ソードアート・オンライン~夢幻の戦鬼~   作:wing//

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…大変お待たせしました、更新再開です!
言い訳はあとがきで書くとして、ミト編ラストのお話です。
最後の部分は…まぁ、そういうことで(黒笑)

それでは、どうぞ!


ミト編③ 「          」

「よく見てろ、ミト。今から、あの偽物の化けの皮を剥いでやる」

 

(…フォン?)

 

両手剣から細剣に装備を変えたフォンの言葉の真意を把握できず、ミトは今からフォンが何をしようとしているのか見ていることしかできなかった。

 

そんなフォンの言動などお構いなしに、偽物は体勢を整え、再びフォンに向けて細剣の刃を…

 

「遅えよ!」

 

だが、偽アスナが踏み込みよりも早くフォンの細剣が動いていた!突き出されようとしていた剣先に合わせるかのように、フォンの細剣が偽物の細剣を相殺したのだ。

 

フォンの強襲に偽物の表情が引き攣り、そして、そのまま押し切られる。

 

「…はああああああああぁぁぁ!!」

 

『っ…!?っ…!!』

 

そこからは一方的だった。

 

まるで雨のように次々と繰り出される突きに、偽アスナは防ぐことが精いっぱい…対するフォンは息を乱すことなく、そして、表情すらも変えることなく細剣で突きを繰り出していく。

 

だが、その様子はどこか変だった…それは離れて見ているミトにも分かるものだった。

 

(…フォン…なんであいつに止めを刺さないの…それに、なんか戦い方に違和感が…)

 

フォンが明らかに手を抜いている…いつもよりも剣戟のスピードが緩く、まるで偽アスナがギリギリ防げるほどに落とし、更には急所への攻撃も控えているようだったのだ。

 

ミトからすれば先程の言葉も併せ、フォンの真意が汲み取れずに困惑していた。しかし、次第にその戦い方を見ていて、何か見覚えがあるような気がしていた。

 

フォンは見ていろとミトに告げた…フォンが何をミトに見せようとしているのか、それを知ろうとミトはフォンの動きをその目で追い続けていた。

 

雨のような連撃…抑えているとはいえ、その速度はなかなかのものだ。それを狙って出しているのだから、やはりフォンの技量の高さが伺える。だが、それはフォンの普段の細剣の使い方ではなかった。

 

…フォンは敢えて自分の剣の操り方を封印していた。その脳裏にあったのは…

 

「…あっ…(…フォンの剣の動き‥‥‥アスナに、似てる…?)」

 

スピードが違っていたため気付くのが遅れたが…そう、ミトはようやく気付いた。フォンが、アスナの動きを真似て戦っているのだと。

 

ピンポイントへの重撃や斬り込みを得意とする独自の剣ではなく、閃光の二つ名の如く、目にも止まらない刺突を繰り出すアスナの剣を…フォンならでは再現していたのだ。スピードはもちろん劣っているが、SAOから何度も見てきたアスナの動きを、フォンが再現することは(簡単ではないが)できないということはなかった。

 

(そろそろ気付いたか)

 

偽物の動きに最低限の意識を割きながら、フォンは思考をミトへと傾ける。ミトの表情からして、フォン自身の意図に気付いたと察し、フォンは次の行動へと移る。

 

『お前、さっきから何なのよ!?』

 

「…お前に言って分かるもんじゃないさ。悪いが、ちょっと大人しく、しとけ!」

 

攻撃を全て相殺しているにも関わらず、自身に一向にダメージを与えようとしないフォンの戦い方に、偽アスナが疑問と共に怒りを露わにする。だが、対するフォンは一切構うことなく、頃合いだと見切ったところで偽アスナの腕を細剣ごと斬り飛ばし、そのまま素早く回転した反動でハイキックを叩き込む!

