よろしくお願いします。
トントントン、と小気味よい音が響く。晩ご飯の味噌汁の具を切っているのだ。今日のメインは焼き魚だ。副菜は何にしようかなー、なんて考えながら手を動かしていく。
あたしの名前は
といっても、世間から思われてるほど華やかではないけどね。
「ん、ご飯が炊けた」
そんなあたしは猛勉強のおかげでなんとか第一志望の国立大学に合格して通っている。お母さんたちは私立大学でもいいって言ってくれてたけど、あんまりお金で迷惑かけたくなかったからちょっとした親孝行にでもなればいいな、なんて。まあ、実家を出てるから結果的には変わらないかもしれないけど。こっちに引っ越すときに妹が
「お姉ちゃんと一緒に行く」
なんて言い出したのはちょっとした思い出だ。最近は実家に帰ってないから、近いうちに顔出しに行こうかな。
「野菜は… 余ってた漬物でいっか」
確かにあたしが大学に入学する時、あたしは実家を出た。でも実を言うと一人暮らしというわけではない。ルームシェアをしているのだ。誰とかと言うと… お、ちょうど帰ってきた!
「ただいま〜。はぁ、今日も疲れた...」
「おかえり、 今日もお疲れ様。もうすぐ晩御飯できるからちょっと待ってて」
「はーい。この匂いは・・・焼き魚だな?テンション上がるわー」
「正解。流石、和食大好きなだけあるね」
「まあな!和食を食べ続けてきた私の舌は伊達じゃねーぜ!」
意気揚々と手を洗いに行く市ヶ谷さん。普段はツインテールの髪はバイトのために後ろで一つにまとめられている。本人曰く、仕事モードのスイッチなんだとか。どちらの髪型も似合っていると思う。どんな髪型でもかわいい女、市ヶ谷有咲。こんな美少女が親友であることがちょっとした私の誇りだったりする。
さあ、焼き魚もできたし、晩御飯にしますか。
◇◇◇◇
「「ご馳走さまでした」」
「今日も美味かったー!流石奥沢さんだな!」
「お褒めに預かり光栄です」
こんなやりとりをして台所に向かうあたしと市ヶ谷さん。
あたしたちはお互いの仕送りとバイトの収入で生活費をやりくりしているから、バイトが夜までになる事も少なくない。そのため料理当番は日によって変わるけど、片付けと食器洗いは一緒にやるのが常となっている。
「そういえばさ、市ヶ谷さん明日オフだよね?」
「そうだけど・・・どうした?」
「明日さ、あたしもオフなんだよね。だからさ、二人でどこか出かけない?」
「それいいな!じゃあショッピングモール行かね?最近行けてなかったからさ〜」
「賛成!あたしも見たいもの沢山あるし、たまには外食もしたいし」
「それなー。昼は毎食弁当だからなー、たまには贅沢してもいいよな」
「それじゃあ明日はショッピングと外食で決まりだね」
「楽しみだな〜!今夜はネットサーフィンもほどほどにして早く寝よ」
「いやいつももう少し抑えようね?」
市ヶ谷さんとショッピングなんていつぶりだろう。とにかく、明日を楽しむためにあたしも今日は早めに寝なきゃね。
◇◇◇◇
「いやー、いつ見てもでっけえな…」
「ホントにね、久しぶりだから余計に大きく見える」
「どこから見ようか?」
「んー、市ヶ谷さんが行きたいところ」
「オッケー、じゃあまずは服屋だな」
「このワンピース、市ヶ谷さんに似合いそう」
あたしはそう言って花柄のワンピースを手に取る。なんというか、これを着た市ヶ谷さんはさぞ清楚な美人だろう。そう思って向こうでスカートを見ている彼女に声を掛ける。
「ねーこれ市ヶ谷さんにぴったりじゃない?」
「どれどれー、え、い、いや、私にはそんな可愛いの似合わないし…」
「まーたそんな事言って、市ヶ谷さんは可愛いんだから自信持って」
「ちょまま、だからそんな事ないって!」
「はいはい分かったからこれ着てみなさい」
市ヶ谷さんを無理矢理試着室に押し込む。まったく、なんでそんなに容姿に自信がないんだろうか…
「ど、どうだ…?」
自信なさげにカーテンを開ける市ヶ谷さん。
「うわヤバ、めっちゃ可愛い…」
「だー!可愛いっていうなー!」
「なんでさ、すごく似合ってるよ!」
「ほ、本当に似合ってる…?」
「本当だって。あたしが保証するって」
「じ、じゃあ買っちゃおうかな…」
「あたしが買ってあげるよ、いっつもお世話になってるし」
「え、でも」
「いいの、これはプレゼント」
「じゃあお言葉に甘えようかな、ありがとな」
「どういたしまして」
ま、たまにはこうやってカッコつけてもいいよね?
