夏イベントの最後の美味しい所?だけ短めですが小説化してみました。
だが適当な作戦は留まることを知らず、イタリア駆逐艦を下げてと地上攻撃可能な駆逐艦を第1艦隊に入れるという他の鎮守府でやっていたことを真似ただけの戦略?だった。
駆逐艦寮を探し回る青い目の少女…夏の終わりが近かった。
「何でこんなことになってるんだっけ…」
――イタリア アンツィオ沖 第1機動部隊5番艦に配属した
配属が決定したのは急な事だった、聞きなれないイントネーションで自分の名を呼ぶ艦娘、イタリア艦マエストラーレ。初めて見る娘だった。
(日本語…通じるかしら)
及び腰になりながらも異艦娘コミュニケーションを試みようとする霞だったが
「えっと、こーたいして欲しいです!えっと、だから、ちぇ、チェンジ!」
穢れの無い瞳を輝かせながら早口で捲し立てられてしまい、何を言おうとしてたのかすっかり忘れてしまっていた。
で、連合艦隊か…なんで今更出番が回ってくるかなぁ、相変わらず計画性のない司令官、備えよ常にって基本でしょうに。
愚痴を零しながらもしっかり作戦に参加するあたり軍人っていうか艦娘なんだなあ、我ながら人と兵器その中間の生物であることを改めて実感する。
(恐怖とかそういう感情すら芽生えないもんね。まあその分待遇は良い…気がするけど)
霞は作戦終了後の打ち上げが好きだった。一週間どころか一か月程お祭り騒ぎが続くので予算も報酬も吹っ飛んでしまうが戦闘に参加するしない関係なしに騒ぎまくるので平等感があって良かった行事だった。
その分他の鎮守府に比べて備蓄や準備期間に遅れが生じてしまうのが欠点だったが。
でも…と霞は思う。他国の艦娘が増えたとは言えここまでロコツな編成はあまり例がない。
空母機動艦隊編成だが日本艦はわずかに3隻だけとなっている。
霞の所属する第1艦隊は、旗艦ネルソン、2番艦イントレピッド、3番艦コマンダン・テスト、4番艦サラトガMark2、5番艦自分。霞改二、そして6番艦…、と右舷を視認すると
なんかお酒臭い・・・
6番艦ZARA系重巡ポーラが昼間っからワインを煽っていた。
「飲まなきゃやってられないですね~」
高級そうなワインをラッパ飲みしながら器用に航行するポーラ、彼女が何故か背負っている袋にはまだ何本かワインがストックされているようだった。
(アンタ何時も飲んでるでしょうが)霞はそう思うだけで口には出さなかった。一応重巡だし他国の艦だし国際問題になるかも?何より関わり合いになりたくなかった。
打ち上げの時も酔っ払いの世話は面倒で仕方なかった。しかもそういう面倒ごとは駆逐艦が担当することが多かったので余計に嫌気がしていた。
「せっかくなので霞ちゃんも飲みませんか~、うへへ」
余計なことを考えているうちに何時の間にかポーラがクダをまきながら絡んできていた。
アルコール臭がキツくて顔を直視するのは困難な状況だった。
「…臭いから離れてくれませんか?」霞は鼻を摘みながらポーラにストレートに抗議した。
この手の輩は直接言ったほうが理解しやすい、先の宴会での経験からくる対応策だった。
だがこの艦娘には効果がなかった。気にすることなく霞に絡みついて無理やり口にワインを入れようとしてくるポーラ。(格闘ゲームの投げ技じゃあるまいし!頭までワイン漬けになってるんじゃないのこの人?)かなりマニアックで陽気な妄想をしてしまう霞だがこのままだと飲酒航行なってしまうことを危惧した。
すると耳元に発砲音が響き近くに水柱が上がった!さすがのポーラも咄嗟に霞から離れ回避運動をとる。まさか敵襲!?