 

防御することも叶わず、まともにくらった偽アスナはそのまま吹き飛び、地面へと蹲りダウンした。

 

少しばかり時間を稼いだところで、フォンは警戒しつつもミトへと視線を向けた。

 

「…どうだった?」

 

「どう、って……」

 

フォンの言葉の意味が上手く汲み取れず、ミトは言葉を詰まらせる。だが、偽アスナが復活するまで時間がそうないため、フォンは強引にミトから言葉を引き出すことにした。

 

「お前が知っているアスナは…あんなものじゃないって思わなかったか?」

 

「……………」

 

「アスナの戦い方を真似てみたが…やっぱり難しいもんだな。あんなスピードをどうやって出しているのか、全然分からねぇよ」

 

「……………」

 

「…それとも、お前の知っているアスナは…あんな偽物が真似られるほどに弱いのか?」

 

「……がう…」

 

「お前のことは心底憎んでる、友達のことなんかどうでも扱う奴なのか?お前の中のアスナは…あんな偽物の言葉であっさりと揺らぐ程のものなのか?」

 

「…ちがう‥‥‥」

 

「…お前がアスナを思う気持ちは、偽物に揺さぶられるだけで折れるも「違う!?」…っ」

 

わざと煽るような言葉を放ち続けた結果、弱弱しく返ってきていた言葉が、強く、そして、確固たる意志をもって拒絶の意を示した。

 

フォンの目を睨みつける…その目にようやく光が戻っていた。

 

「…私の…私の親友はそんな子じゃない!アスナは…私の知っているアスナは…!?」

 

「…なら、あんな偽物、さっさと斬り飛ばしてこい。今のお前なら、できるだろう?」

 

もう大丈夫だろうと、フォンは内心安堵しつつ、体勢を立て直しつつあった偽アスナを背中越しに指差しながら、ミトに告げる。

 

その言動にミトは静かに息を吐きつつ、フォンと入れ替わるように…偽アスナと再度対峙した。

 

『またあなた?何をあの狂人に言われたのか知らないけど…私を殺せるの、ミト?』

 

「……………」

 

フォンが下がったことで好機と捉えたのか、斬り飛ばされていた右腕を細剣ごと回収し、軟体の身体にて接続し直した偽アスナは、歪んだ笑みでミトにそう告げる。その言葉を聞いたミトは言葉を返さないままで、その態度に更に偽アスナは言葉を続ける。

 

『そうよね、あなたに私は殺せない。私を殺して、またあなただけ生き続けるの?』

 

「……………」

 

『だったら、あなたなんか友達でも何でもない…とっとと目の前から「さっきからうるさいのよ、この偽物が」…なぁ…?!』

 

優勢とばかりに思っていた偽アスナだったが、静かに口にしたミトの言葉に…その暴言が止まる。

 

(…私の馬鹿。こんな安っぽい言葉で揺らされるなんて)

 

偽アスナと対峙するミトの心は冷静に…いや、酷く冷え切っていた。それは、さっきまでの自身に対する静かな怒りからくるものだった。

 

この偽アスナの言動が、自身の知る本当のアスナと一切似ていないにも関わらず、勝手にアスナへの罪悪感で思い込み、暴走した自分に頭がきていた。

 

『っ…!うるさい…うるさい、あんたなんか、ここで殺してやるわ!?』

 

遂に、言動までもが崩れた偽アスナが怒りのままにミトへと襲い掛かる。それに対し、ミトは大鎌で受け止めるが…反撃することはなかった。

 

細剣の斬撃による雨がミトに襲い掛かるも、先程までと異なり、ミトは…怖いほど静かに斬撃を防ぎ続けていた。

 

『さっきまでの威勢はどうしたのかしらぁ!?』

 

攻め続けられている現状に偽アスナは勢いを取り戻す。だが、それがただの見せかけであることは、本物のアスナであれば、すぐに理解できた筈だ。傍で見守っているフォンが冷静に見守っているのがいい証拠であった。

 

その時だった…偽アスナの放った一撃が、ミトの大鎌を弾いたのだ。ミトの防御が空いたと確信した偽アスナが笑みを浮かべて、ミトに止めを刺そうと細剣を振り被った。

 

『死になさい!…えっ…?』

 

偽アスナがミトに細剣を振り下ろした!