「次は奥沢さんの雑貨屋だな」
「うん。小物のインテリアが欲しいなー、って」
「たしかに、ウチらの家って物が少なすぎるよな。なんつーか、殺風景」
「そ、だからそろそろ買ってもいいんじゃないかな」
何故家に物が無いかと言うと、単純にお互いのバイト代を貯金に全振りしていたからだ。特に買いたい物があったとかじゃなくて、大学生活でどれだけお金がかかるか分からなかったから倹約してただけなんだけど、気づいたら最低限のものしかない家になってたっていう。
「これとかどう?」
雑貨屋に着いてすぐ、そう言って市ヶ谷さんが手に取ったのは、木目調の動物のオブジェクト二つ。
「ネコとクマ?」
「そう」
「いいね、買おうか」
あたしと市ヶ谷さんはお互い違うバンドを組んでいるだけど、片やバンドの衣装でネコの格好をした人、片やクマの着ぐるみを着てバンド活動に励む人のあたし達と妙にマッチしてる気がした。
その後取り留めの無い話をしながら店内を見て回るうちに、市ヶ谷さんが盆栽をしているのを思い出した。なんか、インテリアに緑があるっていいよね。そんなことを思っていると、ふとあるものが目に留まった。
「あ、これいいかも」
「サボテン?水やりもちょっとでいいし、いいーんじゃね?」
「だね」
サボテンは購入決定っと。カゴの中のネコとクマの隣に、あたしの手によってサボテンが召喚された。さあ、まだまだ小物を見ていきますよー。
この後トレイとか木製のオブジェとか色々買った。久しぶりの散財でちょっとスッキリした気分だ。
「そろそろいい時間だし、昼にしないか?」
「そうしよっか。どのお店にする?」
「このお店とかどうだ?」
「どれどれ、へぇー、パスタの専門店なんて入ってるんだ」
「なんか評判も良いみたいだし、ここにしようぜ」
「そうしよっか」
市ヶ谷さんに連れてこられたパスタ専門店は昼の情報番組で紹介されてそうな感じのお洒落な雰囲気だ。というか実際にテレビで紹介されたらしい。壁には名前に聞き覚えのある芸能人のサインがいくつか掛けられている。これは期待して良さそうだ。
「こーゆー店ってあんまり来ないから、なんつーか、落ち着かねーな…」
「たしかに。いつもなら外食といえばファミレス一択だし」
ちなみにあたしはファミレス大好き人間だ。好きな食べ物は?と聞かれたらファミレスのメニューと即答する自信がある。
「さて、何を食べようか…」
店員さんに案内された席に座ってメニューを広げる。専門店というだけあって、多種多様なパスタの写真が並んでいる。
「ん〜、私は明太子パスタで」
「じゃあ、あたしはカルボナーラにしようかな」
店員さんを呼んで注目をし終え、他愛もない会話をするあたしたち。
大学の課題がどうだ、とか、お互いのバンドの話とか、話題はつまらないものばかりだけど、こうやってただ駄弁っている時間は何物にも変えがたい楽しさを感じる。
そうこうしているうちに料理が運ばれてきた。
「うわ、どっちも美味そーだな」
「だね。あとでそっちも一口ちょうだいよ、一口あげるから」
「もっちろん」
運ばれてきたカルボナーラは想像以上に美味しかった。ファミレスのやつよりもだ。まあ、当たり前かもしれないけど。市ヶ谷さんの明太子パスタもすごく美味しかった。売れてる店ってやっぱ美味しいんだな、この世の真理を一つ知った気がした。売れる店は美味しい。感動のあまり2人揃ってデザートも注文してしまった。出費が増えるけど、これは仕方ない。
「この後はどうしよっか」
あたしはモンブランを頬張りながら、ティラミスに夢中な市ヶ谷さんに問う。
「荷物もあるし、帰るか?小物も飾りたいだろうし」
「たしかにそうだね。この荷物を持ってどこか見て回るのもちょっとキツいし、今日は撤収するとしますか」
「はーい」
お互い目的は達成したし、こんな美味しいものも食べれたし、今日はとても満足だ。さ、家帰ったら飾りつけ頑張ろーっと。でもその前に、このモンブランをちゃんと味わわなきゃ。
◇◇◇◇
「「ご馳走さまでした」」
時は変わって夕食後。2人で台所に立って食器洗いの最中だ。
「それにしても、物があったらちょっとはマシになるもんなんだな」
「今までの殺風景が嘘みたいだよ」
今日買ってきた小物類は帰宅後すぐに飾られた。ただ小物を配置しただけでここまで変わるとは…。ちなみにサボテンは市ヶ谷さんの盆栽のとなりに置いた。
「それにしても、今日は楽しかったよ。ありがとね、市ヶ谷さん。あたしの我儘に付き合ってもらっちゃって」
「いやいや、こちらこそありがとう。今日はめっちゃ楽しかったよ」
今日は楽しかったなー。カルボナーラも美味しかったし、市ヶ谷さん様様だね。いやー、楽しかった。明日からまた大学だけど、なんか頑張れる気がするよ。
頑張れ、
ここまで読んでいただきありがとうございました。
執筆ってすごい難しいなー、文章浮かばねーって思いながら書いてました。4か月くらい。
僕はただみさありを広めたかっただけなのですが、自分の力不足のせいでよくわからないものができてしまいました。この駄作でみさありを認知して頂けると幸いです。では、最後に一言。
美咲、誕生日おめでとう!