンを取り出す。

 

ダガーは見事ドクスンの方へと飛んでいったが、本体に当たる前に人形の刃に阻まれ、甲高い音と共に別の方向へと飛んでいった。

 

着地、店のカーペットとの摩擦熱が足裏に伝わり彼は顔を歪めたが、それも一瞬のこと。

左手に握られたハンドガンのトリガーを引きすぐさまに追撃。

 

ドクスンの羽織るコートに小さな穴を穿つが、本体に傷がついたような雰囲気はなく、再び距離が空いた両者は仕切り直す。

 

「宝石ヲテニイレマシタ」

 

ガラスケースを壊し、宝石を徐々に奪っていっているスタンゴーレム。

その機械的な音声を聞き、ハンターに少しだけ焦りの色が見え始めた。

 

戦闘が長引けば長引くほど、ゴーレムが宝石を回収し店の損害が大きくなる。

また、ドクスン達に逃げられたらこの依頼は元も子も無くなる。

短期決戦で挑まなければ仕事は失敗する。

 

ハンターが考えたのは、親玉、つまりゴーレムの主であるドクスンを叩き一気に決着をつけることだった。

だが、こちらは手数はあるものの、火力の低さが足を引きずりそれも難しい。

 

脳で回る思考と体に巡る焦燥。

それを突くかのように、ドクスンはハンターに襲いかかる。

パペットのナイフを持ち替えたダガーで捌きながらハンターは打開策を考えた。

 

「おいおい、デカい口叩いといてその程度かぁ?ハンター様よぉ!」

「くっ····」

 

ドクスンは口を歪め、嗤いながらパペットを操る。

何度も咲いた火花、ドクスンの攻撃から離れる為ハンターはダガーを投合。

投げられたダガーの驚異を捨てられないドクスンはまたそれを弾く。

 

ハンターは再びドクスンこら距離を置いた。

しかし、この場にはドクスン以外の驚異がいることをハンターは忘れていた。

突如背中から衝撃が襲いかかり、ハンターは地面を転がる。

 

攻撃された。

脳がそう認識した次の瞬間には、自分が元いた場所を見る。

そこには宝石を回収していたはずのスタンゴーレムが棍棒を持ち立っていたのだ。

 

「くそ····ゴーレムか」

「はははは、これで終わりだなぁハンター!」

 

背面からの攻撃でモロに受けたハンターは立ち上がろうとしても力が入らない。

ドクスンの方を見てみれば、徐々にこちらに接近してきている。

 

殺される。

ハンターではよくある事だ。

彼の周りのハンターにも、共に仕事をした者がいつの間にか亡くなっていたりしていた。

魔物が蔓延るこの世界ではよくある事だ。

 

そんな厳しい世界だからこそ、彼は英雄(ヒーロー)になりたかった。

誰かに手を差し伸べられる、英雄になりたかった。

小さな英雄になりたかった。

 

確かにハンターという職業は安定もなく、荒くれ者も多く危険が付きまとっている。

だが、人と関わり誰かを笑顔にできるハンターという職に彼が目をつけたのは必然であった。

 

彼は普通の人間であり、ハンターの中でも中流。

モンスターとも戦ったこともあるが、人の知識を保ったモンスター、彼は知らないこの世の裏で造られた悪意の産物、キメラとはこれが初遭遇であった。

 

イレギュラーとの遭遇で命を落とす。

これもハンターによくある事だ。

彼は死んでいくという自分の運命を覚受け入れ、目をつむろうとした。

そんな時だった。

 

───違う。英雄はこんなところで諦めないよ

 

彼の中に響いた自分自身の声。

幼少期の自分の声が脳から消えると、ハンターは痛む体に鞭を打ち、ゆっくりと立ち上がった。

 

自分に何が出来るか分からない。

けれども、最後の最後まで足掻きたい。

そう思ったから、彼は立ち上がれた。

 

一方、立ち上がる白い外套に、ドクスンは恐怖を感じた。

普通の人間ならばここで諦めるだろう。

いや、彼も少し前まで諦めていた。

しかし、今の彼にはその様子が一切ない。

 

彼はダガー地面に捨て、代わりに両足のホルスターからハンドガンを取り出した。

 

「うぉぉおおお!!」

 

彼は叫びながら両手に構えられたそれの銃爪(ひきがね)を、引いた。

放たれる弾丸、ドクスンはそれに臆することも無く受ける。

たまに変な方向へと飛ぶ銃弾もあったが、自身に被害がない弾にドクスンは興味を抱かなかった。

 

銃爪を引く。

銃爪を引く。

幾度も発砲され、ドクスンのコートに幾つもの小さな穴が空く。

 

しかし、それも長くは続かない。

ハンドガンの弾が切れ、訪れた静寂。

動けない彼の唯一の攻撃手段が無くなったことを、乾いた銃爪の音が知らせた。

ドクスンは口を歪めると、腹を抱えて笑いだした。

 

「そうかそうか、これがハンター様の最後のショーっていうわけかぁ」

「····くっ」

 