 

だが、その狂刃はミトの眼前に止まってしまったため、偽アスナの口から驚きの声が漏れた。その眼前には鎖が刃を食い止めている光景が映っていた。

 

ミトが大鎌を手放したのはわざとだった…既にその時にはギミックである鎖鎌を発動させていたのだ。柄の中心から分離した鎌が壁に突き刺さり、そこから張られた鎖にて、ミトは細剣の一撃を防いだ。

 

その一瞬の隙…それだけあれば、ミトにとっては十分だった。

 

その場でバック宙をしながら偽アスナの顎を蹴り上げた!だが、ミトの猛攻はまだ終わららない。宙に浮きあがった偽アスナに対し、追いすがるように右足回転蹴りを叩き込む!

 

更に宙に浮かぶ偽アスナに、ミトは回転の勢いにて引っ張った鎖鎌を偽アスナの身体にまきつけ、そのまま引き寄せ…手元へと戻した大鎌にてソードスキルを発動させる!

 

鎌重単発最上位ソードスキル〈シャドウネット・プレイーター〉による一撃が、偽アスナの身体を真っ二つにしたのと同時に、ミトは呟く。

 

「だから言ったでしょ…うるさいのよ、偽物が。アスナの顔をして、雑音を口にするんじゃないわよ」

 

大ダメージを受けた偽アスナは、偽キリトや偽ユウキと同じように液体となって、地面へと消えた。それを見て、安堵の息を漏らしたミトは、そのままフォンへと視線を向けた。

 

「…できたじゃないか」

 

「…な、何よ、偉そうに………ありがとう」

 

どこか満足そうに笑うフォンに対し、気まずそうに応えるミトだったが…感情を素直に出すことはできなかったが、お礼の言葉をフォンに告げるのだった。

 

 

 

「…なるほどな、お前の方にはアスナだけでなく、キリトの偽物も出たのか」

 

偽アスナを撃破し、敵のポップも止まったため、俺はミトと、俺たちが合流するまでの間に起こったことの情報を交換していた。

 

俺の方はユウキの偽物しか現れてなかったのだが、ミトの方はキリトの偽物も現れていたとのことで、俺は少し驚いていた。さらに、キリトの偽物よりも、アスナの偽物の方が強かったというミトの情報に、また驚きを隠せなかった。

 

「…それにしても、あんたの方はユウキの偽物って…しかもそれを容赦なく倒すって、あんた、どういう神経しているのよ?」

 

逆に、ミトは俺がユウキの偽物を、一切容赦なく倒しまくっていたという話を聞いて、物凄く呆れられた。

 

「いや、だって偽物だって分かっていたら、速攻で斬り飛ばすだろう?姿を真似ているだけでも気分悪いんだから…それで襲い掛かってくるのなら、遠慮する必要なんてないだろう?」

 

「…あのアスナの偽物があんたを狂人って言っていたことが少しだけ分かったわ。まぁ、その気持ちの方も十分分かるから、これ以上はどうこう言わないけど…」

 

呆れられるのは心外だと思って反論すると、何故か変な納得をミトはしていた。まぁ、アスナの偽物と対峙したせいか、ミトなりに理解できた部分もあったらしい。

 

「とりあえず、ここから脱出しよう。またいつ偽物が現れるか分からないし…」

 

「そうね…でも、問題は出口がどこか分からないってところね」

 

「ミト、マッピングしているか?俺のマッピングと照らし合わせれば、最悪ボス部屋とか分かるかもしれないし…」

 

ランダムで転移された上に、マップデータがない存在しないため、現在地はおろか方向さえも分からない状態であったため、俺とミトは互いにマッピングしていたマップデータを突き合わせる。

 