だが発砲してきたのは第2艦隊3番艦ザラ、ポーラの姉だった。
「ポーラまた呑んでるでしょう!呑んだら乗るな、呑むなら乗るな!ニッポンの格言を忘れたの!?」
格言とは些か大げさな気がしたが霞はツッコまなかった。むしろ先ほどの砲撃(多分空砲だろうが)のほうがツッコミ所が大きかったように思える。
「あはは~。ザラ姉さま鬼コワイ~」
ポーラはようやく隊列に戻って行ったが去り際に霞にウィンクしていった。また後でということなんだろうか?霞は戦闘前なのに若干怖気づいてしまっていた。
色々なやり取りというかじゃれ合いがあったが戦闘海域に突入すると皆顔つきが変わっていた。各々の技量を発揮して進軍してゆく。
空襲を避け、待ち伏せている潜水艦を味方の航空隊と共に退ける。ここまでは順調だったが続く敵機動部隊との交戦で霞が被弾してしまう、直撃こそは避けられたが中破だった。
「くっ、冗談じゃないったら!何のために配属になったのよっ!」
悔しさと恥ずかしさがないまぜになった叫びだった。
その後の戦闘はなんとか切り抜けることができ、結局霞以外は皆かすり傷程度で済んで最終ターゲットまで到達することが出来た。
霞は自身の迂闊さを悔やんでいた。(やっぱり”乙兵装”にするべきだったかも。そもそも第1艦隊に駆逐艦がいるほうがおかしいのよ!采配がおかしいんだわ!そもそもなんで水着なのよ!みんな何時もの艤装じゃない!あ、あのサムなんとかって娘も水着ね…しかも浮き輪付きで…そういえば麦わら帽子被ってるのも居たわね…恰好は関係ないか…私がただ弱いだけなんだ…)
旗艦ネルソンは落ち込んでいる霞を一瞥したが、ただ作戦の指示を出すだけにした。
「これから敵艦隊にNelson Touchを仕掛ける!Commandant Teste!カスミ!準備は良いか!?」
「Oui! 了解しました。チャッチャトカタヅケチャイマショー」
「………」
霞は黙っていた。
「ニッポンにはサンボンの矢という諺があるではないか。お前はその矢なのだカスミ。3つのパワーと一つの
どうやらこの戦艦は割と良くありがちな偏った日本の知識を学んでしまったようだ。
霞にはその励まし?だけで十分だった。ここまで来たのだ今更逃げ出したって意味はない。何よりトライ&エラーを繰り返してルートを開拓してきた仲間がいるのだ。一介の駆逐艦であるが何よりチームの一員なのだ皆と共に笑って母港に還りたい!
「さ、Thanks! Nelson! もう迷わないわ!」
たどたどしい英単語で霞は答える、闘志は少し戻ってきていた。
だが妙に中破した箇所が痛みだす。体が耐えられないのだろうか?
良く見るとポーラが破損個所にワインを掛けているではないか。
「痛いじゃない何してるの!」霞は悲鳴をあげてしまう。
「こうすると治るときがあるんですよ~。ロシアの艦娘におしえてもらいました~」
そんな泊地修理聞いたことない。ザラは恥ずかしくなった。
「景気づけには面白いかもしれん、ラム酒も掛けてみよう」 どこからともなくラム酒と取り出すネルソン。
「そんなことは後でも良いでしょ!今は目の前の敵に全力あるのみよ!」
これ以上変なことをされたらマジで大破しちゃう、霞は全力で拒否した。
「ふむ、そうだな。では全艦突撃体制、フロントミッションだ!」
”前方警戒陣形”ってそれで通じてるのかしら…緊張感からか霞はここにきてどうでもいいことが気になってしまう、現実逃避しているのかもしれない。
「I Fire!」ネルソンが雄たけびを上げる!敵侵攻部隊との決戦が始まった!…
―――――――――――――――
―――――――――――
――――――
――――
――
―
執務室ではモニターを眺めている一人の男が居た。
男はこの鎮守府の提督、モニターには動画が映し出されていた。
内容は…あるゲーム運営会社のライヴ映像だった、チャットには運営や動画の内容に対する批判的は意見が多めに書き込まれているように見える。
男もそれを楽しんでみているようだった。
こんこん
執務室がノックされるが男は動画に夢中で気が付いていない。
こんこんこん
再度ノックされた上に1回多いのだがそれでも気が付かない。
今度はノックされることもなくバァーンと音を立てて開ききった。
その衝撃が空気の波となって提督の体を揺らすほどだった。
「いるんなら返事ぐらい返しなさいよこのク…じゃなくて司令官!」
霞はすんでのところで暴言を押しとどめることが出来た。
何事かと思ったが戦果報告に来たようだ。だがそれにしては帰りが早すぎる提督は訝しんだ。
そうか途中撤退したんだろう、提督はまたかと思った。それでも轟沈報告じゃないだけまだマシだ、次に繋げればいいだけなのだから。
「ほらこれが欲しかったんでしょう?」霞が提督机の上に見た目以上に重い勲章を置いた、甲勲章だった。
「後、ほら入って。大丈夫、何かされそうになったら遠慮なくぶっ放していいから」
何かとても酷いことを言われた気がしたが入ってきた少女を見てまた驚くことになった。
――J級駆逐艦Janus やっと理解が出来た、作戦が終了したのだ。
だがやはり提督には疑問があった。なぜこんなに早い帰還なのだろう。友軍は?夜戦は?