彼は呻くと、地面へと引かれ再び倒れ伏す。

ダガーを振るう力などもう無い。

危険が無いことが分かったドクスンは悪意に満ちた表情を浮かべながら、トドメにパペットの刃を突き立てようと糸を動かした。

 

しかし、パペットは反応しなかった。

ふとドクスンが手元の糸を見てみれば、パペットから切れ、焼け焦げて黒くなった糸が手元に握られていたのだ。

 

ハンターは先程のハンドガンで、ドクスン本体を狙っていると気を逸らさせ、もう一丁のハンドガンで糸を切る事を試みていたのだ。

そして、その作戦は見事に成功。

彼は一矢報いたのだ。

 

「小細工を!」

 

怒り心頭になったドクスンは糸を捨て、白い外套の首を絞めようと近づこうとした。

その瞬間、ハンターの声ともドクスンの声とも違う、第三者の声が宝石店に響いた。

 

「炎の嵐よ、全てを飲み込め!」

 

まだ声変わりしていない、幼さを残したその声は宝石店内に炎の風をもたらす。

熱風はドクスンに火傷を負わせ、周りに集っていたスタンゴーレムを燃やし尽くし、灰に変えた。

 

この世界には魔法という概念がある。

世界に降臨している精霊の寵愛を受けた者が行使できる圧倒的な力。

目の前で吹き荒れる魔法の名は『ファイヤーストーム』。

 

動かない身体で必死に前を見れば、黒い影がドクスンの周りで踊ると霧散したかのように消えた。

目まぐるしく変わる状況。

助けが来たと脳が理解した時、背中から声がかけられた。

 

「大丈夫ですか?」

 

彼はうつ伏せから仰向けにされ、声の主の顔を見た。

金糸の髪が揺れて、パッチリとした青い瞳がこちらを見ている。

民族衣装のような服は、少女に良く似合っていた。

 

「ひどい傷····」

 

そう言って彼女は、手を前に掲げる。

仄かな光がそれに宿り、彼女は小さく呟いた。

 

「キュア」

 

回復魔法キュア。

魔法は破壊以外に癒しをももたらす。

背中の痛みや、ドクスンとの戦闘でついた切り傷がみるみるうちに無くなっていった。

 

そして、その隣から緑の外套が躍り出て、ドクスンが動き出す前に、胸を槍で貫く少年がいた。

 

赤い鉢巻、逆立った髪の毛、幼さの残る顔付き。

彼は英雄の後ろ姿を見た気がした。

それと同時に、男は呟いていた。

 

「炎の、エルク····」

 

彼の視線に気づいたのか、炎を宿らせたその瞳は白い外套を映す。

ドクスンは赤い鉢巻の後ろで灰となって消えていた。

 

──────────────────

 

結論から言うと宝石店はガラスケースを割られた他に損害はなかった。

彼は受付の男からそう聞き、安堵のため息をついたのと同時に、彼は受付の男に言った。

 

「今回の報酬全てを炎のエルク達に与えてくれ、あとドクスンの討伐報酬全部と」

「何故そんなことを?」

「俺は何も出来なかったし、何よりアイツらに命を救ってもらったからな」

「·······」

「ところで、何故炎のエルク達が宝石店に来たんだ?」

 

白い外套の男は思い出したかのように受付の男に聞いた。

彼からはこう返ってきた。

 

「彼等も同じ依頼を受けたんだ」

「·······」

「一人じゃ明らかに戦力差があると思ったからな」

「それだったら何か言ってくれれば····」

「まぁ、報酬は受け取っておけ。あとドクスンの討伐報酬はエルク達が貰っていったから安心しろ」

「····ありがとう」

 

彼は報酬一万Gを受け取ると、受付の男に聞いた。

 

「ほかの仕事は無いのか?」

 

こうして、新たな一日が始まろうとしていた。




あとがき

どうもこんにちは。
初めましての人は初めまして。
いつも見てくださる方はありがとうございます。
赤い彗星です。

今回はあの伝説的なRPG、『アークザラッド』の小説を書いてみましたが、どうでしたか?
自分的には初めてのことが多く途中で力尽きてるのが丸見えですねハイ。

今回のお話ではゲーム内で実際にあるギルド仕事、インディゴス宝石強盗団を参考にしたものです。
個人的には上手くいったんじゃないかなぁと思います。
主人公の名前を敢えて決めなかったのも個人的には満足していますが、好き嫌いあるかもしれませんのでそこは御容赦。

最初に書いた通り僕は2未プレイです。
ですが、このクエストの動画を見て何となく思いついたので情熱に任せて書いてみました。
あと他所様の血溜まりのクドーの影響はデカいですね。

因みに1は現在進行形で取り掛からせて貰ってますが、如何せん時間がねぇ····
冬休み辺りに頑張ろうかな。
コンバートデータ作るの難しいですが、頑張りたいです。

またもしかしたら彼のお話を書くかもしれないので、その時はよろしくお願いしますm(_ _)m
それでは((ヾ(・д・。)フリフリ


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