やはり出口は分からなさそうだが、未開拓の場所がそこまで多くはないようだ。こうなれば、後はしらみつぶしに探索するしかないかと考えていると、

 

「……………」

 

「…?どうした、ミト?」

 

「えっと‥‥‥ちょっと聞きにくいことを聞くんだけど…答えたくなかったら答えなくていいから」

 

「なんだよ、変な前置きをして…とりあえず言ってみてくれ」

 

「…あんた、ユウキの偽物に遭遇した時、容赦なく倒したんでしょ?その‥‥‥」

 

「なんで、一切の戸惑いなく倒せたのか、ってことか?」

 

「…(コクッ)」

 

珍しく言い淀むミトの問い掛けを補足しながら、俺は問われた内容に答える。

 

「なんでって…まぁ、目の前にいるのがユウキじゃないってすぐに分かったから、としか言いようがないかな」

 

「分かったって…それ、頭では分かっていたとしても、倒せるかどうかはまた話が別でしょ。特に大事な人なんかは…」

 

「…まぁ、ミトの言うことも一理…いや、多分正しいだと思う。でも、そうだな‥‥‥多分理屈じゃないんだと思う。本物じゃないと分かった時には身体が動いていたって感じかな」

 

「…理屈じゃない、か…」

 

「だから、ミトの反応が正しいと思うよ…それに…」

 

「それに…?」

 

「本物のユウキだったら、俺が放った普通の斬撃なんか、不意を突いたって防げるからな」

 

俺の回答に納得している部分もあれば、納得していないところもあるようで、ミトは何か思うところがあるようだ。

 

まぁ、もしもあのユウキが偽物でなかった場合、俺の一撃などそう簡単に通るわけがないという思いもあった。未だに負け越している、あの反則級の反射神経を持つユウキのことを頭に思い浮かべつつ、俺はどこか遠い目をしながら苦笑いしていた。

 

 

 

休息を終え、俺たちは未開拓のエリアへと進み始めた。その道中、偽物シリーズが現れることはなかったが、逆に一切姿を現すことがない状態に、逆に不気味さを覚えていた。

 

そんな予想に応えるように、辿り着いた場所にいたのは…

 

『…まさか、ここまで戻ってくるとはのう』

 

「…!あんたは、入口にいた…なんで、ここに…?」

 

開けた場所の中央には、俺たちにクエストを依頼した老人だった。ミトが疑問を口にしようとした時、俺は手で彼女を制止しながら言葉を口にした。

 

「そういうことか。何か違和感があると思っていたんだが…そういうことか」

 

「フォン、どういうことよ?」

 

「なぁ、ミト。ここは妖精が部代の世界だろう?それは、後から導入された新生アインクラッドでもそうだっただろう。人型NPCだって妖精か何別の種族に置き換えられていた…なら、なんで目の前にいるこいつは、人の姿をしてるんだ?」

 

「…っ?!」

 

俺が告げた事実にミトも気づいたようだ…そして、目の前にいる老人が何者かも察したところで、老人の身体が不規則に拡縮し始めた。

 

『我は人の心を映す水鏡…我が本体である洞窟が映したものはどうだったかな?』

 

「人の…心を映す…」

 

まるで心がないかのように…静かに告げる老人らしきものの言葉をミトが反芻していたところで、何となくこのダンジョンの…いや、クエストの背景が分かってきた。なんという偶然なのか、今のミトにとって、いい意味でも悪い意味でもタイミングが良すぎるものだったのだろう。

 

『汝らが見てきたものは、少なからず人が誰もが心に抱えし幻想だ』

 

「「……………」」

 

『己が真実として思うものを受け止め、そして、思い込む…他者から見た自分、自分から見た他者…ただ見て感じたものを正しいものだと、その眼に映す』

 

(これは、少しマズいか…)

 

老人もどきの言葉を半分ほど聞き流しながら、俺は隣にいるミトの顔色を横目で伺う。少しばかり顔を青くしているようで、結構老人もどきの言葉が刺さっているようだ。

 