するとややあきれたように霞が言った。
「友軍も夜戦もないわ。だって昼戦で終わったもの」
提督は返す言葉を持っていなかった。今回は経費削減のため支援艦隊を出さなかったのだ。(ようするに面倒くさかった)
しかも今回の出撃もダメだろうと思いそのことをすっかり忘れて動画を見入っていたのだった。
「ふむ、こんなそうそう起こるものではないぞ。ラッキーだったな Admiral」
得意げに鼻を鳴らすネルソン、真のビッグセブンはこのネルソン等とドヤ顔で艦娘に話し続けていた。
喜びを分かち合う艦娘に対し提督はバツの悪そうな顔で冷や汗をかきながら愛想笑いを浮かべることしか出来なかった。
それを見た霞はなんだか嫌な予感がした。だから思い切って聞いてみた。
「もしかしてあたし達の活躍みて…ないの?」
提督には艦娘達に不測の事態がないか監視する職務がある。その為出撃の際は監視用ドローンを飛ばし場合によっては適切な指示をだすのが提督の居る意味なのだが…。
「やっぱり仕事中遊んでたのね…、この、この、クソ司令官!!」
呆れいうか怒りが勝っていたのかとうとうKワードを口にしてしまう霞。
「これは流石に軍法会議ではないか?」ネルソンも今回の件は不満を口にするほどだった。
「Hey! Me知ってる、Japanの男をハンセーさせるGoodなプラン!」
常に存在感ありまくりなのに今登場したかのように戦艦アイオワがことさら明るい声で提案した。(実は機動部隊第2で作戦に参加していた)
アイオワはネルソンに耳打ちをする…なるほどとネルソン。
「そうかAdmiralは艦娘のくすぐりに弱いのか。ならばお望みどうり反省するまで悶えてもらおうか」
ネルソンはサラトガとイントレピッドに指示を出す。二人は提督の腕を取りアメリカ空母の胸部装甲が両腕を挟みこんだ。
「提督、覚悟してくださいね」
「ジャパニーズゴーモン楽しみね☆」
耳元で米空母にささやかれるだけですっかり骨抜きになるダメ提督。
「まだまだこれからだぞAdmiral!さあ着ているものを脱いでもらおうか!」
提督の悲鳴が上がるが霞はやれやれと行った様子で執務室を後にした。別にどうなろうと知ったとじゃないしね。
執務室の喧騒を離れるとあの時のあの娘、たしかマエストラーレ、イタリアの艦娘が手持ち無沙汰で待っていた。
「チャオ、マエストラーレ-」
霞としては努めて明るく社交的に挨拶してみた。なんか上手く舌が回らなかったが特に気にしなかった。
「あっ、Ciao! カスーミ無事でなにより、です」
配置換えのときと同じ澄んだ瞳を向けてマエストラーレは笑顔を見せた。
無事に戻ってきたかった理由はきっとこれなんだ。
霞は不意に手を取ると駆け出した。突然のことでビックリしてしまうマエストラーレだが悪い気はしなかった。
「美味しいもの作ってみんな待ってるわよ。一緒に行こ」
「Bravi!だったら一杯食べます。長女ですし!」
長女はどう関係あるのかは分からないがこれから理解していけばいいんだ。まだまだ楽しめる。食事も戦闘も何もかも!
(たまたま上手くいったから良かったけど、次のからはもう少しマシな作戦を立てなさいよね。まったく、でも役に立てて良かった)
作戦終了お疲れさまでした!
初めての小説投稿だったので正直めっっちゃ恥ずかしい限りです。
この小説はプレイ中にあった出来事をもとにしています。昼戦で終わったのも動画見てて気づかなかったのも事実なのですがあまりにも間抜けすぎて笑いもでなかったです。でもせっかくなので小説として書いてみました。
本当は別のゲーム作品で小説を作ってみたかったのですが練習がてら艦これをチョイスしました。
本命はそっちなのですが好き過ぎて書けないんじゃなかと思ってますが、仮に次回投稿があればその作品の二次創作になるでしょうー、なればいいが!
ここまで読んでくださる方がいるのなら有難うございます。
それではお眼汚し失礼しました。