『そして、人との距離を恐れる心を糧に、我は生まれた…汝らの心の闇が我を生み出したのだ。我が分身たちも決して偽りではない、汝らが心の奥底に抱えし真実だ』

 

「……………」

 

「真実、ね…まぁ、確かにそうかもな」

 

「…フォン?」

 

老人もどきの言葉もそろそろ終わりそうだったのと、またミトも追い詰められてそうだったので、俺は口を挟むことにした。

 

「ものは言いようだな、ちょっとしたバーナム効果だろうが。少しも他人に対して負の感情を抱かない人間なんていないわけないし、あの似てもないアスナたちの偽物が俺たちが思い込んでいる幻想なわけないだろうが」

 

「『……………』」

 

「そもそも…あのユウキの贋物が俺の心の闇だと?はっ…あんな紛い物しか出せない奴が、人の心どうこう語ってんじゃねぇよ」

 

呆れと少しばかりの怒りを込めた言葉に、ミトと老人が違った反応を見せていた。

 

自分や他人に対し、負の心を持っていない人間なんてそういるわけがない…あのサイコパスのPoHでさえ、キリトや俺に対し歪んだ感情を持って…いや、あれを引き合いに出すのはまた違う気がする。

 

ともかく、そんな完璧超人なんているほうが奇跡だろう。そもそも、ユウキのことが、俺が抱えている恐怖だって?馬鹿なことを言ってもらっては困る。俺が抱えている恐怖のことも分かってない癖に、まるで何もかも知っているかのような老人もどきの言葉にイラつきを覚えたのだ。

 

…まぁ、あとメタ的なことを言ってしまうと、アミュスフィアに人の心を読む機能はないので、そんなことができないということを知っているからというのも大きいが(須郷が旧ALOでそんな実験をしていたみたいな話は確かあったか…)。

 

俺の毅然とした態度に老人は黙りこくってしまい、対するミトは呆然とした表情で俺を見ていた。ちょっとはこれでミトのメンタルをカバーできればと思ったのだが、思った以上に変なリアクションをされてしまい、俺は何とも言えなくなってしまったが…

 

「ほら、あんな偉そうな奴なんか倒して、さっさとここから出るぞ、ミト」

 

「…!わ、分かったわ」

 

俺の言葉に、これ以上の揺さぶりは不可能だと悟ったのか、老人の身体が巨大なアメーバへと変貌するかのように拡大した。

 

それに対し、俺はミトに発破をかけるように声を掛け、ボス戦が幕を開けた。

 

 

 

…そして、ボス戦は速攻で片がついた。

いや、なんというか、あんな偉そうなことを言っておきながら、あの巨大アメーバ、そこまで強くなかったのだ。

 

俺とミトは戦闘に慣れている上に、2人とも全く容赦しなかった(俺は幻想剣スキルを、ミトも十八番の鎖鎌を、出し惜しみなく使った)のと、アメーバ自体が巨体かつ防御力もそこまで高くなかったので、瞬殺…とまではいかなかったが、結構あっさりと終わってしまったのだ。

 

…てっきりまだ何か仕掛けがあるのではないかと疑いを掛ける程にあっさりだったが、どうやらさっきのアメーバで終わりだったらしい。

 

「…どうやら、本当にこれが終わったらしいな」

 

「そう、ね…」

 

何の問題もなくボス戦が終わったものの、俺の問い掛けにどこか浮いた回答をするミトの姿が気になり、俺は声をかける。

 

「…さっきのボスの言葉、まだ気にしてんのか?」

 

「……………」

 

その理由を察していたこともあり、そのまま問い掛けると、返ってきたのは無言の肯定だった。こればっかりはミトの問題なので、俺がどうこう言って解決できるレベルではないので、どうしたものかと思っていた時だった。

 

「ねぇ、フォン…あんたから見て、私ってどう見えてる?」

 

ミトからそんな問い掛けが飛んできた…その目は、まっすぐ俺を見ていて、真剣だった。俺は少し思案し、思ったことを口にすることにした。

 

「アスナ一筋、アスナ撃推しガール、とか?」

 

「ぶっ飛ばすわよ?」

 

結構本気で思ったことを口にしたのだが、ミトの目元がつり上がり、怒りの火が灯った。まぁ、ちょっとばかり気持ちを切り替えさせようとしたところはあったが、ここからは真面目に話すべきだろう。

 

「事実を言ったまでだ。というか、お前は色々と考え過ぎなんだよ」

 

「…か、考えすぎって…だって、私がアスナを裏切ったのは事実だし…」

 

「なぁ、ミト…お前、本当に分かってないのか?」

 

「…えっ?」

 

…どうにもミトは自分を変に卑下にしてしまっているところがあるらしい。こういうのは、どこかキリトに似てるだよな、と思いつつ、俺は俺の考えを述べていく。

 

「そこまでアスナのことで思い詰めるほどに、お前の中でアスナのことが大事なんだろう?普通…自分の人生を棒に振りかけるほどに思いつめるなんて…それだけのお前の中で、アスナが比重を占めてるんだろう?だから、そこまで思い詰めるんだろう?それに、アスナはお前のことを…大事な親友だって想ってくれてるんだ。お前のことを大事に想ってなきゃ、アスナだってキリトやユイちゃんとの時間をもっと大事にするだろうが」

 

「……………」

 

「誤解も解けた今、アスナはお前との時間も大切にしてくれてる…もしお前のことを嫌っているのなら、普通そんなことしないだろう?少なくとも、俺はちょっと距離を置くぞ」

 

「……………」

 

「…ってい」

 

「っ…!い、痛いじゃない!?」

 

ここまで言っても、まだうじうじするミトにイラつきを覚えたのもあり、俺は右指でデコピンを喰らわせる。いきなりの不意打ちにミトが額を抑えて睨んでくるも、俺は無視して言葉を放つ。

 

「そんなに心配なら、直接アスナにぶつかってみろよ。ぶつかってみないと、分からないことだってあるんだからさ。まぁ、これはユウキの受け売りだけどな…」

 

「…ぶつかってみる、か…」

 

その言葉を口にした時、アスナと共にユウキに背中を押してもらった時のことを思い出していた。俺も…罪悪感や気まずさから両親との接触を無意識に避けていたことがあったからこそ、ミトの気持ちが少し分かる部分があった。

 

『明日奈は守ることばかり考えすぎなのよ。もっと攻めなきゃ』

 

「…そう、ね。そうだったわね…自分で言ったことだったのに…私、大事なことを忘れてた」

 

「…(どうやら、少しは納得できる答えを見つけたようだな)

 

俺の(正確にはユウキのだが)言葉に、ミトも自身で納得できる答えを見つけられたようだ。ひとまずはこれで大丈夫だろう。

 

「…フォン、その‥‥‥本当にありがとう」

 

「おう。まぁ、気にするな…単なるお節介だし、友達を助けるのは当然だからな」

 

(そのお節介屋さんのお陰で、私は助けてもらえたのよ)

 

いつものミトの様子に戻ったようで、ホッとしたところで…そろそろこのダンジョンから脱出するべきだろう。俺たちは奥へと繋がる通路へと進むことにしたのだった。

 

 

〈Mito View〉

 

(本当にお節介よね、フォンは…)

 

先を進む彼…フォンの背中を見ながら、私はそんなことを思っていた。

 

最初、出会った時は…正直打算ありきだった。

 

情報屋である鼠の紹介で、SAOでもトッププレイヤーである夢幻の戦鬼からアスナの近を知れればと思って接触した。

 

姿を変え、依頼も偽り…フォンから見れば、怪しいことないのに、真摯に対応してくれた彼は、確かにお節介なのだろう。

 

そこから、本当の素性と事情を知って…そして、アスナと私を再び繋いでくれた。そんなことをしてくれる義理はなかった筈なのに…彼にとっては何でもないことだったのかもしれないが、それが私にとって、ある意味で究極の救いだった。

 

(…なんやかんやで、面倒見がいいのよね)

 

今、思えば…私はフォンをよく頼っている。いや、彼の優しさに甘えているというのが正しいのかもしれない。

 

彼は彼で、ユウキや自分のことを優先すればいいのに…なんやかんやで、私の誘いに乗ってくれている。

 

彼からすれば、面倒なことや聞かされても困ることばかり告げている筈なのに、苦笑いしながらも、ちゃんと聞いて、そして、応えてくれるのだ。だから…その優しさに…お節介なところについ甘えてしまっている。

 

…そして、それがきっと彼の魅力なのだろう。アスナが…他のみんなが、彼を頼る理由はきっとそこなのだろう。そんなことを思うと自然と笑みが零れた。

 

「おっ…出口が見えてきたな」

 

「…!そうね、やっと出られそ‥‥‥」

 

光が見えたところで、フォンが少しばかり駆け足になった。そんな彼を追いかけ、洞窟に出た時だった。言いかけた言葉が止まった私の目に入ったのは、

 

「お疲れさん、ミト」

 

労いの言葉と共に向けられたフォンの笑みだった。よく見る彼の笑みの筈なのに、私は思わず言いかけてていた言葉が詰まり、彼の顔から視線を外せなくなってしまい…

 

「…?ミト、どうした?」

 

「…!う、ううん…なんでもない」

 

「そうか?なら、今日はここで解散としようか?そっちも、明日学校だろう。あんまり遅くなってもあれだし」

 

「そうね…それじゃ、ここで。今日は付き合ってくれて、ありがとう」

 

ここで解散しようと告げたフォンの言葉に乗っかかりながら、私は今日のことのお礼を述べ、翅を出現させて飛び立とうとした…が、その前にフォンにあることを告げた。

 

「…また…私の愚痴に付き合ってくれる?」

 

「…いいよ。ただ、偶に俺の愚痴も聞いてくれると助かるかな」

 

「フフッ、なにそれ…まぁ、いいわ。それじゃ、またね」

 

「おう、またな」

 

嫌な顔をせずに応じてくれたフォンの返答に、胸が弾む覚えを感じた。名残惜しさを覚えつつ、私は今度こそホームへと向かい飛び始める。遅れて彼も飛行し始めたのを横目で見ながら、私は夕方の空を駆けていく。

 

でも、私は1つだけ分からないことがあった。

 

(…なんで、胸が弾んだんだろう…アスナと一緒にいる時と同じくらいに…)

 

今まで感じたことのない想いを胸に抱えつつ、私は空を駆けるのだった。

 

 

 

ミト編③ 「そして、少女は恋を知る」

 

 




まぁ、もう落っことしていいかなって…
今回は、偽アスナとの戦いが中心なのと、ミトの心境がメインのお話でしたので、ボス戦はカットです。

ようやくミト編が終わったところで、次回はリーファ編です!リーファメインということで、キリトとのお話が中心になりますが、ユウキも(久々に)登場します!

さて、ここからは言い訳で…更新が長期間止まっており、大変失礼しました。何があったかといいますと、
3月~7月頭:資格の勉強と受験(合格率30%…無事合格しました!)
で、執筆開始できるかな、と思っていたら、7月に腰を痛めまして…椅子に座るのもキツイ状態で、執筆がなかなか進まず…8月は本業が過去一番カオスな忙しさになり…先週まで死んでました(笑)

ここからは、外伝やダブルも含めて、更新頻度を戻していければと思っております(本当、早くロスト・ソング編に入りたい!)。

それでは、次回でお会いしましょう!

見てみたいシチュエーションはどれでしょうか(誰がとは言いませんが)

  • ショタ化
  • メイド
  • ●●音痴
  • 歌うま合戦
  • 料理対決